若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

相乗り僅差による歳出増大の懸念 ~ 行橋市長選挙後 雑感 ~

2018年02月26日 | 地方議会・地方政治
前回エントリで行橋市長選前の感想を掲載していたが、この選挙結果が出た。

行橋市長選挙2018の開票結果速報|立候補者の予想情勢は岡田か田中が当確か
======【引用ここから】======
今回の行橋市長選の立候補者はいずれも無所属で、元市議の新人藤木巧一氏(70)=共産支持、元県議の新人岡田博利氏(70)、再選を目指す現職田中純氏(71)=自民、民進推薦=の3名です。
-----(中略)-----
投票率   45.74%
得票数  氏名
10371  藤木 巧一
6216  岡田 博利
10462  【当選】田中 純

======【引用ここまで】======

この市では、新図書館建設に反対する側から市長に対し

・市議会への請願
・住民投票条例案の市議会への提案
・市長選

と、都合3度にわたって挑んだことになる。
いずれも反対派は敗北。
図書館反対派の藤木・岡田両氏の得票数を足すと約16,000票。
市議会への請願署名数が約16,000筆とほぼ同じ。
そんな単純なものではないが、この票割れが反対派敗北を導いた要因だろう。

行橋市は、新図書館建設に向かって進んでいく。
全国的な人口減少の中で施設の維持管理費を増やす路線が確定したわけだが・・・もう知ーらないっと。どうにでもなれ。

【歳出圧力に耐えられない市政の到来】


選挙後にタラレバを言ってもしょうがないのだか、

もし次点の新人が勝っていたら、図書館建設は白紙撤回され公共施設の維持管理費は抑制されたはずだ(その代わり、福祉予算がブクブク膨らんだ可能性は高いが)。

あるいは、もし現職が大差で当選していれば、市長個人の意向を反映し、
「やりたいこと」
「やりたくないこと」
の on / off がハッキリした行政運営が行われたことだろう。
公共施設はじめ歳出は増えるが、したくない分野への支出は抑えられたはずだ。
(勝って欲しくなかったが、勝つなら大差で勝って欲しかった。)

ところが現実は、91票差である。
この僅差での現職勝利に、ある種の絶望感を覚えた。

行橋市長選 田中氏が再選 「新図書館」への批判かわす 毎日新聞2018年2月26日
======【引用ここから】======
自民、民進の他、市区長連合会や市職労など約70団体の推薦も得て、基盤を固めた。昨秋の衆院選に出馬した元経産官僚の支援を通じて仲を深めた麻生太郎副首相の2度の来援を受け、中央とのパイプも強調。
======【引用ここまで】======

現職が圧倒的有利な状況においては、政党や選挙区内の団体がこぞって推薦や支持を表明するというのは首長選挙でよく見られる光景である。
いわゆる勝ち馬への相乗りというやつである。

支援を受ける団体が増えれば増えるほど、当選後に団体から首長への頼み事が増える。
タダで支援をする団体はそう居ない。みんな代償を求めている。
民主制とは合法的な買収により代表者を決めるシステムである。

団体A「うちが取り組んでる分野にピンポイントで、補助事業を設けておくれよ」
市長「いや、それはちょっと・・・」
団体A「いやいや、やってくれなきゃ困るよ。選挙で推薦したでしょ」
市長「じゃあ、一応検討はしてみますが・・」

といったやりとりが増えるわけだ。
ただ、選挙の結果が大差での勝利ならば、

団体A「うちが取り組んでる分野にピンポイントで、補助事業を設けておくれよ」
市長「いや、それはちょっと・・・」
団体A「うちから推薦貰っておきながら断るのか!」
市長「ええぃ、無理なものは無理だ。それに、あんたの推薦が無くても当選できたよ!」

と、いざとなれば要求を跳ね除けることができる(いざとなれば、だが)。
大差であれば、市長の強いイニシアチブが発揮できる。

ところが、現実は91票差である。

団体A「うちが取り組んでる分野にピンポイントで、補助事業を設けておくれよ」
市長「いや、それはちょっと・・・」
団体A「あんたねぇ、うちの推薦が無ければどうなったか分かってる?」
市長「うぐぅ・・・分かっています、何とかします」

という場面が増えることだろう。
行政に対する団体からの「くれくれ」が通りやすくなった。
歳出拡大への圧力が非常に高くなったのである。
民主制の負の側面が、これから大きく露呈する。

高齢化で社会保障経費は有無を言わさずに上がる。
新図書館を建てて維持管理費が増える。
加えて、「相乗りにも関わらず僅差の勝利」なので各種団体への配慮から歳出圧力に逆らえない。

さぁて、どうなることやら。

【保守・革新の2色塗り分けは適切か】


行橋市長選挙2018の開票結果速報|立候補者の予想情勢は岡田か田中が当確か
======【引用ここから】======
また、以下は前回(2014年2月23日執行)の行橋市長選挙の開票結果となります。
投票率は有権者数58,384人に対して51.26%でした。
-----(中略)-----
前回2014年の市長選。
田中氏はまだ県議任期中でしたが、自民党と公明党の推薦を得て8度目の戦いに挑みます。

======【引用ここまで】======

前回(2014年)の市長選では、自公推薦ということで保守色が強かった。
今回(2018年)はどうか。

行橋市長選 田中氏が再選 「新図書館」への批判かわす 毎日新聞2018年2月26日
======【引用ここから】======
自民、民進の他、市区長連合会や市職労など約70団体の推薦も得て、基盤を固めた。
======【引用ここまで】======

ということで、民進党(まだあったの?)や市職労といった革新色の強い組織からも推薦を受けている相乗り状態。
何度も言うようだが僅差での当選であり、今まで以上に各団体への配慮が必要になる。

そう、二期目の田中市政は単純な保守色ではない。玉虫色である。
保守か革新かという二項対立は、今回の選挙結果の分析には馴染まないのではないか…というのが私の感想だ。
麻生太郎の意向があり、武田良太の意向があり、共産党の思惑があり、自治労の思惑があり、堀という変節漢の企みがあり、市議会議員達のそれぞれの狙いがあり、自治会の老人達がゴソゴソ蠢き、商店街は過去の栄光に縋り・・・


あぁ、書いてたら嫌になってきた。

民間と行政のすみ分け ~ 行橋市長選挙 前哨戦雑感 ~

2018年02月16日 | 地方議会・地方政治
行橋市長選挙が近づいてきた。

行橋市長田中純 市政報告会

という催し(市政報告なのに、県議10分、国会議員10分、副総理7分、そして市長3分という謎イベント)があった翌日、ポストに、この

行橋市長田中純 市政報告会

を知らせる同じチラシが3部突っ込まれていた。

「随分と乱暴な運動員だなぁ」
と思いながら読んでいたが、その中で疑問が生じたので紹介していこう。

【民間と行政のすみ分け】


======【引用ここから】======
先人たちの意志を引継ぎ行橋駅を中心とした街づくり最終ステージへ『行橋駅東側の再開発!』

平成元年にスタートした行橋駅西側の区画整理事業や下水道事業が完了し、行橋駅西側はマンション用地としての需要が高まっています!また行橋駅高架事業の目的は長年にわたり行橋市を東西に隔ててきた日豊本線を高架鉄道にすることで一つにつなげることでありました!
この先人たちの政策が実を結び、全国で人口減少が叫ばれている中で、今行橋市は人口が増えている全国でも数少ない地方自治体なのです!
そしてこの先人たちの想いを受け継ぎ京築地域の中心都市として継続可能な都市を目指すため私たちは行橋駅を中心とした中心市街地活性化の最終ステージである行橋駅東側の再開発に着手しなければなりません!

======【引用ここまで】======

行政がやっている事業は、大きく分けて二つある。

「行政にしか出来ないこと(民間では難しい分野)」
と、
「民間が得意とすること」

である。
このうち、
「行政にしか出来ないこと(民間では難しい分野)」
の代表例として道路整備が挙げられる。

もし道路が私有されていれば、道路の所有者は通行料金を徴収し、これを原資に道路の改良や新設を行うだろう。しかし、現状では道路の私有があまり進んでいないことから、誰も進んで私費を投じて道路整備をしようとしない。結果として不便な状態が放置されてしまう。そこで、行政が税金から費用を捻出して工事を行うことで、利便性を向上させるという方法が採られている。

・分断されている道路をつなげる
・渋滞している道路を拡幅する
・慢性的に渋滞している道路を迂回するバイパス道路を通す
・利用頻度が高い砂利道を舗装する
・既存道路の破損を修復する

こうして不便な状態を便利な状態にすることで、ガソリン代の節約、時間の節約、労力の節約といった形で、通行人の効用が増加する。
このとき、

「 効用 > 費用 」

であれば、その道路工事は有用なものと評価できる。
(効用の計算方法とか、そもそも主観的な効用を集計できるのかといった疑問は残るものの)
ミクロ経済学、厚生経済学の観点からはこのような説明になるだろう。

上記チラシで挙げられた区画整理事業や下水道事業、行橋駅高架化やこれに伴う道路整備は、
「行政にしか出来ないこと(民間では難しい分野)」
といえる。これらの事業を実施した結果、行橋駅西側ではマンションの建設が進み、人口減少に歯止めがかかっている。こうした点を大きく評価すれば、これらの事業は概ね

「 効用 > 費用 」

の関係が成立していると見ることができる。

でも、これは過去の話。
現在の人口微増傾向は、現在の市長の政治手腕ではなく、過去の公共事業の果実に過ぎない。

では、現在の市長が実施を予定している図書館等複合施設建設はどうだろうか。

【民間が得意とすること】


交通網、治水、下水道といった

「行政にしか出来ないこと(民間では難しい分野)」

とは異なり、特定の土地に何を建て、どのような営業をすれば繁盛するかは、

「民間が得意とすること」

に属するものであり、市場におけるプレーヤーたる個人・民間法人に任せた方がはるかに効率的である。

ここに空き地がある、とする。この土地でどういう事業を展開したら、幾らの投資で幾らのリターンが生じるか、もし自腹であれば必死に考えるところだ。

立地条件を考え、対象となりうる顧客層の分析をし、収益を計算し、
スポーツジムが向いているのか、
書店が向いているのか、
パチンコ店が向いているのか、
飲食店が向いているのか、
単価が低めのものか高めのものがいいのか、
100万円で簡易な囲いとカキ小屋を作るのが良いか1億円投資してステーキハウスを始める方が良いのか・・・etc

しかし、行政は違う。

======【引用ここから】======
図書館等複合施設には子ども達の『あそび場』ができます!

行橋市では図書館等複合施設の建設/維持・管理/運営をPFI方式で推進しています!
PFIとは、公共施設の建設、維持管理、運営などを民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用する手法です!PFIでは民間の経営ノウハウや技術能力を活用することで、質の高い公共サービスの提供をすることができます。
本事業では鹿島建設と図書館流通センターを核とする特定目的会社「行橋イノベーション」と契約を結び、その提案の中には屋内施設、「ボーネルンドあそびのせかい」で全国で展開をしているあの『ボーネルンド』の提案がありした!

======【引用ここまで】======

この図書館等複合施設を建てることで、どのくらいの人口増を見込んでいるのか?
商店街の往来がどのくらい増えるのか?
商店街の各店舗の売り上げがどのくらい伸びるのか?
住民税・法人税等はどのくらい増えるのか?
そしてその効果が「30億円の整備費」+「年1億4千万円の運営費」に見合ったものなのか?

行橋市がこうした検討を行った形跡が、チラシからもホームページからも読み取れない。
これでは、この事業が成功だったのか失敗だったのかという事後の検証すら難しい。

そもそも、行政はこうした投資を行う主体として適していない。

合意により形成される市場価格には、需要と供給(さらには人件費の動向、原材料の過不足、人々の志向といった無数の情報)が反映しているのだが、行政は強制的な税徴収と分配を主な任務としているため、価格メカニズムとは疎遠である。行政の性質上、価格を通してニーズを把握するのは困難だ。

民間であれば
「成果が出ていない」
「失敗だった」
「このままじゃ会社が傾く」
として撤退するような事業であっても、行政は税収のある限り惰性で事業を継続できてしまう。だから、民間が実施可能な分野に行政は乗り出すべきではないのだ。市有地が空いているなら、そこに市が何かを建てて運営するのではなく、その土地を民間に売却するのがベストである。

※ ちなみに、この事業では国から「文化教育施設整備」という名目で補助金を貰って用地を購入しているため、建てられるのはこれに限定される。ここが全ての出発点になってしまっている。この市長は新施設建設を商店街活性化の起爆剤にしたいらしいが、そもそも「文化教育施設」という国補助の枠内しか選択肢がない。
比較的広い道路に面していて無料駐車場のある図書館が既に存在するのに、補助金の呪縛にかかり、一方通行の隘路と川に囲まれた土地に敢えて図書館を新設しようとしている。住民の効用は下がると考えるのが自然だろう(だって不便だもの)。

※ ちなみに、チラシの中に
民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用
民間の経営ノウハウや技術能力を活用することで、質の高い公共サービスの提供
との記述があるが、この市長は民間の経営ノウハウを活用できるタイプの人物ではない。何せこの市長、民間の美術館をわざわざ公営にするという愚挙をやってのけたのだから。

【社会保障費増+運営費増に財政が耐えられるか】


チラシには、財政面に関する記述もあった。

======【引用ここから】======
行橋市の類似公共施設との比較

       図書館等複合施設 コスメイト行橋 ウィズゆくはし
・建設年度   平成30年~   平成2年    平成7年
・施設整備費  約25億円    約22億円   約19億円
・用地補償費  約5億円     約3千万円   約3億円
・整備費合計  約30億円    約23億円   約22億円

運営費について

運営費については15年間で21億5千万円かかる見込みですが、これを年間に換算すると約1億4千万円になります。現在の図書館の運営費が7千万円要していますので、7千万円の増額となりますが、今回整備する施設には、これまで足りていなかった学習・読書スペースを増加し、さらに小規模交流空間や託児機能、カフェを併設した施設となり、より利便性の向上した施設となります。

======【引用ここまで】======

えええっ、図書館の毎年の運営費が、7千万円から1億4千万円で2倍になるの!?
高ーい!!!

公共施設に民間で実施可能な内容を盛り込ませ、わざわざ従来の2倍の運営費を税金で賄おうというのは無駄である。民間で実施できる内容を公共施設で実施するというのは、類似のサービスを提供している企業からすれば「民業圧迫」である。

======【引用ここから】======
建設事業費について

図書館を考える議員連盟が、55億円の図書館を建てると言っていますが、実際には、施設整備費約25億円、用地補償費約5億円、開館準備費約3億円、15年間の運営費約21億5千万円になっています。左表の行橋市の類似公共施設との比較を見ればわかるとおり、コスメイト行橋、ウィズゆくはしについても相当な費用がかかっていますが、これらを建てたからと言って、財政破綻はしていません。必要な財源については、国からの補助金もきちんといただきながら、財政試算を行っていますので、この施設を建設したからと言って財政破綻をすることはありません。

======【引用ここまで】======

整備費には国から補助金が付くが、運営費は市の単独負担である。既存公共施設の運営費に加え、図書館等複合施設の運営費が上乗せされることになる。

少子高齢化が進む中、全国的に問題視されているのは公共施設の運営費なのだ。

行橋市では人口が増えているとは言え、現役世代だけが増えたわけではなく、少子高齢化は解消されていない。高齢化が進めば医療費・介護費は増える。全国の例に漏れず、行橋市でも医療費・介護費は順調に増えている。国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療の各特別会計について、就任前の平成25年度決算と就任後の平成28年度決算を比べると、支出が約20億円増えている。

特別会計の財源は、国・県・市の負担金と、利用者の保険料で成り立っている。特別会計の支出増加に伴い、市の負担金も億単位で増えている。そして、制度の大まかな枠組みが変わらなければ、これからも右肩上がりで増え続ける。

社会保障制度の枠組みは国が全国一律で定めているので、市町村レベルではどうしようも無い。

だからこそ全国各地の自治体は、支所の廃止や類似施設の集約を行い、維持費を抑制しようと躍起になっている。
「既存の施設やインフラの維持すらままならない」
という危機感を多くの自治体が共有する中、この市長は新規施設を建てて年1億4千万円の運営費を上乗せしようとしている。危機感が完全に欠如している。

もし、今回の図書館等複合施設建設に伴い、チラシで紹介している類似2施設の集約・一本化を謳い、2施設を解体して跡地を民間へ売却するのであれば、私もそこまで反対はしない。だが、そうしたことはどこにも書いていない。多分、既存施設も何らかの形で残り、新施設と共に維持費を垂れ流し続けるのだろう。

「民間が得意とすること」
にわざわざ行政が乗り出して安易な事業決定を行い、社会保障費増加の真っ最中に公共施設の運営費を増やし、財政を圧迫していけば、いずれ
「行政にしか出来ないこと(民間では難しい分野)」
での事業に影響が出てくる。事業によっては規模縮小・中止・延期になるだろう。これでは本末転倒である。

※ ちなみに、チラシでも言及している下水道分野は
「行政にしか出来ないこと(民間では難しい分野)」
の一つと考えられるが、平成28年度の下水道普及率は福岡県平均が81.0%に対し、行橋市は23.5%と大きく遅れている。

【ふるさと納税はどこまでアテになるか】


======【引用ここから】======
出ていくお金(支出)だけでなく入ってくるお金(収入)について!
田中市長はお金を使うだけではなく、お金を増やしてます!

ふるさと納税について

ふるさと納税とは、個人が納めている住民税の内およそ2割を目安に自分のふるさとや応援したい自治体へ寄附することで、年間の合計寄附額のうち2,000円を超える部分について、税の控除を受けることができます。寄附する際には、自治体によって寄附金の「使い道」が指定でき、各地域の魅力的なお礼の品をもらえます。

行橋市のふるさと納税制度の経過

H20年 ふるさと納税制度開始とともに、行橋市でも実施
   (返礼品:いちじくジャム/なたね油など)
H26年 田中市長就任後返礼品リニューアルを実施
   (返礼品:牡蠣/桃/渡り蟹など)
H28年 返礼品を追加
   (返礼品:肉/お菓子/おせち料理などを追加)

29年度は約8億円の収入がありました!
田中市政になり財政健全化!4年連続黒字決算

======【引用ここまで】======

この
「約8億円の収入」
を、額面通りに受け取ることはできない。

昨年、総務省から全国の自治体に対し
「ふるさと納税の返礼率は3割までとするように」
というお達しがあり、ニュースになった。

さてここで、行橋市の返礼率が仮にお達しの通り3割だとすると、8億円の収入のうち、2億4千万円は出品業者に支払われることになる。市に残るのは5億6千万円。
この5億6千万円から、
「この市の住民が他市町村にふるさと納税をした結果、住民税が減少した分」
を差し引いて、どれくらいがプラスとして残るだろうか。

また、ふるさと納税については、主に東京などから
「都市部の自治体は税収が減る」
と苦情が出ている。ふるさと納税の規模が大きくなると、全体としては所得税と住民税が減っていく。いつまた見直しが入るかは分からない。
公共施設の運営費は毎年確実に発生する性質のものだが、ふるさと納税は施設運営費の財源とするには不安定過ぎる。

もし、今までのふるさと納税のプラス分を全額積み立てているのであれば、
「この貯金が○○億円あるから、建設費も毎年の運営費の支払いも大丈夫!」
と言えるだろうが、これはアテにならない。
なんせ、ふるさと納税は寄附者が寄附金の使い道を指定できる制度なのだ。
大半は使ってしまい、消えていることだろう。

【ふるさと納税の道徳的問題】


チラシを読んでいてい、ふと気になった。
返礼品が、
「いちじく → 牡蠣 → 肉」
と変遷している。
そこでこの市のふるさと納税のサイトを見てみると、
宮崎県産の牛肉、佐賀県産の干物、ドンペリ・・・etc
そう、市の特産品から、単に市内の小売店が取り扱っている他県・他国の生産品にまで拡大しているのだ。これを無節操と呼ばずして何と呼んだら良いのだろう。

「高額納税者なら、2,000円払えば商品もらえてしかもキャッシュバック!」

という悪制度に便乗し、地元特産品の販促の枠を超え、特定の小売店が取り扱うあらゆるジャンルの商品に補助金を交付してダンピングし、億単位で国や他自治体の税収を削っている。
必要な財源については、国からの補助金もきちんといただ」いてる分際で、8億円分の国税と他団体の地方税を削ったことを誇らしげに語るのは、背信的行為ではないか。国や都会の住民からすればこれほど迷惑な存在は無いだろう。
公正取引委員会は、大企業の経営に口出しするのではなく、こうした悪質な自治体を取り締まってはどうか。