大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

誤訳怪訳日本の神話・61『タマヨリヒメ』

2021-09-14 14:43:17 | 評論

訳日本の神話・61 第一期最終回
『タマヨリヒメ』  

 

 

『鶴の恩返し』とか『鶴女房』という昔話がありますね。

 

 木下順二さんが戯曲化して『夕鶴』というお芝居になり、国内はおろか世界中で上演され、オペラにもなりました。

 農夫に助けられた鶴が恩返しに、男の妻になり、少しでも男を喜ばせたいと、自分の羽根を抜いて、とても綺麗な布を織ります。

「織っているところをけして覗いてはなりません」

 そう言われますが、好奇心に勝てずに、男は覗いてしまいます。

 正体を見られた鶴は「もう、あなたといっしょに暮らすことはできません」と、泣く泣く空に帰ってしまいます。

 話によっては、二人の間には赤ちゃんが居て、残された男は、赤ちゃんを懸命に育てることになっています。

 

 ヤマサチとトヨタマヒメのお話が、これにそっくりです。

 

 本性であるサメの姿で赤ちゃんを産んでいるところを見られて、トヨタマヒメは海の底に帰っていきました。

 赤ちゃんはナギサタケフキアエズと名付けられて、スクスクと育ち、ヤマサチの跡継ぎになります。

 ヤマサチは、戦いに負けたウミサチを家来にして、葦原の中つ国を豊かな国に発展させます。

 

 負けたウミサチは九州の隼人族の先祖になります。

 おそらくは、ヤマト政権と九州の勢力の間で戦争、あるいは激しい抗争があったことが反映されているのだと思います。

 こののちも、ヤマトタケルに打ち滅ぼされるクマソタケルから、島津薩摩藩、西郷隆盛にいたるまで、九州は日本史を動かす熱量の高い勢力として残っていきます。

 

 海の底に帰ったトヨタマヒメ。

 約束を破って覗いてしまったヤマサチを恨めしく思いますが、残してきた赤ん坊が気になって仕方がありません。

 トヨタマヒメは、妹のタマヨリヒメに頼みます。

「ねえ、わたしの代わりに地上に行って、ナギサタケフキアエズのお守をしてくれないかしら」

「え、わたしが?」

「うん、あんたに頼むしかないの。この通りだから、お願い」

 と、妹に手を合わせます。

「仕方ないわねえ、姉さんも、意地はった手前、引っ込みがつかないんでしょ」

「ごめん!」

「分かったわ、でも、ナギサタケウガヤフキアエズなんて、舌噛んじゃうから、ナギちゃんでいくわよ」

「それはあんまり……」

「じゃ、ウガヤフキアエズ」

「うん、とりあえず、それでいいから、お願い!」

 

 こうして、トヨタマヒメは、乳母ということでヤマサチのところに参ります。

 

 そして、乳母としてウガヤフキアエズを懸命に世話をするうちに……

 なんと、二人は結婚することになってしまいました!

 これって、叔母と甥の関係で、今の日本の民法では認められません。

 古代は、腹違いであれば兄妹でも結婚出来ましたから、暖かく見守ってやってください(^_^;)

 

 さて、二人の間には四人の子どもができます。

 イツセノミコト  イヒナノミコト  ミケヌノミコト  ワカミケヌノミコト

 そして、この第四子はカムヤマトイワレヒコノミコトとも称しまして、長じて東に向かって遠征し、皇室の始祖となります。

 大和橿原で即位し、神武天皇(初代天皇)となりますが、これ以降は日本書記の内容になりますので、ひとまず筆を置きます。

 

 ☆:お知らせ

 古事記の内容はここでおしまいです。

 なんとか最後まで書けたのは読者のみなさんのお蔭です。ありがとうございました。

 日本書紀も読み直して、いつか、神武東征の下りから再開できればと思います。

 

 

 

 

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誤訳怪訳日本の神話・60『帰ってきたヤマサチ』

2021-09-11 09:24:02 | 評論

訳日本の神話・60
『帰ってきたヤマサチ』  

 

 

 ヤマサチが帰ってきただと!?

 

 ヤマサチの帰還を伝えられたウミサチはブッタマゲます。

―― くそ、釣り針にことよせて追放して、あいつの土地やら財産を奪ってやるつもりだったのに(҂⌣̀_⌣́)! ――

 しかし、帰ってきた者を無下には扱えません。

「おお、よく見たつけて帰ったな。さすがは、俺の弟だ。ま、とりあえず見せてもらおうか」

「はい、どうぞ」

 ヤマサチはワタツミの神に言われた通り、後ろ向きになって「ゴニョゴニョゴニョ」とお呪いの言葉を唱えて釣り針を手渡します。

「ま、これからは気を付けてくれよな」

「はい、兄上」

 表面は穏やかに言葉を交わして、弟を返すウミサチでしたが、そのすぐ後に、血相を変えて飛び込んできた家来の報告に言葉を失います。

 

「大変です、ウミサチさま!」

「なんだ、騒々しい」

「ウミサチさまの田んぼがカラカラに干上がってしまいました!」

「なんだと!?」

 

 家来たちと田んぼを見に行きますと、砂漠のようにカラカラに干上がっております。

 

「そうか、釣り針を返す時に、あいつ後ろ向きで、なにかゴニョゴニョ言っておったな!?」

「きっと、それが呪いの言葉だったのでございますよ!」

「くそ! 皆の者、かくなる上は、ヤマサチめをギッタギタにやっつけてやるぞ! すぐに武装して、やつの屋敷を襲え!」

「「「「「「オオ!」」」」」」

 

 いっぽう、自分の屋敷に帰ったヤマサチのもとをトヨタマヒメが尋ねてきます。

 

「姫、どうされたのですか?」

「じつは、お帰りになった後、お腹の中にヤマサチさんのお子が宿っていることが分かりました……」

「え、ええ、ボクの赤ちゃんが、姫のお腹の中に(# ゚Д゚#)!?」

「はい、それが……あ、あ、生まれそうです!」

「あ、ちょ、みんな、姫の為に産屋を作りなさい! 姫にとってもボクにとっても、最初の子どもだ、ちゃんとした産屋を!」

「「「心得ました!」」」

 

 家来たちは、大急ぎで姫の為に産屋を作りました。

 

「お願いです、わたしが無事に子供を産むまでは、わたしが『よい』と言うまではけして覗いてはなりません」

「わ、分かった、姫がいいと言うまでは、けして覗かないよ」

「きっとですよ」

「うん、きっとだよ」

 そうして、指切りげんまんをして、トヨタマヒメは産屋に入って行きました。

 

 似た話がありましたよね。

 そうです。

 黄泉の国へ行ってしまったイザナミを追いかけて「帰ってきてくれ」と頼んだイザナミに同じようなことを言ってますね。

「黄泉の国の神々と相談します。結論が出ればお知らせしますから、けして覗いてはいけませんよ」

「うん、分かった」

 返事はしたものの、あまりに遅いので、イザナミは、つい覗いてしまって大変なことになりました。

 

 ヤマサチも、堪えきれずに覗いてしまいます(^_^;)。

 

 堪え性がないというか、男と言うのは、元来そういう者なのか。女というのは、男に気を持たせるように出来ているのか、結論は人類滅亡の日まで分からないでしょう。

 覗いたヤマサチはビックリします。

 なんと、赤ん坊を産んでいるのは大きなサメだったのです!

「ああ、あれほど約束したのに覗いてしまったのですね(。>ㅿ<。)」

「ご、ごめん(;゚Д゚)」

 

 その時、見張りの家来が血相を変えてやってきます。

 

「大変です! ウミサチさまが軍勢を率いて攻めてこられました!」

「しまった、もう、お呪いが効いてきたんだ!」

 ウミサチの軍勢は、すでに山の麓にたどり着いています。

「あなた、塩盈珠(しおみつたま)をお投げなさい!」

 赤ん坊を抱きかかえたトヨタマヒメが叫びます。

「わ、分かった、こっちの珠だな」

「早く投げて!」

「えい!」

 

 塩盈珠(しおみつたま)は放物線を描いて、麓の軍勢の上に落ちて行きます。

 

 ドッシャーーーーン!!

 

 塩盈珠(しおみつたま)が弾けると、まるで天の底が抜けたような音がして、海の水がまとまって落ちてきます。

 ザップーン! ゴボゴボゴボ……

 軍勢は、麓の平地もろとも沈んでいき、それでも勢いは止まらず、ヤマサチのいる山さえ呑み込んでしまいそうな勢いです。

「す、すごい……」

 その威力にヤマサチは呆然とするばかりです。

「あなた! 早く、今度は塩乾珠(しおふるたま)を投げて!」

「う、うん、分かった。えい!」

 塩乾珠(しおふるたま)は同じように放物線を描き、その頂点で破裂。

 すると、地上を丸呑みするのではないかと思われた水が見る見る引いて、溺れそうになっていたウミサチとその軍勢は、やっと助かりました。

 

「ま、まいったまいった。オレの負けだ。これからは、おまえの家来になるから、この通りだ!」

 

 頭をこすりつけて謝るので、ヤマサチはウミサチを許してやります。

 

 しかし、振り返るとトヨタマヒメの姿はありませんでした……。

 

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誤訳怪訳日本の神話・59『二つの珠とヤマサチのあれこれ』

2021-09-07 16:40:45 | 評論

訳日本の神話・59
『二つの珠とヤマサチのあれこれ』  

 

 

「婿どの」

「は?」

「あ、いや、やっぱりお帰りになるのだろうのう……」

 ワダツミの神が名残惜しそうに言います。

 もともと海の底に来たのは、兄のウミサチから借りて失くしてしまった釣り針を探すためです。

 その釣り針が見つかったのですから、もう、海の底の宮殿に居る理由はありません。

「はい、大変お世話になりましたが、兄のウミサチに一刻も早く返しに行きたいと思いますので、これにて失礼いたします」

「さようか、ならば、トヨタマヒメ、あれをお渡しなさい」

「はい、お父さま……」

 父に促されて、トヨタマヒメは二つの珠を渡します。

 えと、玉ではありません、『珠』と書いてあります。

 玉は水晶や翡翠ややらの陸上で採れる貴石ですが、珠は、真珠の珠の字を書きます。つまり巨大な真珠の一種だと思えばいいでしょう。

「いざという時には、これをお使いください」

「二つとも頂けるんですか?」

「はい、これは二つでワンセットなんです」

「というと?」

「こちらが塩盈珠(しおみつたま)です。この珠には海の水を呼ぶ力があります。そして、もう一つが塩乾珠(しおふるたま)です。この珠には溢れた海の水を引かせる力があります」

「これをどのように?」

「どのように使うかは、ヤマサチさま、あなた次第です」

「婿……いや、ヤマサチどの、地上にお戻りになれば、おのずと分かるでしょう。使うべき時、そして使うべき場所が。ここぞと思う時に、きっとお役に立つであろう」

「そうですか、それでは、ありがたく頂戴します」

「それから……」

「はい?」

「兄上に釣り針を返す時は、後ろ向きにわたして、こう呟くのです……ゴニョゴニョゴニョ」

「は、はい、分かりました。ゴニョゴニョ……」

「いけません、ここでおっしゃっては!」

 トヨタマヒメは、慌ててヤマサチの口を可愛い手で塞ぎます。

 マヂカにトヨタマヒメの朝シャンの香もかぐわしい顔が迫って、いっそこのまま残ろうかという気持ちも湧きますが、グッと堪えて地上に帰ることにしました。

 

 ちょっと余談です。

 

 ヤマサチの物語に限りませんが、旅の青年が泊まった先で、泊まった家の娘が夜伽に出るということは、地方によっては近世まであったようです。

 青年は、できれば都などから流れてきた貴種であることが望ましいのですが、それほどこだわりません。

 泊めた青年が、なかなかの人物と思った時は、家の主、あるいは本人の意思で一夜を共にします。

 現代に感覚では、ちょっとビックリなのですが、近世以前は、場所によっては日常的な人の出入りがほとんどありません。記紀神話が成立した八世紀初頭なら、もっと切実であったのかもしれません。

 閉鎖的な集落の中では、外部との人の行き来がほとんどありません。

 

 司馬遼太郎さんのエッセイに、こんなのがありました。

 

 奈良の村から大阪の学校に行った福田定一少年(司馬さんの本名)が夏休みで村に帰ると、村の少年たちが福田少年のところにやってきます。

「おい、福田、大阪には海があるて聞いたけど、海て、どんなもんや?」

「海は……でらい水たまりじゃ」

 でらいとは大きいという意味です。

「でらい水たまりか?」

「どのくらい、でらい?」

「上の池よりもでらいけ?」

 上の池というのは、村の池でいちばん大きな池です。

「ほら、でらいわ。でらすぎて、向こう岸が見えん」

 ここまで言うと、村の少年たちはケラケラと笑い出します。

「福田ぁ、ウソ言うたらあかんぞ」

「ウソとちゃうわい」

「そんな、向こう岸が見えんような水たまりがあってたまるか。なあ」

「ほうや、ほうや!」

 福田少年は、嘘つきにされてしまいました(^_^;)。

 ほんの八十年前、生駒山が隔てていたとはいえ、大阪湾からニ十キロちょっとの奈良県の話です。 

 

 近世以前は、福田少年のエピソード以上の深刻な問題があったでしょう。

 人の行き来が乏しいために、集落の中が、近親婚に近い状態になって遺伝学的な問題が起こるのです。

 昔の人は、経験的に、新しい血を入れなければならないことを知っていたのでしょう。

 外から来た若者には、外部の血液を得るという意味合い、役割があったと思います。

 

 乏しい知識からの想像ですが、継体天皇は応神天皇の五世孫として越前の国から招かれました。

 徳川家康の祖先は、まだ一族が松平と称していたころ、松平郷に流れ着いた僧侶の血が入っていると言われています。

 まあ、そういう半ば日常、半ば夢物語のような要素が入って生まれたエピソードではないかと思います。

 

 次回からは、大詰めのヤマサチ・ウミサチの勝負の話に進んで行きたいと思います。

 

 

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誤訳怪訳日本の神話・58『思い出した!』

2021-09-02 13:05:37 | 評論

訳日本の神話・58
『思い出した!』  

 

 

 思い出した!

 

 トヨタマヒメと夜を明かしたヤマサチは、ガバっと起き上がりました。

 夕べまでトヨタマヒメと過ごした海底宮殿の甘い生活が、いっぺんに吹き飛んでしまいます。

「ぼくは、釣り針を探していたんだった!」

「あ、えと、釣り針なんて、どこにでもあるから、ね、そんなの忘れて寝ましょうよ。なんっだたら、また二人で励みますぅ(#*´ω`*#)?」

 そう言いながら、トヨタマヒメはヤマサチに身を寄せます。

「ウウ……めっちゃ未練は残るけど、そんなこと言ってられないんだ、針を、釣り針を持って帰らなきゃ、兄きにも、ご先祖の神さまにも申し訳がたたないんだ!」

「し、仕方ありません、お父様に相談します」

 

 トヨタマヒメはシャワーを浴びて身づくろいをすると、父のワタツミの神の部屋に向かいます。

 

「おお、トヨタマヒメ、朝からシャンプーの匂いなどさせよって……お!? ひょっとして!?」

「そんな話じゃありません! あの人、釣り針のこと思い出しちゃって……」

「だったら、抱き付いて励んでしまえば、すぐに忘れる。おまえの魅力は父が保障するぞ!」

「いや、もう通じないのよ。思っていたよりも大事な釣り針のようで」

「そうか、では仕方ない、魚たちを集めようか。おい、大臣……」

 ワタツミは大臣に命じて、釣り針に憶えのある魚たちを集めさせました。

 

「どうだ、おまえたちの中で釣り針に憶えのある者がいたら、手を挙げろ!」

 

 魚たちは、互いに顔を見かわして、ブツブツ声をあげます。

「手を挙げろと言われてもなあ……」

「俺たち、ヒレがあるばかりで、手も足もないからなあ」

「足ならあるぞ」

 イカが名乗り出ます。

「イカ、おまえ知ってんのか?」

「だって、足がいるって言っただろ?」

「釣り針を知っていたらだ」

「それなら、知らねえ」

「だったら、出てくんな!」

「オレ、知ってるかも……」

 

 今度は、タコが足をあげました。

 

「よし、知っているなら申せ! 正解だったらたこ焼きをやるぞ!」

「あ、共食いになるから、いいっす」

「じゃ、タコつぼをやろう。おまえ、先祖は貝類だから、居心地がいいぞ」

「あ、それ、いいかも(^▽^)/」

「で、どこで見た?」

「ああ、なんだか、鯛の親父が喉に引っかかって飯も喉を通らないってボヤいてましたから……」

「それだ! よし、鯛を呼べ!」

 

 呼ばれた鯛の喉には、ウミサチの釣り針が刺さっていました。

 

「よしよし、でかした! 鯛にはタイ旅行のクーポンとアンコ焼きの命名権を授けよう! タコにはタコつぼじゃ!」

 こうして、釣り針はヤマサチの手に戻ります。

 鯛はアンコ焼きをタイ焼きと命名して、ファンを獲得。タコは、タコつぼに住むようになりましたが、その習性を知った人間たちに掴まってしまう者が続出したという話でありました。

 

 

 

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誤訳怪訳日本の神話・57『ワタツミの神の宮』

2021-08-28 09:07:56 | 評論

訳日本の神話・57
『ワタツミの神の宮』  

 

 

  勝間の小船に乗って海底に向かったヤマサチは、やがてワタツミの神の宮にたどりつきます。

 

 シホツチに言われた通り、井戸の傍の桂の木の陰に隠れていますと、神の宮の侍女が発見し、トヨタマヒメに報告します。

「姫さま、姫さま!」

「なんです、騒々しい、埃がたつでしょ」

「海の底だから埃はたちません」

「水が濁ります!」

「すみません、実は……」

「え、そんなにいい男なら、すぐに食べ……いえ、お迎えしなければ!」

 

 桂の木の下まで出向くと、次女の報告よりも、自分の想像よりも清げで立派な若者です。

 こいつを逃す手はありません。

 

「まあ、なんと清げで凛々しい殿方でありましょう! お父様に紹介します、直に下りてきてくださいませ!」

「は、はあ(めっちゃきれいな女の人だなあ)」

 トヨタマヒメに連れられて宮殿の奥に行くと、三国志の劉備と曹操と孫権を足したような立派な王様が居ました。

 日本版ポセイドンのワタツミの神であります。

 

 ちょっとした矛盾があります。

 

 ワタツミの神はオオワタツミの神(大綿津見神・大海神)とも言いまして、イザナギ・イザナミの間に生まれた神では海を支配するように命ぜられます。後にスサノオが生まれた時に、イザナギは「スサノオ、おまえは海を支配しなさい」と命じています。

 海の神さまはどっちだ?

 子どものころに古事記を読んで、ちょっと混乱して投げ出したことがあります。

 日本人と言うのは、大ざっぱに言って、ツングース系(朝鮮半島、満州、シベリア)の北方民族、台湾・フィリピンから南西諸島に渡って来た南方の民族、大陸から渡ってきた中国南部などから渡ってきた人たちの混血だと言われています。

 それぞれの民族は、それぞれの神話を伝承していて、縄文・弥生と時代を経るうちに、神話が融合してできあがったのが記紀神話ではないかと思います。

 だから、まあ、ゴッチャになってしまったんでしょうね。

 ちなみにワタツミの神は、生まれた時の描写で途切れてしまって、この下りまで出てきません。

 

 それはさておき、ワタツミの神は、ヤマサチが貴人であることを見抜きます。

「これは、高天原系の偉い神さまではないか! どうか、このワタツミの神の宮に留まっておくつろぎのほどを。これ、皆の者、おもてなしをせぬか! トヨタマヒメ、しっかり励むのだぞ!」

「は、励むだなんて、お父様(n*´ω`*n)!」

 こうやって、ヤマサチは釣り針の事も忘れて、ワタツミの神の宮で何日も過ごします。

 

 勝間の小船とワタツミの神を除くと、デテールは『浦島太郎』とソックリです。いわゆるおとぎ話にも神話の影響が残っている証拠なんでしょうねえ。

 というか、神話とおとぎ話の境目と言うのは、そんなにハッキリしていないように思います。

 ようは、古事記・日本書紀に載っているかどうかの違いだけではないでしょうか。

 記紀神話の成立過程で取捨選択されたり、変形された話がいくつもあるのではと思ったりします。

 おとぎ話という括りでも構わないと思います。

 ちなみに、幼稚園の頃『因幡の白うさぎ』は『ぶんぶく茶釜』や『カチカチ山』と同じ並びの紙芝居で教わりました。

 

 さて、次回は、ヤマサチが釣り針のことを思いだすところから続けたいと思います(^_^;)。

 

  

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誤訳怪訳日本の神話・56『釣り針を失くしたヤマサチ』

2021-08-23 08:39:16 | 評論

訳日本の神話・56
『釣り針を失くしたヤマサチ』  

 

 

 道具を交換したウミサチとヤマサチでしたが、慣れない道具では思うように獲物が得られません。

 

「やっぱり、お互い自分の道具が一番だ、元に戻そう」

 ウミサチは弓矢をヤマサチに返します。

 ところが、ヤマサチは釣り針を出さずにモジモジしています。

「どうかしたか、ヤマサチ?」

「あ……えと……なんだ……すまん、失くしてしまった!」

「え、失くしたあ!?」

「でっかい魚が食いついたんだけど、そのまま海の底に潜っちまって、その勢いで釣り糸が切れちまって……」

「って、大事な釣り針なんだぞ! あれが無くっちゃ、海のものは小魚一匹獲れやしないぞ!」

「す、すまん!」

「すまんですむかあ! 海に戻って取って来い! 取って来るまで帰ってくんなああああ!」

「あ、ああ、わかったよウミサチ(;'∀')」

 

 ションボリ、シオシオと海辺に戻るヤマサチですが、広大な海を目の前にしてうな垂れるだけです。

 

 海に落としたり沈んだものというのは見つけるのが難しいですねえ。

 あの超ド級戦艦大和でも、おおよその沈没地点は分かっていましたが、発見されたのは五十年あまり後のことです。

 まして、掌に載せて握ってしまえば隠れてしまうほどに小さな釣り針です。ヤマサチは肩を落とすしかありませんでした。

 

 ザップ~ン

 

 そんな時、波間からウミガメに乗ったジジイの神さまが現れました。

「お若いの、まだ午前中だというのに、なにをタソガレておられる?」

「あ、これは、潮の流れを監督するシホツチの神」

「そんなに泣かれては、海の塩分濃度が上がってしまう」

「すみません、じゃ、水筒の水で……」

「アハハ、うそうそ、冗談ですじゃ(^▽^)」

「は、はあ」

「あんたは、冗談ではなさそうですなあ、よかったら事情をお聞かせ願えまいか?」

「はい、実は、僕はヤマサチというんですが……」

 ヤマサチは、事のあらましをシホツチの神に説明します。

「さようか、それはお気の毒な……」

 シホツチは、ヤマサチに同情すると、指先をチョイチョイと動かします。

 

 ザバババーーーーーン!

 

 海の底から、竹で編んだ潜水艦のようなものが浮上してきます。

「こ、これは?」

「これは、勝間の小船と申しますじゃ。これに乗って海の底に行けば良い潮の流れに乗って『ワタツミの神の宮』というところに出ますじゃ、そこの井戸の傍の桂の木の陰に隠れてお待ちなされ、きっと開けてくるものがあるじゃろう」

「そ、そうですか! それでは、お言葉に甘えて!」

「おう、行っておいでなさい(o^―^o)」

 シオツチはシオツチノカミともシオツチノトジとも呼ばれる老人の神さまで、潮の流れを司るだけではなく、製塩の神さまとして、各地で祀られています。

 海から老人が現れて、困っている冒険者たちを助けたり助言したりする話は、ギリシア神話や東南アジアの昔話にもあると言います。

 わたしの狭い知識ですが、海から現れるのはポセイドンとかのオッサンや老人が多いように感じます。人魚姫というのもありますが、人魚姫の親父はポセイドンではなかったかと思います。

 湖や池から出てくるのは女神ですね。

 正直な木こりが斧を落として「あなたの落とした斧はどれかしらあ?」と、木こりの根性を試すのは女神ですね。

 水の中に住んでいるわけではありませんが、水浴びしているところを見てしまった猟師を鹿に変えて猟犬に食い殺させたのは少女の姿をした処女神アルテミスでありました。

 海はオッサン、淡水は美女・美少女

 では、海水と淡水が混ざる汽水は……妄想が膨らみます。

 

 次回は、海の中のヤマサチに注目します。

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誤訳怪訳日本の神話・55『ウミサチ・ヤマサチ』

2021-08-18 09:32:09 | 評論

訳日本の神話・55
『ウミサチ・ヤマサチ』  

 

 

 ニニギとサクヤの間には三人の子どもが生まれました。

 

 ウミサチ  ホスセリ  ヤマサチ

 

 結論から言って、これから活躍するのはウミサチ・ヤマサチの二人で、次男のホスセリは出てきません。

 以前にも、こういうことがありましたね。

 イザナギが黄泉比良坂を千曳の大岩で蓋をして、からくもイザナミに勝利して帰りました。

「ああ、汚ったねえ、あちこち穢れてしまった!」

 そう言って、顔を洗った時に生まれた神も三人でした。

 

 アマテラス  ツクヨミ  スサノオ

 

 アマテラスとスサノオは、その後古事記前半の主役になっていきます。

 ところが、ツクヨミに関しては、その後の記述がありません。

 

 人間というのは3という数字に安定や落ち着きを感じるもののようです。

 オリンピックのメダルは金・銀・銅の三つです。

 ギリシアやローマの古典世界で描かれた美の女神は三人でワンセットの三美神。

 なんちゃら御三家や三人娘

 サザエさんは三人姉弟

 三番叟  三代実録  背番号3  三つ巴  三菱  三々五々  単三電池  3ストライク三振  三審制

 ボキャ貧のわたしでも、ゾロゾロ出てきます。

 

 カメラの三脚がありますね。

 三脚は三本足だから、たいていのデコボコでも安定しています。二脚では立ちませんし、四脚ではおさまりが悪いですね。

 鼎(かなえ)という漢字があります。

 足が三本ある器(うつわ)のことですね。古代においては、神にささげる酒や供物の入れ物でありました。

 単に座りがいいというだけではなく、三という数字に神聖さを感じたのでしょう。

 ですから、イザナギから生まれた神や、サクヤの産んだ子が三人というのは、その神聖さを現すための数字でありましょう。

 

 で、やっと主題のウミサチ・ヤマサチであります(^_^;)

 

 成長したウミサチは毎日海に魚を釣りに行きます。ヤマサチは弓矢を携えて山に獲物を求めます。

 個人的な嗜好ですが、わたしは、山の上から下界を眺めるよりは、砂浜に座って海を眺めている方が好きです。

 吉田茂が政界を引退して、袴姿で湘南の海岸を散歩している景色のいい写真があります。坂本龍馬のブロンズも桂浜の海岸がよく似合います。

 好きなアニメに『ラブライブサンシャイン!!』がありますが、沼津を舞台にしていて、海のシーンが多く出てきます。山や丘の上では、あの前向きな少女たちの希望は出てきません。

 ウミサチ・ヤマサチというのは、弥生時代、ひょっとしたら血の中の記憶として残っていた縄文時代の日本人の有りようが反映されているのかもしれません。

 縄文・弥生の昔は、人々の多くは海沿いに住み、海沿いほど多くはない人たちが山に住んでいたと思います。

 海の民と山の民は時々交易していたでしょう。

 人の生活に絶対必要な塩は海でしか取れません。

 寒さをしのぐ毛皮や石器の原料は山の方が多くとれたかもしれませんが、塩ほどの必需品でもありません。

 収獲量も山よりも海の方が多かったでしょう。

 縄文の末ごろに起こった農耕も、水利の問題から海沿いの平地や扇状地で起こりました。

 

 海沿いの方が山よりも、いろいろな点で優位に立っていたのではないかと想像できます。

 

 その優位さが、古事記では、こう現れました。

「よう、ウミサチ」

「なんだ、ヤマサチ?」

「毎日山で狩りやったり木の実を拾ったりってのも退屈でさあ……いっかい、持ち物交換して、オレにも釣りさせてくれねーかなあ」

「え、あ、まあ弟の頼みだ。聞いてやらないこともないが、釣り針失くさないでくれよな」

「ああ、大丈夫。いっかいやったら納得するってもんだ!」

「そうか、じゃあ、まあ、がんばれ」

「お、おう! でっかい魚釣って来るぜ!」

 

 こうやって、得物を取り換えてウミサチは山に、ヤマサチは海に向かいました……。

 

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誤訳怪訳日本の神話・54『兄弟の序列』

2021-08-10 09:02:19 | 評論

訳日本の神話・54
『兄弟の序列』  

 

 

 ニニギとサクヤの間に生まれたのは三柱の神です。

 

 神と書きましたが、さっそく迷います(^_^;)

 ニニギはイワナガヒメを追い返して寿命が人間と同じになった、つまりヒト化したのですから人間と扱ってもいいのですが、記紀神話や歴史の事をハンパにしか知らないわたしは迷ってしまいます。

 まあ、その時の気分次第ということで(#^_^#)。

 産屋が燃え出した時に生まれたのがホデリノミコト、後のウミサチ(海幸彦)。

 ガンガン燃えている時に生まれたのがホスセリノミコト。

 火が収まるころに生まれたのがホヲリノミコト、後のヤマサチ(山幸彦)。

 

 つまり、ウミサチ=長男 ホスセリ=次男 ヤマサチ=三男 と言うことになります。

 

 ちょっと脱線します。

 今の日本で、双子以上の多産児の序列は、最初に生まれてきた子が長子、二番目が次子、三番目が第三子ということになります。

 つまり、兄妹の順番は生まれた順番です。

 ところが、明治時代に民法ができるまでは逆でした。

 最初に生まれた子が一番下、最後に生まれてきた子が長子ということになっていました。

 

 これは、落語と同じで、後から出てくる者の方が偉いんですなあ。

 どうやら、これは世界共通のようで、後から出てくる者が優れているという序列が一般的です。

 ショーやコンサートやお芝居などでも、偉い人や優れた者は後で出てきます。

 紅白歌合戦でトリに出てくるのは業界の大御所。

 ビートルズが来日して武道館でライブをやった時、前座はタイガース(沢田研二がいたGS)でした。

 あとから出てくるものを優れていると感じるのは人類の遺伝子に組み込まれた感覚なのかもしれません。

 明治になって逆になったのは、外国の民法を真似たからです(フランス、ドイツ、イギリスなど)。

 外国が、なぜ生まれた順なのかは、ここでは触れません。

 

 物事の順番というのは民族性に根ざしているので、案外変えるのが難しいようです。

 

 これを簡単に、法律一つで変えられたのは、日本人の、それこそ民族性なのでしょう。

「欧米デハ、コウイウフウニヤッテマス」

 ボアソナードとかのお雇い外国人が、大久保利通だとか伊藤博文だとかに進言します。

「あ、そうですか。では、そのように」

 実に簡単に変わります。

 お雇い外国人が言ったのは「世間のみなさんは、そうなさってます」ということです。

 日本人は「みなさん、そうなさってます」に弱いんですなあ。

 

 明治初年にやってきた鉄道技師(たぶん、イギリス人)の体験談に、こういうのがあります。

 トランジット(測量器具)などを使って、レールを敷いたりトンネルを掘ったりするために測量していると、測量の基本になる方位磁石が狂うのです。

「あ、こいつら……」

 技師はすぐに原因に気付きます。

 助手兼技能修習のために士族の若者が何人も付いています。

 士族の若者は腰に小刀(脇差)を差しています。

 小刀は重量1キロ前後の鉄の塊ですから、磁石を狂わせてしまいます。

 この技師は、日本に来る前にトルコやイランで鉄道の敷設工事に携わっていて、現地の若者を雇っていました。

 トルコなどのイスラムも、腰に小刀(ナイフの大きい奴)を差していて、測量の邪魔になって、技師は「すまんが、測量中は刀を外してくれないか」と頼みます。

「無礼者!」

 イスラムの男たちは目を三角にして刀を抜いて技師を追いかけまわしました。

 その時のトラウマがあるので、技師は士族の若者に「刀を外してくれ」とは言えません。

「えと、あの……ちょっと話があるんだけど(^_^;)」

「はい、なんでしょうか?」

「実は……」

「おーい、先生がお話があるそうだ、みんな集まれ!」

「「「「「おお」」」」」

 工事現場にいた若者たちが腰の脇差を揺らしながら集まります。

 むろん、技師は丸腰です。怖かったでしょうねえ(;'∀')。

「なんでしょう、先生?」

「あ……えと……測量で、トランジットとか、方位磁石とか使っているよね?」

「「「「「はい」」」」」

「いずれも、方位を知るために、磁石がついていてね」

「「「「「はい」」」」」

「磁石が、正確に北を差すのは、地球自体が巨大な磁石になっていてね……別の言い方をすると、地球の組成、多くは鉄でできているんだよね」

「「「「「はい」」」」」

「えと……だから、測量器具というのは、オホン……」

「「「「「はい」」」」」

「大きな鉄が近くにあると、影響されるというか……あ、いや、わたしは、文化と言うものは尊重するよ。うん、互いに文化は尊重しなくっちゃね」

「つまり……?」

「あ、いや、ちょっと問題提起したかっただけで、ま、日本の文化は、全力で尊重する! そのことにはやぶさかではない(;゚Д゚)、やぶさかではない……」

 技師は、どうしても結論が言えません。

「あ、分かった!」

 勘のいい若者が声をあげます。

「みんな、腰の刀が磁石を狂わせるんだ!」

「そうか、だから、先生は腰の刀を外せと……」

「あ、ああ……いや、だからあ(;゚Д゚#)」

「みんな、腰の刀を外せ!」

「「「「「おお」」」」」

 簡単に問題は解決しました。

 

 脱線しっぱなしですが、日本人は、大事、大切だと理解すると、実に簡単に理解します。

 多産児の扱いも、欧米諸国との付き合いが始まるのだから、それに倣っておこうと、ほとんど問題なく変更がなされました。

 この歳まで生きていると、そうではないことにも気づいているのですが、脱線しすぎの感じですので、日本人の合理性ということで置いておきます。

 今日は、ニニギとサクヤに三人の子どもが生まれたところでおしまいです。

 次回は、三人兄弟の長男と三男について話を進めます。

 

 

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誤訳怪訳日本の神話・53『ねえ、できちゃった(^_^;)!』

2021-08-03 14:12:04 | 評論

訳日本の神話・53
『ねえ、できちゃった(^_^;)!』  

 

 

 ねえ、できちゃった(^_^;)!

 え( ゚Д゚)!?

 

 たった二つの会話ですが、読者が小学生以上ならお分かりになると思います。

 ご飯ができたとか、オデキができたとか、逆上がりができたとか、オリハルコンでエクスカリバーができたとか、そういう『できた』話ではないことを。

 これは、奥さん、それも新妻が旦那に妊娠したことを告げる時の常套句、定型文、デフォルトであります。

 

 イワナガヒメを送り返して、寿命が並の人間ほどになったニニギノミコトですが、まだまだ若いので屁とも思っていません。

 その、屁とも思わないニニギは、サクヤの妊娠宣言にはビックリします。

 え……まだ、そんなにやってないのに?

 それに、考えてみたら、サクヤはオレのプロポーズを一発でOKしたよな?

 ちょっと、イージーすぎじゃね?

 ひょっとしたら、他の国つ神ともよろしくやってて、誰の子だか分からない子を身ごもって……それで、世間知らずのオレをひっかけた?

 

 まあ、疑心暗鬼というやつですなあ。

 

「そ、そうか、できたか! め、めでたい(^_^;)! う、嬉しいぞ(^0^;)!」

「あ、ニニギ、あたしのこと疑ってるでしょ!?」

「あ、いや、そんなことないよ(#^曲^#)」

「いや、疑ってる!」

「サクヤぁ……」

「いいわよ、あなたの子であることを証明してやるから!」

「お、おい、なにをする気だよ!?」

 とっとと行ってしまうサクヤを追いかけるニニギ。

「な、なんて足が速いんだ(;'∀') ゼーゼー……」

 

 やっと追いつくと、サクヤは家来の神々を使って産屋を建てさせていました。

 

「なんだよ、この小屋は?」

「産屋です」

「産屋ってことは、ここで子供を産むってこと……だよな?」

「そうよ、生まれるまで、ここで見てるといい!」

「でも、この産屋、窓とかないんだけど、真っ暗じゃね?」

「これでいいの!」

「え、もう中に入っちまうの?」

「うん! みんな、わたしが入ったら入り口も打ち付けて壁土で塗り固めてしまうのよ!」

「お、おい、サクヤ、お、おまえたちも、そんなことしたら真っ暗に……」

 ニニギがオロオロしているうちに、サクヤを閉じ込めたまま産屋が完成します。

「じゃ、イッセーノーで、火をつけるのよ!」

「ちょ、サクヤ!」

「イッセーノーで!」

 

 ボ!!

 

「キャーーやめてえ(#`Д´#)!」

 叫んだのはニニギです。

 サクヤは燃え盛る産屋の中で、ヘッチャラなのか気絶したのか静かです。

 やがて産屋はパチパチボウボウと激しく燃えさかり、傍にも寄れなくなります。

 

 オギャー オギャー オギャー

 

「え、生まれた!?」

 産声が三つ聞こえ、やっと火が収まって、ニニギは暑さをこらえながら燃え跡に近づいていきます。

 すると、燃え殻の中に、三人の赤ちゃんを抱っこしたサクヤがピースサインをしておるではありませんか!?

「やったね!」

「だ、大丈夫かい?」

「これで分かったでしょ、これだけの火の中で生まれてもビクともしないで産声を上げて、間違いなく天津神、ニニギの赤ちゃんよ!」

「わ、分かった。かりそめにも疑ってごめんなさい、この通りです(。>ㅅ<。)!」

「よし、分かればいいのよ、分かればね」

 

 こうして、天孫降臨の第二世代が誕生したのでありました。

 

 次回は、この第二世代の冒険に話しを進めていきたいと思います(^▽^)/

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誤訳怪訳日本の神話・52『天孫降臨と二つの恋・3』

2021-07-30 09:06:58 | 評論

訳日本の神話・52
『天孫降臨と二つの恋・3』  

 

 

 記紀神話においては神さまは不老不死です。

 

 たとえ負けても、どこかに引き籠ったり(スサノオは高天原でボロ負けしたあとは地上で暮らしています)、分裂したり(イザナミを焼き殺した火の神はイザナギに切られますが、分裂して地上に散らばります。イザナミは焼き殺されますが、黄泉の国で永遠に生きています)して永遠の時間を生きます。

 アマテラスの息子たちも不老ですが、殺されると死にます(アメノワカヒコはオモヒカネが投げた矢が当たって死にました)。

 そして、アマテラスの子孫である歴代天皇は、みんな病気にかかったりして、普通に死んでいます。

 では、なぜ、神の子孫である天皇は、普通に死ぬようになったのでしょうか?

 

 神さまが人間のように死ぬようになったのは天孫降臨したニニギノミコトからなのですが、それには、天孫降臨にまつわる、もう一つの恋が関係しているのです。

 

 ニニギノミコトが笠沙の海岸(鹿児島県の薩摩半島の西)を歩いていると、メチャクチャ可愛い女の子に出会いました。

「きみの名前は(^_^;)?、ど、どこの娘さんかな(#'∀'#)?」

 一目ぼれしたニニギはさっそく名前を聞きます。

「え、えと、山の神オホヤマツミの娘でコノハナノサクヤヒメと申します(#'∀'#)」

 そう、彼女こそ木花開耶姫(コノハナノサクヤヒメ)なんですなあ(^▽^)!

 

 大阪市に此花区という区がありますが、元になったのは木花開耶姫が元だったんです。

 女の子の名前でもサクヤというのはクラスに一人はいるくらいにポピュラーな名前ですが、その元々も、このサクヤでしょう。

 花博の日本館を『咲くやこの花館』と言いましたが、もちろん、サクヤから採った名前であります。

 一目ぼれしたニニギは、スグにプロポーズしてサクヤを妻にします。

 そうすると山の神も心から喜んで、様々な嫁入り道具といっしょに、サクヤの姉の岩永姫(イワナガヒメ)も送ってきました。

「あ、おねえちゃん!?」

「エヘヘ、あたしもついてきちゃった~、ニニギくんもヨロ~(#´艸`#)」

 いま、妹をもらうと洩れなくお姉ちゃんも付いてきます!

 なんだか、テレビ通販のノリですなあ。

 テレビ通販に付いてくるオマケは、たいてい型落ちの在庫整理品だったりします。

「こ、これが、サクヤの姉ちゃんなのか(⊙△⊙)」

「うん、ま、よろしくね(^_^;)」

「ちょ……ちょっとなあ……」

 イワナガは、妹の十倍くらい大きくて厳ついオネエチャンであります。ルックスも名前の通り岩のようにゴツゴツしております。

 さすがのニニギも、ちょっとビビってしまい、テレビ通販にはクーリングオフがきくのを思い出して、イワナガを送り返してしまいます。

 後日、父の山の神から手紙が届きます。

――姉のイワナガを送ったのは、ニニギノミコトが巌のように丈夫に健やかに永遠の命を持たれることを願ったものです。イワナガを送り返されましたのでミコトの御寿命は、そう長くはないでありましょう――

 それ以来、歴代天皇は人と同じほどの寿命になりました。というオチになっています。

 黄泉比良坂の千曳の大岩を挟んで、イザナギとイザナミが言い争って、人は一日に500人ずつ増えることになったというエピソードと対になる話だと思います。

 イワナガヒメは、山の芯(コア)になる岩を現しているのだと思います。芯がしっかりしていないと、地震や大雨で、一見不動に見える山でも簡単に崩れることを古代の人々は知っていたんですねえ。

 コノハナノサクヤヒメは、その巌の上に根を張って可憐に咲く花や果実を現しているのでしょう。

 一見、山の神の意地悪に見えますが、事の本質を現したものだと思います。

 

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誤訳怪訳日本の神話・51『天孫降臨と二つの恋・2』

2021-07-25 09:15:34 | 評論

訳日本の神話・51
『天孫降臨と二つの恋・2』  

 

 

 猿田彦は天狗のように描かれることが多い国津神です。

 手塚治虫の『火の鳥』ではアトムのお茶の水博士のように描かれています。石ノ森章太郎の『古事記』では猿の惑星のキャラのように描かれています。

 異形の神さまではありますが、生命力が溢れているように感じます。豊芦原中つ国が豊かで生命力に溢れていることの表現かもしれません。

 猿田彦を目にしたニニギノミコトはタヂカラオの肩に乗ったまま訊ねます。

「おまえは、いったい何者だ?」

 猿田彦は高千穂の峰に怪しげな神さまの一団が現れてきたというので偵察に来たのに違いありません。

 大魔神のようなタヂカラオ、その肩にチョコンと乗った少年ニニギノミコト、その横には大賢人のオモヒカネ、勇士イシコリドメ、アメノイハトワケ、魔導士フトダマ、錬金術師タマノオヤ等々。

 まるで、オンラインRPGのギルドの一団のようです。

 それまで豊蘆原中つ国を縄張りにしていた中つ国ギルドとしては、問いただすのは猿田彦の方です。

 ところが、猿田彦は蹲踞して、こう述べます。

「これは、中つ国の国津神の猿田彦であります。高千穂の峰に尊い神さまが降り立たれたというので、道案内のため、お迎えにあたった次第であります」

 神話的には、ニニギの一団にえも言えぬ神々しさを感じて恐れ入ったということになっています。

 

 でも、この神さまギルドの中にアメノウズメがいたのですなあ(^_^;)

 

 ウズメは天岩戸でR指定のダンスを踊って、神さまたちを魅了しただけでなく、アマテラスにさえ「何事が起こったの!?」と岩戸を少し開かせるぐらいの魅力があります。

 現代では、芸能の女神様になって、京都の車折神社をはじめ彼女をご神体にする神社がいっぱいあります。

 猿田彦は、この日本史上初のアイドルに心を奪われたのでしょうねえ。

 ニニギノミコトは「じゃ、この高千穂の峰に最初の宮殿を建てるよ」と宣言します。

「え、こんな山の上にですか?」

「うん、ここからはグーグルアースみたいに中つ国が見えるし、韓の国も望める。朝日も夕陽もめちゃくちゃ綺麗だろうし、ここにするよ」

「そ、そうでありますか(^_^;)」

「だからさ、もう帰ってもいいよ。ぼくが、ここに留まると分かったら、中津国のみんなも安心でしょ(^▽^)」

「は、それは、たしかに……」

「ウズメ、猿田彦を送ってやってくれる(*^^)v」

「え、わたしがですか!?」

「まずかった?」

「え、いえ、そんなことは(n*´ω`*n)」

「えへへ、ま、そういうことで」

「かしこまりました!」

 

 ニニギは分かっていたのです。

 猿田彦がウズメに一目ぼれして、ウズメも猿田彦のことを憎からず思っていたことを。

 見かけは少年ですが、なかなか大人の感覚。さすがはアマテラスの孫であります。

 こうして、ウズメは猿田彦とともに中つ国に向かい、中つ国の神々から『猿女の君』と呼ばれるようになり、めでたく芸能の神さまになったのでありました。

 

 次回は、天孫降臨、もう一つの恋に突入いたします♪

 

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誤訳怪訳日本の神話・50『天孫降臨と二つの恋・1』

2021-07-18 08:44:10 | 評論

訳日本の神話・50
『天孫降臨と二つの恋・1』  

 

 

 ニニギノミコトの天孫降臨には二つの恋バナがあります(#^▽^#)。

 

 アメノウズメ(天宇受賣命)を憶えておられるでしょうか?

 スサノオ(須佐之男命)の乱暴に耐えかねたアマテラス(天照大神)が天岩戸に隠れて世の中が真っ暗になったことがありました。

 真っ暗では、流行り病や災いが一杯起こるので、思いあまった神さまたちは天の安川の河原に集まって対策会議を開きました。

 議長はオモヒカネという老人の神さまで(アマテラスの第一のブレーンで、中つ国を帰順させるため、毎回アマテラスの相談相手になりましたね)、ニニギノミコトが中つ国に降り立つ時には神さま団の団長で付き添っています。

 で、その天の安川の河原で、アマテラスを引き出すためにダンスパフォーマンスをやった女神です。

 戦前の教科書や、戦後の子供向きの本では「アメノウズメが踊った」としか書いていませんが、要はストリップです。

 胸乳(ムナヂ)も露わに、裳(も・スカートの一種)の紐を女陰のところまで引き下げて……動画サイトに上げたら一発で削除されそうなダンスをやったんですなあ(^_^;)。

 刺激的で、現代の感覚ではR指定の代物ですが、神さまたちは明るく大笑いしました。

 現代人なら、真っ赤になって目を伏せてしまうでしょう。セクハラだと訴えられて裁判沙汰になります。

 脱線しますが、古来から日本は性的なものには寛容でした。

 祭りでは、田んぼの真ん中に柱を立てて、藁で作った巨大な女陰と男根をぶら下げます、風が男根を揺らして女陰に入る度に、ワーワーキャーキャーと囃し立てるなんてことをやっていました。むろん、笛や太鼓で囃し立て、お酒も飲んで、とことん発展いたします。中には、選ばれた男女が、みんなが見ている前で本番をいたすこともありました。

 それは、五穀豊穣を祈る神事だったからだ! 常日頃から乱れていたわけでじゃない!

 いえ、今の感覚からは乱れていました。

 以前述べたかもしれませんが、西南戦争において藍郷隆盛が私学党の若者を引き連れて政府軍に夜襲を掛けた時のこと。

 あまりにも息を潜めて真剣に進むのが可笑しくなって、ポツリと言いました。

「まるで、ヨベ(夜這い)のごたる」

 それまで、緊張していた夜襲軍の中で、クスクスと笑い声が上がって止まらなかったそうです。

 夜這いついでに。

 夜這いの末には、女の子のお腹の中に赤ちゃんができます。

 親は、娘に尋ねます。

「腹の子の父親はだれだ?」

 今なら、親の目は怒りに燃えるのでしょうが、親は嬉しそうです。

「えと……太兵衛、治郎作、茂兵衛、弥助、喜六……清八もいたかも(#^_^#)」

 そうして、心覚えのある男たちが集められ、娘は、好きに男を指名します。

 DNA鑑定などありませんから、ほんとうに娘の好み次第。時には親が「○○にしとけ」と言ったかもしれません。

 それで、男は娘の夫になります。

 この、妻問婚と言いますか自由恋愛と言いますかフリーS〇Xと言いましょうか、そういう空気があったわけです。

 これと、五穀豊穣が重なるものですから、イタすことは目出度いことで、アメノウズメのダンスも明るく目出度く、そして、何よりも魅力的だったのです。

 おそらく、神話世界ではアマテラスと並び立つ魅力です。

 アマテラスは女王、巫女の女ボスとしての美しさの権化で、性的な対象にはなりません。

 しかし、アメノウズメは、そういう対象としての魅力に満ちています。ウズメみたいな女の子が彼女ならいいなあと思わせる魅力ですなあ。会いにけるアイドルのもっと身近で、スゴイものですね(n*´ω`*n)。

 長々と書きましたが、アマテラスがウズメを派遣団に加えたのは、おそらく、中つ国の男たちがその気になるだろうことを予感というか望んでいたのでしょう。

 良き夫婦となって、子を増やし、中つ国を豊かな国にしなさいという思いが託されていたと思います。

 そして、そのウズメを見初めたのが猿田彦という国津神(地上の神さま)でありましたぞ。

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誤訳怪訳日本の神話・49『天孫降臨・2』

2021-07-13 08:58:41 | 評論

訳日本の神話・49
『天孫降臨・2』  

 

 

 アメノウズメやオモヒカネ達を従えたニニギノミコト(瓊瓊杵尊)は宮崎県の高千穂の峰に降り立ちます。

 

 高千穂の峰は宮崎県と鹿児島県の境にある標高1574メートルの火山です。1913年に噴火して以来静もっていますが、古い言葉で言う活火山なので、中腹以上は岩だらけのハゲッチョロゲで、大小の岩や石がゴロゴロしています。

 山頂付近に鳥居があって、天逆鉾(あまのさかほこ)が突き刺さっています。

 古来、天孫降臨の聖地の山として有名なのですが、戦後は学校で教えないこともあって、70歳以下の多くの人は「なにそれ?」なのではと思います。

 わたし自身、高千穂峰と天孫降臨の結びつきを知ったのはNHKの大河ドラマ『龍馬がゆく』だったと思います。

 いえ、はっきり場所とエピソードを知ったのは、その後、学生時代に司馬遼太郎の原作を読んだ時でしょう。

 

 龍馬は日本で初めて新婚旅行をやったことで有名ですね。

 

 伏見の寺田屋に投宿していた龍馬は、伏見奉行所の取り方に襲撃されますが、ちょうど入浴中の寺田屋の娘のお龍が気が付いて、素っ裸で竜馬に知らせました。

 この下りを、どう演出してテレビで見せるのか!?

 原作が知れ渡っていましたので、雑誌や新聞でも前評判が立ち、テレビの前で刮目していたものでありました(^_^;)

 お龍の役は浅丘ルリ子さんがやっておられましたね。

 浅丘ルリ子さんは、後の『花神』でもシーボルトの娘の『おいね』を演じておられ、寅さんのマドンナ『リリー』もお演りになって、わたしの贔屓の女優さんであります(^_^;)。

 龍馬の部屋に駆けこむシーンは憶えているのですが、その直前のシーンの記憶がありません。残念無念。

 龍馬とお龍は、その後結婚して、西郷隆盛らの助けもあって、九州に避難しますが、ただの避難ではなくて新婚旅行にしてしまったところが、龍馬という人物の明るさであり面白さであると思います。

 その時に、立ち寄ったのが高千穂の峰で、龍馬は、お龍に、楽しく神話の話をしています。

 

 幕末ついでに、高杉晋作について。

 

 高杉晋作は幕府に攘夷実行の命を出させ、長州藩をこぞって下関で海峡を通過する外国船を砲撃して、その報復を受けて負けてしまいます。

 晋作は、藩の代表として四か国連合軍と終戦交渉にあたりました。

 当然、四か国は膨大な賠償を求めてきますが、晋作は魔王のごとき形相で四か国代表と渡り合い、交渉に勝利します。

 連合軍側は彦島の租借を要求しますが。

 彦島は藩の持ち物ではなく神の持ち物であると主張して、延々、古事記の神代記を朗々と演説して煙に巻いてしまいます。

 この演説は台本なしのアドリブです。

 当時の武士は古事記の内容などは、ほとんど諳んじていたんですね。

 武士だけではなく、寺子屋でも教えていましたので、百姓町人の多くも知っていたでしょう。

 程度の差はありますが、日本人の七割以上は、わたしが書き散らす程度の神話の話は知っていたと思います。

 お龍が、龍馬から「ここがニニギノミコトが降臨されたところじゃ(^▽^)」と説明されると、こう応えたでしょう。

「ああ、これが、あの有名な!」

 わたしは、ジョンレノンが好きで、ジョンレノンが家族といっしょに軽井沢に逗留して、毎朝パンを買いに行ったお店を知っています(行ったことはありませんが(^_^;))。

 もし、軽井沢に行って、人から「ここが、ジョンレノンがパンを買いに来たお店です」と紹介されたら「ああ、ここが、あの有名な!」と感動するでしょう。

 同じことが、龍馬とお龍の間にあった……と言えば、想像がつくでしょうか。

 実際は、ニニギノミコトはジョンレノン以上に、日本人にはお馴染みであったと思います。

 

 天孫降臨にまつわるラブロマンスが二つあるのですが、それは次回にまわしたいと思います(^_^;)

 

 

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誤訳怪訳日本の神話・48『天孫降臨』

2021-07-04 13:57:06 | 評論

訳日本の神話・48
『天孫降臨』  

 

 

 これは決定事項です!

 

 アメノヲシホミミの鼻先ににビシっと指を突きつけたアマテラスの決心は巌のようです……ちょっと古い(^_^;)。

 前世紀の終わりごろ……今から30年ほど昔の1989年ごろ。

 参院選で社会党が大勝!

 女性党首が高らかに宣言しました。

 山は動いた!

 自民党一党支配の時代が音を立てて崩れ去り、これからは社会党を中心にした左翼リベラリズムの時代が始まるぞ!

 あの時の土井たか子女史に似ています。

 平塚雷鳥が『青鞜』の発刊において宣言した言葉。

 元始、女性は太陽であった!

 

 アマテラスの決意は、この二つの宣言を足して百倍にしたような力と意味があったでしょう。

 

 ニニギノミコトには、万全の準備とお供を付けてやります。

 その準備とお供の発表で、いかに自分の決心が硬いかということを息子のアメノヲシホミミを始めとする神々と、中つ国の国つ神や人間たちに示します。

「まずは、アメノウズメ!」

 アメノウズメは、アマテラスが天岩戸に隠れた時に、18禁の即興ダンスを踊って、アマテラスを引きずり出すのに貢献した女神です。

 天性のダンスパフォーマーで、今でも芸能の神さまとして親しまれ、崇められている女神です。

 ウズメが気を引き、小さく開けられた岩戸を力任せにこじ開けたタヂカラオ。

 もう一人の力持ちのアメノイハトワケも付けてやりました。

 高天原一番の知恵者で、天の岩戸解放作戦を立案し、中つ国進出作戦をアマテラスに教示してきたオモヒカネ。

 その他にも、いろんな神さまが中つ国派遣団のメンバーになっていきます。

 

 アメノコヤネにフトタマ、イシコリドメには鏡を持たせ、タマノヤには勾玉を持たせます。

 そして、スサノオが八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の尻尾から取り出した草薙剣を留めに付けてやります。

 この時の鏡と勾玉と剣が『三種の神器』となって、今に伝えられ、天皇の力の源になっています。

 

 この時、ニニギノミコトに付き添って中つ国に派遣された神々が、後に日本の有力豪族の始祖になっていきます。

 アメノオシヒ(大伴氏) アメツクメ(久米氏) アメノコヤネ(中臣氏) フトタマ(忌部氏) 等々……

 

 改めて強調しますが、代表であり天孫であるニニギノミコトは、まだ子供です。

 付けられた神々は、高天原の新旧取り混ぜてのオールスターと言っていい神々です。

 その多くは、天の岩戸事件で大きな力を発揮した者たちです。

 

 権威としての天皇が頂点に君臨し、力や才能の有る者たちが、実際の政治、軍事の力を発揮し、実際の責任をとっていくという、日本という国の原型があるような気がします。

 

 次回は、この天孫降臨にまつわるラブロマンスに触れてみたいと思います。

 

 ※ 神さまの名前は長くてややこしいので、~ノミコトという表現は略しました(^_^;) 神さま、ごめんなさい。

 

 

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誤訳怪訳日本の神話・47『これは決定事項です!』

2021-06-28 08:43:01 | 評論

訳日本の神話・47
『これは決定事項です!』  

 

 

「さ、オオクニヌシは引退させたわ。さっさと、中つ国を治めていらっしゃい!」

 アマテラスは、改めて長男のアメノオシホミミに命じます。

 

「…………………」

 

「なによ、その沈黙は?」

「勘弁してよ……ぼくは、この高天原から出たくないよ……」

「んだと!?」

「こ、怖ええ」

「こ、ここまで来んのに、どれだけ人と時間を使ったのか! どれだけ、この母が気をもんだか! 分かってんのか! てめえええええええ!!! それでも、アマテラスの息子かあああああ!!!!」

「ヒ、なんか、叔父さんのスサノオみたいだよ(;'∀')」

「そのスサノオに勝ったのが、このあたしだよ! 母さんだよ! スサノオがやってきた時も、母さんはね、鎧兜に身を固めて、高天原の軍勢を引き連れて、体張って守ったのよ!」

「で、でも、結局は、叔父さんにメチャクチャにされたじゃん!」

「身内だからよ! あんただって、最初に『中つ国に行け』って言って断ったときは認めてやったでしょーが! あたしはね、基本、優しい女なの! 太陽神で、母性の象徴で、豊穣の女神で、何事も、平和的にやっていこーというのが、コンセプトなの! だけど、だっけど……仏の顔も三度だぞおおお!」

「魔、ママは神さまだ」

「いま、魔って打ったな?」

「へ、変換ミス」

「心の底で思ってるから出るんでしょーが! オシホミミ、憶えてるぅ? スサノオが高天原を追い出された時のこと……」

「え、ええと……(;゚Д゚)」

「髭と髪をむしって、シバキ倒して、爪を剥いで……」

「ヒイイイイイイイ」

「いま。思うと、あそこもちょん切ってやればよかった。そうすれば、オオクニヌシなんてのも生まれてこなかったんだし」

「アヒャヒャヒャ(;゚Д゚)……」

「おまえは、どうしてやろうかねえ……」

 アマテラスの目が座ってきます。

「あ、あの……ぼくには、子どもがいるんです!」

 

「な、なんだって……( ゚Д゚)」

 

「タカムスヒの神の娘のヨロヅハタトヨアキツシヒメとの間の子でアメニギシクニニギシアマツヒコヒコホノニニギノミコトって可愛い男の子なんです( #´∀`# )」

「アメニギ……?」

「アメニギシクニニギシアマツヒコヒコホノニニギノミコトです(^▽^)/!」

「ジュゲムか」

「アメニギシクニニギシアマツヒコヒコホノニニギノミコト!」

「ニニギにしとけ!」

「ハ、ハヒ……ね、だから、お母さん、いえ、ニニギのお祖母ちゃん(^_^;)」

「お祖母ちゃん、言うな!」

「ハ、ハヒ……だから、ね、ニニギはまだ小さいし、カミさんも仕事しながら子育てしたいって言うし……」

「……………」

「か、母さん……?」

「分かったわ」

「わ、分かってくれた!? ああ、やっぱ、持つべきものは母さんだ(#*∇*#)!」

 

「中つ国には、そのニニギノミコトを送ることにする!」

「そ、そんな……」

「問答無用! これは決定事項です!」

コメント
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