若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

ハコモノを減らして将来負担を減らそう ~公共施設等総合管理計画と行橋市長選~

2022年02月19日 | 地方議会・地方政治
『行橋市公共施設等総合管理計画』というものがあります。

公共施設等総合管理計画 | 行橋市ホームページ
行橋市公共施設等総合管理計画 平成29年3月

この中で、大事なことが書いてありますので紹介します。

市としては 施設や維持費の削減が必要であると考えています


別のところでは、
「最適配置の推進」
と銘打って、
①施設を1箇所にまとめる。
②民間に運営をゆだねる。(譲渡を含む)
③施設の廃止を進める。
④建替えの際に規模を縮小する。
⑤別の用途の施設として利用する。(既存建物を活用)
⑥公共施設等の再編による拠点整備とともに新たなニーズに応える。

という手法を示しています。


これについて、行橋市長選に名乗りを上げた3人に質問を投げかけるとしたら、次のとおり。

【田中純氏へ】

前回市長選において最大の争点は、新図書館の建設問題でした。

田中氏は当選後に新図書館を建設しましたが、それによる維持費の増加は公共施設等総合管理計画に反していませんか?
既存の旧図書館の活用ではダメだったんですか?
新図書館ができた後に商店街のスーパーが撤退するなど目に見えて衰退したわけですが、強行した新図書館建設事業が中心市街地の活性化に寄与しなかった事への反省の弁はありませんか?

【工藤政宏氏へ】

田中氏が建ててしまった新図書館をはじめ公共施設は増加していますが、その維持費は今後どう工面しますか?
以前当ブログにて、工藤氏の固定資産税減税論について紹介しましたが、維持費が膨らむ中で財源はどうしますか?
どの施設を廃止・縮小しますか?

【松本英樹氏へ】

松本氏が主導した増田美術館の公営化は、公共施設等総合管理計画に掲げた
②民間に運営をゆだねる。(譲渡を含む)
という考え方に逆行していませんか?
財団の維持管理費を市が肩代わりして、市の負担が増えていませんか?
美術館の旧オーナーと松本氏とは、2016年12月27日の毎日新聞記事によると「親交のある」仲と紹介されていましたが、具体的にどういう間柄だったのですか?

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新型インフルエンザ等対策特別措置法と「法律による行政」「法の支配」(備忘録)

2022年02月01日 | 政治

【問1 まん防の実施】

令和4年1月、岸田首相は、新型コロナ陽性者数が増加したことを受けて就任後初のまん防(まん延防止等重点措置)の実施を発表しました。

これ、法令に沿った運用と言えるのでしょうか?
法律や政令に定める発動条件を満たしているでしょうか。

【条文】

〇新型インフルエンザ等対策特別措置法
======
(新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置の公示等)
第三十一条の四 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章及び次章において同じ。)が国内で発生し、特定の区域において、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある当該区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するため、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施する必要があるものとして政令で定める要件に該当する事態が発生したと認めるときは、当該事態が発生した旨及び次に掲げる事項を公示するものとする。
一 新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を実施すべき期間
二 新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を実施すべき区域
三 当該事態の概要

======

〇新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令
======
(新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施すべき事態の要件)
第五条の三 法第三十一条の四第一項の新型インフルエンザ等についての政令で定める要件は、当該新型インフルエンザ等にかかった場合における肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚生労働大臣が定める重篤である症例の発生頻度が、感染症法第六条第六項第一号に掲げるインフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められることとする。
2 法第三十一条の四第一項の新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施すべき事態についての政令で定める要件は、当該新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施しなければ、同項の特定の区域(以下この項において単に「特定の区域」という。)が属する都道府県における新型インフルエンザ等感染症の患者及び無症状病原体保有者(感染症法第六条第十一項に規定する無症状病原体保有者をいう。以下この項において同じ。)、感染症法第六条第八項に規定する指定感染症(法第十四条の報告に係るものに限る。)の患者及び無症状病原体保有者又は感染症法第六条第九項に規定する新感染症(全国的かつ急速なまん延のおそれのあるものに限る。)の所見がある者(以下「感染症患者等」という。)の発生の状況、当該都道府県における感染症患者等のうち新型インフルエンザ等に感染し、又は感染したおそれがある経路が特定できない者の発生の状況、特定の区域における新型インフルエンザ等の感染の拡大の状況その他の新型インフルエンザ等の発生の状況を踏まえ、当該都道府県において新型インフルエンザ等の感染が拡大するおそれがあると認められる場合であって、当該感染の拡大に関する状況を踏まえ、当該都道府県の区域において医療の提供に支障が生ずるおそれがあると認められるときに該当することとする。

======

【要約】

法律あるあるですが、長くて非常に読みにくい。
読みやすいように短くしてみましょう。

政府対策本部長=内閣総理大臣は、

① 国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある感染症が国内で発生し、

② 特定の区域において、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある感染症のまん延を防止するため、

③ まん延防止等重点措置を集中的に実施すべき事態が発生したと認めるときは

まん延防止等重点措置を実施する期間と区域を公示する、という流れになります。

この①と③については、政令(同法施行令)であらかじめ条件が定めてあります。

まず、①の「重大な被害を与えるおそれのある感染症」とは何かという点。
政令では、肺炎、多臓器不全、脳症など重篤な症例が、通常のインフルエンザよりも相当高い頻度で発生する感染症に限定されています。

次に、③についてですが、これは端的に言うと「医療の提供に支障が生ずるおそれがあると認められるとき」となります。

肺炎、多臓器不全、脳症などが相当高い頻度で起きる危険な感染症をまん延させない、医療崩壊を防ぐ、そのために発動するのがまん防です。

【法律違反のまん防】

ここで問題となるのは、①です。

繰り返しになりますが、まん防を実施できるのは、肺炎、多臓器不全、脳症などの重篤な症例がインフルエンザよりも高い頻度で発生する、そんな危険な感染症に限定されています。

・・・さて皆さん、新型コロナウイルス感染症のうち特に今増えているオミクロン株の感染で、肺炎、多臓器不全、脳症などの重篤な症例の発生頻度がインフルエンザよりも相当高いというのを聞いたことがありますか?現実はむしろ逆で、陽性者でも無症状が多く、また、症状があっても風邪と見分けがつかない程度の患者が多数です。

令和4年1月時点におけるまん延防止等重点措置の実施は、法律と政令で定める条件を満たしていると判断できる情報、統計、要素がありません。

私は、
拙速、やりすぎのほうがまし
と放言する岸田首相の功名心と恐怖心が先行し、周辺の人間が忖度をした結果が、法律と政令で定める条件を無視したまん防の発動に繋がったものとみています。

風邪と見分けのつかない感染症を、「肺炎、多臓器不全、脳症などの重篤な症例がインフルエンザよりも相当高い」と過大評価してしまった岸田首相ですが、開始時点で明確な根拠を持っていないため、今度は解除の時にタイミングが分からなくなって前の菅政権と同じように迷走するのでしょう。

【問2 まん防の効果】

次に、政府のまん延防止等重点措置区域の決定を受けて、対象となった地域の自治体はこぞって次のような発表をしています。

まん延防止重点措置区域決定後の対応について - 大分県ホームページ
======【引用ここから】======
飲食店・遊興施設・結婚式場
認証店の場合
A  営業時間21時まで・酒類提供可  もしくは B 20時まで・酒類提供不可 から選択

非認証店の場合
C 営業時間20時まで・酒類提供不可
営業時間の短縮等に対応頂ける場合、協力金を支給します。対応頂けない場合、店名公表等の罰則を伴う可能性あります。
======【引用ここまで】======

テレビでもこんな表現でしきりと放送しています。
これ、合ってると思います?

【条文】

〇新型インフルエンザ等対策特別措置法
======
(感染を防止するための協力要請等)
第三十一条の六 都道府県知事は、第三十一条の四第一項に規定する事態において、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある同項第二号に掲げる区域(以下この条において「重点区域」という。)における新型インフルエンザ等のまん延を防止するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該都道府県知事が定める期間及び区域において、新型インフルエンザ等の発生の状況についての政令で定める事項を勘案して措置を講ずる必要があると認める業態に属する事業を行う者に対し、営業時間の変更その他国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある重点区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するために必要な措置として政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。

2 (略)
3 第一項の規定による要請を受けた者が正当な理由がないのに当該要請に応じないときは、都道府県知事は、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある重点区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するため特に必要があると認めるときに限り、当該者に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを命ずることができる。
======

【要点】

まず、まん防の決定を受けた区域で、都道府県知事は、営業時間の変更を始めとする措置を「要請」することができる、と書いています。
次に、第3項では、この要請を受けた者が「要請」に応じないとき、都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止するため特に必要があると認めるときに限り命令を出せる、となっています。

今現在は、「要請」の段階です。
これは法律の問題というよりも日本語の問題なのですが、「要請」は「~してください」という意味しか持っていません。この段階で強制力は持っていません。

このため、「要請」の段階で

「酒類提供可(できる)」
「酒類提供不可(できない)」

といった表記を用いるのは誤りです。

要請」なので、あくまでも都道府県知事側は、
「非認証店の皆様におかれましては、営業時間までは20時まで、酒類は提供しないようお願いいたします」
と低姿勢でなければいけません。

そして、「要請」に従わなかったとしても、直ちに問題にはなりません。
「要請」に従わせる事が
新型インフルエンザ等のまん延を防止するため特に必要があると認めるときに限り」、
都道府県知事は初めて命令を出すことができます。
要請」はあくまでお願いでしかないので、お願いに従わなかったからと言って直ちに命令につなげることはできません。

条文で、「『特に必要があると認めるときに限り』」と、強めの限定をしているので、かなり差し迫った必要性を知事の側が証明できなければならないと考えます。

もし命令できるとしたら、要請に従わなかった店で多数の客が感染したことが明らかで、その客がいずれも重症の肺炎になったようなケースくらいでしょうか。

【法律で縛る事の意味】

であるにも関わらず、どの自治体も
「まん延防止等重点措置が決まりました。酒類提供できません」
の一点張り。

マスコミも自治体の発表を鵜呑みにして
「非認証店では20時までしか営業できません、お酒の提供もできません」
と垂れ流すのみ。行政を監視するというスタンスを放棄してしまっています。

現在係争中のグローバルダイニングと東京都の訴訟で、もしこれで東京都が勝ってしまうようなら、立法府が命令を限定的な形で規定したとしても、行政府や自治体に対し何の歯止めにもならないことを意味します。

いや、もう既に法律の歯止めを失って政府や自治体は暴走している、それが昨今のコロナ対策禍だと言えるかもしれません。

法律に基づく行政とは何だったのか。
日本は「法の支配」の原理を採用しているのではなかったのか。

グローバルダイニング訴訟、原告が投げかける問い「コロナ時短命令、誰が責任とるのか」(弁護士ドットコムニュース) - Yahoo!ニュース
======【引用ここから】======
「“政府”は終局的な責任をとらない要請を中心とした法的義務なきお願いをベースに我々の行動変容を調達し、責任を丸投げされた市民社会は、視聴率に依存する無責任なマスメディアによる煽りによって、同調圧力と相互監視を強め、萎縮した社会はいまだに元の姿に戻っていません」(倉持弁護士)
======【引用ここまで】======