イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

ねじの皆伝

2009-07-21 00:02:47 | 昼ドラマ

先日来のSAPPORO焙煎生ビール、ここのところ湿気っぽく雨っぽく気温も低く、あんまり夏らしくない、ビール向きでない気候が続いているのですが、昨日は土用丑の日。むしろ暑くないのを天の配剤と受け取っていまのうちに精をつけときましょうよってんで、乾杯しちゃいましたよ。

お味は…焙煎麦芽使用ってことで、通常の淡色ピルスナータイプのビールと黒ビールの中間ぐらいの風味を想像していた月河は、微量拍子抜けチックな軽さでした。もうちょっと香りが強いかなと思っていたのでね。1992年リリース当時“焙煎”を愛好していたという非高齢家族も「こんなんだったかなぁ」「“いま風”に軽くしてあるんじゃないか」とか半信半疑でしたね。

「よく冷えて、グラスも冷えてれば何でもいい」派の高齢組も含め、「せっかく復刻して期間限定、コンビニ限定(←通販や安売り専門店でまとめ買いできない)で売るなら、も少しいい意味での“クセ”があってもよかったね」という結論。まぁ非高齢家族にしても、92年当時とは味覚も嗜好も変わっているかもしれませんしね。月河本人は、SAPPORO CLASSICと遜色ない“ビールらしさ”だと思うけど、“それ以上でもそれ以下でもない”感じ。

このラベルで一番の魅力は、気持ち柑橘味を帯びた琥珀色の色でしょうね。ワインってほど気取った場面ではないけど、特別な日だから“自分をおもてなし”したい…ってときにぴったりのお色です。

さて、『夏の秘密』は第8週に入り本日(20日)36話。夜景が増えると、やはりアナログVTR録画では、特に人物の表情がさっぱりわかりませんね。今日はまるっと劇中花火大会。白眉の紀保(山田麻衣子さん)と伊織(瀬川亮さん)の橋上・橋下遭遇シーンはもちろん、龍一(内浦純一さん)と紀保の車中シーンなどもやはり無理。居間の地デジHDD録画を早くDVDに移さないと。

室内の照明で鮮明に見えたシーンなら、柴山工作所の親父さん(江藤漢斉さん)の最期がよかったですね。

麻痺の残る身体を、「二人で行って来い、オレはここ(=作業場)がいい」と本人に勧められたとは言えフキ(小橋めぐみさん)と伊織が残して行ったこともやはり若干の責があるけれど、そのフキが「飲まないでよ」とせっかく釘を刺して行った御神酒に気を取られて、ネジ型を取り落としたことが結局は最後の発作の引き金になったのだから、医者に止められても懲りないお酒好きの自業自得とも言える。

拾ったネジ型を握りしめ“最期まで職人”な死に様に号泣する伊織が哀しい。車椅子でもやはり花火を見せに連れ出していればよかったと、フキとともに後悔が残るかも。

でもたぶん、先に逝った奥さんが、花火とともに迎えに来た、それだけのことだと思います。娘2人にはフキ、セリと素朴な野草の名をつけたけれど、親父さんにとっては“牡丹”のような奥さんだったのでしょうね。

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掘ったイモいじるな

2009-07-20 00:24:05 | 朝ドラマ

昨年から何となく高齢家族に牽引されて『瞳』と『だんだん』を飛び飛びながら最終話まで追尾、いま『つばさ』を観ているわけですが、『つばさ』だからというわけじゃないけれど、なぜNHKには“昼帯ドラマ”という枠がないのかなと残念に思うことがあります。

先日から何度か言及している『ザ・テレビ欄 19751990』(テレビ欄研究会/編・著)で見ると、7080年代を通じて“銀河テレビ小説”という20分の月~金帯枠が2140~もしくは2200~にあり、これを翌日(金曜放送分は翌週月曜)の午後、1305~に再放送していて、ちょうどTBS系とフジテレビ系の昼帯の裏にあたっていますが、本来夜に視聴してもらうために製作したものを昼に再放送するのと、最初から“昼専用”に作ったものとではずいぶん味わいも違ったはず。

しかも再放送するに事欠いて時間帯もわざわざ他2局のドラマ枠と正面衝突する1300台にせんでも、せめて1400台にでもと思うのですが、民放の昼用ドラマとは絶対に客層がかぶらないという磐石の自信がNHKにはあったということなのか、そもそもNHKには視聴率≒広告料収入という思考がありませんから、そのへんの事情はわかりません。

とりあえず月河がTV視聴可能な環境と年代になった昭和40年代以降、どうもNHKが“平日昼帯向けのドラマソフト”に参入した痕跡が見つからないのです。

 昨年の『瞳』より前の朝ドラ作品については、月河は視聴経験がほとんどないので何とも言えないのですが、いま『つばさ』で展開されている世界、朝よりもむしろ昼向きじゃないかなと思うことがあります。

たとえば、小学校の社会科教室にあるような川越の町をかたどったパノラマで“夜”や“気象”の表現をしたり、つばさ(多部未華子さん)が思い悩んだり迷ったりするとラジオの男(イッセー尾形さん)が現われて、つばさの内なる自問自答を対話形式にしてくれたり、ときどきつばさのいない場面でも現われて状況を総括したり…といった童話的な話法は、廃止されたTBS系の“愛の劇場”や“ドラマ30”の大家族もの、にぎやか職場・家業ものなどのファンだった人たちなら、いま朝観て「こんなドタバタ、はちゃめちゃ、NHK朝にあり得ないよ」と鼻白んでいる“従来型”朝ドラファンよりは好意的に受け入れてくれるような気がします。

…とは言え、当日1245~には再放送があるわけだから実質昼帯ドラマと同じと言えば言えるし、BS なら夜1930~にも再放送、朝745~には先行放送もある。もちろん土曜930~には16話分のおさらいもある。

しかもいまは録画機器が普及していて、朝枠用のドラマだから“朝の客”、昼枠用のそれだから“昼の客”しか視聴しない、客に取れないというわけではまったくなくなっている。現に月河も、フジ系の昼帯ドラマを実質“深夜帯ドラマ”にしてもっぱら再生視聴している現状。

“この枠なら高視聴率枠だから製作予算がでかく、ギャラの高い人気大物俳優起用やロケセットともに豪華ハイテク撮影が可能”という以外には、もう時間帯のくくりの意味はほとんど無いのかもしれません。

…でも、なんとなく惜しいと思うのです。NHKでありながら『つばさ』を企画し製作したスタッフのセンスに“昼帯”というステージを与えたら、もっとユニークで活気ある、新鮮なものが作れるのではないかなと。『つばさ』の“(NHK朝ドラとしての)あり得なさ”をネガティヴ一方にとらえる意見を読み聞くたびに、心の中でもったいないお化けが出ます。こんなにおもしろいのに、朝なばっかりに好感持たない向きが多いとしたら、本当にもったいないよ。

…但し、昼にやるなら『つばさ』とか『瞳』『こころ』『さくら』式に、ヒロイン役名にシンボリックな意味を持たせて、それをタイトルにして事足れりみたいな、いかにも大学出のPがひねり出しました的な発想じゃ、客はついて来ないでしょうね。もっとベタにしないと。『こちらラジぽて808(ハチマルパー)』とか。『甘玉さいたま恋の味』とか(…激没)。

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I.M.O.

2009-07-19 01:06:45 | 朝ドラマ

いやあ、『夏の秘密』とは違う意味でNHK『つばさ』も盛り上がってますな。13日(月)~からの週はほとんど観られなかったので、今日(18日)のBS2おさらいを観ましたが、あれは金曜日放送分になるのかな?1030過ぎに、つばさ(多部未華子さん)、増水にのみ込まれるか!というピンチに真瀬(宅間孝行さん)が「いもぉ~~~!!」と叫んで駆けつけてきたときには思いがけず“特撮系”の“燃え”を覚えちゃいましたよ。

あのままヒロインが海の藻屑ならぬ“川越の芋屑”になっちゃったらドラマが悲しみのうちに終わってしまうので、翔太(小柳友さん)が怪我で動けないとしたら、必ず誰か援軍が来るはず、来るとしたら真瀬だろうなと、待って見守るような流れになっていましたから、来たこと自体は「遅せえよ!」ぐらいだったんですけど、画面フレームへの入り方がねぇ。中山の第四コーナーかモナコGPかってぐらいの勢いで、右下角から逆“つ”の字形に入りましたからね。“つばさ”の“つ”って意味かな。それはないか。とにかく普段あんまり全速力で疾走する機会のない、軟弱な中年都会人デスクワーカーが一瞬熱くなりました!って感じで結構好きなシーンでしたね。

 土曜放送分では、亡妻の旧友みちる(山本未来さん)の告白を振り切る口実も混じっていたかもしれないけれど、「オレは玉木つばさを愛してる」まで言って、しかもみちるの機転(意地悪?)でカフが上がっていたため、ブース外に来ていたつばさ本人に聞かれちゃいましたよ。どうする真瀬。いまさら引けないぞ。

一方、ホームレスになってた親父(永島敏行さん)を、水没する小屋から必死の救出したばっかりに膝を痛めてつばさを助けられず、みすみす目の前で大事な彼女が自分以外の、それも中年の男にマウスtoマウス…という屈辱を味わった翔太は、Jリーガーとしての今後にも暗雲が立ちこめそうで気の毒ではありますが、考えてみればドラマの浅い段階でJリーグ入団テストに合格して順風満帆一方ってのも現実的でないし、ドラマとしても安直過ぎる。宮崎に行きっきりで、つばさとの電話やメール交換だけの出演、川越近郊で試合があるときだけ顔出しじゃキャラとして薄すぎるでしょう。

一度どん底を見て、つばさを支えにそこから這い上がって夢に手を(足か?)かける、翔太自身の物語に期待したいですね。昼ドラの場合、“ヒロイン相手役男性は問題ありか、普通に腰抜け”が通例ですが、朝だしね。ヒロインと歩調合わせる勢いではばたく、さわやかな相手役もたまには見たい。せっかくつばさ=翼と好一対の、“”太という役名をもらっているのだし。

んじゃ真瀬の“つばさ愛”はどうなるかというと、まだ2ヶ月半あることだし、めぐりめぐって“翔太とともに発展途上の空路を行くつばさを、地上から温かく見守る”という位置に落ち着くのではないでしょうか。つばさハタチ、設定としては真瀬は30代半ばか、“親子ほど年が離れている”とまではいかないけれど、兄貴というには年かさ過ぎる、そういうおじさんに惹かれる時期が、すべてではないけど或るタイプの女の子にはあるものですが、このドラマはそのおじさんのほうが先に「愛してる」言っちゃった。

しかも、“渋い”とか“知的”とか、“落ち着いた”“頼り甲斐のある”、もしくは“財力がある”といった、おじさん属性のうちでハタチ前後の女の子に好感されそうな要素とことごとく対極にある真瀬ですからね。ここらが、“あり得ない朝ドラ”たる『つばさ』らしいと思う。

個人的には、つばさが真瀬とともに周波数を探して、アンテナ持って歩き回る場面が“ワンダーランドの入口探検”のようで大好きだったので、真瀬にもつばさと良いムードになるチャンスを一度はあげてほしい。溺れかけを救出じゃ、誰だって目いっぱい抱きつくに決まっているんだから、ちょっとフェアじゃない、と言うか、ロマンチックが足りないじゃないですか。

でも、めぐりめぐって真瀬がつばさ争奪戦に敗退したら、せっかく心を開きかけている優花ちゃん(畠山彩奈さん)の「つばさ、ゆうかのおかあさんになって」という願いが叶えられないのがね。優花ちゃんはつばさを母親視しているというより、父親の真瀬がつばさに気持ちがあるのを子供独特の勘で察して「おかあさん」発言しているんだと思う。幼い子の、親を見つめる視線には怖いくらいの洞察力、情報集積解読力があって、“親が誰と仲がいいか、誰を信頼しているか、誰と険悪で、誰に遠慮し、誰を恨んでいるか”をものすごく的確に見抜いている。お姑さんが意地悪で年中嫁をいびっているような家では、子供はいくらお菓子や玩具を買ってくれても、お祖母ちゃんにはなつきません。

それとも優花ちゃん、先々週『婦系図』の稽古するパパとつばさを見て早呑み込みしちゃったかな。お母さんがほしい気持ちはわかるけれど、みちるではつばさの代わりになりそうにないなあ。「千波(=真瀬の亡妻、みちるの旧友)を紹介する前から、真瀬のことずっと好きだったよ」なんて後出しじゃんけんみたいにコクる女って、月河、お薦めできないよ。

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ときめき☆お洗濯

2009-07-18 01:28:42 | CM

昼帯ドラマの恒例CM群、ふと気がつくと「これ見て好感覚える人がどこかにいるのか?」と首をかしげるシロモノに出会うことがあります。

P&G“ボールド香り長続きジェル”のCM、昼間の路線バスに乗った細身のイケメン若手サラリーマンが、最奥座席窓際に座った真っ白なブラウスの美しい女性を見かけ隣席に腰かけると、女性のブラウスからかぐわしいフローラルの香りが…ついうっとりして、青空バックの洗濯物の前で女性とさし向かい見つめあうファンタジーにひたって、「ワタシこの香りだーいしゅき」の声に思わず「…ボクも!」と唱和してしまい、我に返ると女性の背後から幼い女の子が顔を覗かせ、子連れのママだった美しい女性は微笑んでいる…というストーリー。

同じ停留所で下車後、女の子と手をつなぎ白ブラウスママが立ち去る背後で、イケメンリーマンくんがうっとりの余韻を引きずりつつ見送っている場面で終わるのですが、どうにもなんかムズガユイCMです。

白ブラウスママはいまだ妖精的な雰囲気の大塚寧々さん、リーマンくんはいまや石を投げれば当たるぐらいにTV界にあふれている若手イケメンの中でも“清潔感&知的担当”の平岡祐太さんが扮し、子役の女の子のはにかむ表情もそこそこ可愛いし、絵ヅラ的には何も不快な箇所はなくきれいにまとまっているんですが。

どうも“子連れママであることが、香り(と女性本人の美しさ)にうっとりした、その後から判明する”というところにムズガユサの原因がありそう。家庭用洗濯洗剤の客は圧倒的に女性、特に主婦なので、「ボールドで洗うと、白さと香りで若いイケメンくんもいちコロですよ」とでもアピールしたいのかな。そんなインチキに引っかかってボールドを選ぶ主婦がどんだけいると踏んでるのか知りませんが、子供を“後出し”するこたぁないだろうと。

基本に“美しい女性でも、ブラウスからいい香りがしても、パッと見あらかじめ子連れとわかったらイケメンうっとりしないだろう”という失礼きわまりない先入観がありはしないか。

いや、それ以前に“子持ちでも、若いイケメンにうっとりされたら、思わずニカッとしてしまう、近頃の子持ちオンナってそういうもんさ”という、これまた侮蔑に満ちた値踏みがありはしないか。

…なんか、ヒネクレて読もうとすればいくらでもヒネクレられるCMなんだな。「女の子1人だからうっとり見送ったけど、両手に連れて背中にもおぶって都合3人だったら、イケメン背向けて歩き出すんじゃないか」とか。少なくとも、いま未婚で結婚願望の女性ならともかく、かりに月河が幼い子供を、特に2人以上抱えて髪振り乱して育てている主婦だったら、えらく人をコケにしたCMに感じると思います。

いや、花嫁予備軍の未婚組でも、“通りすがりの、夫以外の男性にうっとり見つめられて嬉しげ”というところにもやもやを覚えるかもしれない。

何でもかんでも若イケメン出しときゃ女性客が釣れると思ったら大間違いだよ、というのがムズガユサの主成分かも。こういう“家事ずぶずぶ”の商品のCMって、ずぶずぶのまんま提示したらうんざりされるだけだし、甘美にきれいにくるんで見せたら見せたで斯くの如くムズガユくなるし、実際難しいですね。若い人たちが“結婚”とりわけ“子作り子育て”から腰が引けていくのが少しわかる気がする。特に女性にとっては、結婚イコール家事ずぶずぶですからね。

まぁ、ヒネクレ読み回路を断ち切って、「祐太くんカッコいい、萌え~」とアタマ空っぽにしてやり過ごすのがいちばんいいのかもしれない。近頃のCM、この手の“アタマ空っぽ推奨”がやたら目立つのは気になりますけど。

『夏の秘密』は第35話、7週を終了しました。俳優さんたちの役読み込みが深まってきたこともあり、観ていて釘付けになったり「うんうん、こう来たら、この人物ならそうなるよね」と思わず頷いたりの演技がそこここに観られて嬉しい限り。

街金の違法取り立てが龍一(内浦純一さん)の手腕で収束、ご近所さんからの祝福に「これからも伊織さんと2人で頑張ります」といつの間にか夫婦気取りのフキ(小橋めぐみさん)、祭りの夜の捨て身の裸求愛は玉砕したけど、“一緒に苦境を乗り越えた”という彼女なりの実感がエクスキューズになって、哀しくも滑稽な勘違いが根付いてしまった感。

あのときは精一杯きっぱり、でもリスペクトフルに斥けたつもりの伊織(瀬川亮さん)はフキの後ろでどぎまぎ、雄介(橋爪遼さん)はおっとりなりに心穏やかならぬ表情。

フキは借金問題以降、スレンダーな身体を心持ちクネッとさせて伊織にあからさまな、むしろ自信たっぷりな媚態に近いものを見せるようにもなってきていますね。気の進まない伊織を引きずって行っての紀保アトリエ挨拶訪問で「それにしても素敵なアトリエね、ウチの工場なんかとは大違い、やっぱり紀保さんはワタシタチとは住む世界が違うんだわ…そう思うでしょッ!伊織さんッ!」の語尾の勢いと向き直る速度には思わず笑っちゃいましたよ。伊織、牛乳飲んでる途中だったら絶対鼻から噴いたぞって顔。

フキを見ていると、女の子ってやっぱり幼い時から、満足に食べさせ学校に通わせてるだけじゃ“育てた”ことにならないんだなと改めて思います。きれいな洋服とかキラキラ光る装身具とか、髪を結って鏡の前でくるりとか、とにかく“お姫さまちやほや”的なものにあんまりひもじいままで大人になると、知性や社会生活能力に不足はなくてもどこか、特に同性から見ると痛い。たぶんフキの場合、母親が早世せず工場も左前にならず、信金OLとして無事に適齢期を迎えていたとしても、結局「私はつまらない女だから」とつぶやいては妹の奔放さにカリカリする20代で終わった気がする。

こういう想像をつらつらさせるのも、本当に小橋めぐみさんの演技のたまものだと思います。劇中ポジションはウザがられキャラだけど、見ていて興趣つきないんですよ、フキって。

一方伊織は、いつもよりちょっぴり着飾り髪も上げて紀保の前で若妻見せつけ気分のフキの隣で、おメメぐるぐるキョドる様子が、ちょっとステレオタイプだけどキュート。ブライダルサロンに恋人に連れられて来た男性は、たいていああいう表情をしますね。たとえ“彼女が一方的にその気”なわけではなく、男性本人も望んで結婚が本決まりだとしても、ウェディングドレスという、女性のものすごい渇望、幻想妄想エネルギーを集約具現化したアイテムがそこらじゅうにこれでもかとショーアップされている空間に入ると、男は窒息しそうになり、リアクションがとれないものです。

いいところにセリ(田野アサミさん)が乱入してフキを連れ出してくれ、紀保(山田麻衣子さん)とネジの話ができて、紀保が自分の名を伏せて仕事の口をきいてくれたことには負い目を感じつつもちょっとほっとしている、この高低差の表現がいいですね。

花火大会に紅夏ちゃん(名波海紅さん)を連れて行く約束を果たしたら夕顔荘を撤収すると紀保が言うと「自殺の真相を探っても死んだみのりが戻るわけじゃない、過去は振り返らないことにした」と伊織も乗って事実上の訣別宣言しましたが、帰りしな羽村社長(篠田三郎さん)と偶然出くわしたことで別のハラをかためた模様。みのりの部屋にあった赤い表紙のスクラップブックには、紀保と社長の2ショット写真もしっかりありましたからね。伊織母・みずえ(岡まゆみさん)の痛ましい現況に、羽村社長は関わっているのでしょう。「セタ?」「セタです」の硬い挨拶からして、お互いになんらかの認識があるのは確か。

紀保は、たぶん杏子(松田沙紀さん)から伊織フキ来訪を知らされて、応接室兼会議室に駆け込んでくるときの、はやる気持ちに足取りが追いつかないみたいな所作が可愛かった。伊織ひとりでの訪問ならともかく、フキがついて来てるのにそんなに嬉しいか?と初見では思ったのですが、伊織ひとりと聞いたら逆にいまの紀保なら足取りが重くなったでしょう。

とにかく顔面における“目”と“唇”という2大“心の窓”の面積比率の大きさで表情表現ではだいぶトクしてるなぁと思う山田さん、最近は首の傾け方や手の仕草でも感情が伝わるようになって来て頼もしいところです。

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人間のクズキリ

2009-07-17 00:53:37 | 昼ドラマ

5月からコンビニ限定で展開されているSAPPORO限定醸造 焙煎生ビール、“限定”の2文字にかなり弱い月河としては出荷終了前に一度は行っとこうと思い先日入手。

 コンビニ限定ということで、安売りっちゅう取っ掛かりがないため、なんとなく試飲を先送りしていた気も。でも北国のビールシーズン、短いですからね(シーズンじゃなくても飲むけど)。いまという時は二度と来ない。

…でもま、せっかくの1992年初お目見えラベルの復刻版だし。90年代人間の非高齢家族、“ビールなら黒ビール”党だった高齢家族その1、全員揃ったところで開けたいと思い、試飲は先送りです。

『夏の秘密』は第34話。柏木引きこもり博士(坂田聡さん)再上京。

依頼の図面の出どころを調べれば、自殺したみのりが手を染めていた薬物横流し先や経緯がわかるかも…と目論む伊織(瀬川亮さん)、「危険よ、すぐ処分したほうがいい」とブレーキかける紀保(山田麻衣子さん)。

「あんたさえ黙ってれば誰にも知られない、俺たちは同志だって言ったよな?」と“同志解散”を先に主張したはずの伊織が念押しのためにキスしようとして紀保がぎりぎり振り切り、本が床に落ちる音で2人我に返るまでのテンパった会話、柏木がどこから小耳にし始めたかが気になります。前半の図面がらみの部分を抜いて、或るパートだけ聞くと、普通に口説き口説かれの男女の睦言にも聞こえるし、何かヤバいことの隠蔽に共謀してる会話にも聞こえるかも。純・理系人間で「人と話すのが苦手」な柏木博士、そこらのニュアンスをどう理解したかな。

 みのり遺書隠匿の件が不起訴となり、郷里で両親の家業を手伝いながら就職口を探しているがなかなか見つからないとしょげている柏木に「人と話すのが苦手なら、苦手でなくなるような努力をすればいい、ろくな努力もしないで甘ったれてるからいつまでたっても自分の居場所が見つからないんだ」「何が理工学博士だ、ふざけんな」ととげとげしく当たる伊織、柏木の臆病さのおかげでみのりの自殺が長く判明せずに引っ張られた苛立ちもいまだにあるでしょうが、彼も決して低学歴なわけではなく、国立工業高専を出て大手に就職したのに、上司とそりが合わず中途退社して町工場の工員になった前歴あり。対人能力が不器用なために“居場所”を探しあぐねる柏木の心情は痛いほどよくわかるはずですが、「よくわかるよ、オレもそういうときはね…」なんて見え透いた共感を示したりしないのが伊織クォリティ。

紀保は「伊織さんは人一倍努力してきた人だから」と柏木にとりなしていたけれど、それも一面の真実。あからさまにはせずいろんな躊躇い含みながらも、伊織と紀保が気脈を通じ合って、いい波長を醸し出しつつあるのも、柏木博士、読めたかどうか。

 前の勤務先が本当に大手企業だったとしたら、対上司とは別に“大卒でない”ことで悔しい思いもしているはずの伊織には、柏木の(いまのところムダな)高学歴も癪にさわることでしょう。同じ同年代同性でも、自分とまったく違う環境で、違う志向で生きてきた、たとえば弁護士の龍一(内浦純一さん)などに対したときとは違って、“まかり間違えば自分もあそこまで堕ちた(or昇り詰めた)かもしれない”同系統の人間には複雑な感情が湧くもので、複雑が極まって“うざい”“イラつく”“腹立たしい”と感じられることが多い。

父は海難事故?ですでに亡く、母も精神障害で息子の自分を認識できなくなっている状態の伊織にとって、“東京に居られなくなったら、真似事でも親孝行しに帰れる実家や手伝える家業があるだけ恵まれてるじゃないか”という気持ちになったかもしれません。

今日は柏木も「手に職のある人がうらやましいです」とこぼしていましたが、今作、冒頭の紀保の亡き母の言葉「泣いていないで手を動かしなさい」を皮切りに、“モノをつくる仕事”がちょっと過剰なくらいに称揚されている気がします。金谷祐子さん脚本のこの枠“背徳三部作”が、“ブラックボックスのような大企業”と“それによる何かやたらめったらな金満虚栄”を背景や目的語にしていて、この不況下、いい加減視聴者も食傷して反感を買うのではないかという読みかな。紀保の、金満環境をプラスの栄養にしかしていない“ひねくれることなくすくすく育った”感は好感もって観られますけどね。

それに対し、“モノをつくらない”稼業は、弁護士、医者、貸金業と軒並みライバル役か悪役。羽村社長(篠田三郎さん)の“羽村エンタープライズ”も昼ドラ恒例とも言えるブラックボックスだいきぎょう(←棒読み)で、ドバイ行って馬買わされそうになったとか威勢はいいものの、何産業が中核業務のえんたーぷらいず(←棒読み)なんだかさっぱりわからず、その虚業感ゆえか羽村社長もいまだ紀保たちの磐石な味方らしい温かい空気は出していません。

浮舟蔦子姐さんの飲食物販業や井口母子(山口美也子さん橋爪遼さん)の不動産業は“食うもの着るもの”“住むところ”を扱う分か、ちょっといい役。

柏木や護(谷田歩さん)といった無職の諸君が、なぜかあまり悪でないどっちつかずで、どっちかに転ぶとしたら主役カップルの味方側に転んでくれそうな感じなのもおもしろいですね。

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