「カンフースタントマン 龍虎武師」
原題:龍虎武師/KUNGFU STUNTMEN
2021年 香港/中国 91分
■監督:
魏君子(ウェイ・ジェンツー)
■出演:
洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
袁和平(ユエン・ウーピン)
甄子丹(ドニー・イェン)
錢嘉樂(チン・カーロッ)
火星(マース)
元華(ユン・ワー)
徐克(ツイ・ハーク)
元德(ユン・タク)
劉偉強(アンドリュー・ラウ)
曾志偉(エリック・ツァン)
程小東(チン・シウトン)
梁小龍(ブルース・リャン)
劉家榮(ラウ・カーウィン)
董瑋(トン・ワイ)
袁祥仁(ユエン・チョンヤン)
徐小明(ツイ・シウミン)
吳思遠(ウー・スーユエン)
唐季禮(スタンリー・トン)
熊欣欣(ホン・ヤンヤン)
鍾發(チュン・ファト)
元秋(ユン・チウ)
李海生(リー・ホイサン)
魚頭雲(ユエ・タウワン)
●あらすじ
世界に衝撃を与えた香港アクション映画の歴史に迫るドキュメンタリー。
ブルース・リーをはじめとしたアクションスターたちの活躍と彼らの攻撃を受け、
時に代役を務めたスタントマンの激闘、そして香港映画の光と闇を映し出す。
(TSUTAYA DISCASより)
★感想など
これずっと観たかった作品なんだけど、実際観てみたら
想像の1,000倍は素晴らしい映画だった!
元々香港映画と言えばスタントと言うくらい、世界的に有名だったが
そのスタントを洪金寶(サモ・ハン・キンポー)を軸にして時系列で構成したその作りが最高だった。
かつて香港には4つの京劇を教える学校があった。
から始まり、それぞれの学校の有名出身者たちが次々と子供時代に体験した京劇学院での生活を振り返る。
そして李小龍(ブルース・リー)の登場と功績に触れる。
と言うより、子供の頃京劇習ってたけど京劇に未来は無かった。どうしよう。
そこにブルース・リー登場。香港映画の在り様を大きく変えてしまった。スタントマン万々歳。
と言う流れが最高に格好良すぎる。
しかしブルース・リーが急逝すると、その後2年間は香港で功夫映画は作られなくなった。
この証言を梁小龍(ブルース・リャン)もするところが素晴らしいね。
このスタントマンとしての仕事が無い2年間は、ジャッキーも両親がいるオーストラリアに帰っていたくらい。
だがその後オレと劉家良(ラウ・カーリョン)の二人が香港映画界に功夫映画を蘇えさせたぜとか
自身のヒット作である「少林寺怒りの鉄拳」でコメディ功夫を流行らせたのもオレ。
ジャッキーの「スネーキーモンキー/蛇拳」はその後。オレを真似たかは知らないけどね。
と胸を張って証言する、サモ・ハンが最高過ぎる!
この後も、火星(マース)、鍾發(チュン・ファト)、魚頭雲(ユエ・タウワン)等、1980年代前半に
良く活躍していた彼らの証言も楽しい。
そして「プロジェクトA」の時計塔から落ちるシーンで、ジャッキーが怖くて落ちれないから
最初に落ちて見せたのはマースだったとか、「サイクロンZ」のクライマックスでベニー・ユキーデに周し蹴りするのは
映画上ではジャッキーなんだけど、これがスタント丸わかりで、そのスタント・ダブルをやった
錢嘉樂(チン・カーロッ)が出てくる辺りから、どんどんと香港スタント世界の狂気に触れていく。
ここからは「省港旗兵・九龍の獅子/クーロンズ・ソルジャー」で、7階の高さからスケートリンクに背中から落ちるスタントとか
「ファースト・ミッション」で工事現場のビル7階から、爆破と共に落ちるスタントとか
他にも命が幾つあっても足りないスタント・シーンが目白押しで出てくる。
だが真に恐ろしいのは、当時スタントをやっていた人達。基本的にはみんな50代以上だろうが
本作に出てくる人たちは皆口を揃えて、当時を肯定しているところ。
「運が悪かったらもう3回は死んでたよ」とか「下半身不随になった仲間はいる」とかのエピソードを
みな笑顔で語り合うのだ。
だがそれを今の常識で否定してはいけない。
1970年代の香港と言う国の情勢や、国民の事情。
それらを加味してスタントしかできない・だから命を懸けるのだ。
と正に命がけで映画を作っていた彼ら。
そしてその情熱によって作られた映画を、心から楽しんでいた世界中の観客たち。
もうあの頃の香港映画のような危険な映画は作られないかも知れないが
あおの危険で熱すぎるくらい熱くて最高に楽しかった香港映画を観ていた時の気持ちを蘇えさせてくれる映画。
そんな作品だ本作は。