若年寄の遺言

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使途不明金における処分の相場

2017年07月22日 | 地方議会・地方政治
地方公共団体の職員が不正会計処理をして使途不明金を出した場合、どうなるか。
いくつか例を見てみよう。

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○川越市
 使途不明金額:11,737,460円
 業務:青少年健全育成協会
 時期:平成18年に発覚(7年間経理担当)
 横領:本人認める
 調査方法:議会100条委員会(処分後の調査)
 処分内容:懲戒免職

○常陸太田市
 使途不明金額:1,236,290円
 業務:スポーツ少年団本部と駅伝競走大会
 時期:平成25年
 横領:認定
 処分内容:本人は懲戒免職 上司や元上司は減給や訓告 市長等も減給

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使途不明額の多寡や態様にもよるだろうが、横領があったと認定された場合は一発で懲戒免職となる例が多い。
次に、本人が「横領していない」と主張している場合はどうなるか。

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○角田市
 使途不明金額:約2400万円
 業務:互助会の貸付金事務
 時期:7年間(1990年~96年)
 横領:本人は否定
 調査方法:市が本人から聴き取り(計12回)
 処分内容:本人は懲戒免職 上司や関係職員は減給や戒告 市長等も減給

○京田辺市
 使途不明金額:42万円あまり
 業務:野外活動センターにおける使用料等の金銭授受
 時期:平成27年
 横領:自費で購入した備品の対価の支払いなどに充てていたと主張
 調査方法:調査人(弁護士1名及び公認会計士2名)
 処分内容:本人は懲戒免職 上司は減給や戒告

○立川市
 使途不明金額:約157万円
 業務:市職員共済会の預かり金
 時期:2005年~2008年
 横領:本人は私的流用を否定。業務上横領は不起訴処分
 調査方法:市が設置した弁護士らによる調査委員会
 処分内容:懲戒免職
 → 私的流用の立証不十分として、公平委員会により停職6ヶ月に修正

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本人が私的流用をしていないと主張しても、上記のように懲戒免職となっている例が多い。
一方、立川市の例では「私的流用の立証不十分」として懲戒免職から停職となっている。この懲戒処分の種類については、地方公務員法第29条の中で、軽い方から

戒告 → 減給 → 停職 → 免職

と定められている。この中で、公平委員会が停職を選択した背景には、
「私的流用の立証が不十分だから免職は重すぎるけど、不正な会計処理が公務の信用を失墜させた点を考慮して6か月の停職が相当」
という心証があるのだろう。
このように、不正会計による使途不明金について、横領が重大な犯罪行為であることから免職とするか、又は、横領を立証できなくとも不正な会計処理が公務の信用を貶めた点を重視して停職とすることが多いようだ。そんな中で、次の例は異彩を放っている。

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○行橋市
 使途不明金額:約570万円
 業務:ビーチバレーボールフェスタ実行委員会
 時期:2015年
 横領:本人は着服を否定
 調査方法:内部調査のみ
 処分内容:文書訓告

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他市の例と比べても遜色ない使途不明金額。
弁護士等を入れた外部調査もない。
停職や減給、戒告を通り越し、法律上の懲戒処分ではない文書訓告。
この結論を出した市長の判断を、どう評価すべきだろうか。この市の信用が元々、失墜するほど高くは無かったということなのだろうか。


※以下、記事や資料を抜粋

市職員の公金横領事件の解明等に関する調査特別委員会(平成19年2月23日審査終了)
======【引用ここから】======
本事件は平成18年5月、市が全額出資する財団法人川越市青少年健全育成協会(以下「協会」という。)の平成17年度決算監査において、協会監事の指摘により11,737,460円の使途不明金が発覚した。
当時、協会経理を担当していた元市職員小暮 浩(以下「元市職員」という。)は、5月20日に着服の事実を認め、6月5日に12,222,519円を返還した。
しかしながら、警察への被害届や告訴はすぐには行わず、本人の処分も事件発覚から2ヶ月以上が経過した7月28日に懲戒免職処分が行われた。

======【引用ここまで】======

公金の横領及び文書偽造をした常陸太田市教育委員会職員に対する市の処分について
======【引用ここから】======
3.処分内容
(1)当事者 教育委員会スポーツ振興課 主任 小園井 崇洋(32歳)
地方公務員法第29条第1項第1号,第2号及び第3号の規定に基づく免職処分
(2)管理監督者
当該職員の上司3名と元上司1名に対し,次のように処分を行いました。
①教育委員会教育次長(58歳)
地方公務員法第29条第1項第2号の規定に基づく給料月額の10分の1を2月減給
②教育委員会スポーツ振興課長(55歳)
地方公務員法第29条第1項第1号及び第2号の規定に基づく給料月額の10分の1を3月減給
③教育委員会スポーツ振興課主査兼スポーツ振興係長(55歳)
地方公務員法第29条第1項第1号及び第2号の規定に基づく給料月額の10分の1を3月減給
④前教育委員会スポーツ振興課長(59歳)
訓告

4.特別職の給料減額措置
職員の不祥事に対する管理監督責任と市民に対する謝罪並びに社会的信用の回復に資することを目的に市長,副市長,教育長の給料の減額措置を行います。
(1)市 長 給料月額の10分の1を1月減額
(2)副市長 給料月額の10分の1を1月減額
(3)教育長 給料月額の10分の1を1月減額
※いずれも平成26年2月支払い分を減額します。

5.処分理由等
(1)事案の概要
①公金の横領について
教育委員会スポーツ振興課主任小園井崇洋は,平成25 年6 月12 日から平成25 年12 上旬までの期間に,業務を担当しているスポーツ少年団本部と駅伝競走大会の資金の中から複数回にわたって横領した。その金額は使途不明金を含め合計1,236,290 円となる。

======【引用ここまで】======

女性職員を懲戒免職 互助会使途不明金/角田市/08.11.27河北 - 地方議会関係の記事 - Yahoo!ブログ
======【引用ここから】======
角田市、女性職員を懲戒免職 互助会使途不明金
 宮城県角田市職員互助会の使途不明金問題で、市は26日、不適正な会計処理を繰り返したとして、以前、互助会担当をしていた市民福祉部の50代女性職員を25日付で懲戒免職にしたと発表した。
 市によると、この職員は1990―96年度の7年間にわたり会員(市職員)に対する貸付金の事務処理を担当。この間、台帳上は貸付金が返済されたことになっているのに、通帳に入金しないなど不適正な事務処理が238件あり、約2400万円の欠損金が発生したという。欠損金は約2900万円としていたが、今回は、書類上確認できた分を発表した。
 市は今年3月から、職員に対し計12回の聞き取り調査を実施。本人は当初「自分に責任がある」と話していたが、不正については一貫して否定したという。市は「職員は『思い出せない』などと繰り返して説明責任を果たしていない。市民の信頼を損ねた」として処分を決めた。
 市は今後、民事訴訟を起こし、約2900万円の返還請求をする方針。
 一方、女性職員は河北新報社の取材に対し「簿記に慣れておらず間違いはあったかもしれないが、着服など不正は絶対にしていない」と話した。また「毎年監査も受けていたのに、何年もたってから一方的に責任を問われて本当に悔しい」と訴えた。県の人事委員会に対し、近く懲戒処分を不服として審査の申し立てを行うという。
 市は監督責任や問題への対応が不適切だったとして、当時の上司や問題発覚後の関係職員ら8人を減給や戒告の懲戒処分に、7人を訓告処分にした。大友喜助市長と小野隆男副市長は減給10分の1(2カ月)とした。

======【引用ここまで】======

不適切会計 市職員を懲戒免職。京都府京田辺市 - 消費者保護。東日本大震災・津波避難・福島原発。子供安全。冤罪。警察不祥事。労働者権利。相川哲弥ブログ
======【引用ここから】======
懲戒免職になったのは、京田辺市が運営する課外活動のための施設「京田辺市野外活動センター」の元所長の52歳の男性職員です。
京田辺市によりますと、この職員は、所長を務めていた去年の4月から10月にかけて、本来は市に納めるべき施設の利用料を金庫に放置していたということです。
事態を把握した市が調べたところ、このうち、42万円あまりが使途不明金のままなくなっていたということです。

------(中略)------
市の調査に対して、男性職員は、施設の指導員らが自費で購入した備品の対価の支払いなどに充てていたと話しているということです。
======【引用ここまで】======

京田辺市野外活動センター(京田辺市大住竜王谷9-1)における不適切な会計処理等に係る職員の処分について
======【引用ここから】======
平成27年11月、本市教育委員会が所管する野外活動センターにおける使用料等の金銭授受に関し、不明な点が発見され、教育委員会事務局において調査を行ったところ、本市会計規則に基づかない処理が行われていたことが判明したが、不明な点も残された。
平成28年1月に、本市顧問弁護士の「外部の第三者の専門家による調査をすることが良い」との意見から調査人(弁護士1名及び公認会計士2名)に調査を依頼することとなった。(平成28年2月25日)
平成28年8月12日付けで、調査報告書の提出を受け、施設使用料の入金遅滞とその抜き取り、施設使用料に係る帳票の抜き取りとデータの改ざん並びに不正な宿直の命令及び宿直手当の支給により、使途不明金を発生させるなどの行為が確認され、また、これらの行為は公金の取扱いに関する諸規定に違反しており、これら地方自治の根幹とも言える法令に違反したことは、市民の公務に寄せる信頼を大きく裏切り、公務員としての信用を著しく失墜させる極めて悪質な行為であるばかりか、全体の奉仕者たる地方公務員の根本に関わるあるまじき非違行為であることから、断じて許されるべきものではないと判断し、地方公務員法第29条第1項各号(法令違反、職務義務違反、非行)に該当するため、平成28年8月22日、京田辺市職員懲戒審議会に諮問した。
平成28年8月29日、京田辺市職員懲戒審議会の答申を受け、今回処分を講ずるものである。

------(中略)------
4.処分内容
(1)当事者 教育総務室 統括主幹(前野外活動センター所長)(52歳)
懲戒免職(地方公務員法第29条第1項各号)
(2)管理監督者
①社会教育・スポーツ推進課長(52歳)
減給 給料の10分の1 1月(地方公務員法第29条第1項第2号)
②前教育部副部長(現会計管理者)(59歳)
戒告(地方公務員法第29条第1項第2号)
③教育部長(54歳)
戒告(地方公務員法第29条第1項第2号)
④出納室担当課長(52歳)
訓戒(懲戒処分でない)
⑤前会計管理者(60歳)
なし(既定年退職)

======【引用ここまで】======

立川市共済会不明金:157万円私的流用、会計担当元主任を懲戒免 /東京|サイレンススズカのブログ
======【引用ここから】======
 立川市職員共済会の使途不明金問題で、市は20日、会計担当だった行政管理部人事課付、上野耕一主任(45)が少なくとも157万5630円を私的流用したとして同日付で懲戒免職処分としたと発表した。上野元主任は市の調査委員会に対し「不明金は自分の会計処理の不手際で生じたことは認めるが、私的流用はしていない」と説明しているという。
 同市は問題発覚後、弁護士などによる調査委員会を設置。報告書によると、上野元主任は05年12月~08年3月、行政管理部人事課に在籍し、育児休業中の職員から納入を代行するために預かった社会保険料や職員のレクリエーション会費などを管理。この間の不明金は616万2605円に上り、そのうち少なくとも157万5630円を私的流用したとしている。

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【東京】停職処分に修正を 使途不明金で立川市職員免職
======【引用ここから】======
立川市は二日、市職員共済会の使途不明金問題で三年前に懲戒免職処分とした四十代の 元市職員男性について、都市公平委員会が処分を停職六月に修正すべきだと判定したと発表した。
同委員会は元職員からの不服申し立てを受けて審査していた。判定書は十一月二十八日付。
この問題では、職員からの預かり金に約六百十六万円の使途不明金が発生。市が設置した弁護士らによる調査委員会は、元職員が口座から引き出した後に使途不明となったものなど約百五十七万円を私的流用と認定。二〇一一年五月二十日付で懲戒免職とした。
市と市職員共済会は一一年に元職員を業務上横領容疑で告訴・告発したが、一三年に地検立川支部が不起訴処分としている。
都市公平委員会は、動機や領得の意思などが具体的に証明されず「私的流用」の立証が不十分だと指摘した。

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ビーチバレー運営費使途不明:行橋市、審議開始へ 文教厚生委「決算書作り直しを」 /福岡 - 毎日新聞
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 行橋市や日本ビーチバレーボール連盟などでつくる実行委員会が主催し、現在の市スポーツイベント課が事務局の「ビーチバレーボールフェスタ」の2015年度運営費で約570万円の使途不明金があった問題で、市議会・文教厚生委員会(工藤政宏委員長、7人)が6日開かれ、事実確認のため必要な資料の提出を市側に求めることを決めた。6月定例市議会で調査特別委員会の設置案が賛成少数で否決され、同課を所管する文教厚生委で審議されることになった。
 この問題は、市が例年約660万円を補助しているフェスタの運営費約1300万円のうち、市の文書規定で最低5年の保存が決まっている支出命令書などのない使途不明金が、15年5月~16年2月に計56件569万1767円あったという内容。運営費の預金口座から1回で最高80万円が引き出されていたり、本来は作らないキャッシュカードが存在したりするなどしたが、当時からの担当職員は「着服はない」と主張。市は内部調査の結果として「約570万円は全て支払われているのを確認し、着服はなかった」として6月2日、不適正処理に関し担当職員を文書訓告にした。

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