大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・イスカ 真説邪気眼電波伝・04「幻想神殿・1」

2017-12-31 15:13:48 | ノベル

イスカ 真説邪気眼電波伝・04

「幻想神殿・1」

 

 

 《幻想神殿》のタイトルが浮かび上がる。

 

 瞬間でオレの脳みそはクリアーになる。

 オープニングのアニメなんてすっ飛ばせばいいんだけど、オレは毎回きちんと観る。

 

 最初は、どこにでもある六畳ほどの部屋。

 ポタポタと蛇口から水が滴る音がして、それが気になって部屋を出て階段を下りる。下りて直角に曲がるとリビングダイニングのドア……オレの家に似ている……ドアを開けると、ますますオレん家に似たリビング。カウンターの向こうがキッチン……カランが緩く、蛇口から水滴が落ちている。シンクは水がいっぱいで、今まさに溢れそう。手を伸ばしてカランに手を掛けギュっと締める。

 とたんにシンク一杯の水は渦を巻いてオレは呑み込まれる。

 呑み込まれるとどんどん深みに吸い込まれ、周囲が薄暗くなって、オレは必死でもがく、もがく、もがく……向こうに針の穴のような光が見えて、光に向かって泳いでいくと加速度がつき、溺れる寸前に水面に出る。ゼーゼー言いながら見上げた空、そこの雲の頂に幻想神殿が見え――あそこだ!――そう悟ると、潜水艦から撃ちだされたトマホークミサイルみたいに空中に飛び出す。

 ずんずん飛んでいくんだけど幻想神殿はいっこうに近づいてこず、最下層の雲に着地する。

 着地すると、雲は大地に代わり、目の前にメニューが現れる。最初のころは運営さんのアバターが待ち受けていて親切に解説とチュートリアルの手助けをしてくれる。三年目になろうとするオレは手早くHP、MP、アイテムを確認するとアバターの選択をスキップ(予備のアバターは三つあるが基本的にはデフォルトに近い剣士だ)し、メニューウィンドウを呼び出し、攻略中の48層をクリックする。

 メールが三通入っていたが即削除。

 見なくても分かってる、オレの戦闘を垣間見たプレーヤからのお誘いとか招待状だ。

 オレはギルドには入らない、いわゆるソロプレイヤーだ。ハンドルネームはデルス・ウザーラ。黒沢映画に出てくる孤高の狩人の名前だ。アニメの背景を検索していたら黒沢映画にたどり着きググっているうちに『デルス・ウザーラ』にヒットし、ガラにもなく観てしまった。ま、よほどの映画マニアでなければ知らない名前だ。

 48層は草原と森林が多い。全体のマップを把握していないんで見た限りなんだけど、大小の湖とかもあるようで、しばらく腰を落ち着けるにはいいところだと思う。

 林の中に罠を仕掛けてある。ピーボアのコロニーを発見したんだ。

 おいしい猪の一種で、まとめて売ればいい値段になる。

 あくせく狩に精を出したり、攻略に血道を上げる人間じゃないんで、このゲームで生きていくに必要なスキルとアイテムが手に入ればいいんだ。

 罠を仕掛けた窪地まで来てビックリした。

 

 罠に女の子がかかっていたのだ! 

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高校ライトノベル・小説大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・9『情報というより評判』

2017-12-31 06:27:11 | 小説・2

小説大阪府立真田山学院高校演劇部
公式ブログ・Vol・9『情報というより評判』 
 



☆情報というより評判
 
 前回の8号の反響が大きかったので、部員全員で考えました。
「では、臨時部会の出席をとります。九鬼あやめ!」
「はい!」

 これで出欠とるのはお終いです。なんといっても、あたし三好清海を入れてたった二人の部員です。

「先輩の言うてはった『情報なしに公演を観に行くことは出来ません』と某高校さんが言うてはったのを『一見正論のようですが、基本的に間違ってる』と言い切るのは、ちょっと飛躍してませんか?」
 
 一年のくせして言いたいこと言いです。

「情報がなかったら、某高校さんの言わはるとおり、行きようありません」

 先輩に断定で、もの言うか?

「たいていの公演は、その気になって検索したら分かる。それから、逆に聞くけど、公演の情報あって観にいくか?」
「全部はむりですけど」
「そないして、三本も観たら交通費と時間返してくれて言いたなる。去年のコンクールでもそうやった。地区総会で『お互いの芝居も観ましょう』て、どこの地区でも言うてたけど、どこも閑古鳥。どないかすると、観客席より舞台におる人間の方が多い」
「その断定の根拠はなんですか?」
「数えてたもん。某地区の某高校は、観客25人。舞台はスタッフこみで15人」
「え、それて観客の方が多い」
「観客の11人は、某校の関係者と家族。これ引いたら一人少ない」
「……」
「なんや、言いたいことあったら言い」
「そやけど、K高校とかO高校とかM高校とか、けっこう入ってたいう話です」
「アホ、よう覚えとき『特殊をもって典型とするなかれ』民芸の滝沢修さんの名言や」
「だれですか、滝沢修とか民芸とか?」
「知らんのん!? ヘソ噛んで死ね!」
「……おへそまで口届きません」

 と、アホな話は、ここまでとして、真田山の意見として補足します。

 宣伝は必要やけど、元来は連盟に一元化して、連盟のサイト見たら分かるようにするのが正当。その上で、それぞれが情報発信する。連盟のオオヤケのとこに20年以上かかって、アクセスが23万ちょっと言うのは絶対少ない。情報のターミナルとして機能してません。割ってみたら、よう分かります。一年でアクセスざっと10000。一見すごそうやけど、一日で割ったら28あるかないかです。こんなん高校生が個人でブログやったって楽に、これくらいはいきます。けど「高校演劇」で検索したらYAHOOで二位、GOOGLEで三位。いかに日本において高校演劇がショボイかようわかります。
 ちなみに大隈ケイコさんが個人的にやってはるブログはもう200万件のアクセス。どないです?

 で、九鬼あやめと話して結論に達しました。情報量より評判や。

 評判が良かったら、人は探してでも観にきます。逆にスカタンな芝居は、どない宣伝しても観客は集まらへん。
 分かり易い例えで、東京の山手線はJRに代わったとき大々的に宣伝して『E電』て名前つけたけど、今はそない言う人いてません。看護師のことを、いまだに「看護婦さん」言う人は多いです。
 要は、評判なんですね。高校演劇「オタク、暗い、ダサイ、おもんない」の四拍子。
 やっぱり、ストイックに稽古して、力つけて、一般の人が観て面白いいうもんにならなあきません。
 かつて西成に車座いう劇団がありました。日雇いのオッチャンらが会場の小学校の講堂に鈴なりやったそうです。地味な公演重ねながら評判をとってきはったんですね。
 
☆演目決定

『すみれの花さくころ』に決まりました。決まりがわるいんで、3年前某高校がやった、と、書きましたけど、うっとこです。主演は映画やテレビで活躍中の先輩坂東はるかさんです。正直プレッシャーです。AKBやないけど『永遠プレッシャー』です。あたし個人としてはやりたない。やりたいけどやりたない。うちの演劇部には、そういう芝居です。
 もう一人、決まってるんですけど、まだ正式やないんで個人名は伏せます。

☆集団縄跳び(基礎練習)

 縄なしで縄跳びします。最低5人はいります。見えへん縄を、みんなが見てタイミング計ったり、縄引っかけたりしたら、直ぐにみんなに分かります。演技とは自分を騙すことです。ウソや思たらやってみてください。面白いのは請け合います。


  文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 

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高校ライトノベル・イスカ 真説邪気眼電波伝・03「オレは単なるオブジェクト」

2017-12-30 14:53:27 | ノベル

イスカ 真説邪気眼電波伝・03

「オレは単なるオブジェクト」

 

 

 バグみたいなもんだろう。

 

 ため息一つついて家路についた。

 あとから思うとどうかしてるんだけど、動き出した現実はあまりに日常的すぎる。再起動と言ったらしっくりくる。

 ロードワークを終えた女子テニスたちは、眩しいほどに頬を上気させ、テニスコートまでの数百メートルを軽やかに走っていく。とても、ついさっき屋上から飛び降りる佐伯さんを発見したようには見えない。

 校門から出ていく西田さんと至近距離ですれ違ったり追い越したりしても、みんな普通だ。いま誰とすれ違った? そう十人に聞いたとして、その十人みんなが「えーーと?」と考えてしまうだろうほどに、その印象は薄い。

「す、すみませ……」

 通りに出たところで西田さんは自転車とぶつかりそうになって、とっさに尻すぼみに謝った。

 今のは自転車が悪い。スマホを見ながらの片手運転、ろくに前を見ていない。

 載っていた学生風は意に介することも無く、そのまんま行ってしまう。西田さんが謝ったとも気づいていないだろう。

 転校してきた時からだけど、西田さんは人の顔を見て話すことが無い。いや、話すことじたい少ないんだ。うちは良くも悪くも普通の学校だから、イジメというのはほとんどない。オレ自身人交わりが少なくて、他の学校だったらイジメられていたかもしれない。

 だから、たった今、裂ぱくの気合いで時間を停め、墜落死寸前の佐伯さんを助けたのが信じられない。

 助けただけでなく、自らを堕天使イスカと名乗って、縁起に行き詰っていた佐伯さんにクィーンオブナイトメアのフリを身をもって教えたなんて……俺の白昼夢、いや、バグに違いない。

 角を曲がると西田さんの姿が無かった。

 多分、さっきの事と西田さんのあれこれ考えているうちに、前を歩いている西田さんの存在に気を停めなくなってしまったんだ。ボッチのオレが言うのもおこがましいほど西田さんの影が薄いということになる。きっと一つ二つ手前の筋に入ってしまったんだろう。

 ま、つまりはバグだ。

 ときどき思うんだ。この世の中はだれかがやってるゲームでさ。オレたちは単なるオブジェクトに過ぎない。すんごいゲームだから作りこみがハンパなくて、オブジェクト自身が自分は生きてるんだと錯覚してしまう。むろんゲームだからプレイヤーがいるわけなんだ、そいつらが、いろいろ適当にやったり熱を上げたりしてゲームが回ってる。

 だから、さっきのはバグだ。今頃は運営さんが大慌てでいじくってるんだろう。

 まあいい、オレは単なるオブジェクトだゲームに介入なんてできない。介入ってか、なんか行動おこしても、それはプログラムされたことだから自分の意思でなんかあろうはずもない。ま、気楽に行こう。

 

 家に帰るとオレは主役になる。

 

 二十秒で着替えるとパソコンを起動させる、コントローラーを手に三十秒ほどでオレはダイブする……。

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高校ライトノベル・小説大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・8『ちょっと理屈っぽいです』

2017-12-30 06:20:05 | 小説・2

小説・大阪府立真田山学院高校演劇部
公式ブログ・Vol・8


 いろんな演劇部がブログを書いてはります。

 某高校さんのブログも、いつも興味深く読ませてもろてます。数あるブログの中でも継続性と何気ない日常の描写にすぐれています。理屈の多いうちらも見習いたいもんです。

 情報発信は、演劇という文化活動をやっていく上での重要なファクターですけども、根本問題ではないと思います。某高校のみなさんの意見は下記のように要約されます。

「知っていたら、情報があったら観に行ったのに」と思う公演もたくさんあるのです。これって本当にもったいないことだと思いませんか?やはりどれだけ観劇が好きな人でも、情報なしに公演を観に行くことは出来ません。

 一見正論のようですが、基本的に間違ってるように、あたしには思えます。

 たとえテレビや新聞などのメディアが取り上げても、一般の観客に継続的に支持していただき、リピーターを増やさなければ、観にいく人間は増えません。
 昨年某大企業が高校生向けの創作劇の募集をやり、新聞の文化欄にも取り上げられました。そやけど、後が続きません。あんなに大絶賛された鷲見さんの『LOCK ME!』が続きません。
 強調しときますが、一般の観客がリピーターとして付けへんかったら、いくら天下の平目モリコ氏が絶賛しても、一般の人たちが興味を持たへんかったら、その場限りの打ち上げ花火に終わってしまいます。ちゃいます?

 OHDに参加している一部の学校の公演は、その場にいると、ひところの小劇場の隆盛を思わせるものがあります。せやけど、冷静に観客席を見ると観客の大半が、高校演劇関係者ばかりで、一般の観客は居ないに等しく、むろんマスコミが来ることもないことに気付きます。

 大阪の高校演劇の部員は、ひいき目に見ても1000人は超えません。大阪には261の高校があり、生徒数は一校500あまりとして13万人ほどになります。その中のわずか1000人たらずしか演劇部員はいてへんのです。いわば、これがパイで、取り合いをしてもたかが知れてます。

 観劇が好きな人は、野球にはおよびませんが、そこそこにいることは、商業演劇などの観客動員数を見ても明らかです。この人たちが付いてけえへんかったら増えようがありません。そない思いません?
 高校演劇は違うのだとおっしゃる先生もおられますが、これは、単なる言い訳やと思います。
 プロ野球と高校野球の観客は、かなりの確立で重なります。軽音に、その傾向が出始めています。スニーカーエイジの隆盛を見るまでもなく(軽音は7000人収容の舞洲アリーナが満席になります。高校演劇の本選は、公表されませんけど、総計1000を超えてません)軽音は軽音以外の観客を取り込み始めています。

 原因は、ぶっちゃけて言うとパフォーマンスとしてのクオリティーの違いです。大阪弁で言うと「おもんない」からです。

 このクオリティーの低さは、第一に戯曲のお粗末さ。創作期間が、たったの一カ月あるかないかの創作劇。これでは、まともな本になりません。
 そやさかい、戯曲としての体をなしていないものには、演劇部自身も興味を持ちません。
 分かり易い証拠は「大感激した!」と誉められるような創作戯曲でも、他校が「こんないい芝居ならうちでもやろう!」に、どうしてならへんのでしょう。

 高校演劇の神様、榊原政常先生の本など、高校演劇を飛び出してプロの劇団が上演するほど高いクオリティーがあります。ウソやと思たら『しんしゃく源氏物語』で、検索してください。新旧あわせた公演の記録や予告で溢れてます。
 もう出来心のような創作劇や、小劇場のコピーは止めたほうがええんとちゃいます? 本気で戯曲の勉強をしませんか。現役の高校生は最長でも3年です。OBでも顧問の先生でもかまいません、「おたくの本演らせてください!」と言われるような本を書いて下さいませんか。

 第二に、役者がヘタすぎることです。十年に一人ほど個人的に才能のある子が出てきます。しかし、その子の力が光るのは、皮肉ですけど高校演劇を卒業してからです。
 大阪の高校演劇には、そういう子を生かすだけの創作劇がありません(大阪は90%が創作劇なので、劇=創作劇)。 その子を輝かせるだけの演出も居なければ、相手役を演れる子もいてません。劇作も演技も、よほどの天才でないかぎり、他の分野同様に毎日欠かさないストイックな努力が必要です。うちらは、それでやってます。

 けして、情報量が少ないことが致命傷ではないと思います。情宣ができれば解決できるようなレベルの問題ではない言うことです。

※念のため

 これだけは言うときます。某高さんは的は外しておられますが、この元気な情報発信は応援します。「ホームラン王は一番三振が多い」という名言があります。うちらみたいなスカタンでもかまへんと思います「あたしらはこう思う」という情報を発信してください。是々非々で論戦しましょう。論戦が、少しは人々の意識を変えるかもしれません。本業の芝居作りにも力を注がれているようですね。本選の舞台で観られることを楽しみにしています。

  文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 

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高校ライトノベル・イスカ 真説邪気眼電波伝・02「堕天使イスカ」

2017-12-29 16:46:46 | ノベル

イスカ 真説邪気眼電波伝・02

「堕天使イスカ」

 

 

 四メートルも落ちると佐伯さんはコンクリートに激突し、真下にした頭はザクロのように破裂してしまう!

 

 その無残さを自覚しているのか佐伯さんの両眼は閉じている。ひょっとしたら気絶しているのかもしれない。

 髪は後ろにたなびいて形のいいオデコが露出している。

 オデコが露出すると、ちょっと子どもっぽく、整った顔と相まって、いつもの美少女顔よりは可愛いというイメージになる。

 眉間に力が入って眉が緩い逆さへの字になって苦悶の表情、まつ毛の端には光るものが……たぶん泣いている。

 そんな佐伯さんを美しいと思ってしまう。

 佐伯さんの顔をこんなにマジマジと見たことは無い。

 

 こんなに観察ができるのは、佐伯さんが空中で静止しているからだ。

 佐伯さんだけじゃない、見える限りの世界が静止している。動いているのは、ゆっくりと佐伯さんに手を伸ばしながら近づいている西田さん……そして、それを見ているオレだけだ。

 なぜ、オレには見えている? というよりは見えていることがヤバい気がして静止しているふりをする。

 距離はほんの五メートルほどだけど、二人の死角になっているので気づかれることはないだろう。

 

 コーラスの指揮をするように西田さんの手が動くと、佐伯さんはゆっくり降りてきて、背の高さほどになるとクルリンと回って静かに足から着地した。

「わ、わたし……」

「不本意かもしれないけど、目の前で死なれるのヤダから助けたの……」

「……西田さんが?」

「われは堕天使イスカ。この時空の堕天使たちの束ねにして暗黒魔王サタンの娘。故あって、この地上にあれども、そは時が満つるまで。この学校には結界が張ってある。結界の内を血で穢されては綻びとなる。そのために助けたの、もう馬鹿な真似はしないで……だめか、文化祭の芝居に行き詰まっているのね。下らないことだけど、このために人の心が歪むのは見過ごせない……心の歪は結界の障りになる……」

 サタンの娘? それならビーデルじゃないか。オタクのオレはドラゴンボールのビーデルを思い出した。

 いや、あれはサタンではなくミスターサタン……だったよな。

 

「わたしが特別に教示してやろう。よいか、いや、いい……」

 

 そう言うと、西田さんは体を七三に構え、右手を……なんと言うか遠くを見る時に手で庇を作るように、いや、それよりやや高く右手を構え、左手を胸の高さにして右手の肘あたりに添える。そうそう『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の黒猫というか、『ラブライブ!サンシャイン!!』のヨハネこと津島善子の邪気眼決めポーズをとる。

「われはクィーンオブナイトメア、みだりに我が名を口にするものは、堕天使の電撃に触れて、ただの一つしかない命を落とすであろう。さもなくば、我が名をあがめ恐怖とともに讃えよ、さすれば雨後の蚊柱のごときそなたたちにも堕天使の天啓が下りるやもしれぬぞ、さあ、諸手を挙げ天の奥つ城にこそあれかしと我が名を讃えるのだ!」

「す、すごい! 本当の堕天使みたい!」

 佐伯さんが感極まって拍手する。ついさっきまで思い詰めて飛び降り自殺をやった人間とは思えない。ま、たしかに西田さんの決めポーズと決め台詞は真に迫っている。

「みたいじゃなくて本物の堕天使よ。さ、やってみて」

「は、はい……」

 見本を示したのが本物の堕天使なので、佐伯さんは三回目にはすっかりマスターしてしまった。

 オレは見とれてしまったが、この状況はおかしい、説明がつかない、有りえない!

 だが、俺が催眠術にかかっていたり、知らぬ間に超高性能なVR体験をしているのでなければ、堕天使系ファンタジーが実際に起ころうとしているんだ。ますます目が離せないぞ、これは。

「それでは時の流れを呼び戻すことにするは、時が戻れば、あなたが自殺しかけたことは無かったことになる。あなたも、いま静止している者たちも、その記憶は忘れてしまう。いま会得した決めポーズと台詞は残るから……では、わたしが校門を出たところで全てが戻る。それじゃ」

「あ、ありがとう西田さん!」

 

 西田さんが振り返らないまま校門を出ると、バグが回復したように喧騒が戻ってきて、再び学校は動き始めた。

「あ、えと……そうだ、先生と門田くんに見てもらわなきゃ!」

 西田さんは小気味よく回れ右をして校舎の中に戻っていった。

 

 で、俺の記憶は消えていないんだけど……いいのかよ!?

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高校ライトノベル・小説・大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・7

2017-12-29 06:49:13 | 小説・2

小説・大阪府立真田山学院高校演劇部
公式ブログ・Vol・7 



☆部内で意見が対立!

 たった二人の演劇部で、どないしたら対立すんねん!?

 そういう声が聞こえてきそうです。実際は見解の相異という程度のことなんですけど、キャプションはショッキングな方が面白いのです。

 何を対立しているかというと、演目です。

 わたしは、個人的にも真田山の部長としても『にんじん』を絶対やりたいんですが、一年の部員の九鬼あやめが、ちゃうことを言い出しました。
 前も書きましたが、『にんじん』の最大のネックは、ルピック氏役の男子がおらんことです。あの役は寡黙な中年のオッサンの役で、寡黙であるだけやのうて、時には厳しさと、ルピック氏自身が持て余すような愛情が表現できんとあきません。並の高校生がほんの一カ月ほどやってできるシロモンとちがいます。

 じつは、あたしにはアテがありました。軽音の幽霊部員で、シブイ男子がおったんです。エグザイルの曲なんか歌わしたら、ちょっと高校生離れした表現ができる子です。
 この子が、幽霊辞めて生き返ったのが誤算。ことしのスニーカーエイジの隠し球やったみたいです。

 九鬼あやめが『すみれの花さくころ』がやりたいと言うてきました。単に思いつきではなくて、あやめなりに、青雲書房の原作と、ネットに出てる改訂版も読んで、You tubeで上演作品も観ての意見です。
 憎たらしいのは、名古屋音大さんがやらはった曲を、もうマスターしてることと、ちょい役で出てくる由香いう役を演れる子まで見つけてるいうことです。

 発言や提案には、具体的な裏付けがないとアカンいうのを見事にクリアーしとります。

 ただ、問題点があります。本選の審査員がX氏やいうことです。三年前の本選で、この作品をやった学校を、以下のような理由で落とした人です。

「作品に血が通っていない。行動原理、思考回路が高校生ではない」

 上演作品を超えて、戯曲そのものを否定してかかった人です。どんなにうまいことやっても、大阪は既成作品いうだけでハードルが高い。そこへもってきて、X氏がボロボロに言うた本やって、どないすんねん!?
 最初のブログで「予選落ちの真田山」て書きましたけど、そこに山があるから登るごとく、そこに本選があるんやから目指したくなるのは演劇部員、それも部長とあればアッタリマエです。
 はなから落とされると分かってる本はなあ……。

☆今、こんな歌やってます
 ディズニーの『アナと雪の女王』の『Let it go!』 松たか子さんが日本語でやってますけど、うちらは英語でやってます。役になりきって、アクション交えて。
 これを臆面もなく、グラウンドでやります。いっぱい運動部が練習してる中、雰囲気はアウェーですけど、これも練習。裏話ですけど、あやめが入部をそそのかしたんは、この『Let it go!』を横で聞いてた子で、このディズニーアニメが大好きな子です。一年ながら九鬼あやめは、なかなかしたたたかな子です。

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ)

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高校ライトノベル・イスカ 真説邪気眼電波伝・01「停まれーーーーーーっ!!」

2017-12-28 15:18:00 | ノベル

イスカ 真説邪気眼電波伝・01

「停まれーーーーーーっ!!」

 

 文化祭を三日後に控えた教室は茜色の夕陽に染め上げられ、カラスが鳴いたら仲良くおてて繋いで帰りたくなるような穏やかさだった。

 

 だが、それは管理職のアリバイに、後ろ手組んでのんびり校内を巡視している、定年を数カ月後に控えた校長の目に映った――こうあって欲しい――願望というフィルターを通した光景に過ぎない。三十七年にわたる教師の経験で、もう二三秒見ていたら穏やかな夕陽に化かされることも無かったかもしれない。

 

 教室にはクラスの半分の十八人と担任の香奈ちゃんが重苦しい空気に押しつぶされそうになっていた。

 

「……もう一度やって」

「無理よ……やるたんびに離れていっちゃうんでしょ」

 佐伯さんはゴスロリ衣装の裾を広げ、床にしゃがみ込んだまま立ち上がろうともしない。

「ここんとこ決まらなきゃ、ラストシーンの書きようがないよ」

 静かな声だが、門田が切れかかっているのは誰もが分かっている。香奈ちゃんは落としどころを探るように腕組みして天井ばかり見ている。クラスのみんなは、痛々しくて床に目を落としたりアサッテの方を見たり、てんでバラバラだけど、佐伯さんと門田の方を見ないという点では一致している。

 

 ようは行き詰ってるんだ。

 

 嫌がる門田に脚本と演出を押し付け、これまた気の進まない佐伯さんの主役を決めたのが一か月半前。

 脚本は『MASCHERA 〜堕天した獣の慟哭〜』というタイトルがハナから決まっていた。数年前に流行ったアニメの劇中劇、なんとなくカッコいいということだけで、中身を吟味することも無く多数決で決まった。佐伯さんはお母さんがクール系の女優さんで、母親譲りの美人だ。佐伯もお父さんが作家。なんとなく、この二人に任せておけば出来るだろうという雰囲気で決まってしまった。

 二週間前には脚本も演技も行き詰まっていたんだけど「じゃ、大道具とか衣装とか先にがんばったら雰囲気もできるんじゃない?」香奈ちゃんの教師らしい一言で二週間持ちこたえたけど、ここにきてデッドロック!

 本が書けてこないからと佐伯さん、主役がイメージにのってこないからと門田。

 むろん面と向かって言うことはないけど、周りの人間は思っている。思っているから、それぞれ門田と佐伯さんの肩をもって、より空気を悪くしている。クラスは、ここに居ない半数の無関心と、もう半分の門田、佐伯派に色づいて危機に瀕している。

「じゃ、キャストと演出だけ残って続けよっか、みんな残っていてもプレッシャーなだけだし」

 天井に向けた視線を下ろして香奈ちゃんが言う。みんな控えめにホッとして、帰り支度を始める。

 気がとがめないことも無かったけど、残っていてもなんのプラスにもならない。オレは他の十七人とともに教室を出た。

 

 昇降口に降りると、図書室にでも居たんだろう、西田さんが靴を履き替えていた。

 

 西田さんは二学期になって転校してきた。

 静かな優等生で、あまりしゃべらない。

 女子は下の名前で呼び合うことが多いんだけど、西田さんは佐伯さんと並んで苗字で呼ばれている。

 豊かな黒髪は前髪を切りそろえたロング、制服のリボンを緩めることも無く、黒縁の眼鏡と相まって表情はうかがえない。

 笑うと可愛いという男子もいるが、オレは笑顔どころか「おはよう」と「田島君掃除当番よ」という言葉以外聞いたことが無い。

 

 近寄りがたいので二三秒タイミングをずらして昇降口を出た。

 

 時計塔まで来たところで悲鳴が上がった。

 発見したのはランニング帰りの女子テニスの集団。校舎に背を向けていた下校する生徒たちも女子テニスの指さす屋上に目を向けた。

 佐伯さッん…………!?

 佐伯さんがゴスロリ衣装のまま屋上の柵を超え、屋上の縁に立っている。

――飛び降りるつもりだ!――

 秋の夕陽は見渡すものすべてを茜色に染め上げているが、ゴスロリ衣装は佐伯さんの闇そのままのように漆黒だ。

 

 キャーーーーー!

 

 再び女子たちの悲鳴が上がった。

 女子たちは、佐伯さんが跳ぶ前の気の張りつめ方で察したんだ。男子たちの「ウオーーー!」よりも一瞬早い。

 スカートを気にした佐伯さんは両手を広げ、真っ逆さまに墜ちていく。

 だれもが地面にたたきつけられる佐伯さんの姿を思い浮かべ目を背けた瞬間に、裂ぱくの叫びが聞こえた。

 

「停まれーーーーーーっ!!」

 

 佐伯さんは、二階と三階の中間で水泳の高飛び込み選手のように静止していた。

 

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高校ライトノベル・小説・大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・6

2017-12-28 06:45:36 | 小説・2

大阪府立真田山学院高校演劇部
公式ブログ・Vol・6



☆あせってます

 先週は先輩の女優、坂東はるかさんが来てくれはって、半日いろんな芝居の基礎から、食堂のカラマヨ丼の話までして、テンション、モチベーション上がりまくりでした。
 せやけど、半日のことは、しょせん半日のこと。今週は、もう気持ちサゲサゲです。

 顧問の淀貴美先生と誓うた「ルピック氏を演る男子」が決まりません。

 11月のコンクールに何を焦ってと言われるかもしれませんけど。考えてください、野球部なんか半年ぐらいかけての調整は当たり前。甲子園行くような学校は、一年掛けて選抜メンバーのふるい落とし、癖の矯正やら、めっちゃストイックに、かつ長期的展望に立って練習やってます。軽音も『スニーカーエイジ』目指して、猛特訓やってます。
 演劇部は、どこもノホホンとしてるさかい、たいての学校はOHPが終わったあたりからの泥縄。みんながそないやさかい、なんとも思わへんねやろけど、それは、この一言。

信号、みんなで渡れば怖くない」

 みんなしょうもない芝居演るさかい、目立てへんだけ。せめて毎日放送の『ちちんぷいぷい』に取材に来てもらえるぐらいのココロザシがないとあかんと思います。ココロザシの裏付けは日々の努力。で、努力するためには、当たり前やけど「努力する人間」が必要です。おらん人間に努力のさせようもありませんでしょ?

☆で、考えてます

 女子二人でもやれる芝居。あたし三好清海と九鬼あやめのデコボココンビでも演れる芝居
 あたし的には、オールビーの『動物園物語』なんか演りたいんですけど、キャストを女子に変えての上演許可は、ごっついむつかしいらしいです。

 ちょい役一人入れて『すみれの花さくころ』も考えてます。この芝居は名古屋音大がミュージカル風にやったのをYOU TUBEで見てから惚れ込んでます。うちも坂東はるかさんが現役やったころに、本選まで行った芝居。ネットで検索したら名古屋のプロのオペラ歌手やら、北陸の劇団、関東の中学校でもやってる名作みたいです。下にYOU TUBEのショートカット入れときました。

     https://youtu.be/ItJpVtCcxMQ

 これクリックして見てください。後半1/4ですけど、あたしの感激分かってもらえると思います。

 せやけど、今年の審査員は、そのときの真田山の芝居をわけ分からん理由で落とした人です。やったら、また「作品に血が通っていない。思考回路、行動原理が高校生ではない」て言われるのん目に見えてます。
 え、その前に真田山は予選落ち? 縁起でもないこと言わんといてください。

☆近所の噂

 軽音が、午後6時を超えると近所から苦情の電話が来るらしいです。うちらとしては、両方の気持ちが分かります。近所の人には、ただの騒音。
 軽音は『スニーカーエイジ』がかかった命がけ。せやけど学校は冷房許可してくれません。唯一の例外は情報の教室。コンピューターがいっぱいあるんで、年中冷房。
 機械が冷房されて、生徒が熱中症寸前で練習やってても「がまんせい!」や。なんかひっくり返ってるような気がします。しません?

 で、熱中症で倒れる生徒が出て、マスコミがきたら「配慮が足りなかった」。で、もし、もし、まあ、そこまではいかへんやろけど死ぬような子が出たら「命の大切さ」いう城東区やない常套句。ほんで一分間の黙祷でおしまい。ちょっと言い過ぎました。淀先生ごめんなさい。

 で、昔は演劇部の発声練習がやかましいいうて苦情がきたらしいです。ええ時代やってんなあ。

 も一つ近所の噂。うちのブロックの某高校は部員ゼロやけど、連盟に加盟したらしいです。先生に聞いたら、大阪全体で、そういう学校が二十近くあるそうです。そんな学校含めて百何校かの加盟。ちょっと寂しいですね。

 試験中なんで、このくらいで。せやけど、試験中になると、こんなブログ書きたなるのは、イチビリか、勉強嫌いか。ちなみに後輩の九鬼あやめは、メール打ったら「先輩勉強しましょう」ええ子やけど、このニクソさはなんやろね?

 他の演劇部さんも、3校ほどはブログ続けてはりますね。たいがい一カ月ぐらいで止めてしまうとこが多いから、お互いがんばりましょね!

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 

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高校ライトノベル・小説・大阪府立真田山学院高校演劇部・公式ブログ・Vol・5

2017-12-27 06:09:45 | 小説・2

小説・大阪府立真田山学院高校演劇部
公式ブログ・Vol・5



☆坂東はるか先輩来校!

 映画俳優をやってる坂東はるか先輩が昨日学校に来てくれました。

 一昨日の晩、顧問の淀貴美先生から電話。

「明日、大阪にロケに来てる坂東はるかさんが来はるけど、来る?」
「絶対行きます!」

 で、昨日は、学校の稽古場に使うてるプレゼンテーション教室で、午後から坂東はるかさんに会いました。学年が一回り違うんで、直接の面識はないんで、あたしらには先輩いうよりもスター。朝から緊張のしっぱなし。

 はるかさんは、二年の五月に東京の乃木坂学院から転校してきた人です。理由は親の離婚。東京の名門校から大阪のショボイ(校長先生ごめんなさい)府立高校に変わってきて正直落ち込んだらしいですけど、当時顧問やってた福田乙女先生の口車にのって演劇部に入れられたらしいです。
 御本人も、ほんの腰掛けのつもりやったらしいですけど、いつのまにかのめり込んだいう人です。『すみれの花さくころ』で、本選までいって「作品に血が通っていない」いうワケ分からん理由で落とされたけど、これがNOZOMIプロのプロディユーサーの目に止まって、三年になったころには、もう半分プロでやってはった人です。

 めっちゃ緊張して、朝から制服にアイロンかけて、いつもはせえへんリボンきちっとして、髪の毛も入念にブロー。ひょっとして、あたしもスカウトなんて(ありえへんねんけど)思て、プレゼンのドアを開けました。

 拍子抜けがしました。カメラマンとかスタッフとかマネージャーとかぎょうさん来てるのかと思たら、窓辺にカットソーにGパン、カーディガン肩にかけた普通のオネエサンが居っただけ。で、その人が坂東はるかさん。
「もっと沢山で来ると思った?」
 見透かされてます。
「今日の午後は、完全にオフだから、ごめんね、休みのとこ呼び出しちゃって」
 やっぱりしゃべり出すと女優さんのオーラ。
「違うわよ。あたしって東京弁だから、そう感じるだけ。今は完全な真田山のOGよ」

 で、しばらく沈黙。いっぱい聞きたいことあったんやけど、一つも出てきません。

「今度『にんじん』演るんだって?」
 はるかさんが水を向けてくれました。
「はい、上演料いりませんから」
「アハハ、大阪の子だ!」
 えらいウケました。
「せやけど、ルピックやる男の子が、まだ見つかれへんのんですわ」
「ああ、ルピック氏か……」
 はるかさんの語尾には「高校生には無理だな」という響き。もちろん口に出しては言わはりません。
「やり甲斐のある役なんだけどね」
 答は、そうやったから、あたしの被害妄想かもしれません。

 話したこと全部書いたらブログの制限字数超えてしまうんで、かいつまみます。

「はるかさんが、一番苦手な演技はなんですか?」
 ラブシーン……とか予感してたけど、答はぜんぜん違いました。
「普通に呼びかけられて、振り返るの。だって、声かけられるのはわかってるじゃん。そこ自然に振り向くの、いまだに苦手」
 なんと、あたしらが基礎練習でやってるようなところが苦手というので、ますます親近感。
「今度は、なんの仕事で大阪に来てはるんですか?」
「『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』のロケ。もう半分終わったんだけどね。残りが根性のいるとこばっか。なんだかコンクールの前みたいな気持ち」
「それ、原作本とか出てます?」

 出てたら、図書に言うて買うてもらおと思いました。安かったら自分で買うけど。

「あ、出版社の都合で遅れてるの、来月には出るかな……」
 そう言うと、はるかさんはスマホで、本の表紙見せてくれました。下の写真がそうです。話は、はるかさんの自伝的な小説らしいです。

      


 あと、現役やったころ食堂のカラマヨ丼が好きやったこととか、はるかさんのころから真田山は小規模で、潰れそうで潰れへんことなんか言うてくれはって、勇気づけられました。

☆新入部員紹介

 連休明けて、正式部員になったんで正式に紹介します。むろん名前出すんで保護者の許可はもろてます。

 九鬼あやめ

 苗字と名前のコントラストが面白いと自分でも喜んでる明るい子です。剛力彩芽に名前の音だけいっしょやけど、コントラストの付き方に共通のもんがあります。入部にあたって「髪の毛は切らんこと」だけ言うてあります。タッパから言うと、にんじんの役は、あたしよりあやめちゃんです。けども、先どないなるか分からんから、どんな役が来てもこなせるよう髪は切るなということです。

☆真田山のブログがベスト5に!

 ビックリしました。今朝パソコンつけたら連盟のサイトの5番目に、うちのブログが入ってました。好き放題書いてるブログにアクセスありがとうございます。あんまり役に立つことは書けませんけど、できるだけ思たまま書きます。楽しんでもろたら幸いです。

☆連盟の総会

 昨日(5月10日)でしたよね。うちは行ってへんので(おかげで坂東はるかさんには会えました)なんにも分かりません。なんか興味のある内容があったら、また書きたいと思います。
 新鮮いちご脚本集は、あんまり人気がないんで、今回は書きません。というか、中間も近いんで、第三巻は、まだ読めてません。それでは、またいずれ。

 それから、うちの学校やら演劇部に興味を持っていただいた人は「真田山学院高校」で検索してください。


 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ)
 

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高校ライトノベル・小説・大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・4

2017-12-26 06:14:12 | 小説・2

大阪府立真田山学院高校演劇部
公式ブログ・Vol・4


☆新鮮いちご脚本集・2(青雲書房)

 読後感想です、まずラインナップ。

① あたしを花火に連れてって:石山浩一郎 女・3
② ダウンロード:大橋むつお       女・1
③ 人魚姫:谷崎淳子           男・1 女・3
④ 古池や……:水川裕雄         女・2
⑤ たくらんけ:石川哲也         男・2 女・3


 正直、ウ~ンでした。

 ①は、浴衣姿で花火を見に来た女子高生。そこへ、片方の友だちで幽霊の女の子。かなり早めに幽霊であることが分かります。それはええんです。そやからドナイいうもんが、ざっと読んだところ、ありません。ただ三人の女の子が海岸でキャピキャピ。
 で、最後に上がった花火が、実は某国のミサイルで、幽霊は去り、二人の女子高生は死ぬ。

 で、おしまい。

 アラバールの『戦場のピクニック』と設定が似てるけど、幽霊が余計。二人に死が近づいていることの表現としての役割だけ。だとしたら、いらない存在。舞台は一見はじけるように見える。イチビッテたら、浴衣の袖が取れたり、浴衣の下が水着。あたしは舞台で水着姿を晒す勇気はありません。カモメが花火に当たって死ぬのも伏線のつもりやねんやろけど、ただ湿っぽい。勘のええ人は、ここで結末が分かってしまう。水着でもっとはじけて、最後の一発がミサイルとハッキリ分からんと。なんの芝居かよう分かりません。アラバールの場合、長閑に空を飛んでる飛行機に手ぇ振ったら、いきなり機銃掃射されて、みんな死んでしまう。意外性とショックがあるねんけど。

 ②は、近未来、記憶を消された女アンドロイドが、いろんなパーソナリティーをダウンロードされて、いろんな目に遭いながら「自分て何者?」という疑問を持つ。ダウンロードすることで、一人が何役もすることを逆手に取った面白さ。エンディングの意外性。芝居に自信のある子やったら、演りたなる芝居です。
 問題は、舞台に二人以上のスタッフが要ること。まともにやったら50分では収まらんこと。You tubeで、春日高校が県大会まで行ったのを観た。面白いけど、まだまだ本に負けてる。

 ③は、親子三人でやってる店に、茜いう施設出身の子がアルバイトに来る。この子が無口。店の大将は怪我で入院中。で、茜は店番に短期のバイト。店の息子が、ほのかに好意を寄せる。
 後半で、茜は親から虐待を受けて無口になったと思いこむ家族。実は茜は親の離婚が元で、弟に対しDVになる。それが茜の無口に繋がってる。で、店の息子も親が再婚同士で、妹とは血のつながりがない。その相似形の境遇の中で、茜の底深い心の傷が見えてくる。で、最後まで店の家族とはうち解けないまま幕が下りる。ドラマの構造はちゃんとあるんやけど、演る側が、どないシンパシーが持てるか。ですわ。

 ④は、芭蕉の「古池や かわず飛び込む水の音」をカエルの側から見たコメディー。いうかコント。舞台で、思い切りイチビッテみたい人にはお勧め。そやけどプロの芸人さん並の表現力がないと学芸会でおわってしまう。

 ⑤は、橋田壽賀子を思い浮かべるようなホームドラマ。「たくらんけ」いうのは佐賀県の方言で「ばかやろー」てな意味で、この家族の父親の口癖。中味は省略。ホンワカした家族の心暖まるドラマです。③も、そやけど、道具をきちんと飾れんと芝居が痩せて見えます。ホームドラマ以上でも以下でもありません。③も、そやけど、うまいこと演ったら観客席はホンワカにはなります。

 あたし的には、ダウンロードが好きやけど、とても、この一人芝居演る勇気はありません。①の女子高生を舞台で水着! これだけでインパクトあります。体の線に自信ある人は、かなりの脚色をやらせてもろて、アタックする値打ちはあると思います。

☆やっぱり『にんじん』

 親子と夫婦の崩れた関係をコミカルと言って良いほどの軽さと面白さで引っ張っていきながら、家族も人間関係やなあと深く考えさせてくれる名作です。
 ただ、ルピック(父)を演る男の子……ですわ。

☆今度の総会

 うちの学校は行きません。総会そのものがシャンシャン総会。うちの顧問も棄権で委任状です。
 講習会もね……うちのメソードとは全然ちゃうし。なんやコンサートみたいな高揚感はありますけど、それだけです。
 せやけど、不満ないわけやないんですよ。うちみたいに既成脚本やる学校は、ハナからリスク。だれも口に出しては言わへんけど。コンクールは創作が有利。コンクールのパンフ見たら分かるでしょ? 90%以上が創作劇。ウェブで他の地方のコンクール情報見たら、よう分かります。

☆本選の会場

 なんや小鳥高校さんがリークしたらしいですけど、うちは関係ありません。
 なんでて、既成の本演ってたら本選には縁ないからです。観にもいきません。先生にBSやらでプロの芝居録画してもろて、家でゆっくり観てたほうが、勉強になります。新感線の芝居やら、野村萬斎さんの、たった5人で演ってた『マクベス』 三谷幸喜の『桜の園』なんかは目から鱗でした。

☆無対象演技

 うちの基礎練習の一つです。芝居いうのは役者が自分自身を騙すことです。いかに完ぺきに自分を騙すか。門外不出やけど、ほんのサワリだけ紹介。

 生卵を割る

 無対象で玉子掴むのは案外難しいんです。力入れすぎると潰してしまうし、入れへんかったら落としてしまうし。割るときは微妙に手に入る力が変わります。
 それから、ポイントは、カツンと割れ目入れたら、手前に45度回して割れ目を自分の方に向けてることです。ここに気ぃついたら、この玉子割りはグッと実感湧いてきます。あ、出来た! 感じが湧いてきます。ウソつきは役者の始まりです。

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ)

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高校ライトノベル・小説・大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・3(増補版)

2017-12-25 06:14:21 | 小説・2

小説・大阪府立真田山学院高校演劇部
公式ブログ・Vol・3 増補版
 



 連休を制する者は一学期を制す

 連休の真っ盛り……というても、うちら高校生は暦通りなんで、ほんまの連休気分に浸れるのは3日の土曜からの四連休ですね。
 あたしは、そんなに本を読むのは早い方ではないですけど、この連休は、ちょっと読んでみよと思うてます。

 昨日と、今日の午前中で、ウィリアム・インジの『ピクニック』を読みました。ブロードウェイでロング・ランを続け、1953年度のピュリッツア賞とニューヨーク劇評家賞を獲得したウィリアム・インジの舞台劇です。キム・ノバグ、ウィリアム・ホールデンという全然知らん人が主演で映画にもなりました。
 読んだというても、上演するためとちゃいます。きちんとした戯曲というのが、どんな構造してるのか勉強するためです。

 簡単に言うと、いかに苦難を乗り越えて愛に走るか! その美しさと勇気を描いたええ本です。

 女の子にはスカートひらりひるがえし 走りたくなる時がある 何もかも捨てて愛に向かうよ♪

 AKBの『スカートひらり』を思わせる名作でしたが、人数的にも高校生にはでけへんので、機会があったら、詳しく紹介します。アンチョコで知りたい人はツタヤで映画のDVDを借りましょう。

 本命は青雲書房の『いちご脚本集』です。

 名は体を表すで、この脚本集は登場人物1~5人で演れる本ばっかり載ってます。横浜の友達に教えてもろて、近所の図書館で借りました。

 ①『輝けよ、星たちの傍らに:石山浩一郎 女・2』
 ②『NOBODY:佐藤康子 女・1』
 ③『となりのトコロ:大橋むつお 女・3』
 ④『女子高生しています:水川裕雄 女・5』
 ⑤『クロスロード:石原哲也 男・3 女・1』


 このシリーズは、三巻あるんで、ゆっくり読んでいこと思います。
 うちは、ルナールの『にんじん』演ることに決めてるんで、急いで読まなあかんことはないんですが、一応部長なんで、ある程度のレパは頭に入れとかなあかんと思います。
 うちの知ってる限りでは、民芸高校さんが同じ姿勢で部活に取り組んではります。ええ意味で競争したいもんです。

☆読後感想

 あくまで、あたしの主観です。①②④は人間の彫り込みが浅いです。

①は、警察の取調室で、女性刑事と女子高生の噛み合わない会話の面白さを書いた本。でも、噛み合わないことで、あまり心に突き刺さるものも、暖まるものもありません。 

②は、女子高生が渋谷で友達と待ち合わせしてて、次々に記憶を失っていき、最後は自分の顔さえ分からんようになる話。一見現代社会の情報に埋没する人間を描いたように見えますけど、こういうのを書いてみたかったというレベル。①もそやけど、関係性の中で噛み合わない面白さ、怖さまでには至っていません。

④は、二組の女子高生が待ち合わせしてて、会えずじまい。そんで、学校に不審者が入ってきて先生を人質に立てこもる。事件は無事に解決して、二組の女子高生は日常の生活に埋没していく。まだアイデアだけで書いたみたいで、人間の葛藤が見えてきません。

 ③と⑤には、ドラマがあります。
 ③は『となりのトトロ』をリスペクトした青春ドラマで、作りがファンタジーな面白さがええと思います。
 ⑤は、先生と生徒が暴力事件起こして、双方退学と退職。シビアそうやけど、なんかゆったりしたユーモアが全編に流れてて面白いです。それでいて、人間ちょっとした気分や言葉のやりとりで、こんなに結末が違うという現代社会の怖さもちょっぴり見えます。お勧めは③と⑤です。


 高校演劇の名作

 毎年、予選と本選で11本の創作脚本賞が選ばれます。ちょっと前の全国大会でも、平田オリザさんやったかが激賞した創作劇がありました。パンフなんかにも快挙やいうて書いてありました。全国大会でも最優秀とったと記憶してます。

 そんなにええ本やったら、なんで、よその学校が演らへんのでしょう?

 あたしは、全国の記録を見てるわけやないですけど、大隅ケイコさんの、かなり緻密な記録見ても、その後、よその学校が演った記録には出会いません。
 吹部や軽音なんかでは、コンクールなんかで同じ曲が被るのはしょっちゅうです。そんなんが名作やと思うんですけどね。その時だけヨイショされて、明くる年からは省みられへん作品て、どうなんでしょう?


 一見関係ないんですけど

 うちの学校の食堂が値上げさせてくれて言うてはります。あたしの好きなカラマヨドン(唐揚げにマヨネーズかけて、薄目の出汁がかけたある丼です)これが10円上がります。
 食堂のオッチャンとよう喋るんですけど、ジュースの自販機を一日稼働させてくれたら、なんとか値上げせんといけるらしいです。学校の食堂いうのんは本メニューそのものは単価が安いんで自販機の儲けが大きいらしいです。
 学校は、昼と放課後しか自販機を使わせてくれません。理由は「休み時間などに集中し教育上宜しくない」からやそうです。
 あたしは、ちょっと違うんちゃうかと思います。ちゃんと生徒に「ペットボトルを管理すること。授業に遅れんようにすること」なんかを徹底させた方がええと思うんです。こういうとこで生徒を信用してないのは、どないかと思います。うちの好きなカラマヨドン値上げになりませんように。

 ここから本題です。

 先生や連盟は「生徒の自主性」を、よう言わはります。せやから生徒が自主的に書いた創作劇をえらい評価しはります。せやけど、さっきも書いたけど実質は毎年演りっぱなしで使い捨てです。何回も上演されて、本が練り込まれていくいうことがありません。最初に書いた『ピクニック』なんかはオフブロードウェイで今でも上演されてます。そういう視点で本と本書きを育てる視点は持たれへんもんでしょうか?

 自主性の持たせ方、ちょっと考え直した方がええと思います。


 僭越ですけど

 講習会なんかで、創作脚本の部門ありますよね。あたし一回だけ夏の講習で行ったんですけど、どないやねんやろです。
 第一に講師で来はる先生らの本、ネットで探したら出てきますけど、あたしが検索した限り、よその学校で複数回上演実績があるのは某先生ぐらいです。ズケズケ言いますけど、こんな先生に本の書き方習うて、本書けます?

 先生らが、よう言う言葉に「動機付け」いうのがあります。あれは「アリバイ」と同じ意味に聞こえます。

 今日は淀先生に目ぇ通してもろてません。ひょっとしたら連休明けぐらいに削除言われるかもしれません。
 せやけど、きれい事ばっかり言うてても、何にも進みません。そない思いません?

 基礎練習のことなんか書きたかったんですけど、また今度。



 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好 清海(みよしはるみ)

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高校ライトノベル・小説・大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・2

2017-12-24 06:41:48 | 小説・2

小説・大阪府立真田山学院高校演劇部
公式ブログ・Vol・2
   初出・2014-04-25 17:39:58


 もう、第二号です。連休を跨ぐと、先生も忙しいので連盟加盟を、もうやってもらいました。加盟費12000円……申し訳ないけど、顧問の淀貴美先生の立て替えです。クラブの予算が確定するのは、中間開けの五月末から六月にかけて。最悪は七月までずれこんだことがあるらしいです。

 連盟費高いですね、正直言うて。東京は7000円です。5000円の差はどこからくるんでしょう。やっぱり加盟校の数の違いかなあ? うちの学校からのクラブ予算は12000円(去年の実績)です。加盟費納めたら何にも残らない。と思ったら加盟費は別枠で出てるとか。みなさんの学校はどうですか?
 とにかくこの少ない部費では何にもできません。既成作品やったら、上演料だけで5000円とんでいきます。

 で、うちの学校は著作権の切れてる『にんじん』を演ります。

創作劇について

 うちの学校は創作劇はやりません。過去にやろ言うた先輩もいたらしいですけど。戯曲て吹部でいうたらスコア(総譜)のことでしょ? こんなん高校生が書けるわけありません。うちよりも何倍も元気で人数の多いダンス部やら軽音も、既成の曲使うてます。コンクール行っていつも思うんやけど、観客席寂しいですね。うちのβ地区でも「よその学校の作品も見ましょう」いうてますけど、地区の加盟校が13校として、平均部員数が4人やとしたら、観客席が50人を超えることはありえません。
 中には、20人以上居てる学校もありますけど、こんな演劇部大阪で10校あるかないかちゃいます?
 高校野球みたいに、一般の人が見てもろて、面白いと思うてもらうような芝居せんと、どうもならんと思います。
 せやから、芝居の基本になる戯曲は、構造のしっかりしてる既成の脚本をやります。

OHPについて

 出てみたいなあ、とは思いますけど。そんなお金ありません。それに、あれに出たらコンクールまで三か月もありません。うちはコンクールに主眼があるので、ずっと稽古です。それにしても、男子を一人入れんと『にんじん』もできません。オールビーの『動物園物語』も視野に入れてます。けど登場人物二人が男なんでね。著作権の関係で女に書き換えてやるのは難しいみたいです。

基礎練習について

 うちは腹式呼吸はやりません。

 理由は、まずおもしろないから。それから、プロの役者さんでも腹式やない人結構いてます。腹式が基本や言うのは、ほとんど神話やと思います。渥美清さんや大滝秀治さんなんか肺の悪い人やったらしいですけど、立派な役者さんでした。
 うちはマスク共鳴を大事にしてます。
 声帯から出た声は、上顎の上の上顎洞を響かせることによって、顔全体を振動させます。やり方は二種類。三年前にプロになった先輩に教えてもらいましたけど、マスク共鳴は普通の声とはビックリするくらいちゃいます。

 やり方は、口をつむって、「う」母音でハミングします。すると顔全体が振動してるのが分かります。鼻から息が出るので、どうやっても上顎洞が振動します。これができたら、ちょっとずつ口を開けて鼻と口から息を出します。慣れてないと、口を開けたとたんに顔が響かんようになります。これは声帯から出た声が、硬膏蓋(上顎)に当たらんと、後ろの軟口蓋(喉のやらかいとこ)に吸収されて頭蓋骨が振動せんからです。
 もう一つのやり方は、平らな壁に頭・肩・背中・お尻・太もも・ふくらはぎをひっつけて、英語で1~10まで叫びます。大事なんは、叫ぶときに首の後ろを壁にひっつけるようにすることです。こうすると声帯の真上に硬膏蓋がきて、うまいこといくとビックリするような響いた声になります。
 最初は、芝居するのにいちいちそんな姿勢してたら演技でけへんと思いましたけど、これはマスク共鳴が、どんなもんかを体験するメソードです。やってるうちに「ああ、マスク共鳴て、こんなもんか」いうことが分かって、どんな姿勢でも安定したマスク共鳴の声が出せるようになります。

泣き笑いの稽古

 昔は、悲しいこと思い出せなんて言われてたそうですけど。あれは運動中に水飲んだらあかんのと同じくらい古くさい練習です。
 泣きも、笑いも技術です。横隔膜のケイレンです。だれでも四拍子で「ハハハハ」はできます。これを八拍子、十六拍子と早めていきます。慣れると笑いでトレモロができます。
 要はドラムといっしょで、熟練せんとアップテンポでは叩かれへんのが分かると思います。要は基礎技術です。16ビートのリズムでドラムが打たれへんドラマーは、絶対ロックのドラムが叩かれへんのといっしょです。


 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 

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高校ライトノベル・小説・大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・1

2017-12-23 06:53:01 | 小説・2

小説・大阪府立真田山学院高校演劇部
公式ブログ・Vol・1
    初出・2014-04-23 16:44:11


 とりあえず始めてみました

 真田山学院高校は、府立高校の中で、ただ一つ校名に「学院」の文字が入った学校です。とりあえず始めたブログなので、学校の記録なんかきちんと見てませんが。元々は私学だったのを府立高校に移管するときに、校名だけは残してくれという同窓会の強い要望で、唯一の例外として認められてます。

 部員は、わたし三好清海(みよしはるみ)と、新入部員の女子一名という絵に描いたような小規模演劇部です。新入部員は、まだ仮入部なので名前は書きません。
 顧問は淀貴美先生で、連盟への加盟やら、コンクールのことは、みんな先生にやっていただいています。地区はβ地区で、強豪校がひしめいているので、春から冷や汗です。

 新入生歓迎会

 わたし一人じゃショボイので、ダンス部に協力してもらってAKBのフォーチュンクッキーで盛り上がりました(^0^)!
 でも、新入生のほとんどがダンス部のパフォーマンスだと思って、ダンス部に入ってしまい、結局は、一人だけの新入部員です。大事にせんとあきません。で、なにかせんとあかんと思い、今日から、クラブのブログを始めました。一応原稿は顧問に見てもらいますが、パソコン叩くのはわたしなんで、筆の勢いではなくて、キーの勢いでなに書くか分かりません。

 兼業部員禁止!

 なにをこのご時世にと言われるかもしれませんけど、うちの演劇部は専業部員だけでやっていこと思うてます。
 兼業を認めてしまうと、ズルズルでクラブ自身がメルトダウンしてしまいそうな気がするからです。それから、レパが決まったときに、つい他のクラブの人に頼んでしまって、コンクールのときだけ人数増えるのは、いかがなもんかと思います。稽古のスケジュールなども兼業の人らに合わせならあかんし、演劇部の誇りとモチベーションを高めるために、あえて兼業禁止にしました。卒業した先輩らからは「なにを肩肘張って」と言われますけど、これで、がんばります!

 基礎練習

 北原白秋の五十音の詩「アメンボ赤いなアイウエオ」をグラウンドで叫んだあと、運動部に遠慮しながらグラウンドを二周して、AKBのフォーチュンクッキー踊ってます。ときどきいっしょにやってくれる人がおっておもしろいです。
 あと、アナウンサーの基礎訓練であるんですけど、実況中継をやってます。カタチだけのマイク持って、目に付いたもんを片っ端から実況していきます。見てる自分と、喋ってる自分と二人の自分が要ります。あと、You tubeでコント見て勉強してます。

 もうコンクールの作品決めてます

 エッヘン! 正直なとこ先輩からの申し伝えです。ルナールの『にんじん』をやろと思てます。『にんじん』は著作権が切れてるんで、上演許可も上演料もいりません。『星の王子さま』も著作権切れてます。けども、あれは小説だから、レジーして、戯曲化せんとあきません。真田山は『にんじん』を目指します! けど、男子を一人入れんとあかん。けど、目標持って部員集めをやる言うのは、もしドラやないけど、マネジメント的には間違うてないと思います。

 当面の目標

 このブログを、週一回は更新すること!

     文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長  三好清海(みよし はるみ)

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高校ライトノベル・ライトノベルノスタルジー〝父かえる〟

2017-12-02 06:44:46 | ライトノベルベスト

 ライトノベルノスタルジー
〝父かえる〟
        


 父が居なくなって七年になった。

 母は、家庭裁判所におもむき、さっさと失踪宣告をして、父を法的に死亡させてしまった。

 普通失踪 - 失踪期間は不在者の生死が明らかでなくなってから7年間(30条1項)という法的な根拠によるもので、母の行為は間違ってはいない。
 失踪宣告をしなければ、父の預金や不動産などが動かせず、固定資産税や維持費ばかりかかる古いだけの家も、処分できない。第一、あたしの結婚費用さえ出すことができない。

 お父さんは、あたしが高校二年の春に失踪した。

 理由はよく分からないが、前の晩お母さんと言い争っていた。内容は詳しくは分からないが、仕事を辞めて、作家になりたいという夢のような話だったらしい。

 お父さんは、まいっていた。

 五度目の採用試験で、やっと高校の先生になり、いわゆる困難校ばかり渡り歩いていた。夜遅くに生徒や保護者から電話がかかってきて出かけることも多かった。
「次の学校に替われば、少しは楽になる」
 そう言って黙々と仕事をやってきた。お父さんは十数回担任をやって、そのほとんどが一年生の担任だった。
 一年生の担任の苦労は並大抵ではない。勉強を教え進級させることが仕事ではなく、半数あまりの生徒を無事に退学させることにあった。なんたって、240人あまり入学した生徒が卒業時には100人を切る。その辞める生徒の大半が一年生で辞めていく。
 お父さんは、入学時に生徒を見極め、これはという生徒には集中的に関わって指導していた。
 何度も言うけど、進級させるためじゃない。無事に退学……正確には進路変更のための自主退学のB5の書類に署名捺印してもらうために。
 お父さんは、けして留年はさせなかった。留年した生徒は、たいてい落ちた学年でアナーキーになり、自分も周りも悪くして、結局は退学していく。
 退学した生徒は「退学させられた」と地元で吹聴する。で、学校の評判が落ち、次年度には、さらに扱いにくい生徒が入学し、学校はさらに悪くなっていくという悪循環だった。
 だから、お父さんは、そういう生徒にはこまめな親切さと情熱で接していた。四月の一日や八日の始業式のあとには、数件家庭訪問するのが常だった。他の生徒も連休までには個人面談を済ませ、人間関係を作っていた。
 だから、お父さんのクラスで退学していく生徒は保護者共々「お世話になりました」と言って辞めていった。地元に帰っても学校の悪口を言うことはなかった。

 そんな父を、わたしは偽善者だと思った。

 熱血先生の皮を被った首切り教師。面と向かって言ったこともあった。思えば、あたしも反抗期ではあったのだ。
 お父さんは、たまに嬉しそうに電話をしていたことがあった。落第確実な生徒が奇跡的に進級した時だ。電話の向こうで嬉し泣きの泣き声が聞こえることもあった。
「よかったな、次も気を抜かずにがんばれよ!」
 そう言うと、電話を切って憮然とした顔に戻り、留年が確定した生徒の家に退学の仕上げに出かけていった。あたしは、その後ろ姿に「偽善者」と、呟いていた。

 そんな父が……おとうさんが53歳の時転勤が決まったとき「辞めたい」と言い出したのだ。

 そして、お母さんと言い争って、明くる日に家を出たきり帰ってこなかった。
 お母さんは、小学校の先生。あたしも高校生になっていたので、家のことはできたし、生活に困るようなことは無かった。ただ、ご先祖から受け継いだ無駄に広いだけの家に手を焼いた。世間体も悪かった。だから、法的な期限がくると、さっさと失踪宣言をしたのだ。

 そして、家の買い手がついた……そう、紫陽花が蕾を付け始めたころ、お父さんはカエルになって、帰ってきた。ダジャレじゃない、まさに父カエルであった。

 部屋の机の上に、それを見つけたときは、カエルの置物かと思った。でも、微かに呼吸をしているのに気づいたとき、あたしは飛び上がりそうになった。
 このとき、悲鳴をあげていれば、お母さんがやってきて、カエルは叩き出されて、それでおしまいだっただろう。
 でも、あたしは直感で「お父さんじゃないかな」と思った。思った瞬間目が合った。

 おとぎ話みたいだけど、あたしはそう思った。それから二週間あまりたった。
 カエルは、普段は目に付かないところにいるんだろう。二三日姿を見ないこともあった。
 油断していると、着替えの最中や、お風呂に入ろうと浴室に入ったときに居たこともあった。カエルというのは無表情なものだけど、このときは、オッサンらしくニンマリ笑っているようにさえ思えた。

「ひょっとして、あたしがキスしたら、元にもどるかな……」

 そう思ってキスもしてみたが、カエルはお父さんにはもどらなかった。こいつは本物のカエルかもしれないと感じて、ウェットティッシュで何度も唇を拭った。

 母子に見合った家を見つけ、明日引っ越しという朝に、最後の荷物の整理をしていると、懐かしい絵が出てきた。
 お父さんには、生きていれば三つ年下の、あたしには叔母さんにあたる妹がいた。発育が悪く、このまま妊娠を続けていては母子共に危険であると判断されて、その子は堕ろされてしまった。
 お父さんは、その話を、大学浪人しているときに、お祖父ちゃんに聞かされた。

 ショックだったようだ。

 そのころのお父さんは、人生に自信がなかったニートのような時期で、自分なんかより、その妹が生きて生まれた方がいいと、思ったようだ。
 で、お父さんは美大に通っている友達に自分と祖父ちゃん祖母ちゃんの写真を見せて、三つ年下の妹の肖像画を描いてもらった。三つ違いなので、セーラー服の女子高生だった。少しだけあたしに似ているが、ずっと利発そうで可愛い。

 出てきたのは、その絵だった。

 カエルが、いつのまにか現れて、その絵をじっと見つめていた。
「宏美、トラック出るよ!」
 玄関から、お母さんの声がしたので、慌てて庭に出た。
「もう、持っていくものないよね?」
 お母さんが、額の汗を拭いながら言った。あたしの婚約者がすかさずスポーツドリンクを差し出した。わが婚約者ながら気が利く……「あ、ちょっと待って!」

 あたしは、あの絵を持っていこうと思った。お母さんは嫌な顔。婚約者は優しく頷いた。

 ガランとした部屋に戻ると、あの絵が残っていた。でも、少女の姿は白い地になって抜けていた。

 トラックが発車するとき、バックミラーに、セーラー服の女の子と初老の男。

 忘れられない一瞬になった……。

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