阿久根市で、2009年4月16日に市長命令で人件費の張り紙が掲示された。
4月17日に不信任決議が可決され、市長が失職。
その後ある職員がすべての張り紙を剥がし、
4月19日に総務課長の机の上に重ねて置いた。
5月末の市長選で竹原氏が再選。
7月末に張り紙を剥がした職員を懲戒免職処分とした。
さてここで、
「市長が失職して部外者となったのだから、張り紙を剥がして問題があるのか。」
という意見が多数見られたので、これに簡単に回答。
2009/04/21付 西日本新聞朝刊
人件費を記した張り紙は竹原前市長が、職員の人件費の高さをアピールする狙いで16日に庁内の17部署ごとに掲示。紙は、翌日の竹原前市長失職後にはがされたとみられ、19日には、市長職務代理者の松永庄司総務課長の机の上に大半が重ねられていたという。
松永課長は「市長の命令は失職しても生きており、再掲示は当然。撤去するかどうかは次の市長が判断すること」と話し、20日の課長会では今後、職員が張り紙を撤去した場合、処分の対象になると注意したという。
Q.問題あるの?無いの?
A.ある
・・・ということになる。
市長は、行政を運営するために様々な指示・命令を出す。公金の取り扱いや、業者の選考、契約方法、文書の受付や取扱方法など、法律や条例の規定の解釈や運用方法を示したり補ったりする形で膨大な数の指示・命令を出している。市長が出した命令は、その任期が終わって別の人が市長になっても、変更・撤回されるまで効力を持つ。
もし、市長が替わる度に前市長が出した命令が無効になるとすると、選挙の度に様々な解釈・運用を全部定め直す必要が出てくることになる。これでは行政は回らない。
阿久根市の場合、在任中に出された「張り紙で職員の人件費を掲示するように」という命令は、市長が失職しても効力を持つ。これは、後に市長の職にある者が撤回するまでは効力を持つ。命令を出した市長が失職中であっても、張り紙を剥がせば命令違反として処分の対象となる。
失職した前市長が任期中に命じて掲示させた張り紙と、単なるおっさんが役所の壁に貼ったチラシとでは、雲泥の差があるということだ。
さて。
懲戒処分には、軽いほうから戒告・減給・停職・免職がある。また、懲戒処分より軽いものとして、文書や口頭による注意を内規で定めている場合もある。今回の張り紙剥がしの件に関して、阿久根市の賞罰委員会は「内規による文書訓告が相当」とし、私は以前に「3カ月・30%の減給が落とし所ではないか」と書いた。
○一番重い懲戒免職 vs かなり軽い文書訓告 - 若年寄の遺言
いずれにせよ、竹原市長が示した懲戒免職という処分が、張り紙剥がしという命令違反に対して重すぎるのではないかという考えだ。これについて、鹿児島地裁も同じように判断したようだ。
阿久根市職員の懲戒免職取り消し 鹿児島地裁
鹿児島県阿久根市で、竹原信一市長(51)が庁舎内に張り出させた職員給与総額を書いた紙をはがして懲戒免職とされた職員の男性(45)が、処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、鹿児島地裁は9日、請求を認めた。
判決理由で牧賢二裁判長は、張り紙をはがした職員の行為について「それほど重大で悪質とはいえない」と指摘。「懲戒免職は極めて重い処分で、社会観念上著しく妥当性を欠く。裁量権を乱用したもので、違法と認めるのが相当だ」と述べた。
裁量権の乱用ということは、
「何らかの処分をすることは出来るが、その処分が重すぎると違法」
ということだ。
4月17日に不信任決議が可決され、市長が失職。
その後ある職員がすべての張り紙を剥がし、
4月19日に総務課長の机の上に重ねて置いた。
5月末の市長選で竹原氏が再選。
7月末に張り紙を剥がした職員を懲戒免職処分とした。
さてここで、
「市長が失職して部外者となったのだから、張り紙を剥がして問題があるのか。」
という意見が多数見られたので、これに簡単に回答。
2009/04/21付 西日本新聞朝刊
人件費を記した張り紙は竹原前市長が、職員の人件費の高さをアピールする狙いで16日に庁内の17部署ごとに掲示。紙は、翌日の竹原前市長失職後にはがされたとみられ、19日には、市長職務代理者の松永庄司総務課長の机の上に大半が重ねられていたという。
松永課長は「市長の命令は失職しても生きており、再掲示は当然。撤去するかどうかは次の市長が判断すること」と話し、20日の課長会では今後、職員が張り紙を撤去した場合、処分の対象になると注意したという。
Q.問題あるの?無いの?
A.ある
・・・ということになる。
市長は、行政を運営するために様々な指示・命令を出す。公金の取り扱いや、業者の選考、契約方法、文書の受付や取扱方法など、法律や条例の規定の解釈や運用方法を示したり補ったりする形で膨大な数の指示・命令を出している。市長が出した命令は、その任期が終わって別の人が市長になっても、変更・撤回されるまで効力を持つ。
もし、市長が替わる度に前市長が出した命令が無効になるとすると、選挙の度に様々な解釈・運用を全部定め直す必要が出てくることになる。これでは行政は回らない。
阿久根市の場合、在任中に出された「張り紙で職員の人件費を掲示するように」という命令は、市長が失職しても効力を持つ。これは、後に市長の職にある者が撤回するまでは効力を持つ。命令を出した市長が失職中であっても、張り紙を剥がせば命令違反として処分の対象となる。
失職した前市長が任期中に命じて掲示させた張り紙と、単なるおっさんが役所の壁に貼ったチラシとでは、雲泥の差があるということだ。
さて。
懲戒処分には、軽いほうから戒告・減給・停職・免職がある。また、懲戒処分より軽いものとして、文書や口頭による注意を内規で定めている場合もある。今回の張り紙剥がしの件に関して、阿久根市の賞罰委員会は「内規による文書訓告が相当」とし、私は以前に「3カ月・30%の減給が落とし所ではないか」と書いた。
○一番重い懲戒免職 vs かなり軽い文書訓告 - 若年寄の遺言
いずれにせよ、竹原市長が示した懲戒免職という処分が、張り紙剥がしという命令違反に対して重すぎるのではないかという考えだ。これについて、鹿児島地裁も同じように判断したようだ。
阿久根市職員の懲戒免職取り消し 鹿児島地裁
鹿児島県阿久根市で、竹原信一市長(51)が庁舎内に張り出させた職員給与総額を書いた紙をはがして懲戒免職とされた職員の男性(45)が、処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、鹿児島地裁は9日、請求を認めた。
判決理由で牧賢二裁判長は、張り紙をはがした職員の行為について「それほど重大で悪質とはいえない」と指摘。「懲戒免職は極めて重い処分で、社会観念上著しく妥当性を欠く。裁量権を乱用したもので、違法と認めるのが相当だ」と述べた。
裁量権の乱用ということは、
「何らかの処分をすることは出来るが、その処分が重すぎると違法」
ということだ。