若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

民意に支持された市長と言えども、法の下にある ~阿久根市騒動~

2010年04月10日 | 政治
阿久根市で、2009年4月16日に市長命令で人件費の張り紙が掲示された。
4月17日に不信任決議が可決され、市長が失職。
その後ある職員がすべての張り紙を剥がし、
4月19日に総務課長の机の上に重ねて置いた。
5月末の市長選で竹原氏が再選。
7月末に張り紙を剥がした職員を懲戒免職処分とした。


さてここで、
「市長が失職して部外者となったのだから、張り紙を剥がして問題があるのか。」
という意見が多数見られたので、これに簡単に回答。


2009/04/21付 西日本新聞朝刊
 人件費を記した張り紙は竹原前市長が、職員の人件費の高さをアピールする狙いで16日に庁内の17部署ごとに掲示。紙は、翌日の竹原前市長失職後にはがされたとみられ、19日には、市長職務代理者の松永庄司総務課長の机の上に大半が重ねられていたという。
 松永課長は「市長の命令は失職しても生きており、再掲示は当然。撤去するかどうかは次の市長が判断すること」と話し、20日の課長会では今後、職員が張り紙を撤去した場合、処分の対象になると注意したという。


Q.問題あるの?無いの?

A.ある

・・・ということになる。

市長は、行政を運営するために様々な指示・命令を出す。公金の取り扱いや、業者の選考、契約方法、文書の受付や取扱方法など、法律や条例の規定の解釈や運用方法を示したり補ったりする形で膨大な数の指示・命令を出している。市長が出した命令は、その任期が終わって別の人が市長になっても、変更・撤回されるまで効力を持つ。

もし、市長が替わる度に前市長が出した命令が無効になるとすると、選挙の度に様々な解釈・運用を全部定め直す必要が出てくることになる。これでは行政は回らない。

阿久根市の場合、在任中に出された「張り紙で職員の人件費を掲示するように」という命令は、市長が失職しても効力を持つ。これは、後に市長の職にある者が撤回するまでは効力を持つ。命令を出した市長が失職中であっても、張り紙を剥がせば命令違反として処分の対象となる。

失職した前市長が任期中に命じて掲示させた張り紙と、単なるおっさんが役所の壁に貼ったチラシとでは、雲泥の差があるということだ。


さて。

懲戒処分には、軽いほうから戒告・減給・停職・免職がある。また、懲戒処分より軽いものとして、文書や口頭による注意を内規で定めている場合もある。今回の張り紙剥がしの件に関して、阿久根市の賞罰委員会は「内規による文書訓告が相当」とし、私は以前に「3カ月・30%の減給が落とし所ではないか」と書いた。

○一番重い懲戒免職 vs かなり軽い文書訓告 - 若年寄の遺言

いずれにせよ、竹原市長が示した懲戒免職という処分が、張り紙剥がしという命令違反に対して重すぎるのではないかという考えだ。これについて、鹿児島地裁も同じように判断したようだ。

阿久根市職員の懲戒免職取り消し 鹿児島地裁
 鹿児島県阿久根市で、竹原信一市長(51)が庁舎内に張り出させた職員給与総額を書いた紙をはがして懲戒免職とされた職員の男性(45)が、処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、鹿児島地裁は9日、請求を認めた。
 判決理由で牧賢二裁判長は、張り紙をはがした職員の行為について「それほど重大で悪質とはいえない」と指摘。「懲戒免職は極めて重い処分で、社会観念上著しく妥当性を欠く。裁量権を乱用したもので、違法と認めるのが相当だ」と述べた。



裁量権の乱用ということは、
「何らかの処分をすることは出来るが、その処分が重すぎると違法」
ということだ。
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ジミンガ―Z  ~あなた、本物の長妻大臣ですか?~

2010年04月08日 | 政治
平成22年3月31日衆議院・厚生労働委員会棚橋議員
あなた、本物の長妻大臣ですか?



前半の話題は、子ども手当の外国人への支給要件。

法律の話とは、日常ではなく、非日常、レアケース、限界事例を取り扱うものだと私は思う。特定の限界事例において既存の法律を適用したときに、妥当な結論を得られるかどうかが解釈論の腕の見せ所であろうし、レアケースに対しても対処できるよう予め規定を設けておくのが立法のプロというものだろう。

そういう意味で、長妻厚生労働大臣は「立法府の中の人」としては三流だ。
法律の話をしていて、

「○○というケースが起きた場合はどうしますか。この法案の条文を適用すると手当が支給され、税金垂れ流しになると思われますが」

という問いに対し、

「○○というケースは一般的にあまり起きるとは考えにくいので~」

という答えを繰り返す様は、無能というか、無様というか。
「ミスター年金」なんて持て囃されていた頃の精彩は、全くない。

この法律は穴だらけ。なんせ、所管大臣が穴を指摘されて立ち往生するんだから。スーダンに滞在したことがあってヌビア語で手紙の書ける人は、20人分の子ども手当を貰うチャンスww



さてさて。

派遣事業法に関する部分をテキスト起こし。
(動画の43:50あたりから)

自民党 棚橋衆議院議員(棚)
「派遣事業法の改正についてお伺いします。私どもは、一生懸命働きながら、不安定な立場にある派遣で働いている方々の立場を守っていかなければならない。これは、その方々のためだけではなく、日本社会全体のためでもある、という風に理解をしております。しかし、今般、政府から提出されます派遣事業法の改正で、本当に派遣で働いている方々は、正社員になれるのでしょうか。なれるとしたら、この法改正で一体どれだけの方が正社員に増えるのか。まずどれだけの方が正社員になれるのかというシミュレーション、人数を大雑把で結構ですからその点と、なぜそれが言えるのか、シミュレーションの大雑把な構成、これをお答えください。通告はしてあります。」

長妻厚生労働大臣(長)
「まあこの派遣法の改正につきましてはですね、これまでいきすぎた労働の規制緩和が行われたというようなことがございましたので、えー登録派遣の禁止、そして製造業派遣の原則禁止というような対応をさせていただき、派遣派遣労働者のですねーこの仕事のー権利、これを確保していくということでございます。その措置をすることによって規制の対象となる派遣労働者の数は44万人になるという風に考えておりますけれども、その方々がですね何人が正社員に移行するか否かというのは我々は試算をしておりませんけれども、ま出来る限り多くの方がですね、正社員となるということで、まこれ以外の正社員化を促進する政策と組み合わせてですね、こういう方々に正社員化の道を進めていきたいという風に考えております。」


「法案を出すにあたって、その程度のシミュレーションもしていないんですか。逆に、この法が出ることによって、全くこの法律の目的とは逆に、派遣で働いていた方がまさに派遣切りに遭うような可能性はないんですか。せっかく派遣で働いている方々を守ろうと、その点は一緒ですが、この法律では逆効果になりませんか。今こういう点をきちんとシミュレーションしてやるのがあなたがたの仕事じゃないんですか。もう一度、その点ご答弁ください。」


「まずですね、労働のこのこういう規制緩和をして、ま私はほんとに行きすぎた規制緩和をした自民党に、まあほんとに大きな責任があって、その後にですね、それをきちっとやっぱり対応するということで我々こういう派遣の方に対するですね、法案を検討しているということでございまして、まず反省というのをしていただきたいという風にも思います。その中でですね、この正社員化に対応される、何人の方がですね、雇用されるかどうかというのは、その時々の景気、雇用情勢にもよるためですね、我々としては正確な予測というのはしていないところであります。」

(自民党からヤジが入り、委員長が「静粛に」と注意)


「あのまず委員長にご注意申し上げます。委員長、委員長にご注意申し上げます。民主党の議員からヤジが出た時は静粛にと言わずに、自民党議員だけ注意するのは不公平じゃありませんか。中立公正にお願いいたします。3月12日の子ども手当の強行採決といい、とても中立公正な委員長の態度とは思えません。そこでもう一度長妻大臣に申し上げますが、その自民が自民がというの、もうそろそろ卒業したらどうですか。その上で私が今、厚生労働大臣であるあなたに聞きたいのは、派遣で働いている方々の立場を強くして社会全体として守る、その上で経済を活性化しなきゃいけないんでしょ。この法律で、かえって彼らの立場、あるいは彼らの仕事を失うようなことになりませんか。中小企業がもうやっていけなくて海外にいってしまう、廃業する、こういうことになりませんか。当たり前ですが政治は結果を出すのが仕事なんですよ。それなのに、とりあえず自民党の規制緩和に対して我々は守る法律を出しましたからこれで良いんですということじゃなくて、守ると言いながら守ってないのが鳩山政権じゃないですか命を。どうかその点もう一度どういうシミュレーションでこの法律を出せば、どれだけの方が派遣社員から正社員になれて、一方で中小零細企業を中心にきちんと経済活動がやれるのか、お答えください。」


「まあこれについてはですね、えー、まず、この登録型派遣の原則禁止、製造業派遣の原則禁止というのは公布の日から3年以内の政令で定める日ということでございまして、まその間にですね、まいろいろとま我々も現状を見て、正社員化する政策、雇用政策もございますので、それを十分働かせてですね、派遣の方が失業にならないように、あるいは直接雇用になるようにですね、転換をしていきたいという風に考えております。」




憲法学の話で、

「経済的自由の積極目的規制は、精神的自由の規制と比べて、緩やかな違憲審査基準が妥当する」

という結論を導くために、

「福祉主義の実現や社会経済の発展のための積極目的規制については、専門的技術的判断を要し、裁判所の判断に馴染まない。そうした能力を持つ内閣・国会の政策的判断を裁判所は尊重すべきだ」

という説明がなされることがある。

ところが、だ。

内閣も国会も、社会経済情勢の予測、シミュレーションをふまえた上での正確な政策的判断をする能力を持っていない。その時々の雇用情勢、景気を予測することなんてできないし、一定の予測に基づいて政府が動いたら、市場はその政府の動きを織り込んで変化し、政府の予測とは違う結果をもたらすことになる。予測した上で動こうという意図があればマシな方だ。民主党のように、何のシミュレーションも無しに、ただ思いつきと前政権批判で政策を立てる無能集団であっても、与党となり、内閣を組織することができる。

裁判所が国会・内閣の判断を尊重し、政府による経済的自由への規制を大目に見ようとする根拠は、実際のところ存在しない。

社会経済情勢を判断する能力なんて、裁判所も国会も内閣も五十歩百歩。福祉主義・行政国家化を推し進めることによって、市場の失敗を是正できるなんて妄想だ。そんな能力を備えた機関は存在しない。能力の無い者に、金と権限を与えてはならない。統治機構に社会経済情勢を判断して真っ当な政策を継続する能力はない。だからこそ、個人の自由は大事なのだ。それが精神的自由であれ、経済的自由であれ。

そんな無能集団の中の人・長妻厚生労働大臣の答弁は、ちょっと恐ろしい。

『登録型派遣、製造業派遣を禁止したら、44万人は今の働く場を失う。その後、何人が正社員になるかどうかなんて分かるわけがないだろう。でもこの法律は引っ込めない。正社員化するための政策は、今は白紙状態。あとから考える。』

・・・恐いわぁ~。

しかも、追いつめられると、
「自民が~、自民が~」
って、無責任にもほどがある。登録型派遣、製造業派遣の禁止は民主党の政策なんだから、その結果は他党に押し付けることなく、自分達でしっかりと引き受けてほしい。政権与党として。
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