若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

問題は、外国人なら母国の親族を扶養に取りやすいというところであって

2016年06月27日 | 政治
リバタリアンとしてネトウヨを批判するのは結構なことなのだが、その批判が的外れで突っ込みたくなる事例。

○おこちゃまネトウヨでも議員になれることの実例、行橋市議:小坪慎也氏 — リバタリアニズムの事例研究#2.0
=====【引用ここから】=====
よくよく考えてみてほしい。
それでも足りなければ、よくよく、よくよく考えてみてほしい。
これを読むあなたが日本人であれ、外国人であれ、在日外国人であれ、「私には5人の子が外国にいて、その全員を扶養していますが、そのことは証明できませんし、する気もありません。で! 根拠もなく私に5人分の扶養控除を認め、税金を0円にしてください」と主張したとする。
どうして日本国が、日本国の税法が、税務署が、市区町村役所が「はいはい分かりましたよ、あなたの税金は証明不要で0円!」などと甘く甘〜く出てくれるのだろう?

=====【引用ここまで】=====

これに対する答えは・・・

外国人の扶養控除って何?どうすれば受けられるの?|UpIn[アップイン]
=====【引用ここから】=====
改正が行われる前は、居住者の言い分を企業がそのまま受け取り、書類の提出も任意でしたが改正後は義務化されています。つまり海外に本当に扶養親族がいるかどうかを確認しないと健康保険も控除もなくなるということになります。
=====【引用ここまで】=====

これにて今回のエントリを閉じてもいいのだが(笑)、もうちょっと具体的に考えてみよう。

例えば。

人口4万人の町に部品工場が建てられた。工員として外国人が採用され、この町に住むことになった。この人が町役場(職員数300人)の住民税窓口を訪れ、「母国(東南アジアでも中東でもアフリカでもヨーロッパでもどこでもいいが)で父母や子、甥姪を扶養している」と主張した。手元には、母国の言語で書かれていると思われる資料を持参している。

ところが、職員300人の誰に聞いてみても、資料に何が書いてあるか分からない。そもそも何語で書かれているかが分からない。公的に作成されたものかどうかも分からない。申出のあった扶養親族が母国に実在するのか、本当に収入が無いのか、他の者に扶養されているかどうかの確認方法がない。こうした場合、いろいろ本人から聞き取った上で、結局、申出のとおり5人の扶養を認めるということになろう。正確に手元の資料を翻訳したら「5人中、母と子の2人だけが扶養親族の要件に該当する」という内容だったとしても、これを役場や税務署の窓口で見抜くことはまず不可能だろう。

冒頭で引用したブログでは、行橋市議会での市民部長の答弁が引用されている。

=====【引用ここから】=====
「全員が税法上の扶養親族の要件に該当するものであれば」
「日本国籍の方であれ、外国籍の方であれ、また、その方が国外に居住している場合であっても、制度上の扶養親族の要件に該当するということであれば、同一の取扱いとなっている」

=====【引用ここまで】=====

この引用をもって「それ見たことか!外国人特権なんて無いんだ!役所の部長も『日本国民も外国人も同一の取扱い』と言っている!」と・・・いうことにはならない。
ここでいう「同一の取扱い」はあくまでも「扶養親族の要件に該当するということであれば」という前提条件があってのこと。外国にいる親族が扶養の要件に該当するかどうかを、日本国内に居る者と同一の厳格さでチェックすることは不可能である。ここが問題の所在である。

上記の部長は、おそらく日本語しか読み書きできないであろう。英語やハングルの読み書きが出来れば御の字である。部下の職員も同様である。資料を提示されたとしても、これが読めない言語で書かれていたら、真贋どころか最低限の内容把握すら覚束ないだろう(そもそも、従来は国外にいる親族を確認する書類の提出すら制度上義務づけられていなかった)。扶養親族が日本国内にいる場合と比べて、国外にいる者を扶養親族とすることに対するチェックは甘くなる。

○外国人の扶養控除制度の見直し:就労ビザ・投資経営ビザ・配偶者ビザ・オーバーステイ-外国人ビザ申請サポートセンター
=====【引用ここから】=====
諸外国の例を見ても、日本のチェックの甘さは異常です。米国では、子供の扶養控除を認めるには半年以上の同居が必要で、直系尊属以外の傍系尊属(=自分より上の世代に属する伯叔・父母など)は課税年度を通じた同居が要件です。また英国では、実子は国外にいても控除対象ですが、養子は居住要件が課せられます。
=====【引用ここまで】=====

こうした問題意識の共有については、ここの市議会でも、

【平成26年12月行橋市議会定例会(第13回)-12月09日-03号】
=====【引用ここから】=====
市長(田中純君)
 この件に関して、小坪議員の指摘は全く正しいという認識で、私もおります。
ただし、これは、ままあることではありますけれども、法律が作られた時点と、それが動き出した時点と、あるいは新しい事象が社会に起きた結果、古い法律が対応できなくなったと。あるいは法律を作るときに、こういう事態が起きるであろうというようなことを全く予測していなかったことが起きたということによる矛盾、あるいは問題というぐあいに私はとらえております。
 したがいまして、日本人差別という、少しセンセーショナルな言い方は、私は賛同しかねますけれども、大いなる問題点をはらんでいるということについては、全く異論はございません。

=====【引用ここまで】=====

という答弁の中で示されている。
その後、政府は、

○国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)平成27年9月 国税庁
=====【引用ここから】=====
所得税法等の一部を改正する法律(平成27年法律第9号)により、平成28年1月1日以後に支払うべき給与等及び公的年金等から、国外居住親族に係る扶養控除等の適用を受ける場合には、当該親族に係る親族関係書類や送金関係書類を提出又は提示することが義務化された
=====【引用ここまで】=====

として、書類やその翻訳の添付を義務化した。裏を返せば、改正以前は、親族関係書類や送金関係書類、翻訳の提出が任意だったということであり、本人の申出のみに基づいて扶養を認めることができたということを意味する。

会計検査院の指摘から税法の改正、国税庁の取扱の変更という一連の流れと、小坪氏の動きとは同趣旨のものだろう。
この課税強化の流れに対し、
「課税は強盗である。節税の道はいくつもあった方が良い。だから申出のみによる扶養親族の認定は今後もあって良いじゃないか。いっそのこと、日本国民の扶養親族認定も甘めの基準で判定すべき」
と、リバタリアニズムの立場から批判するのは当然ありうる(私はこの立場)。

しかし、国内と国外で扶養親族の確認方法や確認水準に大きな差異が存在し、日本在住の日本国民にはできない場合でも外国人なら扶養親族をとることができる(できた)という指摘自体は、その通りだ。法律の不備により外国人が優遇されている状態を一言で表現するならば、「外国人特権」ということになろう。

社会保障・税番号 - 社会保障(建前) = 税番号(本音)

2016年06月27日 | 政治
マイナンバー(個人番号)は、社会保障・税番号と呼ばれているが、ありゃ詐欺だね。

マイナンバー社会保障・税番号制度
=====【引用ここから】=====
Q1-3 マイナンバー制度導入による具体的なメリットは何ですか。
A1-3 マイナンバーのメリットは、大きく3つあります。
 1つめは、行政を効率化し、人や財源を国民サービスに振り向けられることです。
 2つめは、社会保障・税に関する行政の手続で添付書類が削減されることやマイナポータルを通じたお知らせサービスなどによる国民の利便性の向上です。
 3つめは、所得をこれまでより正確に把握することで、きめ細やかな社会保障制度を設計し、公平・公正な社会を実現することです。

=====【引用ここまで】=====

行政を効率化できる
 ⇒ できない。
国や地方公共団体などの間で情報のやりとりをするのが目的であれば、行政機関の内側でそのやりとりをするためのシステムを構築すれば良い。社会保障分野に関して言えば、新たに全国民に付番してカードを配り申請時に記入を求めるといったことは不要であり、壮大な無駄である。
マイナンバーカードを全国民に配布するのがなぜ必要かと言えば、会社から当局に対し「何番の従業員に幾ら給料を払ったか」を届け出させるためだ。

人や財源を国民サービスに振り向けられる
 ⇒ 真逆。
国民に振り向けられるはずのヒト・モノ・カネがマイナンバーで浪費されている。
法改正、条例改正、マニュアル策定をはじめ、マイナンバー制度に対応するために全国でどれだけの公務員が従事させられたか。
カードを配布するためにどれだけの郵便局員が従事させられたか。
システムを構築するためにどれだけのSEが従事させられたか。
ヒト・モノ・カネを他の分野からマイナンバーに振り向けたことによって、他の分野は当然手薄になる。そして、これからもシステム改修やカードに対応し続ける必要があるため、継続的にヒト・モノ・カネが無駄になる。

社会保障・税に関する行政の手続で添付書類が削減される
 ⇒ されない。
申請書に記載された個人番号を確認するために通知カードの提示が必要となり、また身元確認、代理人確認が厳格化されたので煩雑になる場面の方が多い。

社会保障分野で便利になるとすれば、転入出や転職の際の手続のごく一部であり、それも行政機関の内側で情報連携できれば済む話。

結局のところ、「社会保障・税番号」と呼んではいるが、政府の本音は・・

所得をこれまでより正確に把握する

・・そう、ここが本音。マイナンバーは所得を把握するための「徴税番号」なのだ。
「徴税番号」ではあまりにイメージが悪いから、罪滅ぼしの枕詞として「社会保障」を付けたに過ぎない。「きめ細やかな社会保障制度を設計し」なんて言っているが、政府にそんな能力はない。

政府は「徴税番号」というイメージがよほど嫌なのだろう。次のQ&Aを見るとその心の中を覗くことができる。

=====【引用ここから】=====
Q1-4-2 マイナンバー制度が始まると預貯金や資産まで行政の職員などに見られてしまうのですか。
A1-4-2 平成27年9月のマイナンバー法改正で平成30年を目途に預貯金口座へのマイナンバーの付番が始まる予定です。
 ただし、預貯金口座へのマイナンバーの付番は義務ではなく、あくまで任意となっています。
 また、利用目的も金融機関が破たんした時の自己資産保全のための預貯金額の合算に利用できたり、税務調査や生活保護などの資産調査で利用できたりするものです。(2015年12月回答)

=====【引用ここまで】=====

「預貯金や資産まで行政職員に見られてしまうのですか。」
という問いに対し、
「預貯金口座への付番が済んだら、見られてしまいます」
と正面から答えれば良いのに、なぜか答えない。

税務調査や資産調査と称して、役所に敵対的・非協力的な個人を狙い撃ちにしてあら探しをするということが起きるだろう。また、興味本位で芸能人の預貯金を検索する事件も出てくるんだろう。

=====【引用ここから】=====
Q1-4-3 マイナンバー制度で副業が会社にばれてしまうというのは本当ですか。
A1-4-3 マイナンバー制度導入に伴い、地方税関係手続に変更が生じるものではなく、 マイナンバー制度の導入により副業を行っている事実が新たに判明するものではありません。
 住民税の税額等は、特別徴収額の決定通知書により給与支払者を経由して納税義務者に対して通知されており、この通知書に前年の給与収入合計額が記載されていることから、現在でも、勤務先の企業が支払った給与額との比較で、副業を行っている事実が判明する場合もありうると考えます。(2015年12月回答)

=====【引用ここまで】=====

「現在でも、勤務先の企業が支払った給与額との比較で、副業を行っている事実が判明する場合もありえますが、マイナンバー制度の導入により、今まで以上に副業がばれやすくなります」
と書かなきゃ不正確だ。


ほんと、世知辛い世の中になったもんだ。
安倍政権の悪政は数あれど、悪政の筆頭候補としてこのマイナンバー制度を挙げておこう。

ファーストクラスが問題なんじゃない、視察そのものが問題なんだ ~ 東京都議会の委員会視察 ~

2016年06月24日 | 地方議会・地方政治
舛添前知事を叩く都議会側が、舛添前知事と同じことをやって叩かれるという構図が勃発した。

○舛添知事をぶっ叩いた都議会議員たちが、大挙してリオ五輪に視察に行くのは許されない | 東京都議会議員 おときた駿 公式サイト
=====【引用ここから】=====
・オリンピック開会式
・オリンピック閉会式
・パラリンピック開会式
・パラリンピック閉会式
の4期間に分けて、7人ずつの都議会議員(+随行員)を4部隊派遣するというものでした。

   ~~~ (中略) ~~~
その精査過程で議会局が出してきた予算案が予算段階で約6200万(うち議員の旅費のみで4000万!)というあまりに高額なものであり、さらに膨れ上がる見込みであること(議員数20名で算出された金額であり、さらにホテル代も高騰)。
=====【引用ここまで】=====

私は元々、地方議会議員の行政視察には批判的な立場をとってきた。
なぜかって?地方議員の視察は目的があいまいで、ただの観光地旅行になりがちだから。

○何のための委員会視察? ~ 地方議会の行政視察廃止論 ~ - 若年寄の遺言
=====【引用ここから】=====
もし身近な所に、都道府県議会、市区町村議会の議員がいたら、尋ねてみてほしい。
「去年、一昨年と、委員会視察で何を学び、何をうちの自治体に持ち帰りましたか?」
と。具体的な答えが返って来なかったら、あなたの払った税金は、その議員が観光地に行くために費やされたと評価してほぼ間違いない。

=====【引用ここまで】=====

そして、どうしても視察をするのであれば、議員が1人ずつ視察報告書を作成し、委員会に提出し、その後これを公開すべきであると述べてきた。

○行政をチェックする議員をチェックする ~ 観光旅行ですか、行政視察ですか ~ - 若年寄の遺言
=====【引用ここから】=====
もし、行政視察を続けるのであれば、
・視察の行程、宿泊先、領収書添付の上での費用の詳細な公開
・(委員会単位、会派単位でなく)議員個人ごとの視察報告書の公開
位のことをしないとダメだろう。全て見られている、住民の監視対象になっている、と意識させることで、初めて、ちゃんとした視察をしようという動機付けが生じることになる。

=====【引用ここまで】=====

○地方議員が出張するための法的根拠 ~議員派遣と委員派遣~ - 若年寄の遺言
=====【引用ここから】=====
「委員会単位で視察に赴いたのだから、委員会として一つの報告書を作成する(だから随行者が作成して良い)」
というのが建前なのだろう。この運用例は多く見受けられるものであるが、違和感が残る。
なぜなら、法律上、派遣を決定するのは「委員会」だが、派遣されて実際に視察に行くのは「委員」だからだ。「委員会」が調査・審査を行うため、「委員会」が「委員」を視察に派遣するのだから、各「委員」が視察内容や所感をまとめて視察報告書を「委員会」へ提出すべきではなかろうか。視察の段取りや交通・宿泊の手配、現地での連絡調整、サポートは随行者がするとしても、派遣された「委員」が報告書を作成しないでどうするのか。

=====【引用ここまで】=====

この点から東京都議会の運用状況を見てみると・・・うーん、残念。委員長1人の報告書となっている。例えば、

○都市整備委員会 管外視察報告 | 東京都議会
=====【引用ここから】=====
平成27年5月28日(木曜日)から5月29日(金曜日)
委員長 島田幸成(民主党)

平成27年度末に予定されている、北海道新幹線の新青森駅から新函館北斗駅までの一部開業まで、残すところ1年を切りました。
 現在、沿線となる自治体では、官民一体となり、北海道新幹線の開業に向けた取組が行われています。
 そこで、今回、都市整備委員会では、所管事業のうち、北海道新幹線の開業に関連したまちづくりや、交通ネットワークの整備などを中心に調査を行うため、北海道木古内町及び函館市への視察を実施いたしました。

  ~~~(中略)~~~
こうして得た成果を、今後の委員会活動を通して都政へと役立ててまいります。
=====【引用ここまで】=====

この視察報告は委員長名で作成されている。一緒に行ったであろう各委員が実際に何を見て、何を感じ、何を学び取ったかを読み取ることはできない。この程度の報告書の内容を知るために、委員14人と担当書記の旅費を税金から支出する必要性があるだろうか。ファーストクラスがどうとかの議論の前に、14人+αがぞろぞろと行くことそれ自体が無駄である。

この報告書の内容程度なら、委員の中から1人派遣するとか、担当書記や知事部局の職員を1人派遣するとかして、その1人にレポートをまとめさせて、後日これを基に委員会内で勉強会をして、情報共有を図ればそれで十分だ。

東京都議会HPで委員会速記録を見てみたが、視察の前に委員会で
「今、東京都の何が問題か?視察のテーマとして何がふさわしいか?テーマに沿った事例や事業をやっている自治体はどこか?」
といった視察先を検討した形跡はない。
また、視察後に
「視察先のこうした点は失敗だろうから、東京都としては実施を避けた方が良さそうだ」
「こうした点は参考にして都政に取り入れよう」
といった、視察を振り返る議論をした形跡もない。ただただ、上記の委員長名の報告書がHPにアップされているだけである。

今のご時勢、ホームページである程度のことは調べられるし、パンフレットや資料を請求すればある程度のことは分かる。また、事前に委員会内で議論をして、質問項目をまとめた質問書を相手先に送り、それで得られた回答で事足りれば、視察側と受入れ側双方の旅費、人件費、時間を省くことができる。それでも現地を直接見なければ分からないことがあれば、その時初めて「1人を視察に派遣すること」を正当化できる。

冒頭で引用した都議のおときた氏は、リオ五輪への視察の中止、縮小を訴えるなど、かなりの良識派だ。
しかし、

○これも自粛?!都議会の国内視察が全部中止になったのは、さすがに意味がわからない件 | 東京都議会議員 おときた駿 公式サイト
=====【引用ここから】=====
ここで国内視察を早々に自粛するくらいなら、
夏に大勢(28名!)で予定されているリオ五輪への都議会視察も、当然に中止・縮小が検討されるべきだと思います。そうしないと、筋が通らないですから。
多額の出張経費疑惑などでイメージの悪い「議員視察」ですが、しっかりと行えば都政に反映できることも多い重要な議員活動の一つです。

=====【引用ここまで】=====

と、国内視察を重要視している。この点、身内に甘いというか、生ぬるい感は否めない。

都議会議員を個別に見れば、事前に自分で現地の概要を調べ、都の現状と視察先の現状をある程度比較し、質問事項を考えてから視察先へ行き、東京へ戻ってから都政に反映させるための方策を考える人もいるかもしれない。しかし、毎年やっている委員会視察で、参加した委員全員がこれをやっているとはとても思えない。

毎年、視察のための予算が計上される。
そこで委員達が、
「今年もそろそろ視察の行き先を決めようか」
「予算を流したらもったいないからね」
「担当書記の方で、良さそうな所を適当にピックアップしといて」
なんてゆるーいやりとりの中で、視察先を決めていないだろうか。

上で引用した都市整備委員会を例に考えると、最初に新幹線が整備され、JRや地下鉄、バスなど交通網が日本で最も充実している首都・東京の都議会議員が、これから新幹線が開通し交通ネットワークを整備し始める北海道の木古内町を見て、何を勉強しようというのだろうか。公共交通というキーワードだけで無理やり関連付けて視察先に挙げ、予算消化しようとしているようにしか思えない。


仮に、である。

仮に、委員会が視察テーマを十分に吟味し、テーマに沿って視察先を選定し、視察先の概要を調べ、現地で何を質問すべきか挙げ、事前準備をしていた、としよう。その上で、個々の議員が視察を「しっかりと行えば」、重要な議員活動と言えるだろう。

しかし、個々の議員が「しっかりと」行っているかどうかを住民側が評価するためには、

・視察の行程、宿泊先、領収書添付の上での費用の詳細な公開
・(委員会単位、会派単位でなく)議員個人ごとの視察報告書の公開

が不可欠。残念ながら、今の都議会HPで公開されている情報内容では、おときた氏が言うような「しっかりとした視察」をしているかどうかを評価することができない。そして、リオ五輪の都議会視察の一連の流れを見ている限り、「しっかりとした視察」をしているとは思えない。

東京都議会では、熊本の震災に配慮して4月、5月の委員会視察を中止したそうな。これを機に、都議会の情報公開のあり方が向上するまで、中止し続けてはどうだろうか。

毎年、慣例として行っている委員会視察は廃止すべき。
その上で、どうしても視察したいテーマがあるなら、その年度だけ、補正予算として予算要求してはどうか。