前回は、主に声を出すことについてのべました。
今回は、演ずるとは何か!? ちょっと真正面からの、でも大事な基本です。
演技とは「人をだますことです!」 つい昨日には、友だちと「今年の担任はハズレやった」とか「思いっきり、はじけようぜ!」と、声を限りに、カラオケやったり、「おひさ~ 元気してる~?」なんてメールを打っていたり、普通の生活をしています。つい数時間前には、お母さんに「朝ご飯ぐらい食べていきなさい!」と叱られたり、溜まったメールにメンドイと思いながら返事を打っていたり、テレビのCMに出ているAKB48のメンバーに「かっこいい」と思っていたり、犬をお散歩びつれていったり、ごく日常のことをしていて、小屋(劇場)に入って、衣装を着け、メイクをしたら、いろんなキャラに変身して、泣いたり、笑ったり、演じます。
これって、あけすけに言えばウソですよね? さっきまで仲の良かった部員同士が、憎しみ会う恋敵になったり、学校大好きネエチャンが引きこもりの子になったり、中には赤ずきんになる人もいます。
これってウソなんですが、舞台に立っている間は真実なんです。真実だから、お客さんは感動してくれます。真実でなかったら、観客はすぐにしらけて引いてしまいます。
では真実としてのウソ(演技)の話をしましょう。
だれか一人、ウメボシか、レモンについて説明してください。「丸くって、こんくらいで、赤っくって、フニャとしてて、すっぱくって……」という具合です。まわりのみんなは質問します「赤て、どんな赤?」「うんとね~ たそがれた赤」「なにそれ?」「う~ん……ドドメロ!」「アハハ」「真っ赤っかもあるよ、ご飯が赤うなるねん。コンビニの弁当なんかそうやねえ」などとやりとりしていると、口の中に唾が湧いてきて、酸っぱくなってきませんか? これが演技の始まりなんです。
目の前にウメボシがあるわけではありません。もちろん口の中にもありません。でもしっかりウメボシは出現したんです。もし、これを側で見ている人(入部希望の見学者とか)もウメボシを感じてくれたら、立派に『ウメボシ』という寸劇のできあがりです。
もう、分かりますよね、演ずる側がウソを真実と感じていれば伝わるものなんです。
次にレッスン。両手の親指と人差し指をくっつけて目の前に持ってきてみてください。またはそう指示します。そして、「左手に針、右手に糸を持っていると思いましょう」 すると、あ~ら不思議、そんな気がしてきたでしょう? 目は存在しない針穴と糸を見て、針穴に糸を通すときなんか息を止めているんじゃないですか? やっているほうも、観ている方も、そんな気がしてきます。通すと、針がきになりますね。ちゃんと針山に刺しておきましょう。これで「糸通し」という芝居ができました。
次に「縄跳び」 校庭がいいですね、二人が見えない(無対象といいます)大縄跳びの縄をもって回します。残りのみんなは、その回っている縄の中に入っていきます。これ、不思議なことに、初心者でもたいていできます。存在しない縄を見つめ、それを目で追って、入っていくタイミングをはかってしまいます。無対象なのに、縄がひっかっかったりすると「あーあ」とか「あ、ごめん!」とか自然に出てくるから、不思議っちゃないです。これで「縄跳び」という芝居ができました。
さあ、ここからです。無対象で玉子を割ってみてください……どうです……「あれぇ?」今までのようには、簡単にできないでしょう。コツが入ります。玉子を感じられなかったら、本物で一度やってみて試してみてください。玉子はつまむのではなく、手全体でつかんでいることに気がつきませんか。そして、コンコンと割ったあと、九十度回転させて、割れ目を自分の方に向けていることに気づけば「あ!」と、感覚的な発見があります。そして、勘のいい人は、玉子を持ったときのヒンヤリしたザラザラ感や、割ったあとに手にまといつく白身のネトネトまで感じるとおもいます。
今回は演ずることはウソをつくことだと言いました。まず自分自身をだませるようになってください。次回は、この無対象の発展系のメソ-ドのお話をしたいと、思います。
もっと早く、先のほうを早く知りたい人は『女子高生HB』で検索してください。へんなサイトじゃないですよ、正式なタイトルは『ホンワカ女子高生HBが本格的に演劇部にとりくむまで』という、長ったらしいタイトルの小説形式の、高校演劇入門書です。では、また……
大橋むつお
今回は、演ずるとは何か!? ちょっと真正面からの、でも大事な基本です。
演技とは「人をだますことです!」 つい昨日には、友だちと「今年の担任はハズレやった」とか「思いっきり、はじけようぜ!」と、声を限りに、カラオケやったり、「おひさ~ 元気してる~?」なんてメールを打っていたり、普通の生活をしています。つい数時間前には、お母さんに「朝ご飯ぐらい食べていきなさい!」と叱られたり、溜まったメールにメンドイと思いながら返事を打っていたり、テレビのCMに出ているAKB48のメンバーに「かっこいい」と思っていたり、犬をお散歩びつれていったり、ごく日常のことをしていて、小屋(劇場)に入って、衣装を着け、メイクをしたら、いろんなキャラに変身して、泣いたり、笑ったり、演じます。
これって、あけすけに言えばウソですよね? さっきまで仲の良かった部員同士が、憎しみ会う恋敵になったり、学校大好きネエチャンが引きこもりの子になったり、中には赤ずきんになる人もいます。
これってウソなんですが、舞台に立っている間は真実なんです。真実だから、お客さんは感動してくれます。真実でなかったら、観客はすぐにしらけて引いてしまいます。
では真実としてのウソ(演技)の話をしましょう。
だれか一人、ウメボシか、レモンについて説明してください。「丸くって、こんくらいで、赤っくって、フニャとしてて、すっぱくって……」という具合です。まわりのみんなは質問します「赤て、どんな赤?」「うんとね~ たそがれた赤」「なにそれ?」「う~ん……ドドメロ!」「アハハ」「真っ赤っかもあるよ、ご飯が赤うなるねん。コンビニの弁当なんかそうやねえ」などとやりとりしていると、口の中に唾が湧いてきて、酸っぱくなってきませんか? これが演技の始まりなんです。
目の前にウメボシがあるわけではありません。もちろん口の中にもありません。でもしっかりウメボシは出現したんです。もし、これを側で見ている人(入部希望の見学者とか)もウメボシを感じてくれたら、立派に『ウメボシ』という寸劇のできあがりです。
もう、分かりますよね、演ずる側がウソを真実と感じていれば伝わるものなんです。
次にレッスン。両手の親指と人差し指をくっつけて目の前に持ってきてみてください。またはそう指示します。そして、「左手に針、右手に糸を持っていると思いましょう」 すると、あ~ら不思議、そんな気がしてきたでしょう? 目は存在しない針穴と糸を見て、針穴に糸を通すときなんか息を止めているんじゃないですか? やっているほうも、観ている方も、そんな気がしてきます。通すと、針がきになりますね。ちゃんと針山に刺しておきましょう。これで「糸通し」という芝居ができました。
次に「縄跳び」 校庭がいいですね、二人が見えない(無対象といいます)大縄跳びの縄をもって回します。残りのみんなは、その回っている縄の中に入っていきます。これ、不思議なことに、初心者でもたいていできます。存在しない縄を見つめ、それを目で追って、入っていくタイミングをはかってしまいます。無対象なのに、縄がひっかっかったりすると「あーあ」とか「あ、ごめん!」とか自然に出てくるから、不思議っちゃないです。これで「縄跳び」という芝居ができました。
さあ、ここからです。無対象で玉子を割ってみてください……どうです……「あれぇ?」今までのようには、簡単にできないでしょう。コツが入ります。玉子を感じられなかったら、本物で一度やってみて試してみてください。玉子はつまむのではなく、手全体でつかんでいることに気がつきませんか。そして、コンコンと割ったあと、九十度回転させて、割れ目を自分の方に向けていることに気づけば「あ!」と、感覚的な発見があります。そして、勘のいい人は、玉子を持ったときのヒンヤリしたザラザラ感や、割ったあとに手にまといつく白身のネトネトまで感じるとおもいます。
今回は演ずることはウソをつくことだと言いました。まず自分自身をだませるようになってください。次回は、この無対象の発展系のメソ-ドのお話をしたいと、思います。
もっと早く、先のほうを早く知りたい人は『女子高生HB』で検索してください。へんなサイトじゃないですよ、正式なタイトルは『ホンワカ女子高生HBが本格的に演劇部にとりくむまで』という、長ったらしいタイトルの小説形式の、高校演劇入門書です。では、また……
大橋むつお