イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

月を歩いた人

2009-07-16 00:08:28 | テレビ番組

先週末10日(金)だったか、夜半過ぎに録画タイトルの整理をしていたら、NHK総合でマイケル・ジャクソン特番『KING OF POPの軌跡』に遭遇し、思わず2600近くまでスイッチが切れなくなってしまいました。

『スリラー』PVをノーカットで観た後、『BAD』もノーカットで観たら2600過ぎてしまうのであきらめましたが、クインシー・ジョーンズ健在なり。『スリラー』『We are the world』のPと言うより、月河としてはいまだに『愛のコリーダ』、映画劇伴『夜の大捜査線』『マッケンナの黄金』『ゲッタウェイ』の人なんですが、1933年生まれ。58年生まれのマイケル・ジャクソンの急死には“多大な実入りをもたらしてくれた孝行息子が先に逝っちゃった”感でしょう。

ジャクソン・ファイヴ草創期の『帰ってほしいの』『ABC』のPVなんか見ちゃうともう釘付けになるしかない。たまたま遅い帰宅で合流視聴した非高齢家族などは「顔がマトモなのは80年代までだな」とズケッと言ってましたね。歌声にしても、10代までは明らかに抜群の透明感とリズム感なんだけど、80年代以降は歌よりダンスや映像に目が行ってしまい、歌どうこうよりヘアメイク・ファッション込みのヴィジュアル、振り付け、映像構成とセットで“マイケルスタイル”という感じ。90年代、妹ジャネットとのコラボ『Scream』あたりではかなり「モノクロPVでよかった」と思う顔になっています。

日本とかの国ではだいぶ異なるでしょうが、ミュージックシーンも、メロディアスに朗々と歌いあげるような楽曲に耳傾けてうっとりうるうる…という消費のしかたは70sで終わって、80年代中葉、日本で言えば深夜、マイケル富岡さんとモデルのセーラさんのMTVがオンエアされていた頃から、流行りの音楽と言えばカッコよく撮られ編集加工された映像とともにブラウン管やスクリーンを通して眺め“体感”するものになった。80年代後半は音源もアナログレコードからCDの時代になって、90年代も後半になるとCDすら売れなくなり、ネットにあふれる膨大な情報やソフトと同列に、好みのタイトルだけダウンロードする時代になりました。

10代取っ掛かりの頃からミュージックシーンなるものに身を置き処して来たマイケルは、そうした何段階もの変遷をカラダで受け止めて、何度も流されそうになりながら、結果としては流されることなくみずから敢然と流れを変えて来た人でした。「あの時あの頃ああいう時代になったから、ああいう活動をした」ではなく、「マイケルがああいう方向に舵を切ったから、音楽業界もああなったこうなった」ということが多かったと思う。

有名人、とりわけ芸能分野のビッグネームの訃報が媒体に出ると、「もうそんな年になってたのか」と改めて驚くことが多いのですが、マイケルも50歳。ビッグもあれだけになると、40過ぎてからは体力を消耗し摂生を要求される激しいダンスのパフォーマンスなんかからは距離をおいて、“座ってできて”実入りのいい楽曲提供やプロデュースに活動の主軸を移すことが多いのではないかと思いますが、KING OF POPSは世紀を超えても、妖精のような、仙人のような体型を保ち、この世のものならぬパフォにこだわった。そうせざるを得ない経済的社会的動機もあったのかもしれないけれど、幼くして華やかな世界に立った人独特の、“相応に齢(よわい)を重ねる”ことの難儀さをこの人には特に感じます。

モータウンメモリアルコンサートでの『ビリー・ジーン』で“生(ナマ)ムーンウォーク”を初披露したときの客席の何とも言えないどよめき、次はいつアレが出るかと息を詰めて見守っている雰囲気などビデオでリプレイされると「こりゃ3日やったらやめられんわ」とも思う。

もうクタビれた五十肩のオヤジでもいいんだよと言ってあげたい。あの世でホッとしたら一気に肌も褐色に戻ったりしてないかな。フォーエバー安らかに。あの番組、再放送されたら録画するんだけど。

『夏の秘密』は第33話。どうしてもセリ(田野アサミさん)を追っ払いたいらしい杏子(松田沙紀さん)の小細工でしたが、紀保(山田麻衣子さん)のオトコ気炸裂。「一流のモデルになりたい」という夢の部分でか、一見チャラいセリに、紀保は最初から直感的に共感と信頼を寄せていますね。この2人の相性の良さは、雇用被雇用関係を超えて、姉妹的な女友達コンビとしておもしろい。

むしろ杏子の方が、すでに龍一の収監中相当腹黒い二枚舌かましていますからね。こちらはまだまだ真意が読めないな。

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麦焦がし

2009-07-15 00:53:30 | ニュース

東国原宮崎県知事との会談の件以来にわかに再び表舞台で策動活発となった古賀選対委員長、いや辞意表明したからもう“元”選対委員長と呼ぶべきか、“古賀”何兵衛さんなのか何太郎さんなのか、下の名前、皆さん知ってました?

月河は、知ってるようで知らなかった。何度もニュース音声で小耳にはさんだり、活字媒体で目にしたりはしてきたはずなんですけどね。

古賀“(まこと)”さんだそうです。あんまり名が体をあらわさなさ過ぎるから記憶に残らなかったのかな。それまた失礼な。なんとなく“コガ”って聞くと脊髄反射で“マサオ”って連想しちゃうんですよ。小中学坊主の頃、毎年大晦日の輝く日本レコード大賞で聞く名前だったもんでね。昭和歌謡曲の巨匠、古賀政男さんも故人となられて久しいですが。

1文字の“誠”と言えば新撰組ですけど、古賀さんぐらい新撰組のイメージと距離のある政治家もいないと思いますし。

しかし、フォローで言うわけじゃないけれど、古賀さん、巷間共通認識されるほど“あからさまな悪党ヅラ”でもないように思いますがどうでしょうか。

思うに、あの年を経た深海魚のような冷温な目つき、シワっぽく黒ずんだ眼周りと、とりわけ右の下瞼、目ブクロの辺りのモヤモヤッとかたまったホクロ群の印象が“悪相感”を嵩上げするのではないでしょうか。

顔色全体が血気を感じさせない沈んだ色なだけでなく、眼周りが黒ずんでいるのは病的かつ陰険な、執念深く残忍そうな印象を与えます。右下目ブクロのホクロ(て言うかシミ?)群など、なにやら邪悪な星雲のよう。特撮の悪役だったら、絶対あそこから光線とか、毒物質とかムニョッと発射するね。

と言うより、“古賀氏(コガシ)”って呼び方が、いきなり外道衆(@シンケンジャー)っぽくないですか。アヤカシ“ズルコガシ”とか“ヒネコガシ”とか何とか、三途の川から出てきそうではありませんか。

………関係者が読んでないだろうと思って好き勝手言ってるな。いかんいかん。東京都議選惨敗の責任を「誰かが取らなければならないし、取るならまず自分が」と先手打った今般の辞意、例によって深慮遠謀がちらつかないこともないけど、とりあえず潔かったですね、と無理やりまとめておきましょう。

…外道衆と言えば、細田幹事長なんかもそれっぽいですね。角張り、肉付きの薄いお顔に、メガネが増幅させる目玉感。こちらは直接毒噴いたりする悪役じゃなく、骨のシタリ的な、飄々ときどきいけシャアシャアなキャラですな。

外道衆と言うより、あのガラスっぽい、生身感の少ない眼差し、むしろアリエナイザー(@デカレンジャー)かな。

…いい年した大人が政治のニュースちら見しては国を憂えるでもなく何考えてるんだか。

『夏の秘密』は第7週に入りました。前回ここでこのドラマに触れたとき全12週と書きましたが、13週が正しいですね。828日(金)が最終話となります。総選挙投票日が同30日(日)なら、国会・政局関係での臨時ニュースで放送休止とか時間変更はなくて済むかな。放送中にピロピロ信号音鳴って無粋なテロップで画面が汚れるのも最小限になるといいですが。

中盤の峠越えになる今週は、前半から柴山工作所の借金返済問題をめぐって紀保(山田麻衣子さん)の奔走、秘密のうちにヤミ仕事を引き受けて完済しようとする伊織(瀬川亮さん)、紀保から相談を持ちかけられた龍一(内浦純一さん)との内なる綱引き均衡で、派手な立ち回りや新たな事件こそ起きないけれど、前半最大の山場を迎えています。

「弁護士として(工場の負債問題に)できるだけのことはしてあげるから、その代わりこの問題が解決したら、二度とあの町に足を踏み入れず、あの人たちとも関わらないと約束してくれ」と龍一から協力の条件を提示されて、伊織に犯罪に手を染めさせないためにその通りの約束をした紀保は、声を失う魔法薬を飲んでまで人間になり、恋しい王子に会いに陸上へ上がった人魚姫のよう。陸で一緒に過ごせても、話して思いを伝えることができず、王子が幸せになれば、人魚姫は海の泡になるしかない。

でも「私にとっての事実はあなたが無罪判決を得て自由になって、いまここにこうしている、それがすべてよ」の切り返しは良かったね。ウソごまかしを重ねるよりずっとスマートだし、何より“起こりかけている犯罪行為を未然に防ぎたい、関わった人が犯罪者になるのを見過ごせない”という表現で、龍一を弁護士マインドに目覚めさせたところが、たくまずして上手い。

まことにごもっともな反応と行動しかしていないにもかかわらず、この条件提示で、龍一はだいぶ株が下がりました。

龍一の何がまずいって、要所でいちいち間が悪いんだよね。そもそも婚約のレールに乗っかっているのに出張先で見ず知らずの女性をホテルの部屋に入れてああいう事態を出来させたことからして迂闊極まりないし、伊織の本質を見抜くのも遅ければ、紀保の中の微妙な揺れを察するのも遅い。知的ではあるんだけどカンが悪い。しかも紀保が伊織がらみでアタマ一杯になってるときに限って優しくアプローチしてきたり、「食事に行こう」「今夜は離したくない」。…

紀保の実務アシ杏子(松田沙紀さん)が「断る理由がないから結婚する、それでいいんですか」と龍一釈放後に紀保に問いかけていましたが、紀保と龍一、社会的な釣り合いとは裏腹に、どうもバイオリズムが微妙に違うようでもあります。異性同士惹き合うには、箇条書きにできないサムシングが必要だし、“どんな経緯にせよ他の女性を孕ませ、女性はお腹の子ごと自殺した”という、法律では割り切れない事実が、そろそじわじわと冷たい臭気を放ってきました。

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コク豊麦〈生〉

2009-07-13 20:29:15 | ニュース

東京都議選自民惨敗で今朝の朝刊1面が埋め尽くされる中、日本経済新聞の1面はKIRINSUNTORY経営統合の報がトップでした。あらら、これは月河も聞き捨てなりません。月河の夏の主要栄養源である“泡冷えモン”も最近気前良く新製品がバコバコ投入されるなぁと思ったら、統合されて、せっかく走り出したラベルが整理されちゃうのかしら。

KIRINで言えば、一番搾りと伝統のラガーは生き残るでしょうね。発泡酒の淡麗〈生〉もいけそう。一方SUNTORYは、泡モンは後発だし、セーフ確勝はモルツのプレミアムと、新ジャンルの金麦ぐらいかしら。

KIRIN円熟コクの時間SUNTORY豊かなんかは微妙そうですねぇ。豊かは淡麗グリーンとバッティングしそうな気も。

 公取に了解取りつけてるいまのうちに、“微妙組”の買い溜めしとくか(愚)。

 …いままでの経験則から言って、過剰な買い溜めは飲み溜めへの悪魔の玄関なのだがな(堕)。

しかし、もう一業界内大手同士の合併統合も、“三井住友銀行”“三越伊勢丹ホールディングス”知っちゃうと何聞いても驚かなくなりますね。対照的な客層・社風で長年お互いを目のカタキにしてしのぎを削ってきたのに、あっさりひとつの会社になっちゃうんだものなぁ。東の三井、西の住友、創業したご先祖様が化けて出るんじゃないかと思いましたけど。

もう少々のことではインパクトありませんね。“慶應義塾早稲田大学”くらいできないとね。大隈重信さんと福沢諭吉さんなら「いやぁご無沙汰で」「都の西北と三田の山、近いようで遠いですからな」「ゆっくりお話ししたいと思っていたんですよ」「まぁ立ち話もなんですから」…と銅像の台座から下りてきて仲良くやれるかもしれない。

 ……今朝は急ぎの出発でしたが、TVのスポーツ紙芸能面チェックコーナーでタモリさん白内障手術のため『笑っていいとも!』を一週間お休みの報を小耳にはさみました。198210月放送開始以来、タモリさんがメインMCを“病欠”したのは、01年の、ゴルフボールがメガネのツルに当たって顔面負傷のときだけだったような気がします。

タモリさんってオーディオおたくでジャズトランペットプレイヤーで、世界一長寿番組MCですから、“耳”と“クチ”は人一倍ならぬ“人何十倍”優れている。その分“目”って弱点なのかなという気もします。

と言うより1945年生まれ、今年8月には64歳になるタモリさんもさすがに加齢が来た、その取っ掛かりが“目”だったというだけなのかも。『いいとも!』の時間、在宅ならば高齢家族がニュースとひるどき日本列島を観ているのでここずっとちゃんと観た事がありませんが、レギュラー陣にメインMCを肩替わりできるだけの力量があり、かつ寝首を掻くほどの殺気はない人材が山のようにいるので、タモリさんは枕を高くして入院できることでしょう。久々の徹底人間ドックで悪いところがなければいいですが。

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あなたなら同志る

2009-07-12 20:32:50 | 昼ドラマ

627日付け日本経済新聞土曜版“日経PLUS 1(プラスワン)”でのリサーチランキング“バーベキューに合うビール系飲料”で発泡酒・新ジャンル部門10位に入っていたオリオンリッチ、昨日都心に近い大手スーパーチェーンの冷えモノ酒類コーナーで見つけたので早速買い。

沖縄発、オリオンビールの製品ですが、Asahiが全国発売しているようで、日経紙面の掲載写真には無かったAsahiのロゴが、パッケージ正面の赤い三つ星の上にorionと同じブルーで入っています。

 沖縄には行ったことはありませんが、南国だし、“Rich”の名からなんとなく濃厚な味を予想して、グラスもキュンキュンに冷やしてから試してみました。

 ……いやいや、リッチよりはスムーズという感じで、結構さっぱりしています。若干甘口寄りで、同じ新ジャンルで言えばSUNTORY金麦クリアアサヒの中間ぐらいの甘さか。でもイヤみな甘さではなく、スムーズでさっぱりな中でのほど良い“甘口感”。味としては発泡酒のSUNTORY豊かを思い出します。Alc.5%100ml当たり39キロカロリーは糖質が少なめなんでしょうね。バーベキュー向きと言うより、まさに夏向き。夏期限定の全国発売は好判断だったと思います。

新ジャンルの場合、どうしても泡がクリーミーでなく、すぐ消えてしまう大粒な炭酸プチプチ感なのが残念になりがちですが、この製品はかなりしっかりもっちりした泡で、そこが“リッチ”とネーミングする所以か。

北国の消費者としては、味云々より、パッケージデザインのトロピカル感、海浜リゾート感を買いたいですね。鈍系のシルバー地に製品色をイメージしたゴールド、ロゴ三つ星の青&赤。筆記体RichRの“前髪”の先にホップの実、hの“足先”が天まで伸びて麦穂になっているという、なんともシンプルでアルカイックなくらい素朴な意匠。海の家の冷蔵ケースに並んでいたら、見た瞬間喉がガー乾いてきそうなヴィジュアルです。

ビール自体が季節商品ですし、発泡酒・新ジャンルはお値段面でも敷居の低さが魅力ですから、パッケージ外観は大切だと思う。せっかくの期間限定なら、もうちょっと田舎のコンビニ(ウチの近所とかウチの近所とかウチの近所とか)にも行き渡るだけ出荷してほしいところです。

ただ、お値段が他社の新ジャンル、SAPPORO麦とホップやクリアアサヒとまったく一緒ではさすがに厳しいかな。月河の周辺では、「クリアアサヒは甘いのとあの尿検査みたいな缶のデザインがイヤ」「麦とホップは飲みクチはいいけど後味がちょっと」という声も聞かれるので、もっと遠慮なく売り込めば食い込めそうですけどね。販売権を持つAsahiが、自社製のクリアアサヒを凌駕しないようコントロールしているのでしょうね。

『夏の秘密』6週第30話まで来ました。全12週なので、第30話前後には必ずストーリー上、大きな舵を切る転換があるはずなのですが、25話でみのりの死が自殺と判明、28話で伊織(瀬川亮さん)の実母(岡まゆみさん)が、過去のなんらかのトラウマで精神の平衡を失いながら施設で存命と提示されて以降、謎部分のさしたる解明進展はなく、紀保(山田麻衣子さん)が少しずつ龍一(内浦純一さん)に冷たくなり、気持ちの上で伊織に傾斜して行って、ちょっとじりじりするのみの第6週でした。

龍一がいつ猜疑と嫉妬の塊りとなり紀保を束縛、伊織に嫌がらせをする、昼ドラお決まりの“ブラック化”に行くかとヒヤヒヤ、そこに若干のスリルとサスペンスはあったかな。

1話でいきなり結婚式場から新郎龍一が連行されてしまい、「龍一さんは無実、私が証明して見せる」と息巻いて髪を切り偽名を使って現場の夕顔荘に乗り込んだ紀保でしたが、その動機は龍一への執着ではなく、むしろ“龍一との結婚に象徴される、満ち足り人に羨まれる安穏とした人生への訣別の辞”だったことを思い出す必要がある。

父・羽村社長(篠田三郎さん)から「見知らぬ女を妊娠させていたような人間だった、おまえを幸せにしてくれる夫ではない」と結婚を白紙に戻すよう迫られ、マスコミからは「貴女も婚約者に裏切られていた、ある意味被害者ですよね」と突っつかれたから、紀保は「泣いているだけの女にはならない」と奮い立ちもしましたが、とりわけ父が(考えにくいですが)「龍一クンを信じて待っていてあげなさい」と真逆の対応をしてでもいたら、紀保は「イヤイヤ、私に隠れて女の人を抱いて子供を作っていたなんて、想像しただけでもイヤ」と、泣く代わりに激昂して龍一に三行半をつきつけていたかもしれません。

何やら反抗期の子供みたいですが、結婚という人生の一大行事がからむと、人間、完璧に知的理性的であり続けることは非常に難しい。“マリッジブルー”という名の一過性の精神疾患に、最近は男性も多く罹るそうです。

所謂“ロマンティック・ラヴ”に基づく結婚は、女性から見て男性が“尊敬できる”存在であること、具体的には女性より男性のほうが高学歴高キャリアかつ高年収である必要がありますが、紀保の「龍一さんって素敵な人」「龍一さんと結婚できて幸せ」という自己確認には、どこか“社会的帳尻が合っている”“誰が見てもお似合いと評価してくれる”という安心感に拠っかかり過ぎなところがあり、妙齢男女の相思相愛としては基本的に低体温だった。

「龍一さんの無実を私が証明する」という紀保の自分及び周囲への宣言は、字ヅラとは違って“龍一(に代表される人生・生き方)からの卒業”宣言でした。みのりの自殺が公認され、龍一がめでたく無罪放免となったことで、紀保の龍一卒業は完了した。紀保は次のステップに踏み出そうとしているのだから、龍一から「あの日に戻ってプロポーズからやり直そう」と言われても迷惑なだけなのです。

言わば6週は“冒頭部分の初期設定のおさらい”。「紀保にとってのこの行動は、ご存知のようにこういう動機でしたから、こういう結果が出ると紀保は当然こんな言動になりましたよ」という、“AゆえにB”の検証に過ぎない。

それにしてはちょっと話数を費やし過ぎたような気もします。来週から後半戦、『エゴイスト egoist~』のようにアワ食って毎話のように敵味方入れ替えたり、役降ろしたり降ろされたりするのもどうかなと思いますが、噛んで含めるところは噛んで含めつつ、ちゃんと唐紙開けて次の間に進まないとね。何話も閉じた部屋の中ぐるぐる回って障子越しに庭を見たり、畳剥がしたり屋根裏覗いたり、また座布団に戻って座ったりしてるのもどうなのかな。

唐紙がトントンッと開いていかないことより、月河は伊織の佇まいが拒否的過ぎるのが気になります。あまりに心を閉ざして本音を隠しているため、無理してもついて行って心を開かせてあげたいという、物語上は“紀保寄り”の気持ちが、観ていて失せる局面がたまさかある。「好きにすれば」「手に負えない」とちらっと思ってしまうんですね。たとえばフキの捨て身の肉弾求愛を善意で斥ける口実に「先約がある、人を待たせてる」はないんじゃないかな。

19話で店子の自殺未遂で落ち込みヤケ酒泥酔した雄介(橋爪遼さん)を案じ介抱しようとする紀保を「安っぽい同情はするな、雄介なら乗り越えられる」と押しとどめながらも、雄介が寝入ったのを見届けると毛布をかけてやる。“根は優しく温かい、かつ義理に篤い男”というサインは随所に配置されているだけに、いま少し、異性として取りつく島がほしい。

これも、一層個人的な所感ですが、25話でみのり自殺という結末に絶望して飲んだくれ、紀保にキスで励まされる伊織が、月河は(大袈裟に言うと)プチ絶望でした。

酒、それも大量の酒が入って初めて本音を吐露するということは、酒がなければ吐露できないということ。それだけ自己制御の重石がきつい=ストイック、という魅力の裏返しでもあるのですが、月河は自分がイケるクチなので、ツンデレのデレには酒を関わらせないでほしいんだな。“安くなる”気がするんです。

23話でフキ(小橋めぐみさん)の、母の形見の鼈甲櫛紛失?盗難?の件でセリ(田野アサミさん)から聴取、「記念撮影のカメラに盗み出す現場が写っていた」とブラフかけたことを護(谷田歩さん)に「思いつきかよ、おまえもヤルなあ」と言われて苦笑する、ああいう“はしなくも垣間見えた”伊織の表情をもっと見せてほしいと思う。

誰からも羨ましがられる、物心共に満ち足りた境遇から、自分の足で急峻のリスクを取る選択をした紀保のロビン・フッドなのですから、伊織には魅力的過ぎるくらい魅力的であってもらわないとね。

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本音は言わねぇ

2009-07-11 23:41:37 | ニュース

先週気がついたので、今週の同系統番組でどうなっているかわかりませんが、報道番組で東国原英夫宮崎県知事がVに出てくると、なぜBGM『陽炎の辻~居眠り磐根江戸双紙』OP曲になるんでしょうか。

土曜の夜の、ビートたけしさんと安住紳一郎アナの番組で聴いたときは、たけしさんと東国原さん、て言うよりそのまんま東さんとの長いお付き合いゆえのサービスかと思ったら、翌日の『サンデージャポン』の政界コーナーでも使われていたし、何だったかテレビ朝日系の夕方の番組でも小耳にはさんだような。

イメージ的に全然合ってないですけどね。坂崎磐根は豊後国は関前藩、いまの大分県出身。宮崎は日向国ですから、まあ南北にお隣同士といえば言えますが。

それともあれかな、ヒタイの広さ加減というか、生え際の後ろさ加減というか、遠ーーーい近親関係が想像できなくはない…こともなくもないか(否定し過ぎて結局どっちだ)。

古賀選対委員長との会談、「私を総裁候補にして戦う覚悟が自民党にあるか」発言以降、来たるべき解散総選挙と政局がらみのニュースで東国原さんの顔と名前が頻出するようになりましたが、ご本人の体温がどこらへんまで上昇しているかとは別に、マスコミも国民も“ザ・中央政界”の麻生さん鳩山兄弟中山さん細田さん町村さん与謝野さん菅さん岡田さん誰さん彼さん…といった顔触れに、いい加減嫌気がさしているという地合いがある。

地方政界で高い支持を集めている首長で、政治家としては年齢も若くフレッシュで、かつタレント出身で全国的知名度もあるとなったら、永田町界隈にひしめく与党や野党第一党幹部のあの人この人より、よほど可能性があると思われても仕方がない。“仕方がない”っつったらヘンだけど、東国原さんが本気で中央政界を志向するなら、いまほど強い順風の吹く時期は、恐らく彼の政治家人生で二度と訪れないでしょう。

本当に、いま麻生さんを筆頭に、“永田町汁(じる)”の滲み込みの深いと思われる順に国民からは嫌悪されていますよね。みんな国民が清き一票を投じて選ばれ、また選ばれ、さらに選ばれて当選回数重ねて、総理候補、党首候補に擬せられる立場まで上がってきた人たちのはずなのに、“選ばれながら嫌われてきた”っていったいどういうことなんだ。

“永田町汁”のニオイをあまり感じさせないところが人気だった小泉純一郎さんも、昨日だか当地近隣の選挙区で講演したというニュースで見たら、なんだかふにゃらけた中途半端パーマのジジイになってましたよ。こちらは在任中、嫌われつつ人相悪化ということがあまりなくて済んだ、珍しいタイプの総理経験者なので、いまのふにゃらけようは普通に今期限りでの政界引退を決めて緊張感が失せたんでしょうな。

あれかな、後継次男進次郎さんの応援には、兄貴・孝太郎さんも駆けつけて街宣車乗るのかな。

それともコールセンター応援かな。

『つばさ』東京進出?篇(6日~11日)は、つばさ(多部未華子さん)が「全国ネットで大勢のリスナーに知られるよりも、川越に暮らす人たちの当たり前の日常、小さな喜怒哀楽に寄り添い、小さな幸せを届けるラジオぽてとのオカンでありたい」と自己確認、宣言したことで一応きれいに着地しましたが、結局ベッカム一郎(川島明さん)はロナウ二郎(脇知弘さん)ともう一度コンビでやってみたくてラジオぽてとに来演、つばさを自分の番組アシにスカウトしついでに二郎に「1コーナー任せる」オファーしたのか?はたまた、メジャー芸人目指す巻き返しか地元密着に徹しての再出発かに、二郎自身で結論を下させようという元・相方なりのコンビ愛か?…真瀬(宅間孝行さん)は、二郎に芸人としての全国区セカンドチャンスを与えたくて東京のキー局に売り込み活動してたのか?…善意のハラがあったのかなかったのか、ちょっとよくわからない、つばさ母加乃子さんじゃないけどホーローならぬモーローとした結末になってしまいました。

ベッカムが二郎とコンビ解消した原因は、二郎が全国キー局での打ち合わせに遅刻してきたからということでしたが、二郎は先約のあった慰問のほうを優先して喋り過ぎ、打ち合わせの時間に間に合わなかった、と、ベッカムとは違う彼なりの見識はあったわけです。

当時は一応レギュラー番組も持つ新進人気コンビだったらしいのに、そもそも慰問と打ち合わせをダブルブッキングしちゃうマネージャーどこ事務所の誰よ?って話なような気もしますが、ベッカムなりに二郎に「オレにはない、ガツガツしなくて温ったかい、好かれる持ち味のあるヤツ」というリスペクトや、四畳半のアパートに同居して夢を共有してきたなりの友情、シンパシーもあったはず。そこらへんあんまり掘り下げられませんでした。

掘り下げないところが「空気読むのが商売」というベッカムの“自分の現在(=全国ネットの多数ウケ狙って行かなければならない)に殉じた”哀愁だったのかしら。

メイクや衣装からいって、『蒲田行進曲』銀ちゃんを意識してキャラ作りしたと思われるベッカム一郎、俳優専業ではない漫才の川島さんよく演っていたと思いますが、男女2人の付き人、座る前にどこでも豹柄敷物で肩揉み、自画像入りマグカップ、あそこまで銀ちゃんパロディをやるなら、二郎さんがヤスになって川キネ2階から階段落ちまでやらないとね。体型的、自重的に危険か。

思うにこの中途半端さ、物語の舞台となっている“川越”と東京との距離感の微妙さと比例していますね。つばさが日中東京のベッカムの番組アシをつとめて、夜には甘玉堂に帰って来られるんですもの。

“東京に出てメジャーになる”ということの晴れがましさ怖さ、地元を振り切るのに要するエネルギー、川越にいるとさほどの高低差がないのではないでしょうか。

全国48道府県の、朝ドラロケ地ラストに埼玉が残っていたのも、今頃になって少し頷ける気も。ヒロインが“努力して出世して東京に出る”ということにあまり有り難味がなく、ストレスもないので、物語の軸にできない。声がかかれば東京で仕事をして、夕食などのプライベートは川越に帰って、翌日また東京に行くこともできる。地方を舞台にし、地方出身で地元に家族や親友や恋人を持つヒロインを設定することで6ヶ月20余週をもたせてきたNHK朝ドラにとっては、“東京”“中央”の、今作特有の相対的地位低下、希薄化は結構取り扱いがしんどいでしょう。

これが川越ではなく、東北・北海道や九州在住設定だったら、ヒロインはさして迷いもせず東京の局アナスカウトに乗ったはずです。九州のことは月河、さすがによく知らないので断言を避けますが、北海道なら間違いなく乗った。仕事のスケールが経済的にも心理的にも、川越対東京と、北海道対東京では天文学的と言っていいくらいの差があるし、かりにヒロイン自身が地元にも愛着が…としばし逡巡しても、親が積極プッシュするはず。

いまつばさ(=ハタチ)世代の親世代である40代中葉~50歳前後で地方在住の人たちほど、“中央進出を願って果たせず、あるいは果たしたが定住できず、自分の親が生まれ育ったのと同じ近隣にいまだ住んでいる”自分を残念に思っている世代はいないからです。

(親世代の、そのまた親世代、『つばさ』で言えば千代お祖母ちゃん世代が、千代さん同様認知症にも冒されず身体頑健で元気だったら“親代々の地元に根を下ろして家業や伝統行事を墨守することの大切さ”を孫に滔々と述べるでしょう)

どうせ大半はセットの中で進んで行く物語なので地名を冠したローカリティにはそんなに固執する必要はないと思いますが、“中央進出”に仮託したヒロイン立身出世とそれにまつわる葛藤という王道モチーフがこの週で“使えない印”になったことは、今後のドラマにかなり影を落として行きそうです。

いや、光を落とすのかな。今週はラジぽて立ち上げ人たる真瀬が、ベッカムの屈折した“全国ネットひけらかし”に一言ズケッと言う場面があるんじゃないかと期待したんですけどね。つばさと二郎に花持たせすぎ。

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