大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい 番外・005『お見合い写真はブラックスワン』

2024-12-19 15:51:53 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
番外
005『お見合い写真はブラックスワン』さくら 




 ブラックスワンて知ってますぅ?


 あり得へんことが起こった時に使う、ちょっと高度な慣用句。

 似たような言葉に『青天の霹靂』っちゅうのがあるけど、微妙に意味がちがう。青天の霹靂は、ただビックリするだけやけど、ブラックスワンは、ビックリして、悪いことが起こるんやったと思う。

 我が如来寺に、そのブラックスワンが、まずは青天の霹靂でリビングのテーブルの上に現れた!

「え、これって……」

 まず、留美ちゃんが凍り付いた。

「ま、まさか!」

 その時、頭に浮かんだんは青天の霹靂。

「ちょ、ちょっと!」

 姉妹同然の親友が止める間もなく、うちは青天の霹靂を手に取った。

 青天の霹靂は、白いB4サイズの厚紙に綴じられたお見合い写真!

 開くと、ベールみたいな薄紙が付いてて、その下に和装のベッピンさん。

 薄紙の為に、フワっと滲むというかボケてんねんけど、メッチャ美人!

「あ、ダメだよ」

 薄紙をめくろうとするうちを止める留美ちゃんについさっきの勢いは無い。

 留美ちゃんも見たいんや(^_^;)

 
 神に誓って、いや、うちは真宗のお寺やさかいに、阿弥陀さんに誓ってわざとやない!

 一陣のそよ風(たぶんエアコン)が吹いて来て、薄紙をめくってしまいよった!

「「おお!」」

 現役高校生やけど、いちおう女優と声優の二人は、アニメの主人公が冒険の旅の末の最終回。女神さまに出会った時みたいな声をあげてしもた!

 いや、ほんまに女神さまっちゅう感じ!

 なんと巫女服!

 巫女服て、もう和装の極みやんか! 

 斜め後ろに狛犬を従えて、その後ろには賽銭箱とガラガラの鈴。その上には拝殿の唐破風の裏側が、竜の顎みたいに見えてて、境内の玉砂利がレフ板みたいな働きをして、うりざね顔も麗しく栄える。

 若手女優のプロモ写真みたい。

 うちの宣材写真に比べても軽く10ポイントは上をいってる!

「巫女さんなんだろうか……」

「せやろなあ、この着こなしはレイヤーさんとはちゃうで」

「あ……」

 写真の後ろにはもう一ページあって、白い封筒が頭を見せてる。

「釣書だよ、これ」

「ツリショ?」

「うん、見合いの前に相手に渡す履歴書みたいなもんだよ」

「え、なんか露骨な名称やなあ」

「あ、違うんだよ。釣書っていうのは、掛け軸の別名。ほら、掛け軸って床の間とかに釣るすじゃない。昔は家系図とかも掛け軸の形してて、お見合いの時の身上書みたいなのも釣書って言うようになったんだよ」

「よう知ってんねえ( ゚Д゚)」

「あ、ドラマに出てきたから(^_^;)」

 ドラマとは、留美ちゃんの場合『観たドラマ』じゃなくて『出演したドラマ』やから、すごい。

「封ぅしたぁれへんわ、見たろかぁ( ≖ᴗ≖) !」

「あ、ダメだよ!」

 さすがに選挙権さへ持ってる高3コンビ、中坊の時みたいなアホはやりません。

「せやなあ、早々に送り返さなあかんもんやろしなあ……しかし、今までで一番のベッピンさんやなあ」

 うちの正直な感想には応えんと、留美ちゃんは別の角度から心配する。

「これで、三回目?」

「いや、五回目」

「え、もうそんなに!?」

「まあ、やっと30、そう焦ることもないやろし」

「そ、そうね(^_^;)」


 それから、留美ちゃんはテレビのワイドショーのお仕事。

 うちは、お祖父ちゃんの白内障手術の付き添いで、堺で一番の総合病院へ。


「お祖父ちゃん、ビビってる?」

 白内障の手術は目ぇの中の水晶体が濁ってしまうんで、人口の水晶体と入れ替える手術。

 まあ、70歳を超えると誰でも出てくる眼病で、盲腸の手術よりも簡単らしい。けど、目ぇのレンズを入れ替えるんやから、怖いに違いない。

 せやさかい、かっこうのネタ。待ち時間にお祖父ちゃんを脅かす。

「ああ、目ぇやからなあ」

「せやろなあ、針とかメスとか、目ぇに迫って来るのん見えるやろしなあ(^△^;)」

「あ、それは麻酔とかかかってるさかい、なんも見えへんらしいわ」

「え、せやのん?」

「うん。たいてい上手いこといって、手術前よりもよう見えるらしい」

「ええ、科学の進歩やなあ」

「うん、檀家さんでも何人もやってはるしなあ」

 せや、檀家の大方は医療費二割負担で済む年寄りやった。

「せやけど、左の方は網膜穿孔もやってるさかいなあ」

「え、モウマクセンコウ!?」

 これは聞くのん初めてや。

「うん、網膜に亀裂やら穴が開いててな、めちゃくちゃ見えにくい」

「ええ、なにそれぇ!?」

 テイ兄ちゃんから「祖父ちゃん白内障や」としか聞いてへんかったからビビるのはうちの方や。

「それで、目ぇの中にガス入れてな、そのガス圧で穴を塞ぐんや」

「ええ……」

「いろいろ聞いたんやけど、うまくいっても、かなり視力が落ちるらしい。特に、儂のは焦点のとこやし、字ぃ読みにくなるやろなあ……さくらの顔も見ても、そのつぶらな瞳は見えへんかもしれん」

「お、お祖父ちゃん……」

 東京と大阪の二重生活、やっぱり家族のことは、ちょっとおざなりになってるんやろか……と自責の念。

 こういう時は、話題を変えるに限る。

「テイ兄ちゃんのお見合い相手、めっちゃ美人さんやってんなあ! あんな気合いの入った見合い写真見るのん初めてやったし」

「え、なんで知ってんねん?」

「リビングのテーブルに置きっぱなしやった」

「ジュンサイなやっちゃなあ……あ、ヨダレとか付けてへんやろなあ」

「そら、もちろん、きれいなまま返さならあかんやろし」

「いや、返さんでもええと思う」

「え?」

「相手さんがな、このまま話進めてくれて、言うてくれてはるんや」

「ええ、それてぇ(# ゚Д゚#)!?」

「声大きい」

「ごめん」

「どこを気に入ってくれはったんかなあ、ありがたいこっちゃ」

「せやかて、あの人、神社の巫女さんやろ?」

「ああ、そらかめへん」

「そ、そうなん?」

「神仏習合の観点からは、仏さんも神さんも同じもんやさかいなあ」

「シンブツシュゴウ?」

「ああ、神さんも仏さんも同じいうこっちゃ」

「え、そうなん……」

「ああ、阿弥陀さんは神社では八幡さんと同じいうことになってる」

「へ、へえ……」

 いや、正直、神仏習合はどうでもええんです。

 あんなベッピンさんがテイ兄ちゃんのお嫁さんになるっちゅうのが……青天の霹靂を通り越してブラックスワン。

 来年の日本は、果たして無事なんやろか……(;'∀')

 

 
 ☆・・主な登場人物・・☆

酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍二等軍曹
月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 酒巻栞(原画) 
声優の人たち      花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎  
さくらの周辺の人たち  ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官)  相野千春(声優の先輩)
 
 

 
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せやさかい 番外・004『総集編・2・中割り』

2024-10-02 10:48:25 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
番外
004『総集編・2・中割り』さくら 




 アニメいうのは、ザックリいうと、監督の絵コンテから始まる。

 絵コンテいうのは、アニメのキャラクターの動きや構図なども含めてシーンごとにカット割りの絵にしたもの。

 これができてないと、ほかの作業がいっさいでけへん。

 大手は専業のコンテマンがいたりするけど、零細企業の江戸川アニメは監督が絵コンテを描く? 書く?

 A4の紙の左側が五つにコマワリされてて、そこにワンシーンずつのおおよその絵が描かれる。まあ、5コマ漫画みたいなもん。右側には、セリフとか注釈が書かれてて、 その絵コンテをもとにいろんな作業が始まるわけ。

 いろんな作業の始まりで、いちばん重要なんが原画。

 原画は……そう、たとえば人物がジャンプするシーンやったとする。原画マンは、①ジャンプする直前 ②ジャンプの途中 ③着地したとこ。最低この三つ。たいていは、その間にもう二コマほどの絵を入れて描く。

 原画マンには、ザックリした第一原画ときちんと描いた第二原画がある。まあ、ラフと清書いう感じやね。

 その第二原画が動画さんとこに周って、じっさいの撮影に使われる動画を描く。ジャンプが三コマとか五コマでは間に合えへんから、動画さんは原画の間を繋いで中割りと呼ばれる絵をたくさん描く。

 原画がええかげんやと、絵と絵の間がうまく繋がれへんで、場合によってはグチャグチャな作画崩壊ということになってしまう。

 ひどい場合は「中割が描けない!」っちゅうことで突き返されることがある。

 酒巻さんは、まさに、この突き返しにあったわけやねん。酒巻さんは第二原画やから、第一原画の里中智満子がヘボやったんやと思う。

 
 目玉焼きにかける醤油をとろうとしたら、醤油さしをくれながら留美ちゃんが言う。

「里中智満子って、酒巻さんの別名なんだって」

「え?」

「酒巻さん、第一原画も第二原画もやってたんだよ」

「そんなぁ」

 留美ちゃんは、夕べあれから江戸川の知り合いにスマホで連絡をとってたんや。分かれへんこと、心配なことにはソッコーで対応する。ズボラなうちにはでけへん能力の高さ。中学の頃は、しょっちゅう立ち止まってばっかりの子やったけど、どうも抜かされてしもたみたい(^_^;)。

「でも、今日からはよそから助っ人が入るみたいで、来週は総集編にしなくてすみそうだって」

「そうなんや……」

「あ、お醤油!」

「あ、あわわわ!」

 かけすぎた醤油はご飯にかけて、さっさと食べると、二人で学校に向かった。

 
 二人とも五日ぶりの学校。


 むろん出席日数が足りひんようなことはないけど、ちょっとね。

「がんばろうね」

 吊革につかまって、相棒は見透かしたように一人ごちる。

「第二原画みたいな登校しかできてないんだからね」

「せやなぁ、中割でけへんようなことにはならんように」

「気を付けようね」


 学校に着くと、教室のあちこちに島ができて盛り上がってる。


 え、なんやろ?

 横目で覗くと、みんなスマホの写真でキャーキャー言うてる。

 あ、せや。先週の金曜日は高校最後の遠足やったんや!

 せやさかい、みんな思い出をいっぱいつくってきたんや。

 そう気づいたら、ちょっとみんなの中には入っていきにくくなってしまう。

 ああ、中割がでけへん(^_^;)。

 しゃあない、自分の人生、原画も中割も自分でせんとあけへんしね。

 そんなウチに合わせてくれたわけやないんやろけど、窓から吹いてくる風は、まだ夏の匂いと熱を残してた。

 

 ☆・・主な登場人物・・☆

酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍二等軍曹
月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 酒巻栞(原画) 
声優の人たち      花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎  
さくらの周辺の人たち  ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官)  相野千春(声優の先輩)
 
 
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せやさかい 番外・003『総集編・1・総集編の変な訳』

2024-10-01 16:36:04 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
番外
003『総集編・1・総集編の変な訳』さくら 




『いまどき総集編なんだってね、だいじょうぶなのかい?』

 相野さんからメールが来た。

 相野さんといっしょにやらせてもろてる秋アニメ『オメシグ〔泣いてもω(オメガ)笑ってもΣ(シグマ)〕』が二週連続で総集編になってしもた。

お祖父ちゃん:「なんや、いつのまに最終回やってんなあ?」

 オメシグのファンになってくれてるお祖父ちゃんが不思議な顔をする。

テイ兄ちゃん:「お祖父ちゃん、アニメの総集編いうのはなぁ……」

 そろそろ三十路やいうのに、若者文化にドップリのテイ兄ちゃんが説明する。

 お祖父ちゃんはNHKのドラマの感覚なんや。

 総集編いうのは番組がめでたく最終回を迎えて――あの感動をもう一度!――ちゅうノリで放送する特別番組。大河ドラマなんかは、総集編というだけで年末の気ぜわしさとお正月の予感がするめでたいもんや。

お祖父ちゃん:「ええ、放送に間に合わんから、しょーことなしにやってんのんか!?」

 うちもテイ兄ちゃんも「「あははは(^◇^;)」」と笑うしかないねんけど、お祖父ちゃんは、うちが主役の妹の役をやってるんで、ちゃんと観てくれる。ありがたい。


留美:「あれねぇ、動画さんからNGが出たんだって」


 遅くに帰ってきた留美ちゃんが報告してくれる。

 留美ちゃんは終電に間に合うようなら、たとえ明くる朝にとんぼ返りになっても家に帰って来る。オメシグにもちょっとだけ出てくれてるしね。

留美:「原画の酒巻さん、ちょっとひどいらしいよ」

さくら:「ええ、なんでえ?」

 オメシグは江戸川アニメが元請けの秋アニメ。なんか事情はよう分からへんねんけど、他の会社が請けられんようになって、江戸川が急きょ引き受けることになった作品。

留美:「コ▢ナからこっち、アニメって全話完納じゃない」

さくら:「ていうか、それしか知らんかった」

留美:「大人の事情で、社長が引き受けてきて、ムリクリ割り込ませたから無理が出てるっぽいよ」

さくら:「そうなんや……」

留美:「酒巻さんて、すごくていねいな仕事する人でしょ」

さくら:「ああ、うん……」

 声優の仕事をしてるのは江戸川アニメがあったればこそ。もとはと言えば先輩の百武真鈴(ももたけまりん)のたくらみやったけど。この仕事に生きがいを感じてるうちには、真鈴先輩は神さまだか悪魔だかのお使いで、江戸川アニメは第二の故郷っぽい。

 高校生やった(いまでも、まだ三年生やねんけど)わたしを、陰になり日向になって見守ってくれたのが江戸川の人たち。監督は、いたってどんぶり勘定やけど、それを支えているのがスタッフのみなさん。

 とくに酒巻さんは「ていねいにやっていたら、必ず見えてくるものがあるわよ」と、つい監督にのせられてやっつけの勢いで行こうとするのを諌めてくれはった。

留美:「絵コンテのあがりも遅かったんでしょうねぇ……」

 そう言いながら、タブレットにオメシグの公式サイトを出す留美ちゃん。監督を筆頭に数十人の名前がスクロールされていく。

さくら:「第一原画の里中智満子って、誰やのん?」

 偉大な少女漫画家と似すぎてる名前にひっかかる。所帯の小さい江戸川アニメ、ほぼ全員を知ってるうちには聞き慣れへん名前や。

 酒巻さんは第二原画なんで、第一原画さんが描いた第一原画に引っ張られてる。

 監督の遅筆がそもそもの原因やろねんけど、この第一原画にもちょっとむかついた。

 思わず伸ばした手ぇは虚しく空を掴む。

 ああ……空しく手ぇは空気をモフる。

 あれから二月……まだダミアロスには慣れへんさくらでした。


 ☆・・主な登場人物・・☆

酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍二等軍曹
月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 酒巻栞(原画) 
声優の人たち      花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎  
さくらの周辺の人たち  ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官)  相野千春(声優の先輩)
 
 
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せやさかい 番外・002『相野先輩と海老のシッポ』

2024-07-29 10:54:41 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
番外
002『相野先輩と海老のシッポ』さくら 




 秋アニメのアフレコの後、ラジオの生放送まで時間があったんで放送局の社食で早めの晩ご飯(遅めの昼ご飯とも言える(^_^;))をいただく。

 ちかごろは、テレビもラジオも斜陽産業やけども、放送局の食堂はけっこう繁盛してる。ぜんぶで100人は入れるというフロアーは八分の入り。
 教室が八分の入りやったら「今日は欠席が多いなあ」やけども、食堂は四人掛けに二人とか三人とかで座って、入り口には順番待ちの人らも並んでて、満席の印象。

「やっぱ……不景気なんだねえ」

 ご一緒してくれてはる相野千春さんが声を潜めて言う。相野さんは去年の春アニメ『やくも あやかし物語』でブレイクしたベテラン声優さん。なんでか気が合って、仕事の合間なんかにご飯とかごいっしょしてくれはる。

「そうですかぁ、けっこう入ってるように思いますけど」

「景気がよかったら外に食べに行ってるわよ……って、わたしたちも社食だけどね」

「う~ん、東京の人てぇ……雰囲気大事にしはりますよね」

「うん、見栄っ張り。ここの社食だってけっこう美味しいのにねえ」

 そう言いながらエビフライのシッポを口に放り込む相野さん。口の中でポリポリっと小気味のええ音がする。ウチも海老のシッポをポリポリ。

 相野さんと仲良くなったのは、声優仲間でご飯食べに行って、二人とも海老のシッポを食べるのが分かった時やしねえ。

「やっぱり、開会式の噂してる人が多いねえ……」

「あ、ああ……」

 ちょっと恥ずかしい……開会式をライブで観てて、ウチは感心ばっかりしてた。オリンピック旗が逆さに掲揚されたのはさすがに笑ったけど、ウチ的には「ポカやりよった!」と笑っておしまい。

 合間のパフォーマンスもお祖父ちゃんが言うてたアバンギャルドとかいう前衛芸術やと思て感心してた。

 真ん中にデブのネエチャンが居って、その両側に変なコスとメイクの人らが並んでフニャフニャしてるのは、わけも分からんとアバンギャルドォ!と感心してた。
 せやけど、あれはキリスト教の『最後の晩餐』をパロったものやと聞いてびっくりした。

 うちの家業的に言うと『阿弥陀来迎図』を茶化すようなもんで「そらアカンやろ!」という性格のもんや。

「国の名前を間違ってアナウンスしちゃうし、ほら、あのセーヌ川を馬に乗ってぇ……」

「ああ、ジャンヌダルクかFateのセイバーかっちゅう」

「あれは、オリンピックの旗を持ってなきゃ黒死病を運んでくる悪魔の姿」

「え、そうなんですか!?」

「うん、モノクロ的な演出だったし、フードで頭を隠してたでしょ。あれで大きな鎌とか持ってたら、そのものなんじゃないかなあ、ゴヤの黒い絵とか思い出す」

「は、はあ(^_^;)」

「トドメはマリーアントワネットの生首ね」

「え?」

「え、観てたんでしょ? 」

「アハハハハ(^_^;)」

「あそこさコンシエルジュリー って云って、リアルにマリー・アントワネットが幽閉されてた館だしね、ちょっとシャレにならないよ」

 ああ、たしかに見たけど、あそこは留美ちゃんといっしょにおばちゃんのパンの仕込手伝いながらやったから、なんやヘビメタがすごいなあて思ってた。坊主三人は喜んでたしぃ……。

「こんどのハローウィンじゃ真似するのが出てくるだろうねえ」

 あの晩、夢にマリーアントワネットが現われてダミアを連れて行った。

 そもそも、五年前子猫のダミアを拾った時にパリオリンピックの年に迎えに来ると夢の中で言うてたし……マリーアントワネットには分かってたんかも。

「せやけど、相野さん、よう知ってはりますねえ」

「アハハ、さくらがオムツしてたころから声優やってるからね」

 やっぱりこの業界を生き抜いてる人はちゃうと感心した。


 仕事を終えて家に帰ると、阿弥陀さんの前に新しい小さな骨壺。

 ウチのすぐ後に帰ってきた留美ちゃんといっしょに静かに手を合わせた。

 
 ☆・・主な登場人物・・☆

酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍二等軍曹
月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 
声優の人たち      花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎  
さくらの周辺の人たち  ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官)  相野千春(声優の先輩)
 

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せやさかい 番外・001 『パリオリンピックの朝』

2024-07-27 12:34:10 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
番外
001『パリオリンピックの朝』さくら   





「船乗り込みとは粋やなあ(^▢^)」


 おとつい入れたばっかりの入れ歯を宣伝するみたいに大口開けて感激するお祖父ちゃん。

 おっちゃんも急な仮通夜から戻って来て衣のまんま、ビール飲みながら中継を観てる。

 テイ兄ちゃんは、半パンにTシャツで『副住職』いう名札でも掛けてんと僧侶には見えへんナリとアホ面で、とうに空になったグラス持って画面にくぎ付け。

 おばちゃんはヒラリに納めるパンの仕込のために、キッチンから時おり顔を出してはリビングのテレビを観てる。

 留美ちゃんはウチと並んで床に座って画面に食いつき、うちらがさっきまで座ってたソファーではブタネコのダミアが大あくびしとおる。油断してると、ウチの膝の上に載りたがるねんけど、重たいし暑いし『メ!』を十回ぐらいカマしてどかすことに成功。

おっちゃん:「加藤さんもオリンピック楽しみにしてはったなあ……」

 加藤さんは、おっちゃんが仮通夜務めてきた檀家さん。夕べ亡くならはって、急きょおっちゃんが仮通夜から骨上げまでお世話することになった。

テイ兄ちゃん:「船乗り込みてなにぃ?」

留美ちゃん:「プフ(* ´艸`)」

 周回遅れの質問に留美ちゃんが笑いをこらえる。

お祖父ちゃん:「子どもの頃に連れてってやったやろが、松竹座とかで歌舞伎興行の前に、役者さんやらが船で道頓堀を上って来る景気づけのイベントや」

テイ兄ちゃん:「ああ、帰りに食い倒れでお子様ランチ食べた、あれ?」

おっちゃん:「しかし、オリンピックの規模でやるとメチャクチャドラマチックやなあ……」

 たしかに、船乗り込みの後、陽が沈みかけると、一騎の騎士がオリンピックの旗をマントみたいにしてセーヌ川を駆けてきて、CGかと思たら、ロボットみたいで、それがそのままエッフェル塔のてっぺんに掲げられる!

留美ちゃん:「え、あの騎士、人だよ女の人!」

テイ兄ちゃん:「え!?」

 女の人いうだけで目の色変える生臭坊主。

 確かに陸に上がるとほんまの馬に乗り換えて(設定は、馬のまま陸に上がったことになってるみたい)各国の旗を従えて橋を渡ってエッフェル塔へ向かう姿はオルレアンのジャンヌダルクか!? Fateのセイバーか!?


 今日は久々に如来寺の全員が集まって(詩ちゃんはヤマセンブルグやけど)パリオリンピックの開会式を観てるんや。


 ウチも留美ちゃんも学校よりは声優と俳優の仕事がメインの生活になってる。

 学校に行けるのは週に三日ほど。それでも現住所は堺の如来寺。ちょっときついけど、新幹線やら飛行機を使って大阪と東京を行き来する毎日。

 こないだは、新幹線が一日止まってしもて、これだけで特別版の一本ぐらいの内容があるくらい。とにかく忙しい。

 ウチは、もう決めてるし、留美ちゃんも密かに決心してる。

 卒業したら、まだしばらくは声優、俳優の仕事を続けようと。

 来年の春アニメ『鳴かぬなら 信長転生記』の話が決まった。ウチが信長、留美ちゃんがお市。
 留美ちゃんは本業は俳優やけど、声優の仕事もやってる。貪欲というよりは謙虚な子ぉなんで、基本的に仕事のえり好みはせえへん。

 それに、ウチと留美ちゃんは姉妹みたいなもんやし、学校も住まいもいっしょやし、これは充実した稽古環境やと大人たちが考えたんやと思うけどね。

 あ、そうそう、先輩の百武真鈴さんが武田信玄の役で支えてくれはります。

 高校卒業と同時に始まる放送。ウチらも人生の区切やと思ってがんばります。


 明け方近くまで開会式を観て、床についたら夢を見た。


 夢の中にマリーアントワネットが現われて、ウチに、こんなことう言う。

マリー・アントワネット:「どうも5年間ありがとう」

さくら:「え、なんですかぁ?」

マリー・アントワネット:「わたしの猫に素敵な名前を付けてくださって、5年も世話をしてくださって」

さくら;「え、えと……ダミアのことですか?」

マリー・アントワネット:「はい、パリオリンピックでは迎えに行くと、あの子にも約束しましたからね。ほんとうにありがとう」

 思い出した……子猫のダミアを拾った時、マリー・アントワネットの夢を見たんや(084『前の廊下で話声がする』)!

さくら:「ええ、ちょっと待ってください、マリー・アントワネットぉ! ダミアぁ!」


 朝起きてみると、ダミアはベッドの下の定位置で冷たくなってた……。


 ゆうべ、ウチの膝の上に来たがったのを邪険に拒んだことが悔やまれる。

 
 おっちゃんもテイ兄ちゃんも檀家周り。お祖父ちゃんがお葬式をやってくれることになる。

 ウチも留美ちゃんも東京で仕事、帰りは週明けの火曜日。

 この暑い季節、いつまでも置いとかれへん。

 せやさかい、お祖父ちゃんが全てを引き受けてくれる。ダミアは二代目で、先代のダミアもお祖父ちゃんが見送ったらしい。

「そんなに泣きな、ダミアはお浄土に帰ったんや」

「う、うん……」

「それにな、ダミアは仏さんがさくらのこと心配して送ってきはったお使いやねんで」

「え?」

「ダミア……逆さに読んだらアミダやろが」

「あ…………」

 テイ兄ちゃんが言うたらシバイてたと思う。せやけど、お祖父ちゃんが言うと、なんや説得力がある。名付け親はお祖父ちゃんやし。

「さくらも留美ちゃんも、もう心配ない。そう思て阿弥陀さんはダミアをお迎えに来はった」

「けど、夢に出て来たんはマリー・アントワネットやねんけど」

「そらぁ、パリオリンピックやし」

「…………」

「うん、せやさかい、なんにも心配せんと仕事しに行き」

「う、うん」

「ほんなら、手ぇ合わせとこか」

「う、うん」

 ナマンダブナマンダブ ナマンダブ……

 留美ちゃんと二人、本堂に安置されたダミアに手を合わせて仕事に行く。

 迎えのタクシーに乗ろうと思たら、通りの向こうに世界遺産のごりょうさん(仁徳天皇陵)の緑が目に眩しい。

 
 せやさかい、時どきはウチと留美ちゃんと如来寺のお便りをしようかと思います。


 ほんなら、とりあえず蝉しぐれの堺から、酒井さくらでした。
 

 

 ☆・・主な登場人物・・☆

酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍二等軍曹
月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 
声優の人たち      花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎  
さくらの周辺の人たち  ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官)
  




 

 

 
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乃木坂学院高校演劇部物語・106『エピロ-グ』

2020-01-24 06:02:51 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・106   



『エピロ-グ』

「おつかれさま」

 の声が六つした。
 
 そう、たった今ハルサイの新生乃木坂学院高校演劇部の『I WANT YOU』の幕が下りたのだ。
 わたしは初めて孤独を感じることができた。現実では味わったことが無いほどの孤独を。地上げ屋の三太が最後に言う。
「なになんだよ、なぜなんだよ、ここまでの粘りは……もう、もう、知らねえからな!」
 都ばあちゃんが最後まで、土地を売らなかったのは、人とのキズナを信じたから、信じたかったから。キズナがお金で取引されることを善しとしなかったから。そこには人が人であることの尊厳をなし崩しに失わせる抗(あらが)いがたいものへの孤独な戦いがあった。

 これを教えてくれたのは水島さん。
 消えていくことで、その孤独さと崇高さを教えてくれた。
 
 そこへの道を示してくれたのは上野百合へと変身をとげたマリ先生。
 マリ先生は、乃木坂学院高校演劇部が崇高な神殿であることを知っていた。だから責任をとった。一見投げ出したようにして、タヨリナ三人組に任せたんだ。
 そして、その血脈は……たとえて言うなら、あの談話室に人知れず掲げられていた校旗のようなもの。
 だから、わたしは自分を校旗のようなものに置き換え……あの孤高な孤独が表現できたんだ。

 さあ、バラシ! 

 バラす道具はなにもない。照明も地明かりのツケッパ。
 長年のクセで、舞台に集まったけど、何もすることがない。
「乃木坂さん、幕間交流お願いします」
 フェリペの司会の子がせっついている。
 そのとき、初めて気づいた。まるでカーテンコールのような拍手が湧き上がっていることに!

 緞帳の前に六人の部員が並んだ、言わずと知れた潤香先輩(学年はいっしょだけど)里沙、夏鈴、わたし、そして、新入の一年生が二人。

 この男女二人の新入部員が来たときはビックリした。
 男の子は水島クン、女の子は池島さんというのだ。
 むろん下の名前はちがう。ってか、水島さんは下の名前は分からずじまい。
 でも、たった二人の新入部員だけど気だてのいい子たちです。

 観客席の前はオナジミさんでいっぱい。
 はるかちゃんや上野百合さん。陸上自衛隊の人たちまで居たって言えば見当がつくと思います。あ、それから忠クンもコンクールのときとおなじような感動した顔で……後で手間かかりそう。
 そうそう、部室は追い出されておりません。三月三十一日に峰岸先輩が一日だけ部員になってくれましたから。

「それでは、乃木坂学院高校演劇部の上演について幕間交流を始めたいと……」
 思います。を言う前に、競り市のように手が上がった。
 最初は自衛隊の大空さん、続いて十人ほどが手を挙げている。
 もう、みんな誉め言葉ばっか。
――誉めて、誉めて、誉めちぎって、ちぎり倒してちょうだい!
「じゃ、最後お一人様にさせていただきます」
 司会の子に、指されて立ち上がったオジサン……どこかで見たことあるなあ?
 このオジサンだけが、けなしたのよね!
「……というところに、感情のフライングがありました。台詞はちゃんと中味を聞いてリアクション。芝居は演ずるのではなく、いかに受け止めるかです。仲まどかクン」
 このオジサンは、はるかちゃんのクラブの元コーチ。
 そんでもって、あつかましくも、無遠慮にも、無頓着にも、無神経にも、無分別にも、無鉄砲にも、不作法にも、不躾にも、不細工にも、この物語の作者でありました。

 この、クソオヤジ!!

 言い忘れるとこだった。例の宝くじ、潤香先輩が三等賞の百万円!
 で、わたし達は……四等賞の十万円!
 ウフフ、作者のクソオヤジは、わたし達のはハズレにするつもりだったらしい。
 でも物語も、このあたりにくると、作者の意図しないことも起こってしまう。
 わたしたちは、これで火事でオシャカになった照明器具を買った。
 めでたし、めでたし……え、忠クンとはどうなったかって?

 それは……二人だけの、ヒ、ミ、ツ。



  『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』 完
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乃木坂学院高校演劇部物語・105『仰げば尊し』

2020-01-23 05:47:25 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・105   



『仰げば尊し』


 話しは戻るけど、三月十日は乃木坂さんがいなかった。

 三月十日は東京大空襲の日。乃木坂さんの命日でもあるし、大事なあの人、マサカドさんと言おうか、三水偏の彼女と言おうか、その大切な人の命日でもあったんだもんね。
 乃木坂さん自身の平気な顔は――それには触れないでほしい――という意思表示だと思ってわたしたちも、聞かないことにした、やっぱ成長したでしょ。

 潤香先輩は、ロケの疲れで二日ほど寝込んでいたけど、梅の花が満開になったころから、時々稽古を覗きにきてくれるようになっていた。

 そして……それは、桜の蕾が膨らみ始め、新入生たちの教科書や制服やらの引き渡しの日に起こった。
 稽古場の同窓会館にいても、新入生たちの満開のさんざめきが聞こえてくる。
 その日は、理事長先生と潤香先輩が稽古場でいっしょになり、乃木坂さんは、バルコニー近くで、静かに、しかし厳しい目で稽古を見ていた。
 
 クライマックスのシーンで、それは起こった。
 
 都ばあちゃんが、地上げ屋の三太にも三人の子供たちにも見放され、一人お茶をすするうちに突然脚と腰に走る痛み。遠く聞こえる若き日のなつかしの歌。
 
 埴生の宿も わ~が宿 玉の装い羨まじ……♪
 
 都ばあちゃんの最後が迫る。登場人物がみんな……といっても都ばあちゃんを入れて三人だけど、「埴生の宿」の合唱になる。都ばあちゃんは最後の力をふりしぼって、最後の一節を唄う。
「……楽しとも……頼もしや……🎵」

 そこで、見えてしまった。乃木坂さんの体が透けてきているのを……。

「乃木坂さん!」
 おきてを破って叫んでしまった。一瞬乃木坂さんは「だめじゃないか」という顔になり、そして……気がついた。
 自分にその時がやってきたことを……。
「あ、あなたは……」
 潤香先輩にも見えてしまったみたい。
「水島君……」
 理事長先生は、驚きもせずに、静かに、そして淋しそうに乃木坂さんの本名を呼んだ。
「高山先生……先生は、ご存じだったんですか」
「三月の頭ごろからね……この歳になるととぼけることだけは上手くなるよ。本当は、イキイキとした君の姿を見られて、とても嬉しかったんだ」
「……僕の役割は、もう終わっていたんですよ……それが、この子達と居ることが楽しくて、嬉しくて……つい長居をしすぎたようです」
「わたしを助けてくれたの……あなた……あなた、なんでしょ?」
 潤香先輩が、ささやくように言った。
「君は、こんなことで死んじゃいけない人だもの……僕は、昔、助けたくても助けられなかった人がいる。自分の命と引き替えにすることさえ出来なかった……みんな、最後は、こう思ったんだ。自分は死んでも構わない。その代わり、他の誰かを生かして欲しい……親を、子を、孫を、妻を、夫を、教え子を、愛しい人を一人だけでも……みんな、そう思って、身も心まで焼き尽くされて死んでいったんだ」
 わたしは、カバンから、あの写真を取りだした。
「この人だったんでしょ。乃木坂さん……水島さんが守りたかったのは、苗字の上の字が三水偏の女学生。ねえ水島さん」
「……そうだよ。あの時は、他の仲間に申し訳なくて言えなかった。今、ここに居る仲間は喜んで許してくれる。その子は、十二高女の池島潤子さん。潤子の潤は……」
「わたしと同じ……?」
「そう……不思議な縁だね」
「潤いを人に与える良い名前だよ」
「水島さん。下のお名前も教えてください。わたし一生、あなたのことを忘れません」
「それは、勘弁してくれたまえ。僕たちは『戦没者の霊』で一括りにされているんだ。こうやって、君達と話が出来ることだけでも、とても贅沢で恵まれたことなんだよ。苗字を知ってもらったことだけで十分過ぎるんだよ。高山先生、こんな何十年も前の生徒の苗字、覚えていただいていて有難うございました」
「もう歳なんで下の名前は……忘れてしまった。でもね、僕は時々思うんだよ……この歳まで生かされてきたのは、君達の人生を頂いたからじゃないかと」
「先生……」
「だとしたら、そうだとしたら、僕はそれに相応しい……相応しい仕事ができたんだろうか」
 水島さんは、仲間の承諾を得るようにまわりを見渡し、ニッコリとした笑顔で大きくうなづいた。
「ありがとう、水島君。ありがとう、みなさん」
 空気が暖かくなってきたような気がした。水島さんの体がいっそう透けてきた。

「それじゃ……」

 と、水島さんが言いかけたとき、バルコニーの外の桜がいっせいに満開になった。最初、水島さんに会ったときの何倍も、花吹雪は、壁やガラスも素通しで談話室に入ってくる。
 気づくと、壁に紅白の幕。理事長先生の後ろには金屏風、日の丸と校旗も下がっている。
「これは……」
 と言ったのは、水島さん。わたしは思った、ここにいる大勢の水島さんの仲間がはなむけにやった演出だ。
「ありがとう、みんな……先生、最後に一つだけお願いがあります」
「なんだい、僕に出来ることなら……」
「『仰げば尊し』を唄わせてください。僕は唄えずに死んでしまいましたから、最後にこれを……」
「では、僕たちは『蛍の光』で送らせてくれたまえ」
「僕には、もう、そこまで時間が残っていません」
 水島さんの手足は、消え始めていた。
「じゃ、じゃあ、みんなで唄おう!」
 理事長先生は、ピアノに向かった。  

――仰げば尊し我が師の恩 教えの庭にも早幾年(はやいくとせ) 思えば いと疾し この年月 今こそ別れめ……いざ さらば――

「さらば」のところでは、もう水島さんの声は聞こえなかった。そして、桜も金屏風も紅白幕も、日の丸も消えてしまった。

 でも、校旗だけがくすんで残っていた。

 いえ……最初からあったんだけど、だれも気がつかなかった。何ヶ月もここを使っていながら。
 そして……悔しかった。わたしたちだれも『仰げば尊し』を完全には唄えなかった。ちゃんと水島さんを送ってあげられなかった……わたし達は、この歌を教えてもらったことがない。
 でも、歌の心は分かった。
 それを忘れるところまでわたし達のDNAは壊れてはいなかった。その心が少しでも水島さんに届いていればと願った。
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乃木坂学院高校演劇部物語・104『感情の記憶』

2020-01-22 05:56:38 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・104   



『感情の記憶』


 柚木先生が、慌てて稽古場にやってきた。

「たいへんよ、ハルサイの公演が早くなっちゃった!」
「「「「えーー、どういうことですか!?」」」」」
 四人は声をそろえて言った(むろん乃木坂さんの声は、柚木先生には聞こえない)
「会場のフェリペがね、設備の故障で五月には工事に入るんで一ヶ月前倒しだって!」
「ええ、そんなあ……」
「間に合うかなあ……?」
「……なんとかしょう!」
 乃木坂さんが言った。
「なんとかなる?」
「だれと、しゃべってんの?」
 うかつに乃木坂さんに言った言葉を先生に聞きとがめられた。
「あ、二人に言ったんです。里沙と夏鈴に。で、間をとって二人の真ん中に……はい」

 その日から稽古は百二十パーセントの力が入った。

 乃木坂さんの演出にも熱がこもってきた。
「君たちの演技は形にはなっているけど、真情がない。地上げの仕事への熱意が偽物だ。都婆ちゃんの子ども三人は、狡猾だけど、そうなってしまった人生の背景が感じられない。悪役は、ただ凄めばいいというものじゃないんだ。それに都婆ちゃんの孤独感というのはそんなものじゃない。他に迎合せず、孤高のうちにも孤独を貫き通す覚悟、そして、その覚悟をも超えてやってくる真の孤独の凄まじさ、それが出なくっちゃ!」
「はい……」
 乃木坂さんの指摘は的確だけどキビシイ。だてに何十年も幽霊やっていない。
 三人はうなだれる。
「君達の人生は、まだ浅い。理解しろと言う方が無理なのかもしれない」
「だって、無理だよ。分かんないものは、分かんないもの」
 夏鈴が正直に弱音を吐く。
「馬鹿、そんなことを言っていたら、殺される演技や殺す演技は誰も出来ないことになるじゃないか!」
「そう、それは……そうなんだけどね」
「……ごめん、つい感情的になってしまった。もっと分かり易く言わなくっちゃね」
 
 それから乃木坂さんは根気強く、かみ砕いて教えてくれた。
 
 たとえば、寂しさというのは、目の下の上顎洞という骨の空間から、暖かい液体が口、喉、胸、腹、脚を伝って地面に吸い込まれるイメージを持つこと。老人の腰は曲がるんじゃなくて、落ちる(後ろに傾く)ものなんだということ。で、そのバランスをとるために上半身が前傾し、膝が曲がる。そして、そのいくつかは、はるかちゃんがビデオチャットで教えてくれたことと同じだった。

 分からないことがもどかしかった。孤独を淋しさと置き換えてみた。
 ひいじいちゃんとのお別れ。これはガキンチョ過ぎて、分からない。
 中学の卒業……卒業してからもたびたび行ってたので、このイメージも希薄。
 忠クンとの空白の一年。いつでも、その気になれば会えるという、開き直ったお気楽さがあった。
 はるかちゃんの突然の引っ越し……これは心の底に残っているけど、去年のクリスマスで、再会。この傷は、完全に治ってしまった。
 
 感情の記憶は、その時の物理的な記憶を残しておかないともたないらしい。何を見て何を触って、なにが聞こえたか、その他モロモロ。
 マリ先生が学校を辞めて、乃木坂の演劇部がつぶれたのは記憶に新しいけど、これは、演劇部再建のバネになってしまって、思い出すと活力さえ湧いてくる。
 人間の感情って複雑だってことが分かる程度には成長しました……はい。
 潤香先輩……これも奇跡の復活で、痛みは遠くなってしまっている。

 われながら、痛いことはすぐに忘れるお気楽人間だ。
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乃木坂学院高校演劇部物語・103『素顔のキャストとスタッフ』

2020-01-21 05:57:57 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・103   



『素顔のキャストとスタッフ』

 
 
「忠クンさ、自衛隊の体験入隊で、なんか変わった?」
「変わったってか……分かったよな」
「なにが……?」
「それは……」
「自分は、まだまだダメだ。でも、自分が希望の持てる場所はここだ……とか?」
「先回りすんなよ、言う言葉が無くなっちまうじゃないか……」

 ゆりかもめの一群が川面をなでるように飛んでいった、忠クンはそれを目で追う。ゆりかもめは、少し上流までいくと、さっと集団で舞い上がり。それにつれて忠クンの顔は上を向き、遠く彼方を見つめる目……サマになってる。
 そんな彼を、まぶしそうに見るわたし。ますますサマになる。
 すかさずレフ板の位置が変わり、カメラが切り替わる。

 ちょっと説明。

 これは、ちゃんとしたテレビの撮影なんだ。『春の足音』のね……って、別にわたしが主役になったわけじゃない。
 プロディユーサーの白羽さんのアイデアで、毎回番組の最後に『素顔のキャストとスタッフ』というコーナーがあって、二分間、毎回一人ずつ紹介していくわけ。
 やり方は基本その人の自由。この荒川の下町が舞台だから、町の紹介をしてもいいし、他のキャストやスタッフさんとのト-クもOK。順番はジャンケンで決める。そのジャンケン風景も撮って流すんだから、この業界やることにムダはありません。
 
 で、わたしが大久保流ジャンケン術で勝利し、その栄えある第一回に選ばれた。
 
 むろん、ただのエキストラなんで、あらかじめ、はるかちゃんが紹介してくれて、わたしが映っている何秒間かが流れて、このシーンになるのね。
 わたしは、無理を言って忠クンを引っぱり出した。
 忠クンの体験入隊は、忠クンの中ではまだ未整理になっている。わたしへの気持ちもね。だから、こうやをって引っぱり出してやれば、いやでも考えるだろうって、わたしの高等戦術。いちおうわたしの彼だから、しっかりしてもらいたいわけ。
 え……「いちおう」……それはね、乙女心よ乙女心。最終章まできて、のらりくらりしてるカレを持った崖っぷちのオトメゴコロ!!

 分かんない人は、第一章から読み直して。序章には忠クン出てこないから。
 でも、わたし的には序章から読んでほしいかな。
 監督も、高校生の自衛隊の体験入隊がおもしろいらしく、A駐屯地まで行って取材もしてきた。教官ドノをはじめみなさん大張り切りだったみたいだけど、流れるのは、ほんの何十秒。それも大空さんがほとんど。テレビのクルーも絵になるものは心得ていらっしゃる。
 で、ゆりかもめを見つめて、なんとかサマになった忠クンは、こう締めくくった。
「大変なことを、自然にやってのける力……そういう心になれるまで……その、軽はずみな気持ちだけでフライングしちゃいけないんだなって、そう思った」
「ほんと?」
「うん。前さえ向いていたら……今はそれでいい」
「今度、火事になったら、また助けてくれる?」
「それは、もう勘弁してくれよ」
「それって、もう助けないってこと?」
「助けるよ。目の前で、それが起こったら……そういうことも含めて、まず目の前にあることを一つずつやっていこうって。あのゆりかもめだって、最初から、あんなに自由に飛べるわけじゃないだろう」
「……だよね」
「卵からかえって、餌をもらい、羽の筋肉が発育し、親を見ながら飛ぶことを覚えていくんだ」
「そうね……そうだよね。今の忠クン、かっこいいよ」
「ああ、キザったらしい。二度と言わないからな!」  
 しきりに頭をかく忠クン。そして、程よい距離で、まぶしく、そして小さく拍手するわたしをロングにし、荒川の全景に溶け込ませて、お、し、ま、い。
 ほんとのとこ、まだまだ食い足りない。でも、忠クンとしては進歩。番宣でもあるし、「はいオーケー」の声もかかっちゃうし。
「ほんと、かっこよかったっすか!?」と、ヤツは目尻下げちゃうし……。

 オトコって、ほんとまどろっこしい! 
 
 ゆりかもめに気持ち乗っけて、それで「キザったらっしい」なんて、安物の青春ドラマ。めちゃくちゃショ-モナイって思わない!?
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乃木坂学院高校演劇部物語・102『変なものが写ってます!』

2020-01-20 05:51:14 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・102   




『変なものが写ってます!』


 それは、ラストシーンの撮影が終わった直後におこった。

 監督さんがOKを出したあと、ディレクターとおぼしき(あとでNOZOMIプロの白羽さんだって分かる)人が、ADさんに軽くうなづく。
 すると、ロケバスの上から花火があがって、カメラ載っけたクレーンから垂れ幕!
 
――『春の足音』ロケ開始! 主演坂東はるか!――
 
「え、ええ……ちょっと、これってCMのロケじゃないんですか!?」
 驚きと、喜びのあまり、はるかちゃんはその場に泣き崩れてしまった。
「おどかしちゃって申し訳ない。むろんCMのロケだよ。でもカメラテストも兼ねていたんだ。僕はせっかちでね、早くはるかちゃんのことを出したくって、スポンサーの了解得て、CMそのものがドラマの冒頭になるようにしてもらったんだ。監督以下、スポンサーの方も文句なし、で、こういう次第。ほんと、おどかしてごめんね」
 白羽さんの、この言葉の間に高橋さんが、優しく抱き起こしていた。さすが名優、おいしいとこはご存じでありました。
「月に三回ほど東京に通ってもらわなきゃならないけど、学校を休むようなスケジュ-ルはたてないからね。それに相手役は堀西くんだ、きちんとサポートしてくれるよ」
「わたしも、この手で、この世界に入ったの。大丈夫よ。わたしも、きちんとプロになったのは高校出てからだったんだから」
 と、堀西さんから花束。うまいもんです、この業界は……と、思ったら、ほんとうに大した気配り。とてもこの物語には書ききれないけど。

 で、まだ、サプライズがある。

「分かりました、ありがとうございました。わたしみたいなハンチクな者を、そこまでかっていただいて。あの……」
「なんですか?」
 このプロデューサーさんは、とことん優しい人なのだ。
「周り中偉い人だらけで、わたし見かけよりずっと気が小さいんです。人生で一等賞なんかとったことなんかありませんし。よかったら、交代でもいいですから、そこの仲間と先輩に、ロケのときなんか付いててもらっちゃいけませんか……?」
「いいよ……そうだ、そうだよ。ほんとうの仲間なんだからクラスメートの役で出てもらおう。きみたち、かまわないかな?」
「え、わたしたちが……!?」

 というわけで、その場でカメラテスト。
 
 笑ったり、振り返ったり、反っくり返ったり……はなかったけど。歩いたり、走って振り返ったり。最後は音声さんが持っていたBKB47の音源で盛り上がったり。上野百合さんが――あんたたち、やりすぎ!――って顔してたので、BKB47は一曲の一番だけで終わりました。

「監督、変なものが写ってます!」

 編集のスタッフさんが叫んだ。みんなが小さなモニターに集中した。
 それは、わたしたちがBKB47をやっているところに写りこんでいた。
「兵隊ですかね……」
「兵隊に黒い服はないよ……これは、学生だな……たぶん旧制中学だ」
 と、衣装さん。
「この顔色は、メイクじゃ出ませんよ」
 と、メイクさん。
「今年も、そろそろ大空襲の日が近くなってきたからなあ……」
 と、白羽ディレクター。
「これ、夏の怪奇特集に使えるなあ」
 と、監督。
 わたしたちはカメラの反対方向を向いてゴメンナサイをしている乃木坂さんを睨みつけておりました。
「どうかした?」
 潤香先輩と、堀西さんが同時に聞くので、ごまかすのにアセアセの三人でした。
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乃木坂学院高校演劇部物語・101『本番はこんな具合』

2020-01-19 05:44:56 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・101   

 

『本番はこんな具合』


 ロケのだんどりは、こんなだった。

 クシャミを合図のようにして、役者の人たちが、笑いながらロケバスから出てきた。完全なティーンに化けたマリ……上野百合さんは、クシャミまでは化けきれず、そのギャップに大笑い。特に事情を知っている高橋さんと、はるかちゃんは笑い死に寸前。
 監督さんから、いろいろと指示が出されている様子。そして何度かのカメラテストとリハーサルに一時間ほどかけて本番。
 
 女の子はみんな女子高の制服。高橋さんは、いかにもありげな先生のかっこうで、自転車に乗って土手道をやってくる。土手の下では、堀西真希さんと、われらが上野百合さんが、三年生の設定で、ポテチをかじりながら、二年間の高校生活を嘆いている。
 つまり設定は四月で、新学年の始まり。あちこちに造花のスミレやレンゲが何百本。美術さんが忙しそう。お気楽に見てるテレビだけど、頭が下がります。
 そこを本を読みながら、はるかちゃんが土手道を歩いてくる。前から自転車でやってきた高橋さんの先生が、よけそこなって、自転車ごと土手を転げ落ちてしまう(もちろん、落ちるのは人形の吹き替え)。
「大丈夫ですか!?」
 と、大阪弁で、はるかちゃんが駆け寄る。
「アイテテ……」
 と、うなる先生。
「ごめんなさい、ついボンヤリしてしもて」
「きみは……転校生の春野……お?」
 先生は、春野さんのバッグからはみ出しているポテチに気づく。同時に春野さんは、先生の自転車の前かごから飛び出したポテチに気づく。見交わす目と目、吹き出す二人。そして、その親密さに気づいて、草むらから立ち上がる堀西真希と上野百合。その二人の手にも同じポテチが……。

 で、二回目のテストのとき、監督さんがわたしたちに目をつけた……。

 わたしたちは同じ制服を着て、はるかちゃんの後ろを歩いてくる、文字通り通行人。で、先生が転げ落ちたあとは、土手から心配げに見ている背景の女学生。
むろん顔なんかロングなんで分からないんだけど、思わぬテレビ初出演! でも、病み上がりとはいえ、やっぱ、潤香先輩って映える。また、カメラ回っている間平然としている根性もやっぱ、潤香先輩ではありました。
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乃木坂学院高校演劇部物語・100『その日がやってきた!』

2020-01-18 06:18:06 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・100   

 

『その日がやってきた!』


 いよいよロケの日がやってきた。

 ロケ先の荒川の土手に朝の九時ごろから、タヨリナ三人組で行ったら、もうロケバスが来ていて、ADさんやスタッフの人たちが忙しそうに動き回っていた。
 梅の蕾も、まだ硬い二月の末日だけれど、まるで春の体験版のような暖かさだった。
 はるかちゃんは、まだロケバスの中なんだろう、姿が見えない。
 そのかわりロケバスや、撮影機材が珍しいのか、乃木坂さんがウロウロ。わたしたちに気づいても、軽く手を振るだけ。
 やがて、一段下の土手道を黒塗りのセダンが登ってきた。
「あ、あの運転手さん、西田さんだよ!」
 夏鈴が手を振ると『オッス』って感じで、西田さんが手を振った。
 手前の土手道で車が停まると、運転席から西田さん。助手席から若い男の人が出てきて、それぞれ後部座席のドアを開けた。
 左のドアからは、高橋誠司……さん。
 右のドアからは、キャピキャピの女の子が出てきて、目ざとくわたし達を見つけて駆け寄ってきた。
「初めまして、まどかに夏鈴に里沙!」
「あ……ども」
 だれだろ……と、考えるヒマもなく、その子はロケバスの方へ。途中で気づいたように振り返って、戻ってきて挨拶した。
「NOZOMIプロの上野百合で~す。よろしくね!」
「上野百合って……?」
「まどかが言ってた新人さん……だよね?」
 里沙が首をひねった。男の人は、荷物を抱えて追いかけていった。
「おはよう、乃木坂の諸君。あの子の正体は分かっても内緒にね」
 高橋さんがすれ違いに、そう言って行った。
「……あ、マリ先生!?」
「うそ……!?」
「もう芸名変えたんだ……」
 体験入隊の時よりもさらに化けっぷりには磨きがかかっていた。赤いミッキーのチュニックにチェックのカボチャパンツにムートンのブーツ。髪はかる-くフェミニンボブ……で、あのキャピキャピ。どうかすると、わたし達より年下に見える。

 そうして、驚くことがもう一つ。

「あ、潤香先輩!」
 潤香先輩が、紀香さんに手をとられながらやってきた。
「マリ先生から連絡もらって」
「上野百合さんだよ」
 さすがに立っているのは辛そうで、折りたたみの椅子が出された。
「ありがとう和子さん」
 それは、西田さんのお孫さんだった。
「お互いの、再出発の記念にしようって。お嬢……上野百合さんの発案なんです」
「わたし、あなたたちに発表したいことがあるの。お姉ちゃん、ちょっと手をかして」
「大丈夫、潤香?」
「うん。この宣言は立ってやっときたいの」
 潤香先輩の真剣さに、わたし達は思わず寄り添ってしまった。
「わたし、この四月から、もう一度二年生をやりなおす」
「それって……」
「出席日数が足りなくて……つまり落第」
「学校は、補講をやって、進級させてやろうって言ってくださるんだけどね、潤香ったら……」
「そんなお情けにすがんのは、趣味じゃないの」
「一学期の欠席がなければ、いけたんだけどね……」
「怒るよ、お姉ちゃん。これは、全部わたしがしでかしたことなんだからね」
「先輩……」
 わたしも胸がつまってきた。
「ほらほら、まどかまで。わたしはラッキーだったと思ってんのよ。だってさ、あんたたちと、もう二年いっしょにクラブができるじゃない。ね、それもこれも、まどかや先生のお陰……なんだよ」

 ハーーックション!

 ロケバスの方で、聞き慣れた大きなクシャミがした。
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乃木坂学院高校演劇部物語・99『よ! 乃木坂屋! 日本一!』

2020-01-17 05:56:51 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・99   



『よ! 乃木坂屋! 日本一!』


 
 稽古は順調に進んでいった。なんたって、乃木坂さんが堂々と手伝ってくれる。

 それまでは、里沙や夏鈴の目を気にしたり、古文みたいなメモを読解しなくちゃならなくって、とっても不便だったんだもん。
 平台は一日一個作ることに決めた。なぜかというと、ちょうど最後の一個を作った明くる日が、はるかちゃんのロケになる。

 そう、みんなで見に行くことに決めたんだ!

 乃木坂さんは、浅草の軽演劇や歌舞伎なんかにくわしくって、型をつけてくれる。幕開きの口上のところなんか、大向こうから、かけ声をかけてもらうことになった。
 最初は顧問の柚木先生に頼んだだけど、乃木坂さんがイマイチな顔をしている。
 そして、なんと、なんと、理事長先生の耳におよんで、理事長先生がやってくださることになった!
 
 よ、乃木坂屋! 日本一!
 
 二日に一度くらいのわりで来てくださって、声をかけていかれる。
 
「高山先生もあいかわらずだなあ」
 理事長先生が機嫌よく出て行ったドアに向かって、乃木坂さんがつぶやいた。
「乃木坂さん、理事長先生知ってんの?」
「うん、国史の先生。敗戦の前の年に出征されたんだ」
「あの、乃木坂さん。コクシとシュッセイってなんのこと?」
 夏鈴がソボクな質問をする。
「えと、国史は日本史、出征は兵隊に行くこと。高山先生は沖縄戦の生き残りなんだよ」
「へえ、戦争にいってたんだ、理事長先生……」
「沖縄じゃ、ほとんどの兵隊が戦死した。で、より安全な銃後にいた僕たちも死んだ。その中で生き延びてきたことを重荷に感じていらっしゃるんだ」
「ジュウゴって……?」
「銃の後ろって書くんだ。それくらい辞書ひきなよ。さ、一本通すぞ!」
「……なるほど」
 スマホで「銃後」を検索して、納得してから稽古にかかるわたし達に、苦笑いの乃木坂さんでした。

 この『I WANT YOU』というお芝居は、歌舞伎、狂言、新派、新劇、今時のコメディー、それに、はやりの女性ユニットのポップな歌と踊りまで入っている。
 
 最初は楽しそうだと思って、次には、読むのと演るのは大違いということに気づいたころに、自衛隊の体験入隊。がんばろうとリセットができて乃木坂さんの姿が見えるようになって、乃木坂さんの指導よろしく、平台が十枚できたころにはようやくカタチにはなってきた。
 がんばろうとすると、ただ台詞を張って声が大きくなるだけで、芝居そのものは硬くつまらないものになっていく。
 乃木坂さんは、型になるところは見本までやってくれて、らしく見えるようにはしてくれた。
 そこから、あとは台詞を忘れて自然に反応できるようにしろって言うんだ。
 はるかちゃんも、チャットで同じようなことを言う。芝居の中で、見るもの聞くものを探し、それに集中しなさいって。でも、それをやると芝居のテンションが下がってくる。
「どうすりゃいいのよ!?」
 と、ヤケにになりかけたころに平台は、十六枚全部できてしまった。
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乃木坂学院高校演劇部物語・98『ビデオチャット』 

2020-01-16 06:12:03 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
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『ビデオチャット』


 
 その夜、はるかちゃんとビデオチャット。

 主に自衛隊の体験入隊の話で、ウフフとアハハだったんだけど、話が一区切りついたとこで、はるかちゃんが切り出した。
「月末の土日に例のCMのロケに行くの。荒川でよく紙ヒコーキ飛ばしてたあたりよ。時間があったら、家の方にも寄るんだけど、こういうのって団体行動だから、よかったら現場に来てよ」
「行く行く。お仲間みんな連れてっちゃうから。で、どんな役者さんが来るのよ?」
「堀西真希さんとか……」
「え、いま売り出し中の!」
「うん。彼女がメイン。で、高橋誠司……」
「ゲ、あのおじさん!?」
「知ってんの?」
 わたしは(思い出したくもない)コンクールのいきさつを説明した。はるかちゃんは大笑い。
「アハハハ……それから、上野百合……この人も新人さんみたい。同年配だからちょっと安心」
 はるかちゃんたら、すっかりリラックスしてポテチを食べ出した。
「あ、はるかちゃんズル~イ」
「スポンサーさんから山ほどもらっちゃったから。う~ん、うまいなあ!」
「こういうこともあるかなって……」
 わたしは、机の上のポテチに手を伸ばした。その拍子に机の上のアレコレを落としてしまった。
「相変わらず、整理整頓できないヒトなんだね、まどかちゃん」
「はるかちゃんに言われたかないわよ……」
 わたしは、ポテチをたぐり寄せ、あとのアレコレを足でベッドの方へけ飛ばそうとして、あれが足先に当たったのに気づいた。
「どうした、ゴキブリでも出た?」
「ううん、薮先生から預かった写真け飛ばしそうになっちゃって」
「ハハ、早手回しのお見合い写真ってか。困ったもんだわね、まどかちゃんには大久保クンが……ね」
「そんなんじゃないよ……」
 わたしは、写真のいきさつを話した。自然にというか、当然乃木坂さんの話しにもなっていく。はるかちゃんのことだから笑ったりはしないだろうけど信じてもらえるか少し心配だった。
「そういうことって、あるのよね……」
 案外、わがことのようにシンミリしてくれた。
「で、これが、その写真なんだけどね……」
 カメラの前に写真を広げて見せた。
「……あ、マサカドさん!?」
「え……はるかちゃん知ってんの?」

 はるかちゃんは、迷っていた……そして、ためらいながらマサカドさんについて涙を堪えながら話してくれた。
 長い話だったけど時間なんか気にならなかった。わたしの中で、乃木坂さんと写真の三水偏の女学生、そしてマサカドさんのことが一つになった。
 
 くわしく知りたい人は、はるかちゃんの『はるか 乃木坂学院高校演劇部物語』を読むとよく分かります。
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乃木坂学院高校演劇部物語・97『発覚!』

2020-01-15 06:14:55 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・97   



『発覚!』

 
「……じつはね、僕は幽霊なんだ」

 乃木坂さんが、もったいつけて言っても二人はキョトンとしている。
「いや……だからね」
 乃木坂さんが、壁をすり抜けても。
「オオ~!」
 乃木坂さんの、奥の手で、周りを一瞬で春にしちゃっても。
「ウワア~!」
 いちおう驚くんだけども、幽霊さんに対する礼を欠いているというか、完全にミーハー。なんだか、マジックショーのノリになってしまった。
「喜んでくれるのは嬉しいけども、なんかね……」
 乃木坂さんは、頭をかいた。
「カッワイ~!」
 と、夏鈴。
「これで稽古中の、まどかの不信な言動のわけが分かった」
 と、大納得の里沙。
「そうだ、トラックから材木降ろさなきゃ。乃木坂さん手伝って!」
 わたしまで、あたりまえのように言っちゃった。

 材木運びじゃ、乃木坂さんの取り合いになった。だって乃木坂さんが見えるのは、わたしたち三人だけ。材木屋のオニイチャンも手伝ってくれるかなあと期待したんだけど、次の配達があるんで荷下ろしだけ。
 三人で運ぶと何往復もしなくちゃならない。かといって、乃木坂さんが一人で運んじゃ、材木の空中浮遊になって大騒ぎになっちゃう。 で、乃木坂さんは介添え役。で、乃木坂さんに介添えしてもらうとチョーラクチン。で、取り合いになるわけ。

 運び終わると、制服のあちこちに木くず。
「やだあ、冬休みにクリ-ニングしたとこなのに」
「じゃ、これはサービス」
 乃木坂さんが指を鳴らすと、ハラハラと木くずが落ちていく。
「わあー、きれいになった。コーヒーの染みまで落ちてる!」
 わたしは素直に喜んだんだけど、夏鈴がセコイことを言う。
「ねえ、こんなことができるんだったら、平台とかもチョイチョイと……」
「ばか、それじゃ訓練にならないでしょうが、訓練に」
「自衛隊でも習ったでしょうが、敢闘精神よ、敢闘!」
 三バカのやりとりをにこやかに聞いていた乃木坂さんは、暖かく言った。
「普通には手伝うよ。木を切ったり、釘を打ったり」
 
 それから、タヨリナ三人組と幽霊さんとの共同作業が始まった。
 
 ジャージに着替えるときに、夏鈴が聞いた。
「ひょっとして、着替えるとこなんか見てなかったでしょうね?」
「ないない、最初のは事故だったけど」
「最初のって、なによ?」
 やっぱ、花柄は見られていたんだ……もういいけどね。

 男手が入ると、作業効率が違う。ためしに三六(さぶろく)の平台一枚だけ作るつもりだったけど、一時間で三枚もできた。
 その作業の間、わたし達はしゃべりっぱなし。女を三つくっつけたら姦しい(かしましい)だもんね。って、これは乃木坂さんの感想。さすが旧制中学。
 でも、こうやってしゃべっていると、里沙や夏鈴に乃木坂さんが見えるようになったのが、理屈抜きで分かってくる。わたし達も、乃木坂さんも同世代だし、同じ演劇部。それに自衛隊の体験入隊も新学期に入ってからの稽古もずっといっしょだった。同じ空気を吸い……これひゆ比喩だからね。乃木坂さんは空気は吸いません。解説がつまらない? スイマセン。で、同じ感動を感じて、互いに近しくなってきたからなのよね。
 
 でも、これが思いもかけない結果になるとは……だれも想像できませんでした。
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