大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

タキさんの押しつけ映画評・『人生の特等席』

2012-11-24 08:30:42 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『人生の特等席』
   

これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので、本人の了解を得て転載したものです


 ワウ!! 後の予定がなければ このまま飲みにいきたいぜい!

 イーストウッドの頑固爺に乾杯! いやいや、82歳にゃ見えまへん。
 兎に角、脚本が素晴らしい、エイミー・アダムス最高! ジャスティン・ティンバーレイク さすが!
 エイミー・アダムスは「魔法にかけられて」なんてなクソ(失礼!)映画が初見だったので すっかり実力を見誤っていた。
 しかし、考えてみたら「魔法~」なんてな作品がまがりながらも一応見られる映画に成っていたのはエイミーの力だったのかも… ストーリーは多少先読みできたり、ご都合主義がみえるが、言うなりゃ これがハリウッド式ハッピーエンドの基本形、これだけ綺麗にはまれば 少々の事は無視してO.K.
 
 監督はロバート・ロレンツ、イーストウッド作品のプロデュースをしてきて今作が初監督、イーストウッドが監督の方が良かったとの評価もあるが賛成しかねる。彼の仕事は見事だ。 妻の墓の前でイーストウッドのだみ声で歌う「YOU ARE MY SUNSHAIN」まさかこの歌に泣かされようとは、「あなたへ」で健さんと大滝秀次が短いセリフのやり取りだけで人生を垣間見せたのと同じく「燻し銀」の演技です。 父と娘の間に有ったわだかまりが徐々に溶けて行く様も美しい。カタルシスが計算されていると言う向きもあるだろうが、それに付き合うのもハリウッド作品の見方ってもんであります。楽しみましょう。


☆滝川浩一
 1953年生まれ、大阪府立山本高校、龍谷大学卒。両親のたっての希望で、イヤイヤながら10年あまりサラリーマンをやるが、その舌先三寸の口と、良く回る頭(実際回転するわけではない)押し出しが強くデカイ顔(AKBのトモチンの倍はある)で、あやうく中間管理職になりかけ退社。 以後子どもの頃から身に付いた勝負師の勘と、料理の腕、映画演劇への造詣の深さから、志忠屋というレストランを経営しながら映画評論を続けている。辛口ではあるが、的確な評論には定評がある。現在門土社の『モンド通信』などに連載を持つ。唯一の欠点は、大橋作品に点が辛いこと。面当てに『志忠屋繁盛記』を不定期連載し、本人の姿だけは、ありのままに描写するも、カエルの面にナントカである。


『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』    

 青雲書房より発売中。

お申込は、最寄書店・アマゾン・楽天などへ。現在ネット書店は在庫切れ、在庫僅少で、下記の出版社に直接ご連絡いただくのが、一番早いようです。

青雲書房直接お申し込みは、定価本体1200円+税=1260円。送料無料。
送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。

お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。

青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351
 
 この物語は、顧問の退職により、大所帯の大規模伝統演劇部が、小規模演劇部として再生していくまでの半年を、ライトノベルの形式で書いたものです。演劇部のマネジメントの基本はなにかと言うことを中心に、書いてあります。姉妹作の『はるか 真田山学院高校演劇部物語』と合わせて読んでいただければ、高校演劇の基礎連など技術的な問題から、マネジメントの様々な状況における在り方がわかります。むろん学園青春のラノベとして、演劇部に関心のない方でもおもしろく読めるようになっています。
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小悪魔タキさんの押しつけ読書感想『アルゴ』読了

2012-11-20 07:30:45 | 読書感想
タキさんの押しつけ読書感想
『アルゴ』読了


これは、我が悪友の映画評論家滝川浩一が、身内に流している読書感想なのですが、もったいないので本人の了解を得て転載したものです。



 典型的な直訳悪文でんなぁ。読むのに時間が掛かってしゃあない。
 話は、1979年に起こった テヘランのアメリカ大使館占拠事件で、当時 運良く脱出してカナダ大使公邸に匿われていた6人を 架空のSF映画をでっち上げ、脱出させるってぇお話し。CIAの公式作戦だったが、1986年まで機密とされ、その後も 各方面への影響に鑑み、当事者の著述は無かったようだ。

 映画台本はインタビューをもとに起こされたようで、本作は映画公開に合わせて書かれたようです。だから、この本が原作って訳じゃない。映画と本作を単純比較すると、脚本のほうが断然面白い。ただ、その筋(ってどの筋?)に聞いた所によると、この本に書かれてはいないが、映画の中のエピソードにはホントに有った出来事が描かれているとか……それがどれなのかまでは解らんのですが……まぁ、実際に有った情報戦だけに どこまで行っても「これが真実だ」ってのは解らんのでしょうねぇ。
 私の聞いている話では、みんなが空港に向かっているその最中に カーター大統領が諫言されて作戦中止となり、あわやの所でチケットがキャンセルされそうに成ったのがそれだってんですが、ちょっと確認のしようがないので“?”であります。「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(アフガンゲリラに武器を供給するように働いた上院議員の話)なんかと同じ混乱があります。「チャーリー~」の訳文はもっと酷かったなぁ。
 いずれも映画公開に間に合わせる為、大特急で翻訳したかららしいのですが、「てにをは」の間違いなんてな可愛いもんで、内容に齟齬があって、有り得ない展開に成ってたりしとりました。本作にはそこまでのミスは無いようですが「てにをは」の混乱はそこら中に散見できます。だから 意味が逆転していたりして、途中何度となく読み返しましたわい。これが原文のミスなのか翻訳のミスなのかは判断しかねますが、本作は少なくともプロの物書きが共同執筆者として名を連ねていますから、やっぱり翻訳ミスなんでしょうねぇ。

 昔のミステリー翻訳には専門用語が解らず、ムチャクチャええかげんな訳文が有ったもんですが、さすがに最近ではさほど酷い作品は有りません。突き詰めれば、出版社が間に合わせる事だけを考えた結果って事に成るんでしょう。お粗末。


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 この物語は、顧問の退職により、大所帯の大規模伝統演劇部が、小規模演劇部として再生していくまでの半年を、ライトノベルの形式で書いたものです。演劇部のマネジメントの基本はなにかと言うことを中心に、書いてあります。姉妹作の『はるか 真田山学院高校演劇部物語』と合わせて読んでいただければ、高校演劇の基礎連など技術的な問題から、マネジメントの様々な状況における在り方がわかります。むろん学園青春のラノベとして、演劇部に関心のない方でもおもしろく読めるようになっています。
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タキさんの押しつけ映画評『新ヱヴァンゲリヲン劇場版Q』

2012-11-17 22:11:39 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『新ヱヴァンゲリヲン劇場版Q』


これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が、身内に回している映画評ですが、おもしろく、もったいないので、本人の了承を得て、転載したものです



 まいったなぁ…なんにも書けません…兎に角、見に行って下さい。

 既に見た方と全く興味の無い方々に、以下 解放します。〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 さて、「序」では旧シリーズを引きずっていたのですが、「破」では 未知のメンバーも加わり、どうやら全く違うストーリーに成って行く可能性が有りました。
 本作「Q」において、物語は完全に別物に成りました。しかも、新しく提示される謎、謎、謎、謎、謎、謎………足掛かりは有るものの、一切答えは示されない。ただ、今度こそ最終回(らしいけど……)の「シン・ヱヴァンゲリヲン劇場版」に 「つづく」とでるだけです。今回ほどシンジに同情した事は有馬線。まるでシンジに対する「サド講座」みたいになっています。
 観客以上に何も知らされない、理解出来ないままに流転していく。前回 助け出した筈のレイは何処に……シンジの前に姿を現すカオルの正体は?……ここはどこ?今日はいつなんだ! 世界は存在しているのか……まさに、地獄で悪夢を見ているかのような扱い……こんなものを中学生が抱えられる訳がない。いつの公開に成るんだか、最終回第四作に早くたどり着いて楽にしてやりたい。心の底からそう思う。 あるいは、エヴァ劇場版第一作(「序」ではなく、テレビシリーズ直後の奴)に繋がるのかもしれないが……もう、それでも構わない。レイとシンジの魂に平安あれかし…本当にそんな気分なのでしよ。疲れた……「巨神兵、東京に現る」…?
 なんのこっちゃと思ったら…なんと「ナウシカ」の大前提、炎の7日間の東京バージョンをミニチュアとCGで作ったショートムービーでありんした。ちょいとゾッとする画面でありましたわい。



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 この物語は、顧問の退職により、大所帯の大規模伝統演劇部が、小規模演劇部として再生していくまでの半年を、ライトノベルの形式で書いたものです。演劇部のマネジメントの基本はなにかと言うことを中心に、書いてあります。姉妹作の『はるか 真田山学院高校演劇部物語』と合わせて読んでいただければ、高校演劇の基礎連など技術的な問題から、マネジメントの様々な状況における在り方がわかります。むろん学園青春のラノベとして、演劇部に関心のない方でもおもしろく読めるようになっています。
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高校ライトノベル・志忠屋繁盛記・6『それからのトコ&トモ』

2012-11-15 15:40:52 | 志忠屋繁盛記
志忠屋繁盛記・6
『それからのトコ&トモ』
    

 この物語に出てくる志忠屋は実在しますが、設定や、登場人物は全てフィクションです。



 それから……それからと言うのは、前章で志忠屋の南隣の新米巡査をイジった後のことである。

「自分ら、あんまり純粋なお巡りさんイジるんやないでえ」
 タキさんに、方頬で笑いながらオコラレても、言葉も返せないアラフォーであった。ちなみに、アラフォーというと四十歳前を想像しがちであるが、このトコ&トモは、あくまで四捨五入してのアラフォーであるとおことわりしておく……にしては、やることが子どもっぽい。

「大滝はんがパトロールから帰ってきたら出られるで。なんせ、あの秋元巡査は勉強熱心で、大滝はんが帰ってきたら、質問攻めの勉強やからな」
 その言葉通り、大滝巡査部長が帰るのを待って、交番の前を何食わぬ顔で通り過ぎ、トコ&トモは、ちょっとだけセレブなカラオケ屋に行った。

 小田和正(オフコース)、鈴木雅之、レベッカ、中森明菜、とまぁ、世代的に相応しい曲を一通り歌ってしまい、勢いづいてAKBに挑戦したところでタソガレテしまった。
「どうも『UZA』はあかんな……」
 挑戦的な歌い出しが気に入って歌いだしたのだが、「運が良ければ愛し合えるかも~♪」「相手のことは考えなくていい~♪」の、あたりでタソガレだした。
「こんな子ら……ほんまの『UZA』なんか、分からへんねやろねえ……」
「ああ、トコちゃんは、そこでひっかかったか……」
「トモちゃんは?」
 そう言って、トコは気の抜けたハイボールを飲み干した。
「それより、トコちゃんが先。なにかあったんでしょ……」
「……なんで分かるのん?」
「いちおう物書きのハシクレだから、今日のトコちゃん明るすぎ」
 
 何を思ったのか、トコは部屋の明かりを半分に落とした。

「……今日、科長をしばいてしもた」
「え、どっちで!?」
 トモちゃんは、両手でグーとパーを作って見せた……トコが反応しないので、トモはグーを少し開いて望遠鏡のようにして、トコの顔を覗き込んだ。目が潤んでいるのが分かった。
「トコ……」
「ほんまにウザかってん」
「で、どっち?」
 トモは再び、グーとパーを見せた。それにトコはチョキをもって答えた。
「あ、こっちが負けだ」
 トモは、パーの左手を下ろした。
「て、ことはグー……」
「で、ヴィクトリー……」
「勝っちゃったんだ……で、手応えなかったんでしょ?」
「なんで、そう先回りして分かるのんよ。グチ言う甲斐があれへんでしょ!」
「グサ……別れた亭主にも同じこと言われた」
「たとえ、自分に間違いがあったとしても、オンナにしばかれて、鳩が豆鉄砲を食ったような顔は、ないわよ。怒るなり反論するなりしたらええねん。いや、せなあかんねん!」
 
 トモは、カラオケのモニターの音をミュートにして、真面目に答えた。

「だれでも、トコちゃんみたいに仕事に命賭けてやってるわけじゃないからね。あんた、いい加減てのができないヒトだから」
「トモちゃんも、ヒトのこと言われへんでしょうが。娘道連れにして、亭主と別れて大阪くんだりまで落ちてきてからに」
「あ、それ聞き捨てになんないなあ。あたしはね、いい加減だから、亭主と別れたの。一所懸命だったら、亭主しばきたおしてでも、印刷工場立て直したわよ。いい加減だから見切りをつけたの。それに、はるかには強制はしていない。あの子は、自分の意思で、あたしにくっついてきたんだから」
「はるかちゃんは偉い子。それは認めるわ。一見しなやかそうで、なかなか心が強い。なんで、あんたみたいなオンナから、あんなええ子が生まれたんやろ」
「悔しいけどね、はるかは、あたしと元亭主のいいとこだけとって生まれてきたような子だから」
「四十過ぎのオバハンが十八の娘に、もう白旗かいな」
「うん」
「なんか、張り合いないなあ」
「だって、ハナから負けてるやつに張り合ったってくたびれるだけだもん。まあ、そのへんのとこは『はるか 真田山学院高校演劇部物語』読んでちょうだい」
「もう、三回も読んだ」
「トコはさ、人生の中途から、理学療法士なんかなっちゃったから、なんか理想主義ってとこあんじゃない?」
「そんなんとちゃう」
「ま、たとえ話だけどさ」
「ん?」
「働き蟻ってのが、いるじゃん。よく一列になって、餌だかなんだか運んでるの。あれ、よく観るとね、一割の蟻は、働いてるふりして、サボってんだって」
「ほんま?」
「うん、そいでさ。サボってる奴ばっかり集めてチーム組ませると九割の蟻がきちんと働き出すらしいよ。そいでもってさ、働いてばっかの蟻を集めてチーム組ませると、やっぱ一割のサボりが出るんだって」
「ほんまあ……?」
「ほんとだって、本書くときに、マジ調べたんだから。なんなら、休みの時にアリンコ掴まえて実験してみる?」
「ハハハ、それほどヒマやないけど、なんか元気になってきたわ」

 それから、二人はヘビーローテーションで締めくくった。

 それから二人は、深夜営業のボーリングに行き、一番ピンを科長に見立てたり、タキさんに見立てたりしてボールを転がした。
「やったー!」
 トモが鍛え上げたローダウンリリースでストライクを取ったとき、タキさんは店のシャッターを閉めて、何故かバランスを崩してこけてしまった。
 トコが、それを真似して、惜しくも一番ピンをかすめたとき、件の科長は、帰宅途中、家まであと二十メートルというところで、危うくバンに轢かれそうになった。
「こ、こらあ!」
 と、叫んだ科長の目には「玉屋」と屋号がかかれていた……。


『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』    

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 この物語は、顧問の退職により、大所帯の大規模伝統演劇部が、小規模演劇部として再生していくまでの半年を、ライトノベルの形式で書いたものです。演劇部のマネジメントの基本はなにかと言うことを中心に、書いてあります。姉妹作の『はるか 真田山学院高校演劇部物語』と合わせて読んでいただければ、高校演劇の基礎連など技術的な問題から、マネジメントの様々な状況における在り方がわかります。むろん学園青春のラノベとして、演劇部に関心のない方でもおもしろく読めるようになっています。
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タキさんの押しつけ読書感想『ツナグ』

2012-11-14 20:09:15 | 読書感想
タキさんの押しつけ読書感想
『ツナグ』


 これは、悪友の映画評論家、滝川浩一が個人的に、仲間内に流している読書感想ですが、おもしろく、もったいないので、本人の了解を得て転載したものです。



 映画もやってて、予告編を見ていて「泣かせの映画」だと一人決めしてました。 だからライターの仕事も他の人に頼んで、小説もほったらかしてました。

昨日まで、水の専門書を読んでたんですが、それも終わって……さて、今日から何を読みますかいねと持った文庫が二冊。「ARGO」と、コレだったんですが、なんで「ツナグ」を選んだのか解らないんですが……
 一読、「泣かせ」の対局に有りました。俄然、映画に興味がわいたのですが、これは後の祭り。月末の連休にまだやってたら見に行ってきます。
 さて、ご存知かもしれませんが、「ツナグ」とは、一生に一人だけ、死者との再会をさせてくれる「使者」の事です。
 これは死んだ人にも同条件で、死者も一回一人きりしか会えない。 使者は意外に若い(後に高校生と知れる…この謎は少しずつ解けていく)物語における一人目の依頼者は、突然死したアイドル(飯島姉御を思わせる)に会いたいという、彼女が死んで直ぐではなく、すでに数ヶ月が過ぎている。アイドルなんてな人種がそれまでに誰かと会っていないてな事があるのか、ましてやアイドルにとってもたった一回のチャンス。それを単なる一ファンのために使ってくれるのか。
 他には、母に会いたい息子、親友を無くした女子高生、恋人が失踪したサラリーマン…彼に至っては恋人の生死すら解らない。生者・死者共に心に秘めた想いがあり、また自覚していなかった秘密もある。一つ一つのエピソードには二重三重の展開があり、一夜の邂逅の後に去来する想いも様々である。 そして「使者」たる若者にも重い過去が有った。
「死」を描くのはとても難しい、ことに現在の日本のように確たる宗教観の無い国では 人の死生観もバラバラである。だから、物語の中で年若い「使者」は苦悶する。「死者に会いたいとねがうのは生者の傲慢ではないのか」 読み進む内に解ってくるのは、本作は単に生者と死者が会う話ではなく、互いに等しい存在としての命の物語だという事です。今、自分に問うています、もし自分なら……自分が死んでいたなら……チャンスは一回だけ。
 あまり、語らない方が良さそうです。静かに心に染み込んでくるような本でした。泣かせてやろうなんぞという企みは全くありません。逆に泣かさないで読み通してもらうには どう描くべきか、よく考えられた作品だと思います。さて、映画はどこまで原作に迫ってるんでしょうねぇ。
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タキさんの押しつけ映画評

2012-11-11 05:57:38 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
「悪の教典」「シルク・ド・ソレイユ 3D」


 これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している映画評ですが、もったいないので、本人の了承を得て転載したものです。


「悪の教典」
 三池崇史…とうとう ここまで来ちまいましたか。
  本作はご存知の通り、貴志祐介の本屋大賞作の映画化です。主人公は頭脳明晰な天才的サイコパス。  三池演出を見ていて、こういう読み方も有りか?とビックリしちまいました。奴はこう言っています「蓮実(主人公、サイコパス)はいい奴だ。そもそも“一般とか普通”ってな何? 蓮実はいつも自分の気持ちに対して真っ正直なだけじゃないか」……三池のこれまでの仕事を見ていると、こういう読み方をしていても不思議じゃないが、それを映画にしてしまうと いかにもグロテスクだ。
 原作にはここまでの肯定的表現は無い(と信じたいだけかもしれない)、単に殺した人数だけなら 大藪春彦の主人公の方が遥に多い、サイコパスで言えば T・ハリスのハンニバル・レクターなんてな先輩がいる。しかし、彼らには殺人に理由と目的がある。対して蓮実には…前半にはそれらしき物があるが、後半の大暴走は単なる大量殺人でしかなく、そこに美学も何も無い。
 こういう映画はこれまでもありましたけどね、ここまで殺人者を肯定した作品は無かった。「殺し屋1」みたいにファンタジーじゃない、漫画の「サイコ」みたいにホラーでもない。三池は「ほれほれ、お前らの心の中にもハスミンがいるぜ」と言いたいんでしょう……その衝動は理解しますけどねぇ……。
 ラストが“THE END”ではなくて“TO BE CONTINUE”になっている。???原作に続きは無いはず(有ったら教えて)っちゅう事は、物語の終わり方に引っかけたのか? ごめん!この点が解らない。

「シルク・ド・ソレイユ 3D」
 シルクが日本以外で展開している“KA”“O”なんてな舞台から見せ場を抜いて、一組の男女を狂言回しにして繋いである。監督は“タイタニック”のジェームズ・キャメロンです。
 まず、3Dの先頭にいるキャメロンですが、この3Dは出来が悪い。頭が痛く成ります。画像は綺麗のだが、なぜか構図に失敗があり(画面手前に人が立っていて邪魔…とかです)肝心なシーンが両断されていたりする。いつもなら2Dを見なさいと言う所ながら、こいつが 舐めた事に3Dしか公開されていない。
 よって 結論!ディスクになるのを待ちましょう。映画館へは行かんで宜しい。 しかし、人間の刺激を求める本能ってのは贅沢なもんです。私、何回かステージを見に行って、ディスクはほぼ全部もってます。各々見せ場を持っていますし、世界最高の水準にあるのは確かなのですが、初めて“キダム”を見た時の感動は有りません。「何を贅沢こいてやがる」と、自分でもあきれますが、正直に言うとそうなります。“ラ・ヌーバ”なんてな結構ワクワクしながらディスクを見ましたが、やっぱり“キダム”で受けたショックは再現されません。ほんま、贅沢こいとりますわい。
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タキさんの押しつけ映画評『のぼうの城/黄金を抱いて翔べ』

2012-11-05 07:14:17 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『のぼうの城/黄金を抱いて翔べ』
    

この映画評は、映画評論家の悪友・滝川浩一が、個人的に仲間内に流しているものですが、あまりにもったいないので、本人の了解を得て転載したものです。


☆のぼうの城
いやいやいや、映画館 マジで満席でしたわ。
原作を読んだ時ほど笑わんかったんですが、それは「笑えない」のではなく感心する方が先だったのと、野村萬斎のあまりに見事な「のぼう様」振りに見とれていたからです。
本作は単純に「原作」と「映画」を比べる訳には行かない。というのが、本作の原形脚本が先に有って、脚本家がそれを小説化、さらにそれを脚本化という制作過程を経ているからで、小説を映画のノベライゼーションとは言えないという事情がある。元々が秀吉の小田原攻めに関するまごうことなき史実であり、埼玉県行田市に行けば当時の史跡がかなり残っている。タイトルロールに現在の様子が映し出され、たった今見た映画がそのまま現実の歴史であると実感できる。
さて、映画の出来ですが、こらもう見事と言う他無い。細かく言えば…水攻めで沈むシーンを模型じゃなくCGにすりゃいいのに とか ヤッパリ全体に音響が悪く、慣れるまで何を喋っているのか聞き取れない とか有るんですが、まぁそれは些末な事として切り捨て出来る。
音響が悪いにも関わらず、野村萬斎だけはハッキリと台詞を聞き取れる、舞台人というより狂言役者の真骨頂を目の当たりにしました。小説に登場する「のぼう様」は ボーっとした大男として描かれ、その表情は最低限の言及が成されるだけで、だから 読者は最後まで凡人なのか天才なのか判断がつかない。
小説の場合、眠っていた才能が危急存亡の場に臨んで眼を覚ましたと読める、対して映画では各シーンが映像として描かれる(あったり前) 萬斎の「のぼう様」はボーっとしているようで、一瞬表情にハッキリした意志が現れる。これを見る限り野村萬斎は「のぼう様」を堂々たる侍大将として演じている。可能性の中の一つの表現であるが、この一瞬の表情が観客に緊張を産む、本作の成功の半分は野村萬斎を起用した事に拠っている。
残り半分は成田長親を囲む人々を演じた俳優達の安定した熱演が担保した。榮倉甲斐姫、佐藤丹波守、グッサン和泉守、成宮酒巻~~~~一々言及出来ない、敢えて一人を上げるなら上地雄輔の石田三成が見事だった。正直、この人が一番不安だったのだが爽やかに裏切られた、もう「お馬鹿タレント」の皮を完全に脱ぎ捨てた。拍手を贈りたい。見どころはそれこそ「満載」なのだが、白眉はのぼう様が舟の上で踊るシーン、敵味方双方を飲み込む設定だが…設定を超えた、このシーン 野村萬斎の踊りには本物の力がある。見ていて身震いのする思いがした。
絶対の自信を持ってお薦めします。是非とも劇場に足を運んで下さい。

☆黄金を抱いて翔べ
 見事に久々の日本版フィルムノアールです。原作と比べると、実にその30%にも相当する詳細な下見がほぼカットされているのですが、これは仕方が無いでしょうねぇ。大阪に住み、中之島に土地勘が有れば、ほぼ犯行をトレース出来る。執筆時に詳しく取材したのだと思うが、こんな作品に成るなると判っていたら取材拒否されただろう、まさかそれをスクリーンに映せない。この点を除けば、井筒監督に手落ちは無い。
 まずはキャスティングの妙がある。主人公たちは恐ろしい程に荒んだ精神の持ち主ばかり、それを演じるに妻夫木、溝端、チャーミンはあまりにも整った顔をしている。本作のスティールを始めて見た時、それが一番の引っかかりであった。
 チャーミン以外の二人の演技力は充分知ってはいたが、小説から思い描く彼らは見るからに「悪」そのもの。ある意味、自分の状況に正直に生きている人物達。ここに西田敏之「爺さん」も含まれる。対して浅野、桐谷の二人は仮面を被り、社会に溶け込んでいる。この対比が一つの大きな見所、結論から言って私の危惧など全く杞憂、稀に見る堂々たる“ノアール”でした。
 チャーミンの芝居は初見でしたが見事なもんです。日本人がヤクザ、兵隊、警官なら誰でも演れる(最近はそうでもないでしょうが)と言われるように、韓国人にとっては「北の工作員」は誰でも演れるキャラクターなんですかねぇ。
現在、銀行強盗は陳腐な犯罪である。それはネット上に舞台を移してしまったのだが、その現代に身体を張って、然もわざわざ重い金塊を狙う。この時代錯誤が妙なリアル感を持って迫って来る。
 作戦成功の高揚も死の虚しさも無い、新しい(う~ん、でもないかな)ノアール感が現出している。フランスノアール全盛期には無理なく受け入れられた筈だが、今 本作を見るのにテクニックがいる(?)かもしれないが、どうかあるがままに一度受け入れて、後にジックリ振り返っていただけると、色んな事が見えてくる…なぁんてね、ちょっと「上から目線」過ぎる? 本作もお薦めです。但し、ジャリにはこの映画の本質は解りにくいやろなぁ(またまた上から目線?)


『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』    

 10月25日に、青雲書房より発売。

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 このも物語は、顧問の退職により、大所帯の大規模伝統演劇部が、小規模演劇部として再生していくまでの半年を、ライトノベルの形式で書いたものです。演劇部のマネジメントの基本はなにかと言うことを中心に、書いてあります。姉妹作の『はるか 真田山学院高校演劇部物語』と合わせて読んでいただければ、高校演劇の基礎連など技術的な問題から、マネジメントの様々な状況における在り方がわかります。むろん学園青春のラノベとして、演劇部に関心のないかたでもおもしろく読めるようになっています。
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高校演劇・クラブはつらいよ 秋編三

2012-11-04 05:39:44 | 高校演劇基礎練習
クラブはつらいよ 秋編三

 秋深し……となりはなにをする……クラブ。

 コンクールもあらかた予選が終わり、あなたのクラブは、なにをしているのだろう?
 この時期、クラブは、大きく四つに分けられる。
一; コンクールの予選を勝ち抜き、本選出場の準備に追われている、ごくかぎられた幸運なクラブ。
二; コンクールの予選で落ちたクラブ。これはさらに二通りに分かれる。地域の発表会など、スケジュールのあるクラブと、なにも目標のないクラブ  
三; もともとコンクールにも参加しなかったクラブ。これも二通りに分かれる。しようと思っていても参加できなかったクラブ(事情はさまざまで、コンクール直前に断念せざるをえなかったクラブ、部員が少なく参加できなかったクラブ、連盟加盟費や、コンクール参加に必要な費用がまかなえなかったクラブ) コンクールなど頭から否定して参加しなかったクラブ。
四; すでに、つぶれてしまったクラブ……

【未来を見据えたクラブ活動】
 一のクラブは、「おめでとう!」である。ただ、主な出演者が三年生である場合、来年度につなげるため、出演者の一部に一二年生を加えておこう。無理矢理に配役を増やしてでも、これはやっておいたほうがいい。役者が無理なら舞監か、その助手にして、芝居作りのノウハウを伝えておければいい。
 二の予選で落ちたクラブ。これが大多数だと思う。地域や校内で発表の機会があるなら、それに専念してもらいたい。そのプロセスで演劇部のノウハウを一二年生に伝授しておかなければならないのは一のクラブと同じである。
 
 わたしが、もっとも心配するのが、コンクールの予選に落ちて、春、どうかすると、来年の文化祭あたりまで、目標のないクラブである。ここで安易に休部などしてしまうと、来春は自然消滅ということになりかねない。年内か年度内には上演の機会を持とう。とにかく「芸術は場数!」である。走っている自転車と同じで、止まれば倒れてしまう。
 では、その場数の機会である。一番簡単なのが校内公演。ただ、生徒の絶対数が少ない学校が多いので、ただボンヤリと「校内公演やります」では、人は集まらない。顧問の先生に交渉してもらって、PTA総会などでほんの二十分ほど時間をもらって、コント(下手なりに、わたしも何本か紹介してきた)を、二本ばかり上演させてもらうという手がある。また、総合学習などのボランティアで、幼稚園、保育園、老人施設などとコネのある先生がいたら、ワタリをつけてもらって、子ども向きや、お年寄り向きのコントを工夫してやらせてもらおう。

 三の、コンクールに参加しなかった(できなかった)クラブ。上記の予選に落ちたクラブと同様、なにか公演の機会を持とう。それから、予選に落ちたクラブも、参加しなかったクラブも本選は観にいこう。「さすが……」にしろ「この程度」と思うにしろなにかしら、得るものはある。念のため「この程度」と思っている場合、自分たちの力量を客観的に見られていないことが多い。

 四の、すでに潰れてしまったクラブ。対策は二通り。もし君が、あなたが二年生以下、もしくは顧問であられる場合で、来春クラブを復興しようと思っているのなら。わたしの「クラブはつらいよ」を、春編一から読み直していただければと思う。いろんなことを書いてきたが、人の芝居を観て、戯曲を読むことである。熊が冬眠前に食いだめするように自分を演劇的に太らせておいておくことが大事である。以前も書いたが戯曲は百本は読んでおいてもらいたい。
 もうクラブには懲りてしまった人。芝居そのものに嫌気がさしているのなら、自分が熱中できるなにかを探そう。「少年老いやすく……」のたとえ通り、ものごとに一番熱中できるのは十代の後半である。オッサン、オバハンになってから後悔しないように、何かを探し、また挫折してもかまわないから、熱中時代でいてほしい。
 クラブはイヤだが芝居は続けたい人。そういう人は学校を飛び出そう!なにも学校を辞めろというのではない。どこか地域の劇団を探し、そこでやってみることを勧める。ただ、劇団といっても様々で、中には高校生には勧められないものも多い。教育委員会の社会教育課や、地域の市民会館や文化ホールに問い合わせてみよう。地味ではあるが健全な劇団を紹介してくれると思う。もし、それで飽き足りないのなら、都市部に限られるが、放送劇団がお勧めである。ただ付属養成所は、入所時期が決まっており、テストもあり、そう多額ではないが学費もかかることを頭に入れておいてほしい。大手プロダクションなどの養成所は、学費も高く、卒業しても皆がプロになれるわけではない。経済的に余裕があり、勉強のためと割り切っているのなら、それも道である。
 演劇科を持った大学への進学という道もある。ネットで検索したり、進路の先生と相談することを勧める。
いろんな道があるが、真剣に演劇への道を考えているのなら、若い時代に専門教育を受けておく必要がある。まあ、それは、君やあなたの中で、演劇がどれくらいの比重を持っているかによる。もの思う秋の夜長、少し自分にとってのクラブや演劇について考えてみるのもいいのではないだろうか。つれづれなるままに……

今月のコント『一寸法師の忘れもの』

サスに照らされた地面の上に、お椀と箸が一本おかれている。かすかに水の流れる音。 

好子; あ、これこれ、これだよ。まだ、まんま置いてある。
まり子; え、何これ?
好子; 見りゃわかるでしょ。お椀と箸よ。
まり子; そりゃ分かってるわよ。わたしが聞いてんのは、このシチュエーシ ョンよ。
好子; シチュエーション?
まり子; 状況とか様子って意味よ。
好子; さすが、国語クラス一番!
まり子; 失礼ね。学年で二番よ。
好子; 一番って言った方がかっこいいかなって思ったのよ。
まり子; あの福井里香には勝てないもんね。関東大推薦確実。
好子; 学年一の秀才でイケメンの後藤君ともウワサだしぃ。だから気ぃつか って……
まり子; まあ、そんなことはいいけど。
好子; 後藤君っていいよね。秀才ってとこ鼻にかけてないもんね。こないだも数学の補習課題でうなってたら、さりげに教えてくれてさ。
まり子; 答え教えんのって、イヤミじゃない?
好子; 答えじゃないよ。ヒントよヒント。あくまでも答えはわたしが出せるようにレクチャーしてくれんの。 
まり子; 後藤君はいいの。それより、ここ普段はだれも通らない学校の裏の小川のほとりじゃん……
好子; そこに一個のお椀と、お箸が一本……
まり子; 好子、どうやって見つけたの?
好子; 体育の時間にテニスボールがとんでっちゃって。探しにフェンスの隙間から出てきて見っけたの。
まり子; ふーん……たいてい、防球ネットに当たってグランドに落ちるのにね。
好子; たまたま防球ネットの破れ目から抜けちゃったのよ(お椀にさわろうとする)
里香; さわらないで!(飛びだしてくる)
二人; わ!
好子; 里香。
まり子; どうして、あなたが……
里香; ごめん驚かして。
まり子; これ、あなたが置いたの?
里香; ……うん。
好子; なにかのおまじない?
里香; ……
好子; あ、飼ってたペットが死んじゃったとか……でも、お箸一本てのは変よね。
まり子; ……これって、なんだか一寸法師だ。
里香; あ……
好子; イッスンボウシ?
まり子; お椀の舟に、箸の櫂~♪ だったよね?
里香; 知ってたんだ。
好子; さすが、国語一番と二番だ。で、そのイッスンボウシって?
まり子; 昔話よ。一寸。三・三センチの男の子が、お椀の舟に乗って、都にやってきて、お姫さまと仲良くなって、鬼退治して、打ち出の小槌で立派なイケメンになるってお話。
好子; ふーん……
まり子; でも、まさか……
里香; うん……そのまさか……
まり子; うそ!?
里香; こないだここで校外清掃やったときに見つけたの。岩にひっかかって舟が動かなくなってるとこ。
好子; マジで!?
里香; 疲れてるみたいだったから、お椀ごと家につれてかえったの……信じら れないでしょ。
二人; ……
里香; でね、家に帰ってお話したら、とってもおもしろいの。今昔物語や、徒然草とか、やたらに詳しくって。わたしは、パソコンでいろんなこと教えてあげた。あの子も飲み込みがとても早くて。もう一人でいろいろ検索とかしてたの……本気にしてないでしょ。
まり子; それは……
好子; ね……
里香; わたしね、関東大の推薦やめることにしたの。まり子もあそこの推薦ねらってたでしょ。よかったらどうぞ。
まり子; どうぞって、里香……
好子; じゃ、どこの推薦ねらうの?
里香; 帝都大。
好子; あ、そう。
まり子; あ、そうって、あそこ推薦枠ないわよ。一般入試でうけられるの後藤君くらいのもんだわよ。
里香; わたしも一般入試。
二人; ええ!?
里香; 一寸法師がそうしろって。自分に一番正直で、まっすぐな道が一番だって。
まり子; それって……
里香; あとは言わぬが花。
好子; それもイッスンボウシが……?
里香; さあ……
まり子; で、その一寸法師は?
里香; 出て行っちゃった。パソコンに「お別れします。一寸」って、書き置き残して……この、お椀とお箸もね。
好子; それで……
まり子; これがなきゃ困るでしょうしね、一寸法師も。
里香; ……わたし、賭けてんの。
まり子; 賭ける?
好子; 何に?
里香; パソコンには、一寸としか書き込まれてなかった。
好子; それって名前でしょ、あの子の。
里香; だったら、一寸法師て書くじゃない……
まり子; あ、それって……?
里香; そう、だから賭けてみたの。
好子; え、なに、なに?
まり子; 一寸と書いて「ちょっと」て読むのよ。
里香; パソコンで世界が広がっちゃって、ちょっとの間だけのお別れなんじゃないかなって。
まり子; それで……
好子; じゃ、ここで待ってりゃ……
里香; ここにいちゃ、あの子も現れにくいわ。お椀とお箸を忘れていくくらいだもん。何かとっても大事なことか、おもしろいこと……
好子; 聞き出すんだね、それを!?
里香; ううん、そっと見守るだけ。
好子; なんだ、つまんない。
まり子; それが礼儀……なんだよね。
里香; うん。
まり子; じゃ、わたしたちも隠れていようよ。
里香; ごめん。ありがとうね。
好子; ううん、会いたいなあ……
まり子; いくよ。
里香; じゃね、一寸法師……

 その場を名残惜しそうに離れる三人。お椀とお箸にサス残り、一寸法師の歌フェードアップするうちに幕

 コントというには、少し長く、地味かなと思った。しかし作品には色というかスタイルというかがあるものなので、あえて、こういう作品にしてみた。わたしの場合ファンタジーの色が濃いので、そのひな形みたいなものにしてみた。というか、こういう情景が広がり、ふくらんで、一本の戯曲になっていく。このコントから、君やあなたなりにふくらませていただければ幸いである。わたしは……すでにふくらませてある。その手の内は……ナイショ、ナイショ。
 


『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』    

 10月25日に、青雲書房より発売。

青雲書房直接お申し込みは、定価本体1200円+税=1260円。送料無料。
送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。

お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。

青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp  ℡:03-6677-4351

また、アマゾンなどのネット通販でも扱っていただいておりますので、『まどか、乃木坂学院高校演劇部物語』で、ご検索ください。

 このも物語は、顧問の退職により、大所帯の大規模伝統演劇部が、小規模演劇部として再生していくまでの半年を、ライトノベルの形式で書いたものです。演劇部のマネジメントの基本はなにかと言うことを中心に、書いてあります。姉妹作の『はるか 真田山学院高校演劇部物語』と合わせて読んでいただければ、高校演劇の基礎連など技術的な問題から、マネジメントの様々な状況における在り方がわかります。むろん学園青春のラノベとして、演劇部に関心のないかたでもおもしろく読めるようになっています。
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