大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・264『嗚呼東鈴!』

2024-12-23 12:00:01 | 小説4
・264

『嗚呼東鈴!』 老婆婆小鈴 




 ウィーーーーーーン

 
 かそけき動作音をさせて筋斗雲が降りてくる。

 筋斗雲は小爺自慢のボートで、地球上のどこへでも一時間有れば飛んでっちまうという優れもの。
 しかし、動作音がまるっきりしないので、いつも驚かされていた。ウィーーーーーーンという音は「あまり無音だと老婆婆が腰を抜かすといけないから」と、小爺がわざわざ付けたギミック。音源は200年前のマブチモーターだというんだから恐れ入る。

「哎呀( ゚Д゚) !」

 出かけてから、まだ一週間ほどなのに、筋斗雲のボディーはひどく汚れちまってる。これ一つで火星航路の客船が一隻買える値段だというのに、小爺はほんとうに、ものを大事にしない!

「あれれ?」

 きれいに着地させた筋斗雲から出てきたのは東鈴一人だけだよ。

「小爺は?」

「カルチェタラン。モンゴルで飲み過ぎちゃったから、少し寝るって」

「おまえさんは?」

「うん、筋斗雲を工場に持っていくとこ、ちょっと荒っぽい乗り方したもんで」

「工場なら、ずっと北だろうに」

「なに言ってんの! 老婆婆がしょんぼりしてるから、様子見に降りてきたんじゃないか!」

「そうか……人に見られないように上がってきたのにねえ」

「なにがあったの? なんか、七日ぶりじゃなくて七年ぶりって感じだよ」

「嗚呼……」

「なによ、京劇の台詞みたいな溜息ねえ」

「実は……」

「ええ、鈴麗が!?」

「ああ、まったく運の無い子だよ……この年寄りの、人生最後の希望だったのにさあ……」

「そう、いい子だったけど、老婆婆、なんか適当に便利使いしてなかった?」

「そ、それは」

「うん?」

 東鈴の気安さに、全部話した。もう秘密にしても仕方がないしねえ。

「そうかぁ……老婆婆がぜんぜん義体化してなかったのは、そういう理由だったんだ……」

 東鈴は鈴麗のことよりも、この皺くちゃババアのことを気に掛けてくれている。

「そんなことないよ」

「ん?」

「あ、ごめん。心読んじゃった……でも、頭の半分じゃ鈴麗のことも考えてんだよ」

「ありがとうねえ……」

「大丈夫だよ、きっと……」

 わたしの肩にまわした東鈴の手が停まった。

「どうかしたのかい?」

「義体化しない体って、こんなにか細いもんなんだね……」

「ちょ、止しとくれよ、そういう同情は!」

「そうだ、PIしよう!」

「ピ、ピーアイ!?」

「うん、パーフェクトインストール! ソウルさえ生きてたら鈴麗をあたしに移し替えられるよ!」

「PIなんて、めったに成功しないよ」

「大丈夫よ、東鈴は劉宏大統領や児玉元帥と同じJQシリーズ、きっとうまくいく!」

「ちょ、ちょっと東鈴!」

 東鈴は、屋上から飛び降りて、直接一階から地下の孫房に向かって行ってしまった!

 いくら、早く行ったって、あのセキュリティーは……と、思ったら、それも簡単に潜り抜けて、ラボを兼ねた診療室に入っていた。

「老婆婆、ダメだ。鈴麗の脳波完全に停まって、もう、ソウルが拾える状態じゃないよ」

「……いや、だから言ったろぅ」

「東鈴はJQシリーズの最新だから、少しの間だったら脳波の痕跡からでも拾えると思ったのに……」

「あ、ありがとうよ東鈴。でもね、たとえPIできてもダメなんだよ」

「え、どうして? PIできたら生き返るんだよ、体って義手とか義足とかと同じ道具なんだからさ」

「バカだねえ」

「な、なによ!?」

「義体やロボットじゃ子が産めないだろうが」

「あ……そうか……そうだった(O_O;) 」

 崩おれるようにしゃがみ込む東鈴、その頭を抱いてツールボックスに腰を下ろす。

 やっぱり東鈴、おまえはいい子だよ。情においては人もロボットも関係ないよ、生きるというのは、やっぱり心と心なんだねえ……。

 ブゥーーーーーーン

 これはギミックじゃない。ついさっき脳死したばかりの鈴麗の体に繋いだ生命維持装置の音だよ。昔みたいに、あちこちチューブや電極でつなぐことは無い。外からのパルス信号とエネルギーで一年は体を生かしておくことができる。これを切るのは、せめて小爺にやってもらおう。

 悟勇ちゃん、ごめんね、最後の最後で小鈴は失敗してしまったよ……。

「そうだ!」

 ゴツン

「ウ、急に頭を上げないでおくれ、顎に当っちまったじゃないかぁ……」

「老婆婆、鈴麗の体は、まだ生きてるんだよね?」

「え、ああ、それは……」

「だったらさ!」

「え?」

「耳貸して!」

「え……え……ええ(◎Д◎)!?」

 嗚呼東鈴!?

 とんでもないことを言い出したよ(''◇'')!

 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 栗 尊宅(りつそんたく)        輸送船の船長  大統領府参与
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
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銀河太平記・263『屋上の老婆婆』

2024-12-22 18:35:50 | 小説4
・263

『屋上の老婆婆』 老婆婆小鈴 




 勇ちゃんごめんね……ごめんね勇ちゃん……勇ちゃんごめんね……


 壊れた玩具人形みたいに詫び言を繰り返す、繰り返しながら真カルチェタランの地下廊下を歩く。

 カチャン

 オートロックのドアが改めて施錠する。

 ここは、出入り共に生体認証しなきゃ通れない。北大街一番と言われるセキュリティーを誇る真カルチェタラン。その中でも孫一族と限られた側近しか足を踏み入れられない孫房。

『小鈴アルカ?』

「小鈴」

 チャカ

 生体認証に加えての音声認証で解錠してくれて、やっと地上に上がれる。

 カルチェタランかお屋敷か……少し迷って、屋上に上がる。

 バンカーバースト級のミサイルの直撃を受けても貫通させない屋上の床……偽装のコンクリだから仕方が無いけど、小さく日本語の『レ』に似た傷が付いている。

 ミサイルの破片が撥ねた痕……もう二センチもズレていたら、あの子に当らず、この老婆婆に当っていたろうに。

 小爺(シャオイェ)が「ああ、もう時間ないから、行くアルヨ!」と回れ右した時に、どうして「鈴麗も付いてお行き!」と強く出なかったんだろ。

 気立ての良さもお頭の具合も遺伝的形質も三代までさかのぼって調べ上げ、孫家の跡継ぎを生むにはもってこいの娘。いいや、生むだけじゃない。三代さかのぼって子育ての技量まで調べ上げたさ。いい子を産んでも、きちんと育てなきゃ意味がない。そのへんの失敗は歴代王朝にいっぱいあるものねえ。秦の始皇帝も、そこで失敗して秦王朝は二代で滅んでしまった。劉備玄徳の蜀も二代しかもたなかった。

 その厳しい条件に見合ったのが鈴麗。

 目立たないよう、それとなく小間使いとして雇い入れ、少しずつ慣らして小爺の世話をさせ、自然に……と思っていた。

 だから、無理はせずに、東鈴と出かけるのにも通り一遍の小言で済ませた。

 東鈴は優秀なJ級ロボットだけども、ロボットに子は生せないからね。


 勇ちゃん……いいえ、小爺、悟勇。

 あなたが息を引き取る時に、この小鈴は誓った。悟兵坊ちゃんは、わたしの手で立派な孫家の跡継ぎにしますからって。

『子どもなんて、親類から養子を取ればいい。この悟勇は跡継ぎを生ませるために小鈴と結婚したいわけじゃないんだ。一生の伴侶になってもらいたい。僕の、この孫悟勇の奥さんになってもらいたい、ただ、それだけなんだ……』

 とっても嬉しかった。

 でも、先祖代々お世話になっている孫家を、わたし一人の気持ちで不安定にするわけにはいかない。勇ちゃんのいいお嫁さんになる自信はあったけど、気持ちもあったけど、孫家を次の時代に伝えていくためには、わたしじゃだめなんだ。

 だから、アンチエイジングとかもやらず、皴も伸ばさず白髪も染めずに、ただただ、孫家の裏方として生きてきた。

 鈴麗を見つけた時は、どんなにうれしかったか。

 嬉しかったから、けして急がず、不自然にもならず……だから、くどくは言わなかった。東鈴も旅の相棒としては十分な子だったしねえ。満洲も漢明も、いや、世界中が不安定な時代。小爺には十分な働きをしてもらわなきゃならない。

 でも、まさか、小爺を見送ったその日に、漢明とロシアのミサイルが奉天の上空で火花を散らすとは……いや、あれはメンツをかけてマンチュリアが飛ばした迎撃ミサイルかも……ああ! どちらにしろ、あのミサイルの欠片が、この屋上に落ちてきて、鈴麗の頭に当るなんて!

 まったく、まったく、なんの因果なんだろう。

 もう二センチ、いや、一センチだけでもズレて、この老婆婆に当っていたら……あそこまで育てたんだ、きっと小爺、悟兵坊ちゃんの眼鏡にもかなって、二年もすれば立派な跡継ぎが……。

 嗚呼…………………

 長い溜息をついていると、虫の鳴くような音がして、振り仰ぐと小爺の筋斗雲が屋上に下りようとお尻を振ったところだった。

 

 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
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  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 栗 尊宅(りつそんたく)        輸送船の船長  大統領府参与
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 ※ 重要事項
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  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
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銀河太平記・262『サンルームとマーマレード』

2024-12-11 12:08:44 | 小説4
・262

『サンルームとマーマレード』 胡盛媛中尉 




「マー マーマレード!」


「フフ」

「え、おかしい?」

「え、いえ」

「あ、ああ……下手な洒落に聞こえたかしら(^_^;)」

「あ、はい、少し」

「今日は、四軍予算の概算要求の日だったでしょ、宇宙軍なんて用語が全部英語でしょ、漢明語の発音までおかしくなっちゃって」

「あ、果醤(コージャン)と言った方がよかったですか?」

「あぁ、それだとお醤油くさくなる」

「あ、醤(ジャン)は醤油の醤でしたね」

「「アハハハハ( ´艸`)(´∀`*)」」

 サンルームで話していると、大統領では無くて、ちょっと年上のおねえさんと話してるような気になってくる。午後から張り出したシベリア寒気団も、このサンルームでは自然に忘れられる。

「庭の蜜柑は温州みかんなのよ」

「温州、浙江省のですか?」

「あ、そうなんだけど、ちょっと違う。むかしむかしに温州の蜜柑を日本の留学僧が持ち帰って品種改良を重ねたものなの。それを三百年前に、今度は中国の留学生が持ち帰って植えたものなのよ」

「へえ、そうだったんですか!」

「うん、日中国交のシンボルみたいな……でも、この官邸に来て気づく人は、日漢双方でもマレだけどね」

「あ、この話、広報に載せていいですか?」

「うん、いいわよ。でも、殿下のことには触れないでね」

「あ、素性を隠してもダメですか?」

「うん、殿下が自分で思い出されるまでは……最初に言ったことと矛盾かもだけど、もうちょっと時間をかけたいの。ごめんなさいね」

 チン

「あ、ちょうどパンが焼けたわ」

「あ、わたしが……」

「いいのいいの、大統領なんて因果な仕事やってると、こういうことがとても癒しになるのよ……」

 そういうことなら……と、楽しそうにト-ストにマーマレードを塗る大統領の後姿。

 もうPI前の老将軍のイメージは無い。ボディーである王春華は有能な大統領秘書で、緊急時には男の警護官以上の働きをしたと言われてるけど、そういう攻殻機動隊の女隊長の感じでもない。

 トーストにマーマレードを塗っている後姿は、短大を出てやっと一年目くらいのOL。

「あ、垂れてきたぁ~」

「あ!」

 とっさに立ち上がって、トーストから垂れたマーマレードを二人、指で絡めとって口に含む。

「「オオ!」」

 その甘さと香りに同時に唸って、そして、二人で笑ってしまう。

「なんだか、本当の姉といるようです。あ、姉はいませんけど」

「え、そう? 妹という感じにはならないかしらぁ?」

「あ、それは……(^_^;)」

「アハハ、冗談よ……うん、やっぱり果肉が残ってると美味しい」

「殿下、いえ、ゲストさんの腕がいいからです」

「そう……そうねえ……あ、ここでは殿下でいいわよ」

「……殿下が記憶を取り戻されたら、どう処遇するつもりでおられるんですか?」

「殿下は、五代前の成治天皇の五世孫。皇室の伝統では皇位継承権を持っておられる……このことは知っているでしょ?」

「はい、一応のことは」

「今の陛下は女性天皇だけど、陛下ご自身は元来の男系継承が正しいと思われてる」

「そうなんですか?」

「一応の皇位継承者はお妹の須磨の宮さまにされていたけど……」

「先年、お亡くなりになりましたね」

「そう、だから今の決まりでは、フーちゃんも知ってる心子内親王殿下」

「はい、いまは内密に火星の扶桑に御滞在……」

「それが、情報では、もう火星にはおられないらしいの」

「ああ、マッパ病が……」

「それもあるだろうけど、心子内親王殿下を皇位継承のゴタゴタから遠ざけておきたいお気持ち……」

「え、今上陛下がお指図……?」

「それは無いと思う。いろいろ思いを致した人たちが、さまざまに推し量った結果だと思う……日本人の思考法は我々とは違うからねぇ……」

「あのう……その伝で言うと、火星の扶桑将軍も、成治天皇の五世孫では?」

「さすが、漢明の広報、よく知ってるわね」

「あ、いえ、西ノ島に居た時にいろいろ話を聞きましたので……」

 シゲ老人やハナちゃんのことが思い出されて、ちょっと鼻の奥がツンとする。

「フフ、あの島には楽しい思い出があるのね」

「え、あ……」

「ううん、わたしも二度ばかり行ったけど、いいところよ。こんなゴタゴタが全部終わったら、大統領なんてトットとやめて、いっしょに西ノ島で魚釣りしたいものね」

「ハイ!」

「ね、どうだろ、そのマーマレード西ノ島に送ってあげたらぁ? お岩さんとかが、美味しく使ってくれるわ」

「え、あ、いいんですか?」

「いいわよ、そうだ、行き帰りは、あの人に頼もうか……ウフフ( ´艸`)」

 なんだか、いたずらを思いついた女子高生みたい。

 わたしなんか、思いもよらない……怪物なのかもしれない。



 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 栗 尊宅(りつそんたく)        輸送船の船長  大統領府参与
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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銀河太平記・261『マーマレードを作る』

2024-12-07 10:12:08 | 小説4
・261

『マーマレードを作る』 胡盛媛中尉 




 三本しか持って来なかった枝だけども、話をすると「もったいないですね」とおっしゃって、大小八個も花瓶を官邸の営繕課から借りてきて剪定したのを全部活けることになった。


「ミカンは日本と中国の懸け橋ですね」

 ミカンを活ける手を休めて殿下がおっしゃる。

「ミカンがですか?」

「はい、徐福という人をご存知ですか?」

「ジョフク……」

「こんな字を書きます」

 メモ用紙にサラサラと書いて示してくださる。

 漢明の有名人を思い浮かべるけど、ちょっと出てこない。

「あ、歴史上の人物です。秦の始皇帝に『不老不死の仙薬を探してまいれ』と命ぜられたお役人です」

「不老不死の薬ですか(^_^;)」

 そんなもの23世紀の現代にも無い、エライものを頼まれたものだ。朱准将の副官を頼まれるよりもキビシイ。

「むろん、そんな薬は無いんですけど、噂を聞いて日本までやって来ましてね。蜜柑を発見して、これが不老不死の仙薬と思ったんです」

「でも、始皇帝は死んじゃいましたね」

「そうですね、始皇帝陵は世界遺産になって三百年ですね」

「漢明の大事な歴史遺産です」

「徐福の墓は日本にあります、蜜柑発見の碑も存在します」

「そうなんですか」

「ミカンの爽やかさや、美味しさ。経験的に風邪の予防になることも知っていたでしょうねえ。蜜柑にはそれだけの魅力があります」

「ですねぇ、鈴なりのミカンをみてるだけで……ああ……ちょっと重たそうですねぇ(^_^;)」

 手当たり次第に活けたので、いくつかは重たそうに枝をしなわせてる。

「そうだ、マーマレードにしましょう!」


 というわけで、官邸の厨房を借りてマーマレードを作ることになった。


 林(りん)さんも他の摘果したミカンをいっぱい持ってきて調理に加わった。

「ジャムは知っていましたが、こいつは知りませんでした」

 大小三つの鍋の火加減を見ながら林さん。

「すみませんねえ、鍋をお任せして」

 わたしは殿下と二人で、ミカンの筋を取っていく。お鍋三つを動員しても一回ではすまないみたい。

「いいえ、船長というのはブリッジに立って、外ばかり見てるのが仕事でしたから」

「ほう、船内を見回ったり、指示を与えたりとか忙しいんじゃないんですか?」

「船長は『よし』と『待て』の二つを知ってればいいんです」

「「ほう」」

 殿下と二人、思わず聞き入ってしまう。

「船には、航海科とか機関科とかセクションがありまして。日ごろの仕事は、そこがやります。うまくいっていれば船長の出る幕はありません。報告を聞いても、たいていは『よし』です。ここいちばん判断をしなければならない時、たまに『待て』と言って指示を与えます。平穏な航海だと、一度も『待て』を言わない時もありますよ」

 そうか、殿下のボートが衝突した時は、とっておきの『待て』だったんだ。

「火加減拙い時は遠慮なく『待て』と言ってください」

「いいえ、林さんの火加減は『よーそろー』です」

「それは光栄です。なんせ、マーマレードを作るのは初めてでして……」

「あ、わたしも作るのは初めてですぅ」

「自分も子供の頃はジャムですよ。マーマレードというのは果肉が残っているでしょ。それが新鮮で自分でも作るようになった……」

 あ、少し記憶が戻ってこられた?

「……あ、だめですねえ……そんな気がする程度で思い出せません」

「あ、いいんですいいんです。いまは、美味しいマーマレードを作ることに専念しましょう。こんなにミカンあるんですから失敗するわけにはいきませんよ」

「そうですね、仕上がったら、いちばんに大統領閣下にお持ちしなければですからね」

「そうですね、がんばりましょう、ゲストさん(^▽^)」

 そう、森之宮茂仁殿下のことはご自分が思い出すまで『ゲスト』さんとお呼びすることになっている。

 わたしたちは『殿下』とお呼びするのが正しく思えるんだけどもね。ご本人の記憶が戻るまでは素性に関わる表現は避けようというのが大統領のお考えでもあるしね。

 あとは冷やすだけというところまでできて、厨房は柑橘に甘さの加わったマーマレードの香りでいっぱいになった。

 

 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 栗 尊宅(りつそんたく)        輸送船の船長  大統領府参与
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
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銀河太平記・260『ミカンの枝』

2024-12-03 13:23:13 | 小説4
・260

『ミカンの枝』 胡盛媛中尉 




「そうか……そういえば、日本語で考える方が楽かもしれない……」

 目覚めた森之宮殿下には「あなたは日本人なのですよ」ということだけを伝えた。

 乗っていた内火艇から救助され、目覚めた時は周囲が中国語を話していたので、殿下は自然に中国語で受け答えされたらしい。完ぺきな北京語だったので輸送船の乗員は漢明人に違いないと、北京語で応対した。

 衝突の衝撃で壊れてしまったハンベは日本製の高級品。漢明で日本製の高級品を使っているのは党幹部か政府の要人、あるいは財閥のトップクラス。そういう者たちはも普段は漢明製を使っているんだけど、ごくプライベートな時は日本製に付け替える。日本製は漢明の情報カメラやハンベには反応しないからね。

 むろん警察や情報部とかの官憲や幹部級の軍人は日本製でも読み取れるハンベを持っているけど、輸送船は民間の船なのでそういうハンベを装着している者はいないし、船にも、そういう装置は無い。

「林(リン)さんはどうして分かったんですか?」

 額面通りに庭仕事を始めた林さんに聞いてみる。

「戦前、閣下が軍人だったころにね、日本の皇族のお相手をしたことがあるんだ……その時の皇族の方の雰囲気に通じるものがあって、船のAIに調べさせたらドンピシャ。放っとくと他の乗員も気づいてしまうんで、すぐに大統領府に知らせたというわけさ」

 ウウ……林さんはなかなかの人物だ。軍や宙警察にではなく大統領府に連絡するなんて。

「軍や宙警に通報しても船の修理代は出ないしね。この航海で定年だからうっちゃっておいてもよかったんだけど、それじゃ、後任の者も会社も困っちまうから……それに、乗員の中には火星のマッパ病を気に掛ける奴もいたし、火星のマス漢は漢明の政府よりも信用がおけない……あ、このミカンは摘果しないと」

 パチン パチン

「あ、実が付いてますよ!」

 林さんは、立派な実の付いているミカンの枝を惜しげもなく切っていく。

「こっちに小さい実がついてるのがあるでしょ、こっちの方がもっと美味しい実がなるんだよ。そこに栄養を送ってやるために、この程度のは摘んじゃうだ。枝にだって水分も栄養もいっちゃうから、枝ごとバッサリとね……」

 パチン

「それ、もらってもいいですか?」

「いいよ、ジャムにでもする?」

「アハハ、そういうの苦手だから、殿下のお部屋に活けて差し上げようと思います」

「ああ、それはいい。柑橘系は気分をリラックスさせて脳神経にもいいというからね」

「はい、理屈は分かりませんけど、いい香りは、きっと体にもいいです」

「ハハ、お母さんのお仕込かな?」

「あ、わたしに母はいません」

「え?」

「父が孤児だったわたしを引き取って育ててくれたんです」

「あ、ごめん、余計なことを言ってしまったなあ」

「いいえ、では、頂いていきます」

「自分も後でお部屋に行くよ」

「はい」


 殿下にお見せすると、こんなやりとりになった。


「もう一つ思い出しました」

「え、何をですか(°꒳° ) ?」

「僕はミカンが大好きな日本人だったようです(^_^;)」

 
 

☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
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  • 栗 尊宅(りつそんたく)        輸送船の船長  大統領府参与
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
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銀河太平記・259『殿下の到着』

2024-11-30 14:24:22 | 小説4
・259

『殿下の到着』 胡盛媛中尉 




 歴代の大統領で劉宏大統領はピカイチだと思う。

 漢明人として日本語のスラングである『ピカイチ』を使うのは憚られるんだけど、西之島で憶えた『ピカイチ』は親しみと尊敬の心が籠っていて好き。

 それに、これは漢明軍の胡盛媛中尉としてではなく、フーちゃんの感想だからね。

 フーちゃんというのはお岩食堂のお岩さんとハナちゃんが付けてくれた愛称。苗字が『胡』だから漢明の発音で『フー』、それに『ちゃん』を付けただけなんだけど、とても馴染んでる。下の名前だと『シェンエン』でしょ、これに『ちゃん』を付けたら『シェンエンちゃん』。ちょっと舌噛みそう。

 
 そのピカイチ大統領に付き添って、大統領府にいくつかある客室の一つに向かっている。


 廊下の窓から見える庭には出入りの造園業者のバンが停まっていて、それをチラッと見て、大統領は脚を緩めて一番端の客室に入る。もう覚悟を決めているので、わたしもそれに続く。

「ご苦労でした船長」

 まずは、造園業者のお仕着せを着た船長を労って、ベッドのそばに寄る。

「……お眠りになっているのね」

「はい、混乱されるといけませんので、ご本人の了解を得て眠って頂いております」

「ありがとう。行き届いた配慮に感謝します。林船長」

「それでは、これで失礼します」

 ビシッと敬礼する船長、それに何かを感じて大統領は振り返った。

「あ、ちょっと」

「ハ」

「……あ、やっぱり尊宅か、栗尊宅(りつそんたく)!」

「あ……分かってしまいましたか」

「いや、苗字が林に変わって……分からなかったぞ、昔はそんなに恰幅も良くなかったしな」

「ハ、宙軍に入った翌年に養子に出されましたので……輸送船に乗るようになってからは、体重も五割り増しになりましたし」

「あ、紹介しておこう。むかし、うちの運転手をやっていた栗尊宅だ、こちらは殿下の世話をしてくれる胡盛媛中尉だ」

「あ、胡盛徳大佐の……」

「はい、広報部の胡盛媛中尉です」

 造園業者のお仕着せを着ているとはいえ、輸送船の船長、中佐か大佐、あるいは除隊したのかもだけど、それでも中佐か大佐待遇。礼は欠かせない……けども、わたしは、いつ森之宮殿下のお世話係に……まあ、情報を知らされた時点で覚悟はしてたけど(^_^;)。

「しかし、閣下も……承知してはおりましたが、見事にお変わりになられましたなあ」

「え、あ、そうだ、つい昔の喋り方になってしまった(''◇'')」

「自分には、その方が懐かしいであります」

「そうはいかないわ、PIしてからは人格変えたんですからね」

「は、はあ、いずれにしろ大統領に変わりはありません」

 軽く背筋を伸ばす船長。

「たしか、船長は今度の航海で引退だったわね……」

 ハンベで確認する大統領、左手の内側に付けているから、とても女性的な仕草になる。

「はい、ですが、この事故で船はドック入りですし、このまま本社の本部付になって定年になるかと思います」

「そうなのね……じゃ、いっそ今日にでも辞めて、大統領参与にならない?」

「え、大統領参与ですか?」

「うん、このフーちゃんと一緒に殿下のお世話係りやってもらえると嬉しいんだけど」

「……殿下のことでしたら、この尊宅、誓って口外することはありません」

「ごめん、そういう意味じゃないの。殿下のことは遅かれ早かれ漏れてしまう。問題は、殿下に早く穏やかに回復していただくこと。そして、その後、どのように処遇させていただいたらいいのか。殿下と共に考えなければならないわ……将軍や高官たちの中には、殿下を利用しようという者も現れるだろうし。そういう者を寄せ付けないためにもあなたたちのような存在が要ると思うの」

「ハ、そういうことでしたら」

「まずは、フーちゃん。殿下がお目覚めになった時は、あなたがお側に居るようにしてもらえるかしら」

「はい、承知しました」

「尊宅さんは……」

「取りあえずは、庭番の詰所にでも居ります。このなりですから」

「そうね、身分の方はわたしが処理しておきます。夕方にはまた顔を出します。では……」

 大統領は足早に執務室の方角に歩いて行き、数分後には大統領専用のオイドがヘリポートから飛び立っていくのが見えた。


☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 栗 尊宅(りつそんたく)        輸送船の船長  大統領府参与
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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銀河太平記・258『大統領のサンルーム』

2024-11-24 12:06:16 | 小説4
・258

『大統領のサンルーム』 胡盛媛中尉 




 モンゴルでの戦闘は無かったことに……なってしまった。

 でも、現実にはロシアとモンゴル双方に千を超える犠牲者、我が漢明軍にも40名の負傷者が出ているので、前哨戦の地名をとってノモンハン事変という呼称になった。

「つまり、あの馬乳酒の乾杯で、本当にチャラになったというわけですか?」

 お茶碗に手をかける前でよかった。お茶碗を手にしていたらひっくりかえしていた。もし、少しでもお茶を口に含んでいたら噴き出すか、盛大にむせかえっている。

「うん、ロシアもモンゴルもメンツが掛かってるし、うちも怪我人出しただけで済んでるしね。じっさい、ノモンハンでもロシアとモンゴルは戦ってるしね」

「はぁ」

「それに、あれを公的に戦闘にしてしまうと、准将は抜け駆けで処罰しなくちゃならない」

「あ……」

「朱元尚准将は、あくまでも、軍広報部長として取材中の事故で頭を打った。それで入院」

「はぁ」

「補任にあたっては、この大統領官邸に呼び出して、昔で言えば勅任官待遇で記念写真まで撮ったから、無下には扱えない」

「そうなんですか」

 実は、あの補任式も釈然としない。軍の中枢からは外したとはいえ、准将に昇格させて特別待遇の大統領とのツーショット。撮ったのはわたしだし。

「准将の一族はね、グノーシス戦争の英雄なのよ」

「ええ!?」

 グノーシス侵略。

 百年前、火星がようやく独立国家群として発展しようかという時に、突如襲った正体不明の侵略。マス漢、扶桑、連合国が中心になって乗り切ったぐらいしか知識は無いけど、マス漢の宗主国である漢明も、いろいろカンでいるんだ。

「マッパ病(マースパルスウィルス感染病、略してマッパウィルス病、もっと略してマッパ病)も収束の兆しを見せ始め、おそらくは、もう数週間で終息宣言が出されるわ」

「あ、それは良かったです(^▽^)」

 戦争も疫病も無いにこしたことは無い。起きてしまったのなら、最大の努力でさっさと終わらせるべきなんだ。

「終結したら、今のフーちゃんみたいに、火星の人たちは喜ぶでしょ」

「はい、いいことですよね!」

「そう、マス漢も官民こぞって喜んで、連日お祝いするでしょうね。でも、終わったばかりの災厄や戦争は総括に時間がかかる。でも、国家や民族でお祝いしたい気持ちは捨てがたい。そこで……フーちゃんが、マス漢の文化大臣とかだったらどうする?」

「あ……それ以前のマース戦争やグノーシス戦争の英雄を、マース戦争は扶桑や連合国に差しさわりがありますから、グノーシス侵略……あ、そうか!」

「マス漢でブームになったら、遅れて、漢明でも注目される」

 そうか、それでグノーシス戦争の英雄の子孫……朱元尚准将を粗略には扱えない。

「まだまだ、この劉宏の体制は盤石とは言えないからねぇ」

「どうされるんですか?」

「履歴に傷が付かないようにして退役させる。退役させれば、取りあえず軍部への影響力は抑えられるでしょう。そして、開発公司からもね……」

 ピピピ ピピピ ピピピ

 大統領のハンベが子どもの防犯ベルのようなアラーム音をさせる。

「はい、わたしだけど……」

「あ、外します」

 腰を浮かせると、大統領は右手で――そのままいてちょうだい――とサイン。

「あ、うん、分かったわ。牽牛が戻り次第連絡をちょうだい。うん、それまでは……うん、このサンルームでお茶してるから。現時点での情報だけ送ってちょうだい。はい、ご苦労さま」

 ハンベを切ると、鼻の付け根を指で挟んで揉んだ……PI以後ほとんどやらなくなった大統領の癖だ。

「火星連絡船の牽牛が遭難船とぶつかってねぇ、その遭難船の乗員を保護して戻って来るの」

「衝突ですか?」

「そう、いまどき珍しいんだけど、いきなりワープアライブしてきて制動が間に合わなかったらしいの」

「ワープアライブですか!?」

 実験的には可能だけども(パルスギとかを使えば)船体や人体に影響が出るので、まだ実用化はされていないはずだ。

「旧型の内火艇だし、オートの牽引ビームが効いて大惨事にはならなかったんだけどね……」

 そこまで言うと、大統領はズイっと身を乗り出してきた。

 なんだか、女子高の先輩が後輩に秘密の話をするみたいで、ドキドキする。

「それが、乗っていたのは……日本の皇族なのよ」

「日本の皇族!?」

 そう言われて思い浮かぶのは、わたしが来る前に島を出られた心子内親王殿下。

「森之宮茂仁殿下……まだ、わたしと牽牛の船長しか知らないんだけどね……」

 大統領は期末テストで欠点を三つ取った女子高生のような顔になった。

 

 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
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銀河太平記・257『エマージェンシーっす!!』

2024-11-09 13:57:17 | 小説4
・257

『エマージェンシーっす!!』 ツナカン 




 ガピーーーン!!


 もし、モニターに擬音を付ける機能があったら、そういう音!

 そんな感じでココちゃんの1号艇はブイに引っかかって、二時の方角に飛んで行ってしまったっす!

「エマージェンシー! ただちに救命艇を出せ!」

 艦長が鬼のように叫ぶっす!

 その救命艇が始動する前に、すぐ後ろを走っていた2号艇が牽引ビームを撃って接弦したっす。

『シゲです、ココちゃんは2号艇に収容して先に帰します。怪我の具合はわかりませんが、意識がありません。自分は1号艇に乗って戻りますので、2号艇の収容を最優先でお願いします』

 落ち着いた声で伝えてくるシゲさん、いや茂仁殿下っす!

「ココちゃんのバイタル出せ!」

「出しました!」

 ツナカンがモニターに出したバイタルは、血圧が少し低い以外はノーマルっす!

「ボートはオートで帰って来る、収容準備! 医務長、至急中央医務室へ! 医療班待機! それから……ん? だれだ、ひとりで飛び出した奴は!?」

 モニターにランドセル(パーソナルロケット)を背負って2号艇を迎えに行く……サンパチ殿が見えたっす!

「さすがサムライ、黙っていても行動が早いぜ!」

「男は黙ってレスキュー一番ってか!」

「カッケー!」

「オレタチもいくぞ!」

「あたしも!」

「おれも!」

「「「「オオ!」」」」

「勝手に動くな! 受け入れ準備急げえ!」

「左舷二番ゲートの方が一分早く収容できます!」

「救急室も左舷二番が早いです!」

「よし、二番で応急措置! できしだい中央医療室に移送! 取り舵フタジュウ、二番ゲートを2号艇に正対させろ!」

「艦長!」

「なんだ!?」

「1号艇、亜光速で三時方向に飛んで行きます!」

 ええ( ゚Д゚)!?

 ブリッジのみんながビックリしたっす!

 ココちゃんの2号艇ばかりに注意がいって、シゲさんが乗り込んだ1号艇には注意が行ってなかったっす!

「1号艇、光速を超えて突き進んでいきます! 地球の軌道方向です!」

「2号艇の収容急げ! 収容でき次第1号艇を追うぞ! なんで、内火艇が光速なんだ……」

 ヤバイ……自分らが、勝手にチューンしたのが裏目に出たっす。

 ただただ、ココちゃんに一等賞取らせてあげたいって気持ちからだったっすけど、裏目に出まくってしまったっす!

「1号艇進行方向に漢明の輸送艦隊!」

「まずい、急げ!」

「2号艇の収容が済んでいません」

「急げえ!」

「収容まで5分」

「もっと早く!!」

 ああ、船長キレかけ……(-_-;)

「サンパチ殿が取りついて後ろから押してます! 1分縮まります!」

「でかしたサンパチ!」

「しかし、間に合いません!」

「グヌヌヌヌヌ!」

「1号艇から通信『2号艇の収容を優先されたし』です」

「…………………」

 ブリッジに船長の無言の怒気が満ちて、乗員は、ただただ船長の直近の指示とエマージェンシーアクトに従って行動したっす。

 結果、ココちゃんは無事に収容。手当てが早かったので、あくる日には元気になったっす。

 ただ、1号艇は通りかかった漢明船に収容されて、シゲさんを取り返しには行けなかったっす。



 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
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銀河太平記・256『エキシビジョンレース』

2024-10-27 15:45:01 | 小説4
・256

『エキシビジョンレース』 ツナカン 




 エキシビジョンレースはゲストの人たちのレースっす!


 1号艇=ココちゃん(須磨の宮心子内親王殿下)

 2号艇=森ノ宮茂仁殿下

 3号艇=周温来

 4号艇=ミナホ(マーク船長の部下の美少女アンドロイド)

 5号艇=ポチ(マーク船長の犬型クルー)

 6号艇=桔梗(扶桑幕府所属、ココちゃんのガード)


「み、みなさん、お手柔らかにお願いします(≧▢≦ )!」

 ココちゃんは緊張しまくりで、メッチャ可愛いっす。エキシビジョンだから見る方もやる方も楽しめばいいっす。でも、ココちゃんは根が真面目なお姫さまなんで、こういうお楽しみでも気が抜けないんすね。

 がんばれココちゃーん! 楽しめばいいからあ! 力ぬけえー! 

 温かい声援もココちゃんにはプレッシャーみたいなんすけど、プレッシャー感じた時の表情が可愛いんで、みんな調子にノルっす(^_^;)

「エキシビジョンではあるが、ボートにはブースターが付けてある! ここ一番という時にブーストをかけて、みんなをハラハラドキドキさせてほしい。通過地点には花火を仕掛けてあるから楽しみにな。では、いくぞ!」

 バキューーン!!

 船長がスターターのパルスガンを撃って、全艇いっせいのスタートっす!

「いっけー!」「ダッシュー!」「いけいけー!」「日本一ぃ!」「宇宙一ぃ!」「ココちゃーん!」「ココ姫ぇ!」

 いやあ、他のゲストには悪いんすけど、クルーはみんなココちゃんを応援するっす。

 ここだけの話っすけど、ココちゃんのボートには特性のパルスブースターが付けてあるっす。折り返し地点のところでブーストさせると、すっげードリフトしながら旋回してトップに出るようにしてあるっす!

 折り返し地点のブイドローンには通過速度に応じて派手になる花火が仕掛けてあるんで、メチャ楽しみっす! 

「え、ツナカンもなにか仕掛けたのか?」

「え、なんだ、オデンカンもなんかやったのか!?」

「燃料タンクを大きくしたぞ、ノズルもいじったし」

「ええ、自分は燃料をパルスギに換えたぞ……」

「自分も……」「オレも……」「あたしも……」「実は……」

「ええ、おまえらもかあ!?」

「ええ、船長もっすかあ( ゚Д゚)!!」

 みんな、ココちゃんに肩入れして、ちょっとずつココちゃんのボートに仕掛けをしてたっす!

 ヒンメルの乗員は、こっそり仕掛けをすることにかけては右に出る者がねえってやつばかりっす。ちょっとビビったっす!

「ああ、でも……」

 ココちゃんは、性格がいいので、そういう裏技的なのは使わずに通過点を一つ二つと通過していくっす。

「まあ、ブースト使わなければ、普通の内火艇だからなぁ(^_^;)」

 第三ポイントを通過した時には5番目、6番目が森ノ宮殿下っす。

「意外にのろいのな、森ノ宮さん」

「ちがうぞ、オデンカン、万一のことが無いように、見守っているんだ」

「そうなんすかぁ……ちょっと詰まらねえかもっす」

「いや、折り返しを過ぎて、安心できたらダッシュをかけるつもりなんだろう」

「さすが船長、読みが深いっす!」

「フフフ、それぐらい読めなければ、貴様らのボスは務まらん」

「アハハ、そうっすね(^_^;)」

 
 で、それは、折り返し地点でスピンターンを決めようとした時に起こっちまったっす!

 
 
☆彡この章の主な登場人物
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銀河太平記・255『船長がレースクイーンのコスで宣言したっす!』

2024-10-20 15:29:52 | 小説4
・255

『船長がレースクイーンのコスで宣言したっす!』 ツナカン 




 人が集まると騒いでみたくなるのがヒンメル魂っす!


 巨大戦艦と言ってもヒンメルは船は船、毎日同じ乗員同士顔付き合わせて、同じルーチンで任務とかこなしていると、マンネリっつうか飽きるっつうか、 モチベーションが下がるっす。 口に出しては言わねえっすけど、非常事態になった時にも十分能力が発揮できなくなる恐れも無きにしも非ずっす。

 で、冥王星軌道を離れた時にマーク船長たちファルコンZのクルーたちが密航してるのが分かって、ちょっとしたお祭り気分になったっす。


「ようし! では、ただいまからヒンメル・ファルコンZチーム対抗のボートレースを開催するぞ!!」

 船長がレースクイーンのコスで宣言したっす!

 ああ、やっぱ船長も分かってるんだなあと、ちょっと見直したっす(^_^;)

 
 ヒンメルは300名の乗員が三交代で勤務して、一直、二直、三直になってるんで、直番ごとのチームと兵科別(砲雷・航空・航海・機関・船務)のチームで競うっす。

 そして、直番と兵科の優勝者とファルコンZのチームが最終決戦やって最後の優勝者が決まるって段取りになってるっす。

 自分は副長なんで船務チームに混ぜてもらってるっす。副長なんて大した肩書っすけど、元々がストリートチルドレン。かっぱらったマシンをチューンしては悪さばかりやってたんで、こういう時は萌える、いや燃えるっす!

「副長、偵察してきました!」

 通信士のサバカンが目を輝かせて船務科のピットに戻ってきたっす。

「どうだった、ファルコンチームは?」

「はい、バルスってのがオーソリティーみたいで、マーク船長の無理な注文も半分以上こなして、内火艇とは思えないパワーがあるみたいです。特にブーストがハンパじゃないみたいで……」

「……内火艇をそこまでチューンしたら、急旋回した時のGに耐えられないっぽいぞ」

「はあ、構造補強もやってるんでしょうけど、外側からでは……」

「そういう時は敵の表情をだな……」

「はい、見てきました。マーク船長の目はうちの船長と缶蹴りやって勝ったときみたいな目をしてました。油断なりませんよ(;'△')」

「そ、そうか……!」


「おまえらぁ、あんまり熱くなるなよぉ」


 船長が涼しい顔をしてピットの入り口に立ったっす。

「って、このレース言い出したのは船長っすよ!」

「いやあ、シャケカンのところも見て来たんだけどなぁ、ピットの中がアッチッチでなあ。いやぁ困ったもんだ」

「船長ヽ(`Д´)ノ」

「怒るな、そこで対策を考えたぞ」

「対策ぅ(゛○゛)?」

「そうだ、決勝の前にエキシビジョンレースをやろうと思うんだ」

「エキシビジョンっすか?」

「ああ、勝ち負け抜きでホノボノするようなやつをな、考えたぞ(^▽^)」

 この笑顔はクセモノなんすけど、エキシビジョンなんで、そう物騒なこともないかと思ったっす。

 
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銀河太平記・254『密航者っす!』

2024-10-15 17:13:26 | 小説4
・254

『密航者っす!』 ツナカン 




 ええと……解説の続きっす。


 読者の中には気づいてる人もいるかもっスけど、マーク船長のねぐらは、うちらの火星基地の裏側にあるっす。

 うちらの基地を畳むときには「もう少し様子を見る」ってことで残ってたっす。

 規模が小さいのと、大海賊アルルカンが退避した後ならかえって目立たないってことなんすけど、横着で面倒くさいからだと船長もヒンメルの乗員も思ってるっす。

 うちらは、超宇宙戦艦ヒンメルを使って銀河系レベルで活躍する大宇宙海賊。言ってみりゃ巨大企業なんすけど、マーク船長はファルコンZってボ-トみたいな宇宙船で、チマチマと太陽系の中を走り回ってる零細企業。

 その巨大企業のボスのアルルカンと零細企業のマーク船長は、表面はカタキ同士みたいなんすけど、根っこのところでは仲がいいっす。

 だから、駆逐艦松のブリッジに隠れていて、姿を現した今も「き、貴様ぁ、ファルコンZのマーク船長(;・`д・´)!」とか言いながら嬉しそうに松のデッキに上がって行ったっす。

「いやぁ、ちょっと事故っちまってファルコン・Zオシャカにしちまってな。他に船もねえから、冥王星のコレクションの中に忍び込んでお待ち申し上げていたってわけだ」

「不埒なやつめ! でも、よく松に乗り込んだもんだなあ。冥王星のコレクションは300隻はあるぞ」

「あはは、長い付き合い、アルルカンの趣味と事情は分かってるさ。お前なら、きっと松竹梅を選ぶってな」

「いや、ほんとはナガトを持っていくつもりだったんだぞ」

「でも、ツナカンやアルミカンに反対されて、妥協の末に松竹梅。図星だったろう?」

 アハハハハハ(ᵔᗜᵔ* ) 

「笑うなツナカン!」

「マーク船長、そっちのクルーはどうしたんすか?」

「ああ、竹と梅にな……」

 船長が指差すと、竹のデッキにバルスのおっさん、梅のデッキにミナホとポチが出てきたっす。

「おお、みんな元気にしてるっすかぁ(^▽^)/」

 思わずゲストのココちゃんたちと手を振ったっす!

『おーーい!』『元気かぁ!』『ワン!』

 向こうも元気に手を振ってくれたっす!

「あらあ、でも、みなさん顔や服が汚れてぇ……」

 ココちゃんが気づいて、うちらも、ちょっと気になったっす。

「ああ、密航してるだけじゃヒマなんでな、あっちこっち弄ってスペック上げといたんだ」

「ええ、わたしのコレクション触ったのか!?」

「映画の道具にされてた船だけど、レプリカのナガトと違って元々は現役の軍艦だ。触ってみたくもなるぜ……んな顔すんなよ」

「なんだか、自分の娘が好きにされたみたいだぞ」

「ちょ、マジで泣くなよ!」

「ググ、でも、マーク、なんでお前の服や手はきれいなまま……あ、そうか、いちばんオキニの松だけは触らなかったんだな!」

「いや、あいつらは興が乗っちまって、内火艇とかもいじってたからな」

『もう、ギンギンにチューンしました!』『ミナホもがんばりましたぁ!』『ワン!』

「ああ、目まいがぁ……」

「あ、船長!」

「アハハハ(≧ε≦*) 」

 ショックのあまりガラにもなくよろめく船長、反射神経で介抱するココちゃん、爆笑の周温雷。殿下(森ノ宮親王)と胡蝶さんは、さすがに微笑むだけっす。

 うちら乗組員は――ああ、またかあ――って感じなんすけど、これで挫ける船長じゃねえんす(^_^;)。

 でも!

 これ以上の話しは、このツナカンをもってしても心臓に悪いんで、この次にするっす(-_-;)。


☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
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  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
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  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
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銀河太平記・253『アルルカン、松を自慢する』

2024-10-11 15:20:32 | 小説4
・253

『アルルカン、松を自慢する』 ツナカン 




 ご無沙汰してるっす。ツナカンっす。

 ほら、銀河一の賞金首、海賊アルルカンの手下で、海賊船ヒンメルの副長のツナカンっす。

 あ、読者のみなさんとは192『ココちゃんに決めてもらうっす!』以来っすから、ちょっと解説するっす。

 火星では病気が流行るわ戦争は起こるわヤバヤバなんで、カサギのアジトを畳んだっす。カサギのアジトは扶桑幕府のお目こぼしでやってきたんで、密かに頼まれてココちゃん、須磨宮心子内親王殿下を密かにお乗せしてプロキシマ・ケンタウリbって4光年先の星に向かってるとこっす。

 ヒンメルは全長1200m、基準排水量600万トンて巨大戦艦なんすけど、とんでもねえ船で速度が光速を超えるっす。プロキシマだって一か月足らずで着くっす。

「だぁからぁ、いいだろぉ」

 船長はダダをこねて冥王星で船を停めたっす。

 冥王星の陰にはあちこちから拾ったりかっぱらったりした船が、船長はコレクションって言ってるっすけど隠してあるっす。

 で、船長は、ナガトのレプリカとか持っていくってきかなかったんすけどねえ。松・竹・梅の駆逐艦を持っていくってことで納得させたっす。

「いちど見ておくぞ」

 微速で出航して、航海長操艦になると、すぐに艦尾のウェルドッグに行きやがったっす。

「ナガトは残念だったけど、戦時急造艦もカクカクしててかわいいからなあ(^_^;)」

 お供は自分とゲストのみなさんっす。

 ゲストがいっしょなのは、見せびらかしたいからっす。ナガトを連れて行けなくて残念無念なのを、駆逐艦松を自慢することでなだめたいからっす。ゲストもいい人たちだから、みんなニコニコついて来てくれるっす。

「ほら、艦首がダブル・カーブド・バウじゃなくて直線なのがいいだろぉ! なんか、幼稚園出たばっかりの子がピンピンに折り目の付いた制服着てるみたいだろ! ちっこいのにいっちょまえに四連装の魚雷発射管持ってるとこなんて、ピカピカの一年坊主が大きなランドセル背負ってるみたいでカワイイぞ!」

「 煙突とか細くって、ほんとうに一年生の手足みたいですね」

「そうだろそうだろ(^▽^)」

 ココちゃんは付き合いがうまいっす。

「しかし、艦橋が低くて小さいなあ」

 周恩雷がボソリと印象を言うと――言うと思ったわ――って感じで指をチッチッチとワイプさせるっす。

「チッチッチ、中に入ってみるとな、航海用の装具は特型の駆逐艦よりも優れていて、船団護衛とかには心配りがされていてだなあ……」

 ラッタルを上がって甲板に向かうと、艦橋のてっぺんから誰かが飛び降りてきたっす!

「なにやつ!?」

 さすがにゲストを庇って、そいつに立ちふさがる船長! 自分も腰の拳銃を抜いたっす!

「おいおい、オレだよオレ(^_^;)」

 お道化てホールドアップするのは、船長のライバル、目の上のタンコブ!

「き、貴様ぁ、ファルコンZのマーク船長(;・`д・´)!」

 ニクソゲに言いながら、どこか嬉しそうな船長だったっす(^_^;)



☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
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  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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銀河太平記・252『朱元尚張り倒される』

2024-10-07 15:22:56 | 小説4
・252

『朱元尚張り倒される』 メグミ 




「フーちゃんを助ける!」

 ひとこと言うとマイさん(児玉元帥)は窪地を飛び出した。

 同時にわたしも飛び出す。ハナも同時に飛び出して、マイさんは0.02秒だけハナを視線の端に捉え、構わずに突き進む。

「そばを離れないで」

 一言だけハナに命じた。

 西之島戦争を経験した三人に、こまかな指示は要らない「フーちゃんを助ける」というだけで、戦術的な目安は決まっている。

 フーちゃんに向かって来るロシア兵を排除してフーちゃんを漢明の部隊に戻すことだ。広報とはいえ軍服を着たフーちゃんをこちらで保護することは憚られる。劉宏も前衛の一個分隊をだけしか救出の為に出していない。
 状況的には一個大隊を動かして完全を期さなければならないんだろうけど、そんなことをすれば本格的に漢明とロシアとの大戦争になってしまう。

 だから、マイさんはハナには命じたんだ。そばに居させておく限り、ハナが世界大戦を始めてしまう気遣いはないだろうし、青銅の騎士を相手をしながらの救出には十分役に立つ。

 漢明の分隊は数体の青銅の騎士に阻まれているけど、三騎ずつが当たってフーちゃんと朱准将に近づかせないようにしている。残りの騎兵は逃げ道確保のため啓開にあたっている。

 不十分だ。

 今さらに自分が窮地に陥っていることに気づいた朱元尚はオロオロするばかり。フーちゃんが泣きそうな顔でなだめたり逃げ道を示すが、ロクに聞いていない。その狼狽えぶりは馬にもうつって、オートホースのはずであるのにロデオに出たリアル馬のように暴れまわっている。

「いっそ、朱元尚のおっさんぶち殺してフーちゃん一人逃がしてやるのが早いぜ!」

 ハナが正論を言うけど、仮にも准将、死なれては漢明軍はじっとしているわけにはいかなくなるだろう。

「とにかく青銅の騎士を無効化、めぐみさんは一人でやって!」

「はい!」

 漢明兵が手を焼いている青銅の騎士に向かってジャンプ!

 一瞬目が合った漢明兵に「交给我吧 (まかせて)!」と叫ぶ。

 青銅の騎士の首に飛びつくわたしに目を丸くするが、味方であることは分かったみたいで、引き続き比較的弱点の手足の関節への攻撃を続ける。

 マイさんやハナほどではないけど、わたしもラボや診療所を守るため、西之島戦争では十数体のロボットを無力化した。こいつらの弱点は関節は第二なんだ。第一は首の後ろにあるサーキット。漢明製もロシア製も大きな違いは無いはずだ。
 むろん、首やら肩のアーマーで保護されているけれど、首に取りついてさえしまえば、意外と楽に処理できる。

 問題は、激しく動き回るロボットの首に掴まることだが、数多の戦闘を経験した三人には難しくはない。

 ガガガガガ ガガガガガ

 実直な漢明兵が足の関節を集中的に攻撃、騎士の首が膝に向いてアーマーと首の間に隙間ができ、その隙間にレーザータガーをぶち込み出力を最大にする。

 ピューーーン

 一丁上がり!

 ドシャ

 騎士が倒れる音を後ろに聞いて、次の騎士に取り掛かる。

 所要時間は30秒ほど、まだまだ天狗党で鍛えた腕は衰えていない。

 次、まだ馬を失っていない騎士に取り掛かる。視界の端にマイさんとハナが共同で騎士を倒しているのが見える。

 連携がとれていて、次に見た時には、もう三体目にかかっていた。

 しかし、虎の子の青銅の騎士を討ち取られ黙っているロシア軍ではない。一般騎兵たちがモンゴル騎兵の隙を縫って二騎、三騎とこちらに向かって来る。

 メグさん感謝!

 声に驚いて一瞬目を向けると、野戦服の上だけを兵隊のに換えた劉宏元帥が馬の背から騎士の首に飛びつくところだった。

 二秒で青銅の騎士を無力化した劉宏元帥は、たちまち朱元尚の馬を突き止め、鞭で朱元尚を絡めとると自分の馬の鞍壺に引き寄せる。

 パン!

 盛大な音をさせて朱元尚の顔を張り倒す。

 正気に戻すというよりは、ショックで動けなくさせ、馬の首に掴まらせたまま自分の旅団目がけて駆け去っていく。

 ありがとうございました!

 フーちゃんが泣き笑いでお礼を言いながらそれを追いかけ、残った分隊も空に向けて一斉射すると旅団の待つ方角に走り去っていった。

 
 マイさんがボートに戻ってきたのは、それから三十分以上経ってからだった。

「いやあ、どういうわけか孫大人まで出向いてきていてね、テムジンも居たもんだから馬乳酒で乾杯してきた」

「え、孫大人もですか?」

「あいつ、きれいな女の人連れてやがってよ、ちょっと冷やかしたら……」

「まあ、言ってやらないでよ。大事にしてるみたいだったし」

「えへへ、弱みを握るってのは面白れぇかもな」

「ハナ、人が悪くなったぁ」

「まあいい、とりあえず戦争の芽は摘み取れた」

「マイさん、元帥に戻ってます」

「アハハ(^_^;)」

「なあ、帰ったらよぉ……」

 ゆっくりお風呂に入ろうということにまとまって、一路西之島に向け、ボートはモンゴル平原を東に走った。

 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
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  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
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銀河太平記・251『ペシペシと頬を叩く劉宏』

2024-10-03 11:26:50 | 小説4
・251

『ペシペシと頬を叩く劉宏』 劉宏元帥 




 青銅の騎士は超小型の核融合エンジンを動力とし、チタン合金の装甲で全身を覆ったロボット騎兵だ。

 二十三世紀の今日、兵器に限らず、世界の動力はパルスエンジンが標準なのだが、ロシアは艦船や大型の航空機以外は核融合エンジンに頼っている。
 小型化などの技術が未発達なのだ。民生品は輸入のパルスエンジンを使っているが、軍用品には使えない。輸入品はどこで外国の軍隊や諜報機関と結びついているか分からず、情報が筒抜けで、いざというところでロシアの支配を離れてコントロールされてしまうかもしれない。また、アンチパルス化された空間ではパルスエンジンは使えない。

 我が漢明軍も同様なのだが、燃料はパルスバッテリーを使っている。エンジンではなく動力源なのでアンチパルスの影響を受けることも無く、ロシアのそれよりも出力は二倍から三倍になる。

 漢明軍が本気で乗りだせば、互角に戦えるロシア兵は青銅の騎士ぐらいしかいない。

 数において十分とは言えない青銅の騎士は、我が軍と渡り合えば、各個撃破される。じっさい、目の前でモンゴル騎兵がその身を犠牲にしながらも十騎あまりの青銅の騎士を撃破している。

 第二次大戦におけるドイツのタイガー戦車の運命に似ている。1対4までなら怖れる敵のいないタイガーだが、連合軍は5両以上の戦車で対処することでタイガーを仕留めていった。我が軍には、青銅の騎士を5騎以上で対処するだけの兵が準備されている。

 他にも厄介な問題がある。

 ロシアは、いざとなれば人の命など、たとえ自国民であっても考慮しない国なのだ。第二次大戦でロシア人は三千万も人命を失ったが政権が倒れることは無かった。

 ロシアは、いざとなれば無尽蔵と言っていい兵力を繰り出せる。

 どのように優れた兵器と優秀な軍隊を持つ国でも、ロシアと事を構えるのは二の足を踏む。

 ……どうも、こと軍事のことになると、劉宏の思考になってしまって王春華の姿には似つかわしくない言葉になってしまう(-_-;)。


 ペシペシ


 両手で頬を叩くと、近くの兵たちがクスリと笑う。

 テヘペロまではカマさないが、十分にクールダウンできた。

 と、肩の力を抜いたら、その努力を踏みにじる者が現れた。

「朱准将が突出していきます!」

 副官が叫んで、わたしは馬の上で跳びあがってしまった!

「胡盛媛中尉が追っております」

 だめだ、すぐに国境を超えてしまう!

「引き止めろ!」

 一声で十分。

 旅団長が手を挙げると、スイッチが入ったように前衛のうちの一個分隊が飛び出していく。

 しかし遅かった。

 分隊があと数十メートルというところで朱元尚は国境を跨いでしまい、次の瞬間には青銅の騎士を先頭に十数騎のロシア兵が二人に向かってきたのだ!



☆彡この章の主な登場人物
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  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
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  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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銀河太平記・250『ボートを出て密かに観戦』

2024-09-26 11:02:18 | 小説4
・250

『ボートを出て密かに観戦』 メグミ 




 露蒙騎馬軍団の戦闘は五分五分に見えた。

 むろん、ボ-トを出て草原の窪地に身を潜めての印象だから戦場全体が見えているわけではないけど、西之島戦争や天狗党での経験が、そう判断させる。

ハナ:「くそ、身震いしちまうぜ!」

メグミ:「用を足すなら、あっちの茂みでやってよねぇ」

ハナ:「ち、ちげーよ! 武者震いだ(>▢<)」

メグミ:「これは他人様の戦争だよ」

ハナ:「わ、分かってるよ(;'▭')。でもよ、青銅の騎士は反則じゃねえかぁ……」

 戦争に反則も無いんだけど、ハナの感覚では人の10倍はあるだろう青銅の騎士の戦闘力、防御力は反則めいて見えるんだろう。

マイ:「テムジンは綻びを探してるのよ。いや、綻びを作っている。走り回っていれば、敵も味方も流動化せざるを得なくって、流動化してしまえば、おのずと隙ができるわ。騎兵戦闘ではモンゴルに一日の長がある、隙ができる確率はロシア軍の方が大きい」

 さすがはマイさん、いや児玉元帥。

ハナ:「よくジレねえなあ劉宏も」

メグミ:「漢明は見ているだけよ。ああやって元帥であり大統領である劉宏が出張っていることが最大の抑止力になるのよ。ね、よく見てみ、劉宏の軍団には闘気が感じられないでしょ」

ハナ:「そ、そうだな。メグミもなかなかの読みじゃねえか(`^´)」

 マイさんの視線が目の前の戦闘からハンベに移った。何を見ているんだろう……今のモンゴルではパルス機器は使えない。偵察衛星も軍事に関する情報はほとんどブロックされているはずだ。

マイ:「経済情報は伝わるのよ」

ハナ:「ええ、ここは戦場だろ?」

マイ:「ドンパチやるだけが戦争じゃないのよ。見てごらんなさい」

ハナ:「え、グラフとか数字とかはカラッキシなんだぞ(^△^;)」

メグミ:「え……ルーブルがメチャクチャ下がってる!」

マイ:「劉宏が手持ちのロシア国債を売りに出した。漢明だけじゃない、世界中が売りに出してる。劉宏が手を回したんでしょうねえ。化石燃料も半分以上取引停止にして、各国も追随しつつあるみたいよ」

メグミ:「ロシアは長期戦には耐えられませんねぇ」

マイ:「ええ、このモンゴルの戦闘が最初で最後になるでしょうねえ」

 わざわざ西之島からボートを飛ばしてきたけど、意外にあっけない。

ハナ:「あ、漢明の方から誰か駆けてくるぞ!」

 ハナが目を剥いて指さした方角。漢明の隊列から二騎駆けだしてきた。

メグミ:「あれは……朱元尚……後ろはフーちゃんだ!」

マイ:「まずいなあ……」

 マイさんの心配はすぐに状況の変化として現れた。

 露蒙両軍の一部がこれに気づき、モンゴルは無視したが、ロシアは数瞬で敵認定し、十数騎が二人に向かった。

 今の今まで眠ったように静かだった漢明軍にも、いっせいに緊張が走った!



☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
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