大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・254『密航者っす!』

2024-10-15 17:13:26 | 小説4
・254

『密航者っす!』 ツナカン 




 ええと……解説の続きっす。


 読者の中には気づいてる人もいるかもっスけど、マーク船長のねぐらは、うちらの火星基地の裏側にあるっす。

 うちらの基地を畳むときには「もう少し様子を見る」ってことで残ってたっす。

 規模が小さいのと、大海賊アルルカンが退避した後ならかえって目立たないってことなんすけど、横着で面倒くさいからだと船長もヒンメル乗員も思ってるっす。

 うちらは、超宇宙戦艦ヒンメルを使って銀河系レベルで活躍する大宇宙海賊。言ってみりゃ巨大企業なんすけど、マーク船長はファルコンZってボ-トみたいな宇宙船で、チマチマと太陽系の中を走り回ってる零細企業。

 その巨大企業のボスのアルルカンと零細企業のマーク船長は、表面はカタキ同士みたいなんすけど、根っこのところでは仲がいいっす。

 だから、駆逐艦松のブリッジに隠れていて、姿を現した今も「き、貴様ぁ、ファルコンZのマーク船長(;・`д・´)!」とか言いながら嬉しそうに松のデッキに上がって行ったっす。

「いやぁ、ちょっと事故っちまってファルコン・Zオシャカにしちまって。他に船もねえから、冥王星のコレクションの中に忍び込んでお待ち申し上げていたってわけだ」

「不埒なやつめ! でも、よく松に乗り込んだもんだなあ。冥王星のコレクションは300隻はあるぞ」

「あはは、長い付き合い、アルルカンの趣味と事情は分かってるさ。お前なら、きっと松竹梅を選ぶってな」

「いや、ほんとはナガトを持っていくつもりだったんだぞ」

「でも、ツナカンやアルミカンに反対されて、妥協の末に松竹梅。図星だったろう?」

 アハハハハハ(ᵔᗜᵔ* ) 

「笑うなツナカン!」

「マーク船長、そっちのクルーはどうしたんすか?」

「ああ、竹と梅にな……」

 船長が指差すと、竹のデッキにバルスのおっさん、梅のデッキにミナホとポチが出てきたっす。

「おお、みんな元気にしてるっすかぁ(^▽^)/」

 思わずゲストのココちゃんたちと手を振ったっす!

『おーーい!』『元気かぁ!』『ワン!』

 向こうも元気に手を振ってくれたっす!

「あらあ、でも、みなさん顔や服が汚れてぇ……」

 ココちゃんが気づいて、うちらも、ちょっと気になったっす。

「ああ、密航してるだけじゃヒマなんでな、あっちこっち弄ってスペック上げといたんだ」

「ええ、わたしのコレクション触ったのか!?」

「映画の道具にされてた船だけど、レプリカのナガトと違って元々は現役の軍艦だ。触ってみたくもなるぜ……んな顔すんなよ」

「なんだか、自分の娘が好きにされたみたいだぞ」

「ちょ、マジで泣くなよ!」

「ググ、でも、マーク、なんでお前の服や手はきれいなまま……あ、そうか、いちばんオキニの松だけは触らなかったんだな!」

「いや、あいつらは興が乗っちまって、内火艇とかもいじってたからな」

『もう、ギンギンにチューンしました!』『ミナホもがんばりましたぁ!』『ワン!』

「ああ、目まいがぁ……」

「あ、船長!」

「アハハハ(≧ε≦*) 」

 ショックのあまりガラにもなくよろめく船長、反射神経で開放するココちゃん、爆笑の周温雷。殿下(森ノ宮親王)と胡蝶さんは、さすがに微笑むだけっす。

 うちら乗組員は――ああ、またかあ――って感じなんすけど、これで挫ける船長じゃねえんす(^_^;)。

 でも!

 これ以上の話しは、このツナカンをもってしても心臓に悪いんで、この次にするっす(-_-;)。


☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!31『だったらキスしろ!』

2024-10-15 08:30:40 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
31『だったらキスしろ!』 




「この棺の中の……白雪姫だよな?」

 五分経った。

 レミはアニマを、アニマは棺の中の女を見つめるばかりでらちが明かねえんで、聞いて見たぜ。

「白雪姫だよな?」

「…………」

「…………」

「あ、ひょっとして蝋人形か( ゚Д゚)!? 最近のはシリコンとかで出来てっから、スゲェーんだよな。胸とかは特に柔らけえの使ってて、ゼリー胸とか言ってプニプニなんだろぉ(〃∀〃)?」 

「触んなアアア!!」

「おっと、なんにも言わねえから、ちょっとふざけただけじゃねえか! なんか言えよ!」

「ハァ、眠れる森の美女じゃなければね(*´Д`)」

 やっとレミが答える。

「ね、そうでしょ!?」

 レミは、矛先をアニマ王子に向ける。

「あ、ああ……スノーホワイトかもしれないし、シュネービットヒィエンかもしれないけど」

「それ、英語とドイツ語に言い換えただけじゃねえか」

「あ、ああ……そうだよね。でも彼女がスノーホワイトなら、英語じゃなきゃ伝わらないし、シュネービットヒィエンならドイツ語でなきゃ。ボクは日本語だから微妙に違うかも……ハァァァァァ(*´▢`)」

 軟弱王子は、長いため息をついて、うなだれやがった。

「まあ、現実を認めるようになっただけ進歩だけどね。ね、スニージー」

 レミがつぶやいくと、棺の陰に気配がしたぞ。


 ハーックション!


 とたんに大きなクシャミがして、棺の向こうからドワーフが現れやがった。


「やあ、レミ、世話かけるね。そちらさんが?」

「うん、魔法使いのマユ。やっと来てもらえたの」

「そりゃあいい。もう、この世界はこんぐらがっちゃってるからね。よろしくマユ」

「お、おう、おめえ七人の小人のドワーフだろ?」

「ああ、そうだよ」

「他のドワーフは居ねえのか?」

「山に行ってるよ。鉱石掘りが俺たちの仕事だからね。夕暮れになったらみんな戻ってくる。もう少し時間があるから、俺も行っていいかなあ」

「もちろんよ。でも、あの山の向こうで、つま先立ちしてるお星様たちが顔を出すまでには戻ってきてね」

「うん、分かった。それじゃ、ちょっくら行って来る」

 スニージーは、アニマ王子に一瞥をくれると、ハイセイコーの馬面を撫で、サッサと、ツルハシをかついで行っちまった。


「ドワーフたちも、持て余してるのよねえ……」


 スニージーを見送りながらレミがこぼしやがる。

 ヘックション!

 とたんに彼方のスニージーが大きなクシャミ。そのコダマが収まって、マユは聞いたぜ。

「なあ、白雪姫の話ってよぉ、王子のキスで白雪姫が生き返って、メデタシメデタシになるんじゃねえのか?」

「それが、そうならないから、苦労してんのよ」

「ああ、いったいどうすればいいんだ……僕はぁぁぁぁ!?」

 アニマ王子が、頭をかきむしりながら身もだえやがる。

「簡単だ。キスしちゃえばミッションコンプリートじゃねえか!」

「それがね……」

 レミが腕組みをした。

「ひょっとして、アニマって〇〇……なのか?」

「そんな、ボクは〇〇でもなきゃXXでもない! 心から白雪姫のことを愛しているんだ!」

「だったらあ……!」

「ボクが王子でなくて、白雪姫が王女でなきゃ事は簡単なんだけどね」

「ハア……」

 組んだ腕をほどいて、レミはため息をついた。


「僕と白雪姫がいっしょになったら、どうなると思う……」

 アニマ王子は、両手を広げると空をあおいでつぶやいた。

「ハッピーエンドじゃねえのか?」

「考えてもくれよ。一国の王子と王女だよ。それが好きになって結ばれたら、二つの国が合併することになるんだよ。うまく根回ししても、強力な同盟関係になったと思われるし、現にそうなってしまうだろう」

「それがぁ……(‎ ‎¯ࡇ¯ ) 」

 めんどくさいやつだ。

「ここは、北にシンデレラの王国、南に眠れる美女の王国、そのまた南が白雪姫の国だ。うちと白雪姫の国がいっしょになれば、この微妙なファンタジー世界のパワーバランスが崩れ、緊張関係がいっそう増してしまう。王子であるボクは、自分の思い通りには行動できないんだよ」

「でもさあ……んなことぉ、やってみなきゃ分からねえだろーが。ディズニーなんか、みんなメデタシメデタシでエンドマーク出してんじゃねえか」

「あれはディズニーが、無理矢理話をねじまげたからさ。ファンタジーの世界はもっと残酷で、リアルなんだよ。なんなら、このグリムの原作を読んでみるといいよ」

「グリムの残酷さぐらいは魔法学校で習った。でも、しっかり現実を見てみろよぉぉぉ!」

 もう辛抱ブチギレて、アニマを棺の前に引き据えてやったぞ!

「マ、マユ……(;'∀')」

 マユの強引さに、レミは、思わず声をあげやがる。

「好きなんだろーが!?」

「う、うん……」

「愛してんだろーがあ!?」

「だったら、何も考えることは無ぇえ。キスしちまえええ(>▢<)!」

 ありったけの魔力で、王子の顔を白雪姫の顔に近づける……しかし、アニマ王子は渾身の力で抗いやがって、その唇は五ミリの距離を置いて止まってしまう!


「……なんちゅう根性なし!」


「だって、ここで二人が結ばれたら、白雪姫の国で内戦がおこるよ。王妃側と白雪姫側に分かれた血みどろな内戦が!」

「それをなんとかすんのが、王子だろーが!」

 アニマ王子が、顔を真っ赤にして、何か言おうとしたとき。お花畑の横の道に気配がした。


「あのぉ……お取込み中のところ失礼します。このへんでライオンさん見かけませんでした?」

「「「ああん!?」」」

 三人メッチャ不穏な返事をしたのに、 そいつは、白と水色のギンガムチェックに半袖パフスリーブのワンピース。髪はツインテール、バスケットを腕に下げ、赤い靴を履いていて、人の事なんかぜんぜん気にしねえでリフレインしやがった。

「このへんでライオンさん見かけませんでしたぁ?」



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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やくもあやかし物語2・077『魔王子トバルと御息所の激闘』

2024-10-14 11:01:52 | カントリーロード
くもやかし物語 2
077『魔王子トバルと御息所の激闘』 




「ミヤスドコロぉ? なんだ、その観光地の休憩場所みたいな名前はぁ?」

「ふん、哀れなな異世界王子よ。読み仮名だけ拾っても妾(わらわ)の値打ちは分かるまいぞ」

「「なにを……ぼく(わたし)には世界中の言語を理解する力があるんだぞ」」

 トバルヤクモとトバルメイソンがステレオで反論してくる。

「「六条御息所……か、フフ、京都の六条にある公衆トイレみたいな字面だな」」

「フン、では、その公衆トイレに勝ってみよ!」

「「望むところ!」」

「あぶない、御息所ぉ!」

 ブン! ブブン! ブン!

 姉のトバリと同じような音をさせて御息所に攻撃を仕掛けるトバル。トバルヤクモとトバルメイソンに分身してるんで敵わないかと心配になったけど、けっこう身軽に躱していく御息所。

「なかなかやるじゃないか、おチビちゃん」

 悪気無く禁句を使って応援するメイソン。いつもだったら「おチビちゃん言うなあ!」と文句を言うんだけど、黙々と異世界王子の攻撃をかわしていく御息所!

 ブン! ブブン! ブン! 

 フワ フワ ヒラリ フワワ 

 ブブン! ブン! 

 フワリ フワフワ ヒラリ

「頑張ってるけど、なんだか躱してばかりだなあ……だいじょうぶか?」

「だいじょうぶ、なにか考えがあってのことだと思う」


「フワフワ逃げてばかりいないでぇ」「かかってこいぃ!」

 ブブン! ブン! 

 ハラリ フワフワ ヒラリ

『よし、もうこのくらいで良いであろう』

「「なんだと?」」


 呆気にとられるトバルを尻目に両手を広げてトバリの周囲をグルリと回る御息所。
 その入っている手袋からはハラハラと星くずみたいな花粉みたいなのが振りまかれ、トバリは急速に眠くなってきて一つになって元のトバリの姿になったよ。

『トドメじゃ!』

 ウワァアアア!

 トバルは目をつぶったまま恐慌状態になって、叫び声をあげると逃げるように急上昇した。

 ズゴン! ギャフン!

 衝撃音と悲鳴があがる。

 急上昇したトバルは、そのまま結界の頂点にいた姉のトバリに激突して消えてしまった。


 ピ~~ピピ~


 ヒバリの声だけがして、あたりは元の穏やかな草原に戻ったよ。


 でも、メイソンも他の仲間も姿が見えない。

 時間切れになったんだ。

 メイソンも言ってたし、ちょっと寂しいけど……まあ、仕方がない。

「ねえ、どうやってやっつけたの?」

 御息所に聞いてみる。

『あれはね、あいつがこれまで見た悪夢をぜんぶ思い出させてやったのよ』

 もう通常モードになって、それだけ言うとポケットの中に戻ってしまう御息所。

 ZZZZ……ZZZZ……ZZZZZZ……

「疲れちゃったんだね……しかたない、一人で行くかぁ」

 メイソンたちが持ってきてくれた食料の中からチキンラーメンを出して、ボリボリ齧りながら先に進んだ。

 ゲフ

 一袋まるまるかじって食べたら、けっこうお腹がいっぱいになった。


 キーストーンを取り返す旅はまだまだ続いていきそうだ……。



☆彡主な登場人物 
  • やくも        ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド  メイソン・ヒル  オリビア・トンプソン  ロージー・エドワーズ  ヒトビッチ・アルカード  ヒューゴ・プライス  ベラ・グリフィス  アイネ・シュタインベルグ  アンナ・ハーマスティン
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女 マーフォーク(半魚人) トバル(魔王子)  トバリ(魔王女)
 
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!30『情けねえ王子』

2024-10-14 08:42:00 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
30『情けねえ王子』 


 


 薮から棒のような男は、心ここにあらずという顔をしてやがる。


「なんだ、この覗き魔ヤローは!」

「あ、その人だったら大丈夫。わたしなんか目じゃないから」

 麦藁帽を被りながら、レミが言う。

「目じゃねえ?」

 どういう意味だ?

「アニマ……今日もダメだったんだね」

「……あ、レミか。いつもと服装が違うから分からなかった……ああ、似合ってるよ」

 後ろの「似合ってる」は取ってつけたみてえで心が籠ってねえ……と思ったら、弱っちい女みてえに手で顔を覆って泣きやがる。

「な、情けないやつだよボクは!」

 ベルベットのマントにシルクの袖なんかかがゆったりしたドレスシャツ。乗馬ズボンに、金の鎖が付いたサーベルなんか付けていて、見るからに、ハイソな坊ちゃん。顔も、泣いてさえいなかったら、ディズニーアニメの王子さまが務まりそうなイケメンなんだけどな、自分で言ってる通りに情けねえ。

「紹介しとくわ。この人、ゲッチンゲン公国の王子さまで、アニマ・モラトリアム・フォン・ゲッチンゲン。こちら、わたしのお友だちで味方のマユよ」

 現金なもので、レミは、もう十年来のお友だちの感覚でいやがる。

「よ、よろしく、アニマって呼んでくれていいよ」

「ああ、小悪魔のマユだ。覚えとけ」

「え、あ……悪魔(◎△◎)!?」

「そーだ。ウジウジしてっと呪い殺すぞ」

「ヒーー(>□<)!」

「ああ、それくらいにしてやって、マユ(^_^;)」

「フン」

「今日もダメだったのね……」

「う、うん……」

「強い心で踏み出さなきゃ、いざという時に王子としての義務が果たせなくなるわよ。いすれは、国王にならなきゃいけないんだからね」

「ボ、ボクには、そんな資格はないよ。あの愛しい人一人救えないのに」

「じゃあ、その愛しい人のところに連れていってくれるかしら、現物見てもらった方が分かり易いから」

 え、マユに振んなよ(^_^;)!

「ああ、そうだな。見てやってくれたまえ。そして、ボクに知恵と勇気を与えてくれたまえ。このファンタジーの世界の程よいヒーローとしての勇気を」

「もう、ココロザシが低いんだから。ヒーローってば一番に決まってるでしょうが! 程よいなんてありえないわよ!」

 レミは、鼻息荒くアニマを叱りやがる。

「そういう帝国主義的なヒーローは、趣味じゃないんだ」

「そうやって、言葉でごまかして責任逃れするんだから」

「あ、立派な馬……」


 王子の後ろから立派な白馬が現れた。


「やあ、僕ハイセイコー。アニマ王子の専用のお馬さんだよ」

「馬が喋った!」

 驚いた。魔界でもケルベロスとか喋るけどよ。そういうのは見ただけで分かる。この馬はカッコはいいけど普通の馬だ、こいつには『喋ります』ってオーラがねえ。

「ここは、ファンタジーの世界よ。カラスが監視カメラにもなるし、馬だって、喋って当たり前」

「……でも、ハイセイコーって、どこかで聞いたことあるなあ」

「三十年前に、ここに来たんだ。そっちの世界にいたころは競馬場で走ってた(*´ω`*)」

 ちょっとはにかみながら、ハイセイコーが言いやがる。

「あ、伝説の競走馬!」

 マユの頭の悪魔辞典にも答えが出てきた。

――ハイセイコーは日本の世界的競走馬。1970年代の日本において社会現象と呼ばれるほどの人気を集めた国民的アイドルホース。第一次競馬ブームのヒーローとなる。1984年、顕彰馬に選出され、銅像にもなっている!――

「あ……そんなに感動してくれなくっていいから」

 ハイセイコーは、チラッとアニマ王子に目をやった。

「ハイセイコーは、この世界に来てからは、兄のアニムス・ウィリアム・フォン・ゲッチンゲンの乗馬だったんだ。兄が亡くなってからは、役目上ボクを乗せてくれているんだけどね」

「アニマ王子、僕は、キミに乗ってもらって光栄だと思ってるんだよ……そりゃ、お兄さんも偉い王子さまだったけど」

「そうだよ、兄貴は立派だったさ!」

 こいつ、だいぶ病んでやがる。

「ま、とにかく、ここで落ち込んでても、なんにもならんないから、行くとこに行こうよ!」

 レミが、キッパリと言った。


 それは、さらなる森の奥にあったぜ。


 丘を超えて小川を渡ったところが、テニスコートほどに開けた芝地になっていて、そこここに、マユには分からない花がいっぱい咲いてる。お花畑っていうやつだ。

 そのお花畑の真ん中に棺が安置されてやがる。

 近づくと、それはガラスの棺ってやつだ。


 棺の中で眠るように横たわっていたのは……まるで白雪姫だったぜ。
 


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・133『are so』

2024-10-13 15:56:57 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
133『are so』   




 ちょっとやり過ぎたかなあ。


 殊勝なことを言ってるけど、たみ子の目はへの字だし、いっしょに写真を見てるお仲間は、みんなニヤニヤしてる。

 さすがに教室だと差しさわりがあるので、昼休の中庭、藤棚の下で体育祭の写真を見ている。ほら、最後のプログラムだった着せ替えリレー。

 何十枚もある写真の中で一番人気が10円男の女装写真。

 もともとスレンダーな優男なんだけど、めちゃくちゃセーラー服が似合ってる。
 パンツ以外は全部女物で、走っているとスカートの中のスリップやら、揺れる襟から覗くブラ紐なんかがリアルに雰囲気。
 そして、髪は女子のボブってくらいに伸ばしてたから、違和感がほとんど無い。

 そして何より表情。

 最後まで嫌がってたんで、眉根にキュっと力が入ってるとこが、健気でカワイイ(^▽^)

「山口百恵みたい!」

 思わず口走って、みんなが『?』な顔をする。

 しまった、この時代、まだ山口百恵はデビューしてないか!?

「あ、ちょ……」

 佳奈子が声を上げる。ちょうど通路から10円男が友だちとやってくるところだ。

 アワワワ(''◇'')

 真知子が慌てて写真帳を挟んでいたスクラップ帳ごと落としてしまう。

 仕方が無いので、スクラップ帳ごと拾ってスクラップ帳を観てるふりをする。

 写真帳もスクラップ帳もロコのもので、開いたところは今月のニュース。

「なんだ、ヒロヒトの写真なんか見てんのか……」

 捨て台詞を残して、男どもは学食の方に行ってしまう。

「そうだ、天皇陛下、そろそろ帰って来るんだねぇ」

 記事の写真を見ながらたみ子が話題を変える。 

 
 史上初めて天皇陛下がアメリカに行った。


 この時代の天皇陛下は令和の天皇陛下のお祖父ちゃん。

 令和の天皇陛下も、わたしの感覚じゃお爺さん。愛子様はわたしより四つも年上なんだけど、その愛子様はひ孫になるんだからすごいよ。

「おもしろいエピソードがあるんですよぉ(^▽^)」

 さすがはロコ、新聞をスクラップするだけじゃなくて、ネタを仕込んでるよ。

「「「なになに?」」」

「あっちじゃ、いろいろご歓談になってるんですけど。あ、陛下は日本語で通訳が入るんですけどね」

「でしょうね、天皇さんが英語喋ってるのは見たことない」

 真知子は『天皇さん』と呼ぶんだ。

「あの人、英語しゃべれるよ。皇太子のころにイギリスに行って国王とさしで喋ってるの見たことある」

 たみ子は『あの人』だよ(^_^;)

「で、どんな英語」

 英語が苦手な佳奈子が話題を戻す。

「それがですねぇ、人が喋り終えると『are so』って言われるんです」

「『ああ、そう』って日本語でしょ」

 わたしが普通の反応をするとESSの部員でもあるたみ子がピンときた。

「あ、そうか! 言うよ『are so』って、日本語に訳しても『ああ、そう』だ!」

「are so なんだ( ゚Д゚)!」

 あ、アハハハ(^〇^)

 ギャグをかましたと思われて、笑われてしまった。


 うちへ帰ってお祖母ちゃんに話をした。


「ああ、あれはすごいことだったんだよ」

「are so?」

 ポコン

「イテ」

 新聞丸めたので叩かれる。

「国家的規模の敗戦で潰れなかったのは日本の皇室だけなんだ」

「え、そうなの?」

「イタリアなんかムッソリーニが処刑されて、一応王制は残ったんだけどね、国民の総スカンくらって国外追放になった」

「え、イタリアに王さま居たの?」

「居たよ。第一次大戦じゃドイツとロシアの帝政が廃止されたし、中国の清朝も日清戦争に敗れて滅んじゃったし。ナポレオンもロシアに負けてコルシカ島に流されたしね」

「ああ、そうなんだ」

「それに、昭和天皇はあの戦争が起きた時の国家元首だからね、その陛下が敵国だったアメリカに国賓で行かれた意味は大きいよ」

「そうなんだ」

「エリザベス女王が来日された時の記者会見でね『来日の目的はなんでしょう?』って質問をした記者がいたんだけどね、女王のご返事は『天皇陛下に教えを請いにきました』だったよ」

「ええ、リップサービスじゃないの?」

「女王の訪日は、陛下の訪米の四年後だよ。それに、その時、裏の警護責任者をやってたのは……」

「え、お祖母ちゃん!?」

「そうだよ、向こうの影のSPとも親しくなってね。お祖母ちゃん、あくる年にその人からプロポーズされた」

「ええ、うっそー( ゚Д゚)!?」

「で、シュミレーションしてみた」

「え、どんな?」

「孫娘が生まれたら、どんな子になるかって……ほら、こんなの」

 お祖母ちゃんが指を回すと、ソファーの向こう側にわたしを100倍可愛くしたようなクォーター美人が現われた。そいつ、長い足を組んでピースサインをしやがったよ(^_^;)。

 明日から中間テスト、がんばろう。



☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 


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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!29『藪から棒』

2024-10-13 07:25:19 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
29『藪から棒』 




「とりあえず、その服なんとかしねえとなあ(^_^;)」

 エルフの王女レミは、マユの叫び声で着替えたばっかのフンワリワンピを吹き飛ばされて。取りあえず、そこら辺の落ち葉をかき集めて蓑虫みてえになってやがる。

「いいのよ、あの驚きっぷりで、あなたの魔力のスサマジサも分かったから」

「んでも、その格好じゃあんまりだろ。マユが魔法で服を出してやっから」

「アハハ、そうしてくれたら嬉しいんだけどね(^_^;)」

「あんまりファッションのセンスには自信ねえんだけどな……とりあえずファッション雑誌でも見て考えようよ」

 マユは、とりあえずローザンヌにあった最新号を出したぜ。

「このタンク付きトロピカルTシャツに花柄フレアースカート、ストローハット付きなんてどうだ?」

「……あの」

「じゃ、このゴスロリモテカワ系なんかどうだ。知井子ってやつがこんなの着てんだけどよ、あ、こっちのもいいかも……ん、どうかしたか?」

 レミは、じっとうつむいてやがる。

「……やっぱり、あなたを騙すことなんてできないわ」

「騙す……どういうことだ?」

「マユが、魔法で服を出してくれたら……もう契約成立ってことになるの」

「え……マユをハメようとしたのか!?」

「……うん」

 アホー

 鳴き声がしたかと思うと、上を飛んでたカラスが糞を落としやがってレミのホッペに命中させやがった。レミは、一瞬ドキリとしたけど、そんなに驚いてねえ。なんか間が抜けててマユはクスっと笑っちまった。

「…………」

「あぁ、ごめん笑ったりしてよ……」

 マユは、ティッシュを出して拭いてやろうとした。レミは、のけ反りやがる。

「なんだよお(`△`)」

「それもダメ……わたしのために何かしようとしたら、それも契約したことになる」

 アホーとカラスが、また鳴いた。

 シャクに障ったんで、カラスを石にしてやった。

 ポト

 カラスは「アホー」の「ホ」の口をしたまま落ちてきやがった。

「あ……それ、お父さんの監視用のカラス……ヤバイよ」

「ハァ、もういいよ」

「え……」

「とりあえず、レミの味方になってやんよ」

「ほ、ほんと( ゚Д゚)!?」

 思わず立ち上がるレミ。

 その勢いで、身にまとった落ち葉が、いっせいに落ちてスッポンポン。でも、それにも気づかないほどレミの驚きと喜びは大きいみてえだ。

 ちょっとクセのあるやつみてえだけど、悪い奴じゃなさそうだ。

「あぁ……とりあえず、その格好、なんとかしよう」

「……あ(;'∀')」

「えい……あれ?」

 とりあえず、ファッション誌最新号に載ってた服を着せたんだけど、服はタグが付いたままレミの前に置かれた状態だぜ。

「これ、着ちゃったら、もう後戻りできないよ……」

「いいから、早く……着ろって言ったら、さっさと着ろヽ(`Д´)ノ 」

「あ……ありがとう(;'∀')!」

 レミは、大急ぎで服を着やがる。

 そのとき、マユが木の葉を吹き飛ばして出来た半径10メートルほどの森の広場。その向こうの薮で人の気配がした。

「だれだ、そこに居やがるのは!?」
 
 マユは、レミを庇うように立ちふさがったぞ。


 薮から……棒みてえな男が現れやがった。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

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連載戯曲・クララ ハイジを待ちながら・6・お嬢さま!

2024-10-12 17:52:16 | 戯曲
クララ  ハイジを待ちながら    

大橋むつお 
 
※ 本作は自由に上演していただいて構いません、詳細は最終回の最後に記しておきます




6 お嬢さま!

時   ある日
所     クララの部屋
人物    クララ(ゼーゼマンの一人娘) シャルロッテ(新入りのメイド) ロッテンマイヤー(声のみ)




 明るい曲が流れ、クララはモニターのアナタとともに歌いながら踊る。踊り終えて、なぜか涙ぐむアナタとクララ。


クララ:ああ、おもしろかった。またやりましょうね。どうしたの、どうして泣いてるの?……え、わたしも……ほんと変ね、こんなに楽しいのに、こんなに友だちなのに……ちょっと暑い。

 こっちの窓も開けるわね……トドの雲もどこかにいっちゃったんでしょうね、方角から言えばこっちのほうなんだけど。

 ……あ、飛行船! 

 わあ、あんなに低くゆっくりと……シャルちゃん。ロッテンマイヤーさん。飛行船よ、飛行船! 

 テラスからお庭に出てみて。今、教会の上のあたりだから……あ、アナタには見えないわね(カメラの向きを変える)……どう、見えた? 

 ツェッペリンね……昔はもっと大きいのがあったそうよ……あれの何倍も大きいのが……追いかけてみたらって……うん、いつかはね……追いかけていって、きっと乗せてもらうわ。雲は流れて行ってカタチを変えてしまうけど、飛行船はカタチを変えないわ、検索したら、乗り方だってわかるし……それに、今日は大事なお友達が来るんだもん……え、なんか言った?……なんでもない……へんなの。

 ……飛行船、グルーっと街の空を一周するのね。まるで、わたしのことを待ってくれているみたい……。

 このとき陽気な口笛が聞こえる。

クララ:あの口笛……ハイジだわ!

 ……カメラもどすね、わたし着替えなきゃならないから。

 だって、この服はアルムで初めて立てたときに、ハイジとお揃えで買ってもらったままだもの。なにか新しい服でなくっちゃ……ハイジは、昔のままよ「わたしはアルプスの子です」って、全身で自己主張してるみたいな、トロコンハイジ。

ロッテンマイヤー:お嬢様。ハイジが、ハイジが来ましたよ!

クララ:わかってる、口笛が聞こえたわ。

ロッテンマイヤー:じゃ、お早く。

クララ:服を探してんの……。

ロッテンマイヤー:ハイジは忙しい子なんですから、お早く!

クララ:分かってるわ、ロッテンマイヤーさん!

 シャルロッテがやってくる。

シャルロッテ:お嬢さま、お手伝いいたしましょうか?

クララ:あ、ありがとう、適当にひっぱりだして見せてくれる。

シャルロッテ:……これなんか、いかがでしょう、シックなブルーでお嬢さまにぴったり。

クララ:ありがとう。でも、もすこし明るいものでなくっちゃ、ハイジに負けちゃうわ。

シャルロッテ:……じゃ、これは?

クララ:それじゃ郵便ポスト。

シャルロッテ:じゃ、こっち。

クララ:サンタクロースの孫じゃないのよ。

シャルロッテ:……じゃ、思い切ってこんなのは!?

クララ:いいけどナントカ48みたい、ちょっとセンスがね、わたし的じゃない。

シャルロッテ:じゃ、こっち!

クララ:いまいち!。

シャルロッテ:じゃ……思い切ってこんなの!

クララ:あ、ミリタリー。   

シャルロッテ お気に召しまして?

クララ:……でも、それって日本の自衛隊。専守防衛って、引きこもりのイメージ。

ロッテンマイヤー:お嬢様、ハイジ先に行きましたわよ。

シャルロッテ:お嬢さま!

クララ:大丈夫。わたしの家の前一本道だから、交差点につくまでに間に合えばいいの。

シャルロッテ:じゃ急ぎましょ!

クララ:うん!

シャルロッテ:これなんか……お嬢さま……?

クララ:……シャルちゃん、それ脱いで。

シャルロッテ:え?

クララ:クララの再出発! 一からやり直しますって気持ちでメイドのコスなんかいいと……思っちゃったぞ!

シャルロッテ:こんなの、昔のアキバですよぉ。

クララ:あんなマガイモノじゃない。だって、シャルちゃんは本物のメイドなんだもの。わたしメイドインクララになる。お脱ぎなさい!

シャルロッテ:お嬢さま……。

クララ:脱げぇ!

シャルロッテ:きゃー!

 クララ、シャルロッテを追いかけ回す。やがて捕まえて、シャルロッテに馬乗りになり、メイド服を脱がせようとする。

シャルロッテ:や、やめてくださいぃ……お嬢さまは、お嬢さまは、シャルロッテでもなく。ハイジ様でもなく。お嬢さまなんですから! クララ・ゼーゼマンでいらっしゃるんですから、クララ・ゼーゼマン!

クララ:わたし……クララ・ゼーゼマン……あ、ちょっとクラってきちゃった!

シャルロッテ:はい、クララでいらっしゃいます! なにもコスチュームなんかでごまかすことなんかありません!

クララ:そう、そうよね……クララはクララのままで!

シャルロッテ:はい、さようでございます。お嬢さまはお嬢さまであるままで!

クララ:ありがとうシャルちゃん。そうなんだ、簡単なことだったんだ。わたしはわたしのまんまで……ありがとう、このままで、あるがままのクララで行くわ! じゃあね!

 駆け去るクララ、ホッと胸をなで下ろすシャルロッテ。

シャルロッテ:ああ、やっと行ったぁ。

 クララ、駆け戻ってくる。

シャルロッテ:お嬢さま!?

クララ:髪の毛ぐらいかしていかなくっちゃね(鏡に向かって髪を梳かして)ごめん、後のことはお願いね!

シャルロッテ:はい、お嬢さま!

クララ:じゃ、行ってくるね、シャルちゃん。ロッテンマイヤーさんも、バーコードの彼氏によろしくっ!

 駆け去るクララ。しばし呆然のシャルロッテ。

ロッテンマイヤー:シャルロッテ!

シャルロッテ:行かれましたよ、今度こそ……。

ロッテンマイヤー:ああやって、時間をかせいでいらっしゃるのよ。ハイジが交差点まで行って行方が分からなくなるまで……そして「間に合わなかったわ」って戻ってきては、この繰り返し。

シャルロッテ:そんなことありません。さっきはセーラー服でしたけど、今度は……今度は、ご自分のまんまで出かけられましたから。ね、そう思われるでしょアナタ様も(片づけようとする)

ロッテンマイヤー:放っておきなさい、それくらいご自分でできるようにしていただきます!

シャルロッテ:だって……。

 窓の外、この家に向かって来る男に気づく。

シャルロッテ:あ、あのバーコード!……ちょっと、おじさーん! うちのロッテンマイヤーさんに御用ですかぁ!? え、通りかかっただけ? そんなこと言わないでぇ、ちょ、待って! ロッテンマイヤーさーん、バーコ……バルコニーの下に彼氏さんっすよ! 早くしないと行っちゃう!

ロッテンマイヤー:え、あ、ちょ、いま手が離せなくて、て、テーブルクロスとかね……(''◇'')ゞ

シャルロッテ:ああ、もう手がかかるなあ。おじさーん! そこらへん一周してから戻って来てぇ! あ、アナタ様も、コンビニに行くついでにお散歩とか(^▽^)。じゃ、切りますね。えと、パソコンはむずいなあ……これかぁ?

 陽気なテーマ曲カットイン。

シャルロッテ:あ、ちがったぁ! ああ、もうあとあと! ロッテンマイヤーさん、わたしやりますからあ!


 シャルロッテそでにハケ、テーマ曲流れるうちに幕。

 

※ 本作は無料上演である限り作者名「大橋むつお」を記していただければ自由に上演していただいてけっこうです。上演許可も取らなくてかまいません。チラシやパンフレット、中高生の場合はコンクール等で連盟に提出する書類等に作者名「大橋むつお」を明記してください。連盟から上演許可書を求められる場合はメッセージなどでご連絡ください。書類を返送用の封筒を同封のうえ送っていただければ必要事項を記入して返送いたします。
 大幅な脚色、たとえば、登場人物が増えるとか減るとか性別が変わるとか、劇中のエピソードや台詞が変わる時は脚色者を記していただければ幸いです。


 2024年10月 大橋むつお

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馬鹿に付ける薬 021・ヒュドラを討つ・6『ヒュドラ昇天』

2024-10-12 11:46:39 | ノベル2
鹿ける 《気まぐれアルテミスとのんびりベロナの異世界修業》
021:ヒュドラを討つ・6『ヒュドラ昇天』 




「どうやら俺たちが待っていたのはお前たちだったのかもしれねえ」

 意外なことを言う真ん中の首。

「待っていた? わたしたちをですか?」

「ああ、俺たちは『選ばれし勇者』を待って黄金のリンゴを渡すのが使命なんだ」

「「「…………」」」

 にわかには信じがたい冒険者たちはすぐには返事をしない。

「聞いてんのかぁ、お前たちに……」

 ドン

 プルートが大剣を地面に突いた。

「負け惜しみかぁ?」

「「んだとぉ!?」」

「まあまあ」

 二つの首が文句を言いかけるが、真ん中のが目で制して話を続ける。

「俺たちのケルベロス星座は、20世紀にヘラクレス座に取り込まれちまって、もう元気の出しようがねえんだ」

「あらぁ……」

「ケルベロス座なんて聞いたことも無いぞ」

「あああ……(=△=;)」

 アルテミスの一言に再び深いため息をつくケルベロス。しかし、それとわかる溜息は真ん中だけで、両側の首は、もうため息をつく元気さえない。

「ヘラクレス座と白鳥座の間にあったんだ。いまはヘラクレスの中に取り込まれてる」

 商店街のラーメン屋が一軒無くなったように言うプルート。

「まあ、そうだったんですか」

「ごめんな、簡単に言ってしまって」

「まあいい。まぁ、百聞は一見に如かずだ。これを見てくれ」

 ケルベロスが半円を描くように尻尾を振ると数十本のリンゴの木が消えて巨大なインスタントラーメンみたいなのが現れた。

「なんですか、これは?」

「ヒュドラだ、冒険者たち」

「「ええ( ゚Д゚)?」」

「ヒュドラ? 袋から出したばかりのインスタントラーメンみたいだぞ」

「そこのメイジ」

「はい?」

「その杖で叩いてみてくれないか」

「え、ええ」

 少しためらいのあるベロナだったが、蛇の首が見えるわけでもなく、ウロコさえないクネクネの塊は〇〇食品のロゴさえ入れればインスタントラーメンのディスプレイにしか見えず。小さく息を吸うと「エイ!」と掛け声をかけて杖を振るった。

 バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ……

「オオ!」「うわ!」「キャ!」

 崩れの中の方に、それとハッキリわかる蛇の首がゴロゴロと現れた。

「なるほど、首はぜんぶ中心に向かっていたんだな」

「たぶん……」

 ケルベロスが前足で首たちを掻き出すと、真ん中から百個以上の黄金のリンゴが現れた。

「ヒュドラのやつ、最後までリンゴには手を付けなかったんだなぁ」

 三つの首をうなだれさせるケルベロス。

「こいつらがリンゴの番人だったのは本当みたいだな」

「お祈りをさせてもらうわ」

 そう言うと、ベロナは頭の高さほどに浮き上がりヒュドラの欠片の山をグルリと回りながらゆっくりと昇魂の詠唱歌を口ずさむ。

 カケラたちはホロホロと儚く光り、空に昇っていった。


 しばらく欠片たちの昇天を見送る三人。


 最後の光が消えて地上に目を戻すと、ケルベロスの姿が消え、生まれて間もない子犬がスヤスヤと眠っていた。

 三人は黄金のリンゴを回収し、ベロナが子犬を抱き上げると――仕方ないあなあ――儂はしらんぞ――まあまあ――と呟きながら街道に戻って行った。



 
☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • アルテミス          アーチャー 月の女神(レベル10)
  • ベロナ            メイジ 火星の女神 生徒会長(レベル8)
  • プルート           ソードマン 冥王星のスピリット カロンなど五つの衛星がある
  • カロン            野生児のような少女  冥王星の衛星
  • 魔物たち           スライム ヒュドラ ケルベロス
  • カグヤ            アルテミスの姉
  • マルス            ベロナの兄 軍神 農耕神
  • アマテラス          理事長
  • 宮沢賢治           昴学院校長
  • ジョバンニ          教頭
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!28『そいつはレミってやつで……』

2024-10-12 07:36:18 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
28『そいつはレミってやつで……』 





「あなた、小悪魔のマユさんね」

「う……何者!?」

 こいつ、うちの制服は着てるけどにせもの……いや、人間でさえねえ!

「少し、お話がしたいの。いいかしら」

「こんなとこでかぁ?」

「時間はとらせないわ」

「……中庭にでも行こうぜ」

 廊下へのドアを開け……え、ドアはビクともしねえ!

「……なにをしやがった!?」

「ここからは出られないわ」

「ここ、あんまりお話とかする雰囲気じゃねえと思うんだけど」

「そうね、この時間帯、あまりロックもしておけないし」

「じゃあ、どこで……?」

「こっち」

 そいつが指差したのは、6番目の個室……。

「え……ここって、個室は5つのはず?」

「黙って、付いてきて」

 そいつが6番目のドアを開けると、他の個室と同じ便器があるだけだ。二人で入ると狭い。

「その便器のレバーを反対側に回して」

「マユが?」

「うん、わたしは、女子トイレ全体をロックするのに力を使っているから」

「しょうがねえなあ……ん? 動かねえぞ、反対側には」

「人間の力じゃね。小悪魔であることを思い出して……早く」

「もう……」

 マユが小悪魔の力を籠めると、ガクンと一瞬の抵抗があって、レバーが回った。

 ジャーーーーーゴボゴボゴボ!!

 勢いよく青い水が渦を巻いて流れだした。マユは一瞬トイレの洗浄剤かと思ったけどよ、水はすぐに青い霧状になって、個室を満たしはじめたぞ………個室の壁が消えて、空間が広がっていく。

 その時、廊下とのドアが開いた。

「なんだ、開くんじゃない。美紀ぃ、使えるよ!」

 この声はルリ子だ。

「よかったあ! 二階のトイレじゃ間に合わないとこ……ううう……漏れそう!」

 美紀は一番手前の個室に駆け込み、ルリ子は、洗面台の鏡を見ながら髪をとかした。すると、鏡に写っていた一番向こうの個室が一瞬揺らめいたように見えたぜ。

「え……錯覚?」


 青い霧が薄らいでいくと、鳥の声や木々のそよぐ音で、そこが森の中であることが分かったぜ。


「ああ、やっと落ち着ける……」

 そいつは、いつの間にかミニのフンワリしたワンピになっていて、まるで妖精のように見えた。

「さあ、自己紹介からしてもらおうか。取りあえず人間じゃなさそうなことだけは分かったけどな」

「ああ、ごめんなさい。わたし妖精のレミ」

「あ、ドアーフ?」

「ムウ、こう見えてもエルフの王女よ」

「エルフ……にしては、背が低い」

「そう、これが問題……」

「そういうことなら、お医者さんかエステか親父の王様にでも言うこったな」

「ムウ、これは、問題のほんの一つに過ぎないの。それにエルフはお医者さんにもかからないし、エステも関係なし。お父様には108人の王子と王女がいて、いちいち構ってらんないし」

「108人もか!? おめえは何番目なんだぁ?」

「そ、それは、いまは関係ない(>◇<)!」

「でぇ、小悪魔のマユになんの用?」

「あ、そう、用件言わなくっちゃね……その前に、ちょっと深呼吸させてね……」

「長い間、トイレに籠もってて息が詰まったかぁ?」

 マユの皮肉も無視して、レミは三回深呼吸をした。

「おまたせ。別にトイレのせいじゃないのよ。あそこはあのあたりで唯一のここへの出入り口だからしかたがないの。でもね、おちこぼれ天使がいるじゃない。雅部利恵って」

「ああ、おめえら、キリスト教の世界じゃ否定されてるんだったな」

「そうよ、ハリー・ポッタだって迫害うけるとこもあるんだから」

「唯一神だもんな」

「そこいくと、悪魔はキリストの世界でも認知されてるし、迫害されてるって点じゃ、わたしたちと同じでしょ。そいで、わたしたちは、いろいろ相談ぶったんだけどね。なんとかまとまるかなあと思ったら、決まりかけたとこで、文句いう奴が出てくるし、ティンカーベルなんかね……」

「ああ、グチは、また暇なときに聞いてやっから、用件を言え!」

「ああ、実はね……」

 レミは、マユの耳元で原稿用紙で1000枚分ぐらいの説明を数秒でしやがった。

「……分かったぁ?」

「ちょっと待て……」

 パソコン用語で言うと圧縮された状態でよ、解凍すんのに時間がかかる。

「スペック低いんじゃないのあなたの脳みそ ( ᯣ _ ᯣ )」

「うっせえ、気が散る」

「ムゥ」

 三分ほどしてやっと分かった……で、驚いた!

「……ええ、そんなあ!!!!」

 小の字がついても悪魔だ。本気で驚くと半径50メートルぐらいの木々の葉っぱを吹き飛ばすぐらいの迫力がある。着替えたばかりのレミのフンワリワンピは引きちぎられてふっとんじまったぜ。

 キャーーーーー(”>▭<”)!!

 レミは、大あわてで、そこいらの落ち葉を集めて体にまとい、蓑虫のようになっちまいやがった。

「で、どうかなあ、引き受けてもらえる(^_^;)?」

「ダメだ、マユには、そんな時間の余裕はねえ。なんたって……」

「おちこぼれぇ……」

「修行中だ!」

「はい、修行中」

「それに、マユには拓美って同居してる幽霊もいやがるし」

「あ、その人なら、眠ってもらってる。ほら、気配ないでしょ……?」

「え……ほんとだ」

「それに時間のこともノープロブレム。ここでの一年はそっちじゃ十秒ぐらいにしかならないから。ここは、パソコンのファイルみたいなところ、全てのことが圧縮されてんのよ(^▽^)」

 そう言うと、レミは腕を組んでニンマリと笑いやがった。

 これが、とんでもねえ物語のはじまりだったぜ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  


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銀河太平記・253『アルルカン、松を自慢する』

2024-10-11 15:20:32 | 小説4
・253

『アルルカン、松を自慢する』 ツナカン 




 ご無沙汰してるっす。ツナカンっす。

 ほら、銀河一の賞金首、海賊アルルカンの手下で、海賊船ヒンメルの副長のツナカンっす。

 あ、読者のみなさんとは192『ココちゃんに決めてもらうっす!』以来っすから、ちょっと解説するっす。

 火星では病気が流行るわ戦争は起こるわヤバヤバなんで、カサギのアジトを畳んだっす。カサギのアジトは扶桑幕府のお目こぼしでやってきたんで、密かに頼まれてココちゃん、須磨宮心子内親王殿下を密かにお乗せしてプロキシマ・ケンタウリbって4光年先の星に向かってるとこっす。

 ヒンメルは全長1200m、基準排水量600万トンて巨大戦艦なんすけど、とんでもねえ船で速度が光速を超えるっす。プロキシマだって一か月足らずで着くっす。

「だぁからぁ、いいだろぉ」

 船長はダダをこねて冥王星で船を停めたっす。

 冥王星の陰にはあちこちから拾ったりかっぱらったりした船が、船長はコレクションって言ってるっすけど隠してあるっす。

 で、船長は、ナガトのレプリカとか持っていくってきかなかったんすけどねえ。松・竹・梅の駆逐艦を持っていくってことで納得させたっす。

「いちど見ておくぞ」

 微速で出航して、航海長操艦になると、すぐに艦尾のウェルドッグに行きやがったっす。

「ナガトは残念だったけど、戦時急造艦もカクカクしててかわいいからなあ(^_^;)」

 お供は自分とゲストのみなさんっす。

 ゲストがいっしょなのは、見せびらかしたいからっす。ナガトを連れて行けなくて残念無念なのを、駆逐艦松を自慢することでなだめたいからっす。ゲストもいい人たちだから、みんなニコニコついて来てくれるっす。

「ほら、艦首がダブル・カーブド・バウじゃなくて直線なのがいいだろぉ! なんか、幼稚園出たばっかりの子がピンピンに折り目の付いた制服着てるみたいだろ! ちっこいのにいっちょまえに四連装の魚雷発射管持ってるとこなんて、ピカピカの一年坊主が大きなランドセル背負ってるみたいでカワイイぞ!」

「 煙突とか細くって、ほんとうに一年生の手足みたいですね」

「そうだろそうだろ(^▽^)」

 ココちゃんは付き合いがうまいっす。

「しかし、艦橋が低くて小さいなあ」

 周恩雷がボソリと印象を言うと――言うと思ったわ――って感じで指をチッチッチとワイプさせるっす。

「チッチッチ、中に入ってみるとな、航海用の装具は特型の駆逐艦よりも優れていて、船団護衛とかには心配りがされていてだなあ……」

 ラッタルを上がって甲板に向かうと、艦橋のてっぺんから誰かが飛び降りてきたっす!

「なにやつ!?」

 さすがにゲストを庇って、そいつに立ちふさがる船長! 自分も腰の拳銃を抜いたっす!

「おいおい、オレだよオレ(^_^;)」

 お道化てホールドアップするのは、船長のライバル、目の上のタンコブ!

「き、貴様ぁ、ファルコンZのマーク船長(;・`д・´)!」

 ニクソゲに言いながら、どこか嬉しそうな船長だったっす(^_^;)



☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟

 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!27『同居はやりにくいぜ』

2024-10-11 08:11:29 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
27『同居はやりにくいぜ』 




「よく食べるわね……」


 里衣紗の声が降ってきた。

 目を上げると、里衣紗と沙耶が並んで立ってやがる。

「おめえたちだって」

 里衣紗と沙耶は、食堂特製のフライドポテトを持って、ホチクリ食べてやがる。校内で立ち食いは禁止なんだけどよ、昼時の学食とかカフェテラスは例外。その昔はよ、たとえ学食内でも禁止だったらしい。

「あたしたち、Bランチと、これだけだよ」

 沙耶に言われて、マユは自分のテーブルに目を落とした。

 A定食(B定食に、ぶっといトンカツが付いている)に、かき揚げ丼、きつねそば、脇には、沙耶たちより一回り大きなフライドポテトが、ドデンと置かれている。

「アハハハ……」

 ……たしかに多い。

「昨日AKRのレッスンあったからよぉ(^_^;)」

「でも、知井子は、あれだよ……」

 里衣紗の目線の先には、テーブル二つ分向こうに知井子が玉丼の空になったのを置いて、アイスを舐めてやがる。それも、練習曲のスコアを見て、テーブルの下、足だけでステップの練習をしながらな。

 なんと可愛くも熱心なことか。

「同じAKRなんだよね……」

「あ……マユの体って、燃費悪いんだよな。アハ、アハハハ(^〇^;)」

 と、その場はごまかしたぜ。


 マユの体には同居人がいやがる。幽霊の浅野拓美な。


 マユは小悪魔だけど、アバターの体は、まったくの人間だ。使っただけのエネルギーは補給しなくちゃならねえ。

 ゲームのめんどくせえのにあるだろ。飯食わないとHPがどんどん下がる設定になってるやつ。あれのリアル版ってわけだ。それも、今は二人分。当然、飯も食うしトイレにも行く。

 で、今、マユは女子トイレの個室の中にいる。

 と言って、用を足しているわけじゃねえ。いくらラノベだってトイレの個室の状況を描写することまではしねえ。

 しかし、トイレ本来の使い方をしていなければ別だ。

――なあ、拓美。マユの体に同居してるのは……まあ、同意する。暫定的にだけどな――

――ごめんね、レッスンで体力使うもんだから……わたしって、サブリーダーでもあるわけでしょ。スタジオには一番に入って、最後に出るの――

――リーダーのクララとかいるじゃねえか――

――クララはクララよ。トップとサブは自転車の前と後ろ。どっちが力を抜いても自転車は進まないわ――

――でもよ、拓美って幽霊じゃん。空気も吸わねえのに、飯は食うわけ?――

――マユの体に入っていると、お腹が空くの!――

――拓美って、生きてたころ、かなりの大メシ食いだったんじゃねえのか?――

――そういうマユの体こそ、燃費悪いんじゃないの。自分でも言ってたじゃないの――

――ああでも言わなきゃ、ごまかせねえだろが!――


 コンコン

 そのとき、個室がノックされた。


「あ、ごめん、今空けるからよ…」

 ジャーーゴボゴボ

 急いで水を流して個室を出たぜ。

 ん?

 目の前に、知井子ぐらいの背丈のカワイイやつが立ってやがって、目が合っちまう。

 こういう状況だと、気まずくって視線を避けるもんだけどよ。そいつはマユの目を見てニッコリ笑いやがる。

 こっちは拓美の方が恥ずかしがっちまって、心の奥に引っ込んじまいやがる。顔を真っ赤にして心臓をドキドキさせたままでよ。こういう負け的なシュチエーションは嫌ぇだ。だから必要もねえのに悠々と手を洗う。

 え?

 手を洗いながら、鏡越しに他の個室が全て空いていることに気づいた。

 そんで、今のやつが、個室に入らねえで、じっとマユを見てやがる。

 こいつ?

 鏡の中で視線が合っちまってドキリとしたぜ。


「あなた、小悪魔のマユさんね」


 そいつは、ニコリともせずに言いやがった。

 

☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  



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連載戯曲・クララ ハイジを待ちながら・5・窓を開けるクララ

2024-10-10 16:48:42 | 戯曲
クララ  ハイジを待ちながら    

大橋むつお 
 
※ 本作は自由に上演していただいて構いません、詳細は最終回の最後に記しておきます




5 窓を開けるクララ 

時   ある日
所     クララの部屋
人物    クララ(ゼーゼマンの一人娘) シャルロッテ(新入りのメイド) ロッテンマイヤー(声のみ)







 窓を開けるクララ。いつしか曲は止まって鳥のさえずりが聞こえる。


クララ:あ、ピーちゃんだ! 

 あれ、見える!? 見えてる!? 

 時々この窓辺にもやってくるのよ。鳥のことはよくわかんないけど多分インコ……おいでピーちゃん、こっちだよこっち。ほら、エサあげるから、ピーちゃん!

 ……行っちゃった……アルムのハイジのとこじゃ、牧場で、手をのばすだけで小鳥がやってきたものよ……うん、分かってるわ。

 あのピーちゃんは「あなたの方こそ外に出てらっしゃい」って言ってるの。

 ……わたし、ハイジとアルムの自然のおかげで、こうやって歩けるようになった。ほら、もうスキップだってできるわ。

 去年の体育祭じゃリレーだって出たのよ。フフ、信じられないでしょ。人を抜くことは、さすがにできなかったけど、順位を落とすようなことはなかったわ。持久走だってこなしたし、ランナーズハイてのも体験したわ……あれって、走り始めて三十分くらいたたないとやってこないのよね。最初の三十分までは「なんでぇ……」ってくらいきついんだけど、それ過ぎると、どこまでも、いつまでも走っていけそうな爽快感。

 そのくらいにクララは回復したの……人生も同じよね、ランナーズハイがある。

 アルムから帰って、三年くらいはそうだった……でも気づいたの。リレーとかで走るのは、ゴールがはっきりしている。でもでも、人生のゴールって自分で見つけなくっちゃいけないのよね。

 わたしたちにはそれが無いのよ……こないだね、アンがやってきたの。

 知ってる? アン・バーリー……あ、結婚する前はアン・シャーリー。そう『赤毛のアン』のアン。もう歳だけどね。わたし、娘さんのリラのほうが仲がいいの。ほら、この写真。こっちの娘さんのほうがリラ、かわいいでしょ。こっちのキリっとしてるおばさんがアン。長いこと学校の先生をやってたの。

 わたしもね、学校の先生になろうって思ったことがあるのよ……だってステキじゃない。いつまでも若い子達の弾むような感性の中で泣いたり笑ったりできるなんて、それこそ永遠の青春! 

 わたしはハイジじゃないからね。アルプスの自然から立ち上がる力は、もらえたけど。あそこはハイジの世界。

 わたしの世界は自分で見つけなくっちゃ。アンは言ってた「わたしは、いい時代に先生がやれて幸せだったって……雲が流れていくわ……アルムじゃね、あの雲はハイジを待ってくれるの……この街じゃ、あの雲はわたしを待ってはくれない。知らん顔して、流れていくだけ……え、あのハイジのブランコはどれくらいの長さがあるかしらって……フフフ、わたしも考えたわ。うん、ハイジの真似をしてみたの……ハイジって、なんでも知りたがって、くちぐせは「おしえて」だったものね……で、わたし、計算したの。振り子の周期から、あのブランコの長さは三十七・八メートルだって。で、ハイジに教えてあげたの。きっと驚くだろうって思って「わー、クララってすごい!」って言ってくれるだろうって……ハイジはなんて言ったと思う……不思議そうな顔をしてね「なんで、そんなこと計算するの?」……ハハハ……ハイジはね、ただブランコに乗ってみたかっただけなの、流れる雲の上に寝そべってみたかっただけなの。雲がハイジを待ってくれている。その感動を表したのが「おしえて」。

 わたしは、その「おしえて」を勘違いしていた。

 だから、いっそうハイジの「おしえて」がうらやましい……え……うん、大丈夫。なんでも聞いて。

 ……アハハ、遠慮してたの?……アナタって、デリカシーありすぎ。気疲れするでしょ、いつもそんなじゃ……イジメにあったことがあるかって? あなたは……あ、わたしから話さなくっちゃいけないわよね。

 イジメはないわ。ハイジに会うまでは学校にもいけなかったし。ウフフ、ロッテンマイヤーさんにはしょっちゅう叱られてたけどね。あの人はただ注意してるつもりなんだけど、口調がきついのね(かすかにクシャミ聞こえる)ウフフ、根はいい人よ……学校に行ってからは……うん、あんまりお友達はできなかったな。だれもがハイジみたいに心を開いてくれるわけじゃないし、だれでもハイジに対するように心を開けるわけじゃない。でも、その代わりイジメられるようなこともなかった。

 こんな言い方ダメかもしれないけど、イジメって、根本のとこでは、相手に対する興味の現れだと思う……ね、わたしのいたずらも同じよ。ロッテンマイヤーさんとかが反応してくれるからやってんの……アナタはぁ?

 ……いいのよ、言いたくなった時に聞かせてくれたら。

 ……あ、もう雲流れていっちゃった。さっきヒツジさんみたいな雲があったんだけどね……あれかなあ……トドみたいになっちゃったけど……わたしたちの心も雲みたいね。あっという間に流れて変わっちゃう。アルムの雲だって流れるんだけどね、ハイジは、雲がハイジを待ってくれてるように思えるわけ。

 ……あの感性にはまいっちゃう。なかなかあんなふうにはね……フフ、落ち込んでなんかいないわよ。ただ、「ちがうんだ」って思っただけ。で、わたしは、わたし自身の「おしえて」を持てばいい。そう思い直したの。

 だからこれ……この本たち。まあ、大半は図書館から借りてくるんだけどね……それにしてもすごい量? 

 う~ん……でも二千冊くらいよ。服とかも多いから。あんまり、お部屋の中ゴチャゴチャにしときたくないの。ゴチャゴチャは、頭の中だけで十分。

 ……アナタの部屋って、よく見るとステキじゃない……ううん、そんなことない。ベッドの枕のほうに机があって、パソコンとかモニターとかすぐ側なんでしょ。床に一見散らかってるように見えてる服も、ベッドの足下から、キャミとか下着、ブラウスにベスト……あ、そのジャケットとると鏡なんだ。

 起きたら順番に着て、最後は鏡で確認して出かけられる。機能的じゃない! あなたって、印象よりも合理的な人なんだ……あ、今なに隠したの!?……だめ、見ちゃったんだから、ちゃんと見せなさいよ。

 ……ステキ……それってダンスかなにかの衣装?……そうか、さっき言ってたの、そうなんだ! 言ってたじゃない、演劇部の後に入ったクラブがあるって……そうなんだ、ダンス部だったんだ!

 ……え、部員がみんなやめちゃってアナタ一人に……そう、それでもがんばろうとしたんだ……先生も忙しいもんね……授業と会議とパソコンばっかだもんね……え、IDカード……先生が首からぶらさげてる……わたしも、あれキライ。なんだかスーパーとかコンビニの商品の品質表示みたいでしょ……え、バーコード? ナイショだけど、ロッテンマイヤーさんの彼もバーコードよ(ロッテンマイヤーのくしゃみ)……頭じゃなくって、IDカードに……え、時々産地偽装してるみたいな先生も……アナタってウィットの感覚いいわよ。もっと本とか読んで感覚磨くと……アハハハ、わかった、わかったって。もうお説教みたいなこと言わないからさ……ね、ダンスのレパートリーどんなのがあるの?

 ……あ、それわたしも知ってる。ユーチューブで覚えた! ね、いっしょに踊ってみようよ……すごーいもう、コスに着替えたの!?……うん、とてもステキよ。待って、シンクロさせるから……よし、いいわよ!

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やくもあやかし物語2・076『魔王子トバル』

2024-10-10 14:38:42 | カントリーロード
くもやかし物語 2
076『魔王子トバル』 




「魔王女トバリの弟、魔王子トバルだ。見知りおけ」

 姉のトバリそっくりのニクソイ笑顔でマウントをとりに来る。

「あなたたち双子なの?」

「ああ、そうだよ。でも、戦い方は違うよ。トバリは結界を張って地霊どもを従えて戦うけど、ぼくは、こうやって戦うんだ……」

 顔の前で腕をXに組んだかと思うと、トバルの体はボンヤリと滲んで6:4くらいに分裂。そして、ふたたびハッキリしてきたと思ったら、6の方がメイソンに4の方がわたしソックリになった!

「ええ!?」

 シャキーーン

「こいつは、相手ソックリに擬態して戦うんだ……トオオオ!」

 剣を構えると、最後まで言い切らずに打ちかかるメイソン! トバルメイソンも同時に打ちかかって来る。なんだか、左右を逆に映す鏡みたいだ。

 トオーー!

 安心してはいられない、わたしにソックリなトバルヤクモの方は先手を取って討ちかかってきたよ(''◇'')!

 右手に思い槍、左手にミチビキ鉛筆を持って、トバルヤクモの攻撃を受け止める!

 ガシ!

 互いに同じ武器、同じ力なんだから打ち消し合う……と思ったら、ジリジリと押し込まれる。

 ええ、なんでぇ( >Д<)?

「相手は高い位置からダッシュしてきて勢いがついてるからだ! 少し踏みとどまればチャンスも見えてくる!」

 自分も苦しい戦いをしているのに、ちゃんとアドバイスをしてくれるメイソン。ノブリスオブリージュ! 貴族の息子だけのことはある!

 カシーン! ブンブン! ジャキーン! ガシガシ!

 メイソンは、攻撃をいなして相手の隙を誘っては攻撃を加えるけど、やっぱり同じスキルなのでラチが明かない。助けて欲しいけど、どうも無理っぽい。

 グヌヌヌ("皿″)……グギギギ(>皿<)……歯を食いしばって押し込まれないようにがんばるけど、こっちは互いに運動神経が悪いので、ひたすら押し合うだけだよ。

 ズズ……ズズズ……ズズ……

「まずい……」

 変な音がするのでなんだろうと思っていたら、メイソンの方が気づいた。

「トバリが結界をすぼめてきている、結界がすぼまると、こいつの力が増していくみたいだ!」

「ええ!? あ、ほんとだぁ……(''◇'')」

 押し込まれる力が微妙に強くなってきている」

「ほかの子たちはどうしてるんだろッ……」

 ほんとは「なにをしてんのよ!」なんだけど、優しく言ってみる。

「力を使い果たしたんだろ、もう気配がしない……」

「そんなぁ」

「僕も、そろそろ危ないかもしれない……」

「あ、ちょ……メイソン!」


 ああ、絶体絶命……と思ったら、ポケットから御息所がフワフワ浮き出て来た。


「「なんだ、おまえは?」」

 トバルヤクモとトバルメイソンが同時に声を上げる。

 そうか、御息所はコピーできていないんだ。でも、御息所の力ってたかが知れてるっぽい。

『妾は六条の御息所じゃ、畏れ多くも先の東宮殿下の妻である。見知りおけ』

 おお、バリバリのお局言葉! これは勝算があるのかも!

 

☆彡主な登場人物 
  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド  メイソン・ヒル  オリビア・トンプソン  ロージー・エドワーズ  ヒトビッチ・アルカード  ヒューゴ・プライス  ベラ・グリフィス  アイネ・シュタインベルグ  アンナ・ハーマスティン
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女 マーフォーク(半魚人) トバル(魔王子)  トバリ(魔王女)
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!26『AKR最初のレッスン』

2024-10-10 08:07:22 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
26『AKR最初のレッスン』 




 その週末、AKRの最初のレッスンの日がやってきたぜ!

 約束じゃ、体は拓美に貸して魔界で補修なんだけどな、今日は特別に憑いてる。

 姿勢と歩き方の練習だけで二時間。そのあと発声とボイストレ-ニング。昼食を挟んで、ストレッチをやってダンスレッスン。まるで体操部みてえなことばっかりやらされる。ダンスの基本だと聞いてなかったら五分ももたなかったぜ。

 その合間にスマイルの練習。

 要はニコニコ微笑む練習で、これが案外むつかしい。オーディションのときは、緊張しながらも、みなハイテンションだったんで自然な笑顔になったけどよぉ、なんにもねえのに微笑むってのはむつかしいぜ。

「はい、笑って!」

 と、いきなり言われても、なかなか出来るもんじゃねえ。中には虫歯が痛いのをこらえているような顔になるやつもいやがった。

「あなたたちは、アイドルなんだからね。どんなに疲れていても落ち込んでいても、一瞬で笑顔になれなきゃダメ!」

 前世紀末にアイドルの頂点にいたインストラクターの指導は厳しかった。

「ダメよ、3分やそこらで引きつってしまうようじゃ。いい、笑顔ってのは、ホッペのところに笑筋というのがあって、ここを鍛えるの。日本人が一番苦手な表情筋。今から、またダンスのアップダウンやるけど、その間、笑顔を絶やさないように。前の鏡を見ながら、チェックして、ハイ一時間!」

 で、一時間すると、知井子を始め、大半のやつの笑筋は笑顔のまま引きつるか、ケイレンしてしまったぜ。

 落ちこぼれ天使の雅部利恵はろくでもねえやつだけど、この笑顔の関してだけはエライと思っちまったぜ。あいつ、怒る時も居眠りする時も必殺技くらわせてくるときも笑顔だもんな(^△^;)。

 知井子もケイレン組だけどよ、楽しそうなんでマユは嬉しかった。リーダーの大石クララは、さすがに、ダンスのアップダウンも笑顔もこなしてやがる。

 最年長の服部八重もできてやがって。知井子は「負けた」と感じてやがったけど、ヘタレ眉になりながらも爽快な顔をしてやがる。

 爽快とヘタレってのは相反するんだけど、知井子のはなんか微笑ましくってよ「いちばん個性的よ!」とインストラクターにも褒められて、みんなも拍手なんかしやがってよ、マユも自分のことみてえに嬉しくなったぜ。

 知井子の人生は、負けっ放しでヘコンでばかりだった。

 でも、今はちがう。近いうちに必ず自分もできるんだという気持ちが湧いてきてやがる。それに、だれもできないことを笑ったりバカにしたりしねえ。みんな同じ目標を持ってるからかな。

 沙耶や里衣沙も数少ない友だちだったけど、このAKR47は、知井子が今まで経験したことがないような仲間になってきたぜ。


「じゃ、取りあえずプロモ用の写真撮るからね。一か月限定で流すAKR初のプロモだよ」


 全員の集合写真と個別の写真。ディレクターから多少の注文はつくけど、基本は本人たちの生(き)のままだ。

 ほとんどのやつが、ぎこちなかったけど、黒羽Dは、あえてそのままにした。成長するアイドルの第一歩だとか言ってよ。

 その中に、大石クララと並んで自然なハツラツさで撮れた者がいた。

 マユだ。

 正確にはマユが体を借してやってる幽霊の拓美。拓美のマユは、午前のレッスンから際だっていた。休憩中には、できねえやつに付いてやって、リーダーシップさえ発揮していやがった。

 拓美がマユの魔法で、みんなの記憶から消えてしまった(ただ、大石クララだけは知っている)んで、サブリーダーが居なかったんで、サブリーダーは不在のままだった。

「マユ、サブリーダーやってくれないか」

 レッスンの最後に黒羽ディレクターから頼まれた。


 その明くる日、マユは目覚めてびっくりした。自分の中から拓美が出ていかねえんだ。


――ちょっと、約束が違うじゃねえか。平日はマユだろうが――

――ごめん、レッスンが終わったら、出て行けなくなっちゃって――

――ええ、困るよ。マユ二重人格になっちまうじゃねえか!――

――ほんとうにごめん。平日は大人しくしているから――

――もうヽ(`Д´#)ノ !――

 マユは、初めて、やっかいな幽霊を引き受けてしまったことを後悔したぞ。

 キリキリキリ……

 とたんに戒めのカチューシャが頭を締め付けてきやがる。

「「イテ……!」」

 マユの悲鳴はステレオになっちまった……。




☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  


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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・132『二年目の体育祭』

2024-10-09 15:53:06 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
132『二年目の体育祭』   




 ちょっと面白くない。

 なにが?

 運動会よ運動会。

「体育祭と言いなさい体育祭と」

 佳奈子が真面目な立ち姿で注意する。

 見上げる佳奈子はけっこう色っぽい。

 学年対抗リレーを走り終えてクラス席に戻ってきたばかり。アンカーで200を走り終え、一等こそは一年生にかっさらわれたけど、その一年との差をコンマ8秒にまで縮めたのは、さすがに女バレのキャプテンだ。

 200を全力疾走してきたので、お肌ははち切れそうにツヤツヤして頬は健康な朱に染まり、瞳の奥は――惜しくも二着!――の灯を収めきれずに潤んでいる。退場門から戻ってくるまでにウォータークーラーでガブガブ水分補給、ざっと拭っただけの唇はプクプク潤って、心臓はニュートラルに戻り切らずに首筋の血管をピクピクさせている。

「なんかねえ、不完全燃焼!」

 目の前のブルマは不完全燃焼のオケツを収めきれずにフニフニさせてけしからん景色。令和の時代にはほとんどの学校でご禁制品扱いしているのがよく分かる。

「やっぱり、文化祭と一週間違いじゃ、文化祭の方に力が入っちゃいますよぉ」

 午後からの出番のないロコは、さっさとジャージの下を履いて気持ちの上では体育祭を終えている。

『プルグラム15番、着せ替えリレーに出場される先生方とサポート伴走者に当っている生徒のみなさんは入場門にお集まりください。くりかえします……』

「あ~あ~行って来るかぁ」「荷物頼むわね」

 これも、ノリの悪い声で入場門に向かう真知子とたみ子。

「でも、着せ替えリレーを最後に持ってきたのは正解ですね。面白いからダレずに閉会式にいけますよ。生徒会も考えましたねえ(^▽^)」

「アハハ、まあねぇ」

 わたしは好きじゃない。

 男の先生をトラックの真ん中に立たせる。海パンとTシャツで。

 スタート地点から走り出した女子がトラックを一周して、それぞれのチームの先生のところに取りつく。先生たちの足元には黒い袋が置いてあって、到着した女子は袋から女ものの衣装を取り出して先生に着せて、着せ終わったら手に手を取ってトラックを一周走ってゴールするという恒例のプログラム。

 衣装は女子の制服やら看護婦やらミニスカポリスやら、女性アイドル風のやらいろいろ。パンツ以外の下着とかも入っていて、もし令和でやったら、ちょっと問題ありという代物。

 まあ、1971年だし、ノープロブレムで、みんなワハハハワハハハと笑って、大晦日みたいに一年の憂さを晴らす。

『ええと……杉野先生が事情によって参加されませんので、2年3組の加藤君が代わりに参加します。加藤君、頑張ってください~』

 放送部のウグイス嬢が気楽に変更をアナウンス。

 ウワァアアア(^▽^)!!

 
 中略


 例年の如く、おぞましくも大爆笑の『着せ替えリレー』を終え、運動会、いえ体育祭はめでたく幕を下ろした。

 そうそう、杉野先生に代わって出場した加藤高明、10円男は意外に用意されたセーラー服が似合って好評。

 順位が一年と同点になって、なんとか二年生の面目を保った運動会、いや体育祭だった。


☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
コメント
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