大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・284『北京のボスは月城かける』

2025-03-06 08:37:39 | 小説4
・284
『北京のボスは月城かける』 ツナカン 




 春すみれ咲き~春を告げる~ 春 何ゆえ人は汝を待つ~(^^♪


 せっかくケツを寄せて空けたベンチには座らずに池のほとりの方に行って季節外れのテーマソングを歌うかけるさんっす。

 かけるさんは『月城かける』って名前で、まるで宝塚の男役みたいなんすけど、じっさいに元宝塚ジェンヌっす。

 とりあえず北京に来たのはいいけど、金もドヤも無いんで、とりあえず仕事を見つけなきゃ殿下の捜索もできねえ。

 どうしたもんかと、職業紹介所でキョロキョロしてたら声をかけてくれたのがかけるさんなんす。

「あら、よかったらうちで働いてみない~?」

「え、自分っすか!?」

「うん、美人だし、馬力ありそうだし、ギャップ萌えって感じがいいわ」

 どうも、求人票を声を出して読んでたみたいで、職員のオネエチャンなんかがクスクス笑ってて、その様子が気に入って声をかけてくれたらしいっす。

「……で、お名前は?」

 その日の寝床にも困っていたんで、熱っぽく自己アピールして、それをニコニコ聞いてくれて、最後に名前を聞かれたっす。

 ツナカン……では漢明っぽくないんで、一瞬詰まったら、紹介所の前の道を猫が二匹歩いてるのが見えて「猫猫っす!」と答えたっす。

 それ以来、かけるさんが所長を務めるシマイルカンパニー北京支店の臨時雇いをやってるというわけっす。


 すみれの花~~ 咲くこ~ろ~~~(^^♪


 最後まで歌いきって、ようやく自分の横にケツを下ろすかけるさんっす。

「三里屯の営業、おつかれさまでした、お得意さまを周ってきたけど、どこも売り上げ伸びてて喜んでくださってるわ(^▽^)」

「そうっすか、いやあ、力入れて周った甲斐があるっす(^_^)!」

「ウフフ、なんべん聞いても猫猫のギャップ萌えは癒されるわ~」

「あ、恐縮っす(#*´ω`*#)」

「言葉は荒っぽいけど、カラッとしてて毒が無いし、北京の女の子たちにも受け入れられそう。そう、それでねアクセとかファンシーグッズだけじゃなくて、アパレルの方もね」

「え、衣料品もっすか!?」

「うん、トラッドなものとかイノセントピュアとかをね」

「イノセント、清楚系っすか!?」

 元々が戦災孤児のツナカンっす、清楚なんてありえねえっす!

「うん、そのままでもいいんだけど、ちょっとヤンチャにアレンジとか着こなしてみるとか、そういう線よ。ほら、たとえばぁ……」

 かけるさんがハンベをタップすると、ラブストーリーの古典『ローマの休日』のオードリーが出てきたっす。

「オードリー王女さまのファッションとかが典型だと思うの」

「あ、なーる……」

 ロングの清楚姫が、ローマで一日好きに過ごしてみようと決心、ブラウスを半袖に、リボンは外して首にはバンダナ、髪はショートの巻き毛。

「足のサンダルもいいっすね!」

「あ、こういうのヘップサンダルっていうんだけど、この映画でオードリーが履いたのがきっかけなのよ」

「へえ、そうなんすねぇ」

「ま、そういう線で営業してみてよ」

「ガッテンっす!」

 かけるさんは仕事も人を使うのも上手いっす。

 シマイルカンパニーは、世界を股に掛けるブランドなんすけど、重役と言っていいかけるさんは、自由にやりたい仕事をやってるっす。

 漢明じゃ、上海と香港に支社があるんすけど、かけるさんはあえて政治都市の北京っす。

 世界的な企業ともなると、政治的な風向きにもアンテナを張ってないといけないんすねえ。それも、肩ひじ張らずに力を抜いてねえ。

 ちょっと、うちのボスのアルルカンに通じるものがあると思った北京の秋っす。

 
☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
 
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銀河太平記・283『ツナカンの北京秋天』

2025-03-03 12:10:48 | 小説4
・283
『ツナカンの北京秋天』 ツナカン 





 入園料の5元払って朝陽公園にいるっす。


 朝陽公園は芝生も池もメチャ大きくていいっす。

 ヒンメルは全長1200メートルの巨大宇宙戦艦で、両舷の中甲板には一周1000メートルのプロムナードデッキもあったっすけど、この朝陽公園の広さと豊かさには勝てねえっす。

 むろん、ヒンメルはいいっす、上等っす。この何十年副長として乗り組んできたヒンメルは、もう自分の一部、いや、自分の延長……ボキャ貧なんでうまく言えねえっすけど、ヒンメルへの愛情は艦長よりも強いと思うっす。

 そのヒンメルを離れて、この北京にいるのは、このツナカン一世一代の大チョンボを挽回するためっす!

 長い航海の慰めにボートレースをやったっす。ココちゃん(心子内親王殿下)を勝たせたくて、みんなココちゃんの2号艇をギンギンにチューンしちまって、かえって事故らせちまったす(-_-;)。1号艇に乗っていた殿下(森之宮茂仁殿下)がブーストかけて救助に向かったっす。

 ココちゃんは助かったっすけど、ココちゃんを救助した1号艇は暴走して光速を超えちまって地球の周回軌道まで吹っ飛んで、漢明の船に救助されちまったっす。

 プロキシマ・ケンタウリbを目指してワープエンジンを起動していたヒンメルは、もう引き返すことができなかったっす。

「自分が責任とるっす!」「待て、ツナカン!」

 船長の制止を振り切って2号艇に乗り込んで、まだエンジンが暖まったままの2号艇はあっという間に亜光速になって地球に戻ったす。

 考えたら無謀なことっす(^_^;)。

 ヒンメルはプロキシマ・ケンタウリbに向けて発進したばかり。いかにパルスギ燃料を焚きまくっても、地球に戻ってしまっては目的地のプロキシマ・ケンタウリbに着けなくなってしまうっす。

 殿下を見つけてもヒンメルを追いかけてプロキシマ・ケンタウリbに向かう手段がねえっす。


 それでも、ツナカン、なんとかするっす! 

 茂仁殿下を見つけるっす!


 とりあえず北京に来たっす。

 漢明の輸送船は殿下を救助して漢明に戻って、船長は漢明政府に身元不明のまま引き渡したと情報を掴んだからっす。

 ……空が青いっす。

 ヒンメルに乗ってると宇宙空間の星空ばっかし、大チョンボをやったばかりなのに、地球の青空は素直にきれいと思ってしまうっす。

 北京の青空……ハンベに打ち込むと『北京秋天』というのが出てきたっす。

「へえ……」

 梅原龍三郎って二十世紀の画家が描いた北京の青空の絵っす……上2/3が青空で下1/3が北京の街っす。とんがり屋根は天壇公園の二層屋根の天壇。それを背景に広がる青空はなかなかっす。

 なんて読むんだろ……ペキンアキテン?

『ペキンシュウテン、と、読みます』

 親切なハンベが呟きを拾って返事をするっす。

 北京終点……そんなふうに聞こえてしまうツナカンっす(-_-;)。


「あら、猫猫(マオマオ)」


 自分の偽名を呼ぶ声がしたかと思うと、芝生の小道を今の雇い主の月城かけるさんが笑顔でやってきたっす!

 

☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
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銀河太平記・282『青銅の騎士の秘密』

2025-02-28 16:51:00 | 小説4
・282

『青銅の騎士の秘密』 メグミ 




 ウィ~~~~~~ン


 マブチモーターを電池一本で動かしたようなな音をさせて筋斗雲が離陸していく……高度50ぐらいになるとお尻を振って電池三本分くらいに出力を上げ、そのまま孫大人ひとりを載せて東の空に飛んでいく。

 地上ではテムジンとマヌエリトがアルコールの抜けきれない顔で、女子用ゲルの前では、わたしと東鈴が腕を組んで見送っている。テル博士は昨日の興奮が醒め切らずに、まだゲルの寝床の中だ。

「慌ただしいオッサンだなあ……」

「筋斗雲は折り返しで戻すって言うんだから、帰りはゆったりできるわよ」

 じつは、夕べ遅くに、こっそりと東鈴がゲルの外に出て行った。

 オヤ……誰かと話している。 

 つい聞き耳を立てていると、話し相手は孫大人。

 ほんの五六分だったし、最後は東鈴も大人も笑っていたし、それっきりにして眠ってしまった。

 そして今朝、大人は、テムジンへの挨拶もそこそこに筋斗雲で飛び立ったという次第。

「悟兵も歳なんだけど、ああいうところは子どもみたい……思いついたらすぐに体が動いちゃう」

「そうね、もともと付いてくるつもりは無かったんだもんね」

 大人はお土産のチェックをしていてカーゴの中で眠ってしまって、不可抗力でやってきたんだ。だから、とんぼ返りでも不思議じゃないんだけどね。視界の端の東鈴は微妙に寂しそう。つい、女子高生みたいな意地悪を言ってしまう。

「ひょっとして寂しいかい?」

「んなわけないでしょ! 再起動してからずっと悟兵といっしょだったから、セイセイしてるわよ!」

「あはは、そうなんだ」

「さあ、朝ごはん食べたらスクラップ騎士の調査、行くわよ」

「おお、じゃあ、テル博士起こしに行くか」



 むずかる低血圧博士を起こして、いよいよ二日目が始まった。



「う~ん……どれも微妙に中身が違うのよしゃ」

 これで五体目の青銅の騎士。

 わたしも西之島の主任技師、それには気づいている。

「まだ試作段階で、複数のバージョンがあるんじゃないの?」

「しょれも考えられるけど、どうも精度がねえ……しょれに、このエンジン……」

 エンジンと言っても車やボートのそれじゃない。二トン近くの図体を動かすのに一つや二つのエンジン、あるいはモーターでは不可能だ。関節部に収縮と捻り運動に特化したメタルマッスル(金属筋肉)が装着されていて、それにボディー二か所に設置されているジェネレーターからエネルギーを送って運動させる。制御系のサーキットが首の後ろに付いていて、これが青銅の騎士の弱点で、それを見抜いて、こないだの戦闘(252『朱元尚張り倒される』)ではなんとか倒すことができた。

「う~~ん……なのよしゃ」

 ハンベから当時の映像を出して騎士の残骸と見比べるテル博士。

「このメタルマッスルで、この瞬発力とか速度とか……出てる……んだけじょも……」

「なにか不思議?」

「うん、乗ってる馬との合わせ技で、スピードも打撃力も説明はできるんだけじょもね……」

 たしかに、図体に比べて貧弱なメタルマッスル、しかし、馬の速度と全身の制御系の活用で出せないパワーでもない。

「そのために歩兵にせずに馬に乗せて騎士にしたんじゃ?」

「う~ん……でも違和感が残るのよしゃ……」

 二人であっちの騎士こっちの騎士を調べているあいだ、東鈴は花を摘んで騎士たちのボディーに置いてやっている。

「この騎士たちは類別では作業機械になるんでしょうねえ」

「うん、戦闘に特化した作業機械……」

 そう答えながらパチパチたちを思い出す。

 イッパチ ニッパチ サンパチ

 元々は採掘用の作業機械だったけど、何度も手を加えてロボット同然にしてやり、島の銀行業務を任せるところまでにしてやった。彼らは、もう作業機械とは呼べない、立派なロボット、それ以上かもしれない。

「そうだね、こいつらもロボットと呼んで差し支えないのかもね」

「わたしは、メカニカルなことは分からないけども、この子たち、フォルムとカラーリングはなかなかな気がする」

「メカがショボいから、ミテクレだけでも整えてやったんでしょ。青銅の騎士っていうのはピヨートル大帝の銅像の二つ名でもあるんだからね」

「そうよね、ロボットにだって尊厳があってもいいと思う」

 東鈴のキャラに尊厳という言葉は硬すぎると思ったけど、ここでは相応しい気がした。

「……フフ、メグさんなら一言あると思ったんですけどぉ」

「いや、東鈴こそ雰囲気だったからさ(''◇'')」

 アハハハハハ(ᵔᗜᵔ) (ᵔ▭ᵔ) 

「ねえ、見て、この子のボディ-」

「うん?」

 東鈴が示した騎士は発火したため青いボディーが火に焼かれて一部が青紫色に変色していた。

「レトロバイクのマフラーみたいね……」

 そう言うと、残ったボディーからジェネレーターのケーブルを引っ張ってきて、千切れて開いたままの手に接触させてスパークさせた。

 ヂヂヂヂヂヂ

「せめて手首だけでもね」

 ヂヂヂヂヂヂ ヂヂヂヂヂヂ

 スパークの熱で少しづつ色が変わっていく。

 ゴコン!

「「ワ!?」」

 開いていた手が音を立てて僅かに閉じた。

 それなのよしゃ!

 テル博士がすっ飛んできた! 

 敵を見つけたボスザルを連想してしまった(^_^;)

 

☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 

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銀河太平記・281『メグミの秘密・2』

2025-02-24 09:22:20 | 小説4
・281

『メグミの秘密・2』 テル 




「最初はね、あんたたち扶桑第三高校の誰かに化けて火星に潜入するのが目的だった」

「最初はって……すがた消すまで未来のままだったじゃないのよしゃ(;¬¬)」

「ほんの二三日のつもりだったのよ、未来の姿でいるのはセキュリティーを通過するためだったから」

「なにをしゅゆつもりだったのよしゃ? あんた、上しゃまのおしょば近くまで行ったってゆぅじゃないのよしゃ未来のまんまでぇ」

「変身が解けなかったの。たまにあるのよ、根性入れて変身すると解けないことがね。火星の入関済ませても解けなくて、少し焦ったけど、逆にこのまま扶桑城に潜入したらうまくいくんじゃないかって開き直った」

「なんでお城に?」

「扶桑将軍が地球に、日本に来てもらえないかって可能性を探るため。未来の姿の方が接近しやすいでしょ」

「上しゃまを?」

「森之宮殿下も火星に向かっていたしね、一石二鳥だったのよ」

「なんで、上しゃまと殿下を?」

「地球……日本に来ていただいて、今上陛下と替わっていただく、そのための調査やら下工作のためにね」

「ゲゲ!! こうしゃくいん(工作員)……ってゅうか……こういしゃんだつ(皇位簒奪)!?」

「違うよ」

「皇位を無理やり替えるのは簒奪(しゃんだつ)なのよしゃ!」

「天皇の皇位は男系継承よ。先帝が崩御された時は満州戦争があったり国内も不安定だったから、女性の今上陛下が即位されることは仕方なかった。女性天皇は推古天皇以来、いくつか前例もあるしね。でも、皇室典範が改正されて皇嗣を妹の須磨の宮様にご指名されたでしょ。須磨の宮様にご譲位されたら女系天皇になってしまう。皇統が途絶えてしまう」

「でも、しょれは、皇室典範も憲法も改正して正式なものだったじゃにゃいのよしゃ」

 テルは憲法学の学位は持ってにゃいけど、しょのくらいは分かるのよしゃ。

「ああ……日本国憲法って、たかだか三百年足らずの歴史でしょ、改正憲法にいたっては、三十年でしかない。皇室の伝統は二千九百年よ」

 なんか、しゅごいこと言ってゆのよしゃ( ゚Д゚)。

「だからね、伝統から言えば、成治(しょうじ)天皇の五世孫である扶桑将軍と森之宮茂仁殿下にこそ皇位継承権があるのよ。それを正すことが天狗党の役目。お二人のお胸を叩いて、皇位を正統に戻していただく。単なるイデオロギーの問題じゃない。女系のまま放置しておけば、いずれは男系のどなたかを担いで正統を主張する勢力が現れる。南北朝時代のように日本が真っ二つ、下手をすれば三つにも四つにも分裂してしまう。そして、だから、この加藤恵は、その分裂と混乱を防ぐための先兵だったのよ」

「あ……あ……えと……(''◇'')ゞ」

「心配しないで『だった』って言ったのよ」

「あ、過去形……」

「扶桑城のお庭の奥に御霊屋があるでしょ」

「あ、祖霊をお祀りしてゆ」

 お上(将軍)のお招きで御庭までは行ったことはありゅけど、御霊屋は、それを囲っている森しか見たことないのよしゃ。

「あそこに秘密があるような気がしてね、こっそり忍んだら……」

「な、なにがあったのよしゃ!?」

 メグミのとんでもない行動にもビックリしゅゆけど、御霊屋のことも興味津々なのよしゃ。

「中には三つの木牌があってね。真ん中が扶桑大神、左に初代『扶桑一仁』、右が……何も書かれていない」

「二代目以降はまとめて先祖代々とかじゃにゃい?」

「でも、何も記されていない。気になるわよね……それで忍び込んでみたのよ」

「バチが当たるりゅよ(;'∀')」

「するとね、何も書かれていない木牌が語り掛けてくるのよ、脳みそに」

「な、なにを語り掛けてきたのよしゃ?」

「『おまえの変身は二度と解けぬ、その姿のまま役目を果たせ』てね……ブラフだと思って姿を戻そうとしたら、ぜんぜん戻らない、戻る兆しも無い。本物の未来も戻って来るし、取りあえず火星を脱出して天狗党の月面基地に戻ったんだ」

「しょの天狗党が、どうして西之島のラボに居りゅのよしゃ?」

「未来の変身が解けなかったからね……まあ、首になったわけよ。それで、まあ、姿をくらますのに西之島はうってつけだった、島は素性とかは詮索しないからね。で……居心地がよくって、居ついてしまったというわけ」

 うう……しゅごい話なんだけど、なんか、話ししゅゆ前よりもメグミが近しい感じになってゆ。

 こうゆう気持ちを表現しゅるようにはテルの脳みそは出来てなくて、しばらく、女子用ゲルの前で、二人で星空を見てたのよしゃ……。



☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
 
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銀河太平記・280『メグミの秘密・1』

2025-02-19 11:37:39 | 小説4
・280

『メグミの秘密・1』 テル 




 最初の一時間ほどはゲルの中で行儀よく呑んでりゅんだけど(テルの感覚じゃ、じゅうぶん騒いでりゅ)二回目の乾杯ををきっかけに外に出りゅと、いつの間にか外にも焚火と宴会の用意が中の倍ほど出来てりゅ。人数も三倍くらいに増えてて、他の集落からも人が集まって、大宴会!? ジャンボリー!?

 外の奴らもけっこうできあがってて、こいちゅら、どこまで盛り上がるのよしゃ!? なんなのよしゃ!?

 踊るわ、歌うわ、叫ぶわ、議論しゅるわ、腕相撲しゅるわ、そんでまた乾杯しゅるわ……のんべえのやることは、地球でも火星でも月のピタゴラスでも変わりゃないけど、ここのはレベルが違うのよしゃ。「よし、今度は相撲じゃ!」とテムジンが叫んだ時に「付き合ってたらきりがありませんよ(^_^;)」とテムジンの娘がゲスト用のゲルをゆびさしてくれて、メグミと二人でそっちに向かったのよしゃ。

「きれい……島の夜空もいいけど、ここの星空は格別だねえ……」

 立ち止まって星空を見上げるメグミ。

「水蒸気が少ないせい……」

 言いかけて、言葉を呑んでしまったのよしゃ……やっぱり似てりゅ。

「気が付いていたんでしょ、お岩食堂の時から……」

「えぇと……」

 これは逃げなきゃならない局面なんだろうけど、足が動かないのよしゃ。

 べつに、すくんでしまったというのではないのよしゃ。メグミからは敵意とか攻撃してくゆ感じとかは一ミリもしてこないのよしゃ。

 こいちゅは、十年前のあいちゅにちがいないのよしゃ。

 ほら、日本に修学旅行に行って、アキバの夜(005~007)!

 そに子とミクのグラビテーション対決ショー! 参加者がそに子チームとミクチームに分かれて鬼ごっこ!

 その最中に、うちの未来からパスポートかっさらって逃げたやちゅ! ダッシュが気づいて追いかけたんだけど逃げられて、その後未来に化けて火星にまで高飛びして、扶桑城の奥の院まで忍び込んだってゆう天狗党の悪いやちゅ!

 しょれが、目の前で夜空の星を見上げてりゅメグミなのよしゃ!

 なんたって、細胞レベルで未来に擬態してりゅ。一卵性の双子同様なのよしゃ。

 でもでも、悪意とか攻撃とかの負の感じがまるで無くて、島のみんなも敬意と親しみ持ってりゅし、混乱したのよしゃ。

 こいちゅ何者……?

「ちょうどいい。わたしにも分からん事ばかりで、ウカウカと島に居ついてしまったけど、これも運命なのかもしれない。すこし長くなるけど、話し、聞いてくれる?」

「……うん」

 しゅごく自然に返事してしまったのよしゃ……。
 

 
☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
 
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銀河太平記・279『メグミと青銅の騎士を調べる』

2025-02-16 11:09:45 | 小説4
・279

『メグミと青銅の騎士を調べる』 テル 




 子どもに飽きられたオモチャみたいに転がされていたのよしゃ。

 あちこち塗装も剥げてチタン合金の肌が剥き出しになって、図体が大きい分、みすぼらしさも増幅って感じなのよしゃ。

「なにやってんのよしゃ?」

「馬で引きずって来て無造作に投げ出したんだろうけど……」

 立ったまま青銅の騎士の姿勢を真似するメグミ。

 上げた右手の手首を頭の上で横に曲げ、左手は胸の上でヨダレを受け止めるようなかたち。両脚は死体みたいに内側に曲がってるんだけど、右脚が膝のところで直角に曲がって、左脚の上に載ってる。

 つられて、テルも真似してしまうのよしゃ(^_^;)。

 赤塚不二夫のイヤミのポーズ!?

 二人同時に思いついて、思わず「「シェーー!!」」ってシンクロしてしまったのよしゃ!

「アハハハハ(^▢^;)」

「お互い、古典マンガに詳しいみたいなのよしゃ(^▭^;)」

「そういや、テル博士は……」

「……チビ太?」

 前髪をグイっと上げてハゲみたいにしてみしぇた。

「アハハ、あ、いや……こうしちゃえばぁ」

 メグミはテルの前髪をピシッとそろえて、ハンベをミラーにして映したのしゃ。

「おお、ピノコぉ!」

「「アッチョンプリケ!」」

 アハハハハハ((´∀`))

 声が揃って笑ってしまう。

 これは、おかえしをしなきゃなのしゃ……!

「ちょっと、しゃがんで」

「ん?」

「こうやるとぉ……」

 メグミの髪を手で小さなツインテールにしゅる。

「秘密のアッコちゃん!」

「おお……遊んでないで調査しましょう」

「あ、そうなのよしゃ!」


 やっとレギュラーな気分に戻して青銅の騎士を調査!


「……図体が大きいのは核融合エンジンが小型化しきれてないせいねえ」

「三次元ICも前世紀の水準……通信速度を上げるのに、ケーブルの太さだけで対応してるのよしゃ」

「バリアーを張る機能も無いし……馬力だけで勝負って感じ……」

「ボディーの装甲厚を上げれば、もう8%ぐらいは剛性が上がるのよしゃ……でもしゃ……」

「そうすれば、俊敏性が犠牲になるし……」

「載せる馬は、倍以上の大きさになってしまうのよしゃ……いや、この重量と大きさだってよしゃ……」

「そうよねぇ……」

 ガシャガシャ カチャカチャ ギギギギ カチャカチャ……

 気が付いたら半分近く分解してるのよしゃ。

「もう少しサンプルを見ないとなのよしゃ……」


『オーーイ、準備できたわよーーー!』


 あちこち分解して調べてりゅと、ゲルの方から東鈴の声がかかって、とりあえず飲み会の方に行ったのよしゃ。

 


☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
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銀河太平記・278『火星人にはちょっと眩しい』

2025-02-13 09:56:56 | 小説4
・278

『火星人にはちょっと眩しい』 テル 




 テムジーン!

 ゴヘーーイ! 
 
 
 ビックリしたのよしゃ! 

 いきなり孫大人(東鈴につられて「ゴヘイ」と言いそうになるんだけど、テルだって最低の礼儀は心得てるのよさ)が叫んだかと思うと、どこにいるんだか「ゴヘーーイ!」と応える声がして、二秒ほど遅れて、テントの向こうから豆粒くらいなのが駆けてきて、草原の真ん中でガシっと抱き合って、互いに相手の背中をバシバシ叩くのよしゃ!

 なんか、久々に会った親友同士って感じで、子どもじみてるけど、まあ、微笑ましい……けど、ちょっとひいてしまうかもなのよしゃ。

「アハハ、あれ、あの二人のルーチンだから(^_^;)」

 何十年ぶりに逢ったのかと思ったら、二か月も経ってないらしいのよしゃ。

 あ、ちょっと説明しゅりゅのよしゃ。

 筋斗雲が着陸態勢に入ると、後ろのカーゴの口が開いて孫大人が転がり出て来たのよしゃ。

 マヌエリトが掴まえてくれたんで、大惨事にはならなくて済んだんだけど「明け方、テムジンに持っていくお土産のお酒が気になって筋斗雲のカーゴを見に行って――ちょっと味を確かめよう――って飲んだら、そのままカーゴの中で寝てしまったアルよ(^_^;)」ということなのよしゃ。

 東鈴にさんざん怒られたんだけど、ま、マヌエリトもブッキラボーだし、ま、いいかってことなのよしゃ。

「このスケコマシ! 今度は三人も女連れて……ん、幼女趣味はいかんぞ!」

 ん、今のはテルのこと見て言ったのよさ!

「なに言うか、こう見えても火星で三本の指に入ろうかという大科学者アルよ、平賀照いうアルよ! 連絡しておいたアルよ!」

 大人はわざわざテルの公式プロフをホログラム出して説明しゅるのよしゃ。

「おお、これはお見逸れした。ここの部族長をしておるテムジンですじゃ。お見知りおきを、いや、遠目にはこちらかと」

「ああ、こちらも偉いアル。西之島の氷室カンパニーのメグミ博士アルよ」

「おお、島の技術レベルを一人で上げているという博士だな。よろしくメグミ博士」

「こちらこそ、博士は付けずにメグミでけっこうです」

「それから、後ろにいるのが西之島三勇士の一人、ナバホ村村長のマヌエリトアル」

「マヌエリトだ」

「おお、これがンナバホ族酋長の末裔か!」

「汝、チンギスハンの末裔か?」

「そうだ、いまでもテムジンの名を引き継いでいる」

「マヌエリトも先祖から引き継いだ名前」

「勇士マヌエリト!」

「勇士いらない、マヌエリトでいい」

「そうか、それでは、こちらもテムジンでいい。そうだ、東鈴はこちらの様子も分かっているだろうから、ゲルの中で酒盛りの用意を手伝ってくれるか、娘や息子たちの嫁もいるから、おしゃべりしながらやってくれ」

「お、それは楽しみ、行って来るね悟兵!」

「ああ、役に立ってくるヨロシ」

「青銅の騎士は状態のいいのを一体持ってきてある。酒盛りの用意ができるまで見ているといい」

「あ、ありがとうございますなのよしゃ(^▽^)!」

「素人目にも何種類かあるようだ。そっちはあとで手配する。悟兵、俺たちはいっしょに馬を走らせよう!」

「おおアル!」「うむ」

 長身のマヌエリトがノシノシ、オッサン二人はチョコマカと駆け足、すぐに競うように全力疾走して牧場に突撃。適当な馬に跨って駆けて行ったのよしゃ(^_^)。

 360度の地平線、その果てまで緑の草原、空にはゆったりと白い雲が流れて……西之島の海も良かったけどしゃ。

 これだけの酸素と水蒸気と緑に恵まれた地球。

 火星人には、ちょっと眩ししゅぎるのよしゃ。

「テル博士」

「あ、ごめん(^_^;)」

 メグミの声で我に返って、さっそく青銅の騎士を見に行ったのよしゃ!



☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
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銀河太平記・277『モンゴル草原の馬に見惚れて』

2025-02-10 09:33:01 | 小説4
・277

『モンゴル草原の馬に見惚れて』 東鈴 





 成層圏航路から高度を下げると、モンゴルの平原。


 なだらかな草原が広がって放牧されている馬たちがあちこちに見える。草を食んだり軽やかにポクポク歩いていたり。母馬の後ろを仔馬が速足でついていたり。

 満洲にも馬は居るけど、ここほど馬格は良くない。馬の半分以上は人で言えば義体、あるいはロボットのオートホースなんだけど、距離を置いて眺めているとリアル馬と区別がつかない。

 その馬たちやモンゴルの草原を飽くこと無く見続けるテル博士。

 あいかわらず、キャノピーに両手とオデコをくっつけて、幼稚園児の遠足モード。

「イルカの時みたいにそばによって欲しいのよしゃ」

「ダメだよ、馬が驚いて暴走する。モンゴル人たちが困るからね」

「あ、しょうか……」

「モンゴルの大地は生きてるって実感できるものねえ」

 メグさんがフォローすると、小さくため息をついて言葉を続ける。

「うん……この景色から馬と草を消したら、地形的には火星の平原とおなじなのよしゃ。でも、やっぱり人が住む環境には緑と生き物の姿が欠かせないのよしゃ」

「そうねぇ……」

 テル博士の言葉に、思わず『火星の野生動物』を検索してしまう。

 赤い大地は荒涼として、時おり吹く風が赤褐色の砂を舞い上げ、その度に火星の骨格のような赤茶けた岩や礫が露出する。その岩の下や隙間から小動物がピョンピョン跳ね飛んで……これは生き物じゃない。チーチェだ。愛玩用に地球から持ち込まれたロボペットが野生化して、自己改造をしながら増殖する厄介者。

 戦争や事故で廃棄されたり放棄されたマシンやロボットから大小のパーツを切り離してボディーや大きなパーツを作る。そして義体やロボットの関節や開口部に取りついてICやら微細パーツをかすめ取ってPCを作ってはめ込み。完全に人の手から離れた個体を無限に作っていく。

 その過程で、いつの間にかマッパウィルスが生み出され、それがロボットや義体に感染してマッパ病を発症させ、多くの犠牲者を出した。そのチーチェは人の手によって武器化され第二次マース戦争まで引き起こした。

 最近、ようやく克服されて戦争も終わったけど……そのワクチンを作ったのが……ああ!? わたしの横で子どもみたいに外の景色を見ているテル博士なんだ!


 ああ、わたしってば、目の前のことばっかりに気を取られて、我ながら考察能力低すぎ!


「そこ……目的地」

 
 マヌエリトがボソッと呟いて、急制動をかけながら右旋回!

 ブチョ!

 キャノピーに張り付いたテル博士がキャノピーに圧着したようになり、メグさんはシートに掴まり、マヌエリトは泰然自若としたまま。筋斗雲は、テムジンのキャンプの端っこに着陸した。

 

☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
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緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
 
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銀河太平記・276『筋斗雲は西を目指して』

2025-02-07 10:46:59 | 小説4
・276

『筋斗雲は西を目指して』 東鈴 




 筋斗雲はカンパニーの上をゆっくり旋回してから西を目指した。

 神社の前ではハナがピョンピョン跳ねながら手を振っている。目につくのは紅白の巫女服が目立つからばかりじゃないだろう。

 筋斗雲に翼があったらと思った。ズングリした筋斗雲ではバンクで挨拶しても分かりにくいからね。

「成層圏航路をとろうか、一時間早く着くけど」

「ううん、これでいいのよしゃ。海見てるの楽しいのよしゃ」

「火星には海ってないものね」

 メグさんが合わせると、鼻にしわを寄せて笑うテル博士。

 こういうところは、ひいき目に見ても小学生なんだけど、立派な大人。それも火星で三本の指に入るというサイエンティスト。敬意をもって接しなくちゃいけない。

「イルカ、泳いでる……あそこ」

 マヌエリトが散文的に言う。

 このインディアンの酋長は接し方がよく分からない。まあ、歓迎会で姿を見て、声を聞いたのはついさっきだから、何を言ってんだってことなんだけど、予測としてね。

 いつも悟兵の相手ばかりしてるから、同じ空間に居る人間とは無駄口をたたいていないと、微妙に気づまり。

 グィィィ~ン

 そう思いながらも筋斗雲の高度を下げてイルカ見物のポジションをとる。

「うわあああ(^▽^)」

 もう完全に小学生、いや、幼稚園児。キャノピーに両手とオデコをつけて、ヨダレまで垂らしてるし(^_^;)

「おいしそうなのなのよさ!」

 グフ( ゛艸゛)!

「そ、そういう感覚なんだぁ(^_^;)」

「火星の人口は10億で頭打ちなのよしゃ、主な理由は食料なのよしゃ。海がないしねぇ、しぇめて、地球の1/5でも海があったら、大気循環が活発になるし、養殖でない魚やクジラも獲れるようになるのよしゃ……」

「養殖の魚ねえ……」

 テル博士とメグさんの呟きがシンクロする。

 高度を5メートルにまで下げて、キャノピーを開けるわけにはいかないけど、外の音を流して雰囲気を盛り上げてやる。

 ザッパーーン

 間近でイルカがジャンプして、マヌエリトの瞳がキラリと光った。

「あれ一頭で、100人、1か月のたんぱく質」

 今のはインディアンとして? 孤島の前市会議員として?

「しかし、しょの前に戦争……」

「え、戦争は、もう終わったんでしょ?」

「停まってるだけなのよしゃ、人も資源も足りないかりゃ……力が回復したら、九分九厘、また始まるのよさ……」

「そうなんだ……」

「そのために、抑止力……東鈴、やっぱり成層圏航路とってなのよしゃ!」

「お、おお」

 グィィィ~ン

 筋斗雲は30度の仰角をとって上昇、水平線が見る見る地球の輪郭に変わっていった。

 
☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
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銀河太平記・275『徹夜看病のあとの磯辺にて』

2025-02-04 10:14:52 | 小説4
・275

『徹夜看病のあとの磯辺にて』 東鈴 




 神社に行こうかと思ったけど、顔も洗ってないので磯に下りる。


 悟兵はタンコブができただけで、わたしとメグさんとでチェックしても脳ミソにも頸椎にも異常は無かった。

 だけど、お酒も入っていたし、大事をとって夕べはずっとつきっきりで看病。

 手足にしびれがあるって言うし、頭がボーっとするって言うからね。

 ショックで微妙にタガが外れたんだろうね、時どきうわごと……ほとんど意味不だけど、声の調子が若い。わたしにはむろん老婆婆にも見せない若いころの断片だと思う。

 夜中に手足が冷たくなってきて、ちょっとビビった。

 スキャンしても打撲とタンコブ以外に異常はないし。おそらくは見ている夢のせい。アルコールも残ってるしね。

『さ、寒い……』

 ガタガタ震えるし、手足はますます冷たいし、わたしは思い切った。

「し、仕方ない……(#'∀'#)」

 悟兵の布団に入って朝まで抱きしめてやる。素でやっていると緊張してしまうので、意識の九割を眠らせてね。


 朝には平熱に戻って、服を着たところで連絡所の下士官が見舞いに来たので、すこし外の空気を吸いに出て来たところ。


「おう、なにボーっとしてやがんだ」


 声に振り向くと、ハナが巫女姿で箒を持っている。

「おお、キチンとしてると立派な巫女さんだ」

「あたりめえだ、オンとオフは、キッチリ切り替えてるからな。オッサンはもう大丈夫なのか?」

「うん、頭打ったから熱が出るかと思ったけど、逆に体温下がって来て、少しビビったけど、いまはもう大丈夫」

「そっか、それなら心配しねえでモンゴルに行けるな」

「うん」

「ハナも行きてえけど、こないだ行ったしなあ……」

 ガラッパチに見えて、島のことを思っているんだ。北大街も悪くはないけど、みんな二枚も三枚も皮を被っているようなところがある。ここみたいに、人もロボットも一枚看板、せいぜい並の裏表だけで生きていけるのは、ちょっと羨ましいかもしれない。

『あ、ここに居たんだ』

 声に振り返ると、殿下が笑顔で岩鼻に立っている。軽やかに駆け下りてくると立ち上がろうとしたわたしを制して「お供が見つかりましたよ」と後ろを指さす。

 振り返ると岩鼻にごっついオッサン。

 ヒョイヒョイと二歩で駆け下りてくると、腕組みをして殿下の横に立った。

「こないだまで市会議員をやっていた、ナバホ村村長のマヌエリトです。島一番の戦士なので、モンゴル騎兵の人たちにも押し出しが効くと思います。むろん腕もたちますしね」

「まかせておけ。マヌエリト、一度はモンゴル騎兵と戦ってみたかった」

「あ、いや、戦いに行くわけじゃぁ……(^_^;)」

「冗談、気にするな」

「おもしれえ旅になりそうだな!」

 アハハハハ ニャハハハ ニャーニャー

 
 その場のみんなが笑って、ウミネコも笑って、モンゴル調査旅行のメンバーが確定した。




☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 


 

 

 
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銀河太平記・274『朝ごはんを頂きながら』

2025-02-01 10:44:21 | 小説4
・274

『朝ごはんを頂きながら』 東鈴 




「いつもはたくさん作るんだけどね、今朝は、これで勘弁しとくれ」

 和食と洋食の選択式で文句は無いんだけど、お岩さんは申し訳なさそう。

 昨日の宴会は明け方近くまで続いて、大方の島民は河岸を変えたり自分の宿に帰ったらしいけど、何人かは座敷席で飲み続けていたらしい。むろん、我が主の悟兵もその中に入っていて、座敷の方でオイデオイデをしている。

「え、めずらしい、パンで朝ごはん~? さては飲みすぎたなぁ~」

「うるさいアルよ」

 と言いながらも席を詰めてくれる。

 和食のトレーを持って座敷に上がると、殿下は和食、悟兵はモーニングセットみたいなの。対面には仕事できそうなお姐さんが収まって納豆をかき回している。

「あら、五人じゃ狭いわね」

 マイさんが言うと悟兵は横の座卓を引き寄せる。

 実のところ、隣りの席に行きたかったんだけどね、マ、いいや。

「こちら、島の研究所の所長のメグミさんアル。こっち、秘書の東鈴アルね」

「あ、ども、先に頂いてます」

 温泉でハナが言ってたメグさんは、この人なんだ。

「東鈴です、えと、普通に喋っていいっすか?」

「ああ、もちろんよ。不躾だけど、いいボディーね」

「アハハ、再起動して間が無いんですけどね、調子はいいかな」

「ううん……触ってもいい?」

「え、あ、うん」

「東鈴、気を付けないと分解されるアルよ」

「しないわよぉ、本人の了解も無しにぃ~」

 了解したら分解しちゃうんだぁ(^_^;)

 しかし、だれかもそうだったけど、パット見だけでロボットと見抜くのはスゴイ。

「メグさんは、設備だけじゃなくて、島のロボットやら作業機械のメンテの元締めやってくれてるのよ」

 マイさんもお世辞ではない賞賛、大した人なんだろうけど、島の人間はお互いにもよそ者にも距離が近いというか隔たりが無い。

 人にしろロボットにしろ、こういうのはプログラムや規則でできるものじゃないと思う。
 島は落盤事故や日本政府の干渉やら戦争やらを経験して、うまく言えないけど練れてきてるんだ。悟兵がここにやってきたのは劉宏大統領のお使いだけじゃない、悟兵自身この島が好きなんだ。またどこかで冷やかしてやろう(^_^)

「そうそう、東鈴、あなたテルといっしょにモンゴルに行くんだって?」

「え?」

 あ……悟兵のやつ、勝手に決めたなあ!……一瞬むかついたけど、すぐに、それもいいかと思う。あのチビッ子博士は一人にはしておけない。それに、ちょっと面白いとも思う。

「あ、噂をすれば、本人が来ましたよ」

 殿下が首を向けた先、食堂の入り口でキョロキョロしているテル博士が見えた。


「いやあ、ちゃぶ台とはシブイのよさ!」


 和食と洋食のパンをトレーに載せてテル博士は座卓に感激した。

「あ、ちゃぶ台っていうんだ」

「うん、火星でもあんまり見かけないんだけど、友だちの家で見かけたのよさ」

「平賀博士、紹介しておきます。こちら、通称孫大人の孫悟兵」

「孫悟兵アルよ」

「あ、お目にかかれて嬉しいのよさ。昨日は遠目でしか見てなかったけど、なかなかいい感じのおじさんなのよしゃ」

 二人で握手、なんだか爺さんと孫娘。

「こちらが、島の研究所長の加藤恵さん」

「あ、気楽に片仮名のメグとかメグさんでいいから」

「お噂はかねがね、平賀テルなのよしゃ……ん?」

 ほんの一瞬フリーズするテル。でも、ほんのコンマ一秒くらいのことで、すぐに笑顔で握手。メグさんは普通にニコニコしている。

「わたしも興味あるから付いていくわ」

「モンゴルまでは、ワシの筋斗雲つかうヨロシ。東鈴、運転頼むアルよ」

「あ、うん」

「女性三人だと軽く見られることがありますから、ひとり男のお供を付けようと思います」

「あ、すみませんナノよさ、殿下」

 テル博士が恐縮していると、お岩さんがマーマレードのビンを持ってやってきた。

「きのうもらったマーマレード、ためしてみるかい」

「アイヤー、そのために来たんだったアル。試食するアル」

 マーマレードはパンにつけるのかと思ったら、紅茶に入れたり、舐めてから紅茶を飲んだり、濃茶のお茶うけにもいけることを初めて知った。

「あ、この味……」

 テル博士が、なにか思い当たったみたいだけど、すぐに話題は青銅の騎士やモンゴルの話しに戻る。

 なんか、和気あいあいとして、しまいに我が主のアルアル語もひっこんでしまう。

 悟兵が屈託なく過ごしているのは横に居て楽しい。

 みんなで、アハハと笑ったり、そうなんだと感心したり、ちょっと楽しいひと時が過ごせた。

 
 しかし、好事魔多しというか、調子に乗ったというか……。

 
 ドンガラガッシャーン!


 悟兵は食堂の階段を踏み外して頭を打ち、一晩付き添う羽目になってしまう(-_-;)。

 きのうはテル博士、今日は悟兵の看病……ま、いいけど。




☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
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銀河太平記・273『朝の磯辺と越萌マリと』

2025-01-29 10:31:38 | 小説4
・273

『朝の磯辺と越萌マリと』 東鈴 





 磯打つ波が目にも耳にもここちいい。

 あれから、テル博士を宿舎に連れていき、ハナは食堂に戻り、あたしもそのままテル博士の宿舎で寝てしまった(^_^;)。ハンベで知らせておいたけど、悟兵からの返事はない。

 火星からの長旅で疲れてもいるんだろう、博士はそのまま寝かせておいて海辺に出てきたところ。

 イー・アル・サン・シー……

 北京語の掛け声で漢明連絡所の兵隊たちが朝の体操をやっている。その脇を通ると神社の社殿が見えて、その向こうが磯だろうね。

 当たり。

 絶好の日の出スポットなんで、人がいるかと思ったんだけど、わたし一人。

 まあ、島にやって来てから半日のあれこれを放電するにはちょうどいい。

 埋立地を入れても20平方キロょっとの西之島、面積では奉天の半分ほど、その広くも無い島に万を超える人とロボットが共生しパルス鉱を採掘しながら穏やかに暮らしている。

 人種も様々で西之島戦争の義勇兵とかも残っていて、敵国だった漢明兵も非武装の連絡所とはいえ配置されている。

 構成から見れば満洲といい勝負のカオス。

 なのに、鉱山島としての活気を失うことなく落ち着いている。

 ずっとというわけにはいかないだろうけど、季節が一巡りするくらいの間、住んでみたい気になる。

「あら、そこに居るのは孫大人のところの東鈴ね」

 振り返ると絶世の美女……越萌マリが立っている。

「あ、ども……あ……昨日は見かけませんでしたね」

 初対面なのに、微妙なタメ口になってしまう。テル博士に敬語を使ってしまった反動かなあ。

「昨日は恩智に帰っていて……あ、恩智っていうのはうちの本社があるところね」

「あ、そうですよね、シマイルカンパニーのCEOやってらっしゃるんですから」

「経営はもう人に任せてるんだけどもね、節目節目にはキチンと直に顔を合わせて……けっきょくは近くの温泉に浸かって骨休めしちゃうんだけど」

「あ、わたしも、ここのハナと扶桑のテル博士と温泉に入ってました(^▽^)」

「あら、平賀テル、もう来てたの?」

「はい、食堂で会ったのが最初なんですけどね、子どもと間違えてビール飲んでるの叱っちゃって(^_^;)」

「ハハ、わたしも映像でしか見たこと無いんだけど、直に見たらそうなると思うわ」

「アハハ、でも、お風呂でいっしょになったら、もう生まれながらの友だちみたいになりましたけど」

「大人は元気にしてる?」

「ええ、変なアルアル星人になっちゃってますけどね」

「フフ、アルアル星人ねぇ。候補生時代に出会った頃もアルアル星人だったなあ」

 候補生……そうだ、この人はPIして越萌マリと名乗っては居るけど、正体は児玉元帥なんだ。

 思い至ったところで、そのアルアル星人からメールが来た。


――これから食堂で朝飯、とっとと来るよろしアル!――



 
☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟

 
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銀河太平記・272『湯あたりのテル博士』

2025-01-27 11:13:28 | 小説4
・272

『湯あたりのテル博士』 東鈴 




「いや、気にしなくていいのよさ。考え事してゆと、他のことはお留守になってしまうのよさ……」

 そう言って鼻の下までお湯に浸かって難しい顔の幼児体形、いやテル。

 いや、扶桑科学研究所の主任研究員に呼び捨てはマズイ。

「こちらの、ちゃんとした名前は、なんて呼んだらいいのぉ?」

 こっそりハナに聞いてみる。

「え、ああ……テル、おめえ、ちゃんとした名前はなんてんだ!?」

「え、あ、ちょ!」

 本人に聞くなよ!

「あ、平賀照……」

 気にすることも無く質問に応える。応えながらもハンベの仮想モニターを三つも出して調べものに余念がない。その表情は一人前の科学者のそれで、声をかけるのも憚られるよ。

 真ん中のモニターにはいろんなロボットのスペックや3D図面が続々と表示され、両脇のセカンドモニターにはパーツの構成や組成や構造式やらが10倍速ぐらいで流れている。

「ああ、やっぱり現物見ないと分からないのよしゃ!」

 モニターは青銅の騎士の三面図で停止した。

「あの、平賀博士……」

「え、ああ、ごめん……あ、呼び方はテルでいいのよさ」

「あ、いや、そんな(^_^;)」

「食堂のことなりゃ、もう気にしてないかりゃ、いいのよさ。で、あんたも島の人なのかにゃ?」

「え、あ、孫大人の秘書で東鈴といいます。昼に島に着いたばかりで」

「さっきの歓迎会、テルも出てたじゃねえかぁ(^▭^)」

「あ、ああ、えらく混んでゆと思ったら……」

「テルよぉ、風呂に入ぇるときぐらい、ハンベは止せよ、のぼせっちまうぞ」

 ハナが注意する。なんだかお姉ちゃんが妹に言うみたいでおかしい(^_^;)

「え、あ、ああ、しょれもしょうなのよさ……」

 ハンベは仕舞ったけど、心はまだ半分以上あっちに行ったまま。

「博士、青銅の騎士の研究をなさってるんですか?」

「え、あ、ああ、気になってりゅのよさ」

「あれは、頑丈で打たれ強いロボットでしたけど、弱点さえ分かればどうということのないしろものでしたよ」

「そうそう、ハナもマイさんといっしょに戦ったけど、コツさえつかめば楽勝だったぜ」

「え、二人ともあれと戦ったにょか!?」

「おお、バッチリな!」「わたしは観戦してただけだけど」

「話聞かしぇて!」

「お、おお」

 あの戦いは、モンゴル軍の戦闘術と戦術的機動性、漢明軍の戦略的展開に見るべきものがあった。だから、はるばる火星からやってきての調査なら、そっちの方かと思ったけど、テル博士の着眼点はあくまでも、あのコケ脅しの青銅の騎士。

「関節は?」「首のサーキットは?」「ケーブルは?」「ジェネレーターは?」「反応速度は?」「姿勢制御系は?」「外殻の反発係数は?」「瞬発時の内殻温度は?」「外殻塗装は?」

 矢継ぎ早の質問、そのほとんどは専門的過ぎて答えられるものではなかったけど、目の輝きと鋭さは見た目の体形と異なって、めちゃくちゃ鋭く、ハナもわたしもタジタジで、腕を組んだり天井を仰いだり。

「やっぱし、現物を見なきゃ分からないのよさ(>〇<)!」

 ザップーーン

 ユデダコみたいな顔で叫ぶと、そのまま仰向けにひっくり返って沈んでしまうテル博士だった(^_^;)。


 
☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
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銀河太平記・271『酔っ払いでいっぱいになる前に温泉に』

2025-01-24 12:34:00 | 小説4
・271

『酔っ払いでいっぱいになる前に温泉に』 東鈴 




 そのガキはジョッキと唐揚げを載せた小皿を持つと――気分わるい!――という感じで二つ隣りのテーブルに行ってしまった。

 それから30分ほど配膳やら厨房の手伝いをすると、臨時に召集されたアルバイトの子たちがやってきて、お岩さんたちと小休止。

「さっきの子はねえ、ああ見えても扶桑科学研究所の主任研究員なんだよ。むろん立派な大人さ」

「あのチビッ子が?」

「おお、テルって言ってよ、なんかの調査の為に昨日来たばっかりだ」

「調査?」

「ああ、なんでも、こないだのノモンハン事変の調査をするのに協力して欲しいって、殿下と交渉中なんだよ」

「モンゴルのやつらは気難しい、いきなり火星のチビッ子が行ったって協力なんかしてもらえねえしな」

「ああ、そう言えば、戦場にこっちの元帥……あ、いまはマイさんだったけ来てたわね」

「おお、青銅の騎士が気になるってマイさんが言うもんでよ。ハナもメグさんといっしょに行ってたんだぞ」

「ええ……あ、マイさんのそばでチョロチョロ駆けまわってるのいたあ!」

「チョロチョロ言うな(><)」

「ああ、ごめんごめん(^_^;)」

「青銅の騎士って、ちょっと頑丈なだけのポンコツだったんだろ。マイさんも取り越し苦労だったみたいな様子だったし……あ、市長」

 お岩さんが振り向いた先、厨房の裏口から半身を覗かせているバーコードのオッサンが「あ、どうもぉ」という感じで手を振っている。

「紹介しとくよ、こっち西之島市市長の及川軍平さんだ。こちらは孫大人の秘書で東鈴。たった今までフロアのヘルプやってもらってたんだ」

「あ、どうも、市長の及川です……」

「え、リアル名刺! 初めて見ました!」

「アハハ、ちょっとしたこだわりでして。インパクトあるでしょ(^○^;)」

「なんで裏口から入ぇってくんだよ、市長なら堂々と表からくりゃいいのによ」

「いや、厨房から少し観察……いや、変な意味じゃないですよ……よし、じゃあ、いきますか」

「今夜は泊っていきなよ、この分じゃ朝まで飲んでいそうだし」

「はい、いま、その決心をしたところです。素面に戻るのは明後日になりそうですから、またいずれ東鈴さん(^_^;)」

 けして役人的なそれではない笑顔を見せてフロアに行く市長。ググると元は国交省のキャリア官僚。西之島の市長になるにはいろいろあったんだろうなと想像する。

「そうだ、バイトの子たちも来てくれたし、ひとっぷろ温泉に浸かってきたらどうだい。夕方になったら酒臭いやつらでいっぱいになっちまうからさ」

「え、いいのか!?」

「いいさ、神社の方も神主があのざまだし」

 なるほど、シゲジイ神主は真っ赤な顔で孫悟や殿下とできあがってしまってる。


 カッポーーーン  ザザザザーーーー


 それだけで心がほぐれそうな音にひかれて温泉に浸かる。

 西之島は火山島なので、島のどこを掘っても温泉が湧き出そうなものだけど、地下水に限界があるので、自然なままで温泉になるところは意外に少ない。

「ここはよ、落盤事故の始末してる時に見つかった温泉なんだけどよ、戦争で整備が遅れてたのをやっと完成させたとこなんだ」

 説明しながらクルクルと裸になるハナ。巫女服の時は気づかなかったけど、胸から下、太ももの途中までの肌がツギハギでケロイドになっているところもある。アッケラカンとはしているけど、壮絶な人生を送ってきたことが偲ばれる。

「あ、ごめん。まだ皮膚の再生済んでないとこがあってよ、まあ、風呂に浸かったら見えなくなるからカンベンな(^_^;)」

「あ、ううん」

「メグさんとかは、さっさとやっちまおうって言うんだけど、あの手術は半日以上かかってよ、術後も激しい運動はダメとかカッタルくってよ、ノビノビにしちまって。まあ、性格の方はノビノビしてっからカンベンだ」

「プ( ´艸`)」

「あ、シャレるつもりはなかったんだけどな……東鈴はきれいな肌してんなあ……触っていいか?」

「うん、、いいよ」

「じゃ、ちょっとだけ……スリスリ……スリスリ……このスベスベ感は並のもんじゃねえなあ」

「あ、そうかなぁ」

 と応えながら、自分でもハッとする。鈴麗の一部を移植してから、どうも体の一部が変化しつつある。でも、それはマイナーチェンジ的なもので、自己点検しても特段驚いたりするものでもなく、驚いたり興味を持つものでもないと放ってある。

 入口の方で人の気配、目を向けると湯気の向こうに幼児体形のシルエット。

 一発で分かって、取りあえずお詫びを言う。

「さっきはすみませんでした!」

「ヒ!」

 いきなりだったのでビックリしてツルリンと滑った。

 ザバ!

 ハナがワープするようなスピードで飛び出し、転倒しきる前に幼児体形を助けた!


 
☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)

村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 

 
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銀河太平記・270『島守睦仁とアルアル悟兵』

2025-01-21 11:31:22 | 小説4
・270

『島守睦仁とアルアル悟兵』 東鈴 





 にぎやかに氷室神社に参拝した後、そのままお岩食堂で歓迎会になった。


 お岩食堂は、カルチェタランのフロアと同じくらいの広さなんだけども、壁や天井に増改築した跡が見えて、氷室カンパニー(行政区的には南区らしい)発展の様子がうかがえる。

 悟兵が見せびらかすように、ゆっくりと筋斗雲を着陸させたこともあって、食堂は、とりあえず駆けつけた暇人やら、休憩中やら、サボってきたのやら、百人ほどが集まって賑やか。

 カルチェタランのある北大街も国籍不明の怪しい街だけど、ここは、その猥雑さから怪しさを引いた健康な陽気さがある。

「取りあえずはレプリケーターのアテで飲んどくれ! ランチの後で大したものは作れないけど、乾杯してる間に適当に作ってやるから!」

 お岩さんが宣言すると「オオ!」とか「分かった!」とか「了解!」とか返事があって、オッサン、ニイチャン、ネエチャン、ロボットに正体不明やらが酒やビールを注いだりレプリケーターに突進したり、なんとも猥雑で怪しい(^_^;)。

 怪しいんだけども、北大街みたいな落ちついた危なさは感じられない。

 悟兵とあちこち飛び回ったけど、ここの猥雑さは好きになれそうだ。

「みんな、とりあえず酒とアテは確保しただろ。ちょっと注目!」

「おお、サブも一人前になったアル」

「サブ?」

「ああ、昔は元気がいいだけの若造だったけど、フートンの主席代理になって大人になったアル」

「へえ、主席代理ぃ」

「殿下から、話があるから聞くように!」

 大方が静かになって、出入り口に近いテーブルの端っこから人の良さそうなオッサンが立ち上がる。

「申しわけない、一言だけ挨拶を」

 済まなさそうに言っただけで、少し残っていた喧騒も止む。いや、止むどころか全員が端近の、劇場で言えばほとんど立見席のそこに注目する。

「突然ではありますが、孫大人が筋斗雲に乗って戻って来てくれました。あ、つい嬉しいもので『戻ってきた』と言いましたが……本人もご異議がないようなので『戻ってきた』でいきます。西之島もようやく落ち着いて採掘作業やインフラの整備に掛かれるようになりました。島守としてこれほど嬉しいことはありません。ええと……とにかく、乾杯しましょう!」

 オオ!!!!

 すごい雄たけびが上がって乾杯すると、元の猥雑な酒盛りに戻ってしまう(^_^;)。

「済まない、孫大人。わたしだけが挨拶して、大人が話す間もなかった(-_-;)」

「いやいや、酒盛りは悟兵も好きアル。悟兵もあちこちで飲むから気遣いいらないアルよ」

「こちらは、新しい助手さんですか?」

「はいい、東鈴と云います。ちょと口やかましいアルけど、優秀アル。よろしくしてやってくださいアル」

「氷室睦仁です。改まった席では殿下を使っていますが、まあ、氷室鉱山の社長です。よろしく」

「東鈴です。改まった応対は苦手ですので、普通に話してかまいませんか?」

「ああ、むろんです(^_^)」

「あの、島守って呼称を使っていらっしゃったけど、あれは?」

 わたしのアーカイブに『島守』の呼称は無い。

「ああ、殿下という敬称が苦手なので発明しました」

「アハ、発明しちゃったんですか!?」

「自分では気に入ってるんですけどね、島を守るでシマモリ。防人(さきもり)に通じるカッコよさがあります」

「考えたアルね。音読みしたらシマノカミ(島の神)。現人神(あらひとがみ)のニュアンスに通じるアル」

「あ、それは無いですから(''◇'')ゞ」

 慌てて手をワイパーみたく振る。孫悟の十倍は誠実な人物のよう。

「大人も、アルアル語、可愛くていいですね」

「ああ、言ってやってくださいよ。そばで聞いていると気持ち悪くてぇ!」

「アハハ、気持ち悪がられてますよ」

「いいんじゃないですか」

「え、どうしてぇ!?」

「う~ん、距離感がいいと思います」

「距離感?」

「ああ、そうアル!」

「なによ」

「これ、厨房のお岩さんに持って行ってほしいアル」

「え、ああ」

「なんですか、これは?」

「マーマレードある。北京に寄ったら大統領にことづかったアル。あとで悟兵も行く言うといてアル」

「へいへい……あ……ちょっと……ごめんなさいね……通りますぅ……」

 昼時の学食みたいに混雑したホールを抜けて厨房のお岩さんに声をかける。

「お岩さん」

「え、あ、大人の?」

「はい、東鈴です。ボス、島守と話してるんで、預かりもの……」

「すまないね、手が離せないから、そこ置いといて」

「あ、はい」

『餃子10人前、唐揚げ10人前上がったぁ!』

 さっきのサル……ハナが鍋ふって、でもお岩さんは手が離せない、

「あいよ……」

「あ、あたし、手伝いましょうか?」

「え、すまないねえ。じゃ、5番テーブルだから、お願い」

「了解(^^ゞ」

 ヒョイヒョイとテーブルの間を縫って5番のテーブルへ。

「はい、おまち! 餃子10人前、唐揚げ10人前!」

 ドン ドン

 お皿を置いて気が付いた。真っ先にお箸を伸ばしてきた女の子(どう見ても小学生)が片手で生ビールをかっくらってる!

「ちょ、子どもがビール飲んじゃダメでしょ!」

「ム~、あたしは子どもじゃないんりゃから! ビールぐらい飲んでもかまわないのよしゃ~」

「どこがかまわないのしゃ~よ!」

 ギロ(≖△≖)

 ゲ、なんちゅう目つきだ! 




☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)

村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
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