大橋むつおのブログ

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高校演劇の基礎1ー演技

2016-02-25 23:55:39 | 高校演劇基礎練習
高校演劇の基礎1ー演技                                                               

【演技】演劇の三大要素は、観客・戯曲・役者の三つです。まずこれを頭に置いてください。まず役者の演技について話を広げていきたいと思います。

演ずるということは、嘘をつくことです。例えば、学校をズル休みしたいために仮病を使うときがあります。「なんだか気分悪くて……」「お腹が痛い……」 たいていばれてしまいますが、中には親もコロっと騙されるほど真に迫った演技ができる子もいます。「気分が悪くて……」と、言っているうちに、本当に気分が悪くなることがあります。本当にお腹が痛くなることもあり、お医者さんにいくと(急性胃腸炎)と診断されることもあります。例えは悪いですが立派な演技です。本人も、「学校を休みたい」という気持ちを離れてその気になってしまうのです。テレビゲームなどが無かった時代、小さな子供たちは、段ボールの箱などに入って、自動車にしたり、飛行機にしたり、自分だけのお家にして遊んでいました。「00ちゃん、なにしてんの?」と聞くと、「自動車ウンテンしてんの」などと答えが返ってきます。真剣な顔で「ブルルーン」などとやっていて、傍目にはおかしいのですが、ちゃんと自動車を運転しているように見えます。おかしくって、おもしろくって、しばらく見惚れてしまうこともあります。もう一時代前の子供は箒(ほうき)にまたがり「お馬さん、パッカパッカなどとやっていました」なんせ、そのころは、本物の馬がいましたから、またがった箒のリズムなど本当の馬のようでした。蒼井優という女優さんがいます。子供のころに「魔女の宅急便」を見て、自分もキキななれると思い、黒のワンピースに赤いリボンをつけ、デッキブラシにまたがり「飛べ…飛べ……」と、やっていらっしゃったようです。

まず、ここから入りましょう。高校生にもなると、段ボールに入っても、デッキブラシにまたがっても、なかなかF1のドライバーにも、魔女のキキにもなれません。 ロープ無しで集団縄跳びをやってみましょう。二人がロープの端を持ち、回します。すると残りの人たちの視線が見えないロープを追っていることが分かります。そして、順に回るロ-プの中に入っていきます。女子が多い演劇部、きっと盛り上がります。見えないロープ(無対象と言います)なのに、ロープが足に絡んだりすると「キャー」とか「もう」とか「あらー」などと声があがるからおもしろいものです。 これ無対象演技と言って演技の基礎です。 玉子を割ってみましょう。案外、玉子を手に持った感覚というのは難しいものです。家で本物を持って感覚を確かめてください。割るときの力のいれ具合もやや難しいようです。実際にやって体で記憶しましょう。割ったあと手前に90度ほど玉子を回して割ったところを、左手の親指が楽にくるポジションに持ってきていることに気づけば「ああ!」という発見があります。無対象演技には、このようにコツがあります。いろんな無対象を試して演ずることに慣れてください。

役者は自分の感性を自由にしなければなりません。感性とは喜怒哀楽のことです。人前で笑顔になれない子が日本人には多くいます。いわゆる「恥じらいの文化」で、われわれのDNAに組み込まれたもので、今の子でも、あまりできません。アメリカ人などは、笑顔が上手いですね。子供のころからそういう文化の中で育っているからです。AKB48の子達の笑顔いいですね。鏡を見て、笑顔の練習をしてください。目標はAKB48でいいでしょう。笑顔で大事なのは顔面筋、とくに頬にある笑筋は、日本人は未発達で、「笑顔!」というと虫歯が痛いのを堪えたような顔になります。しかし、鏡を見て練習すれば三日もあればできるようになります。ただ、家で一人ならできるのに、みんなの前ではできないということがあると思います。人間には、人前では見せたくないというブレーキのかかる感性や、行動があります。 無対象で服を着たり脱いだりしてみてください。服の着脱というのは、意外に全身運動であることがわかります。ブレザーやカーディガンを着ると、右腕を通すとき左手で左の身頃を無意識にひっぱっていることなどに気づけば、縄跳びほど楽ではありませんが、わりと誰でもできます。

本題です。では、皆の前で無対象で服を脱いでお風呂に入ってください……たいていの人ができません。恥ずかしいのです。役者が超えなければならない感性の壁が、ここにあります。プロではありませんので、こんなことできなくても高校演劇はできます。一度コンクールの芝居を観て驚いたことがあります。無対象の女子トイレを設定し、そこで用を足す無対象演技をやってのけた学校がありました。脱帽でした。 まあ、トイレや風呂まで演れとは言いませんが、自分の感性のタブーはなるべく減らしておきましょう。

【役者としての筋トレ】並の学校生活をおくっていれば、体育会系のような筋トレはいりません。役者の筋トレはまるきし違います。 まず筋肉には三種類あることを理解してください。「随意筋」手足や、体一般を動かす筋肉です。「手を挙げて」「右足前に出して」……誰にでもできますね。 「不随意筋」自分の意志では自由にならない筋肉です。「心臓止めて!」……できませんね。 大事なのは「半随意筋」です。訓練次第では自由になる筋肉のことです。日本人には先ほど述べた顔面筋がこれにあたります。ウィンクできますか? できない人が多いです。生活習慣にウィンクが無いため、日本人はひどく苦手です。アメリカの映画を観るまでもなく、大統領や国務長官のスピーチを見ただけで、かれらの顔面筋が自然に鍛えられていることがわかります。 もう一つ大事な「半随意筋」があります。「横隔膜」です。胸と、腹の間にある筋肉で、呼吸の大半はこの筋肉が担っています。「横隔膜」は一見「随意筋」です。「息を止めろ!」と言われればできますよね。 では、「横隔膜」をケイレンさせてみてください。難しいことではありません、クシャミをすれば一回ですがケイレンします。では、連続してケイレンさせてみてください……クシャミの連続ではありません。もっと小刻みに「ハ、ハ、ハ、ハ……」と。 そう、これは笑いなのです。笑いというのは横隔膜のケイレンなのです。「ハ、ハ、ハ……」の間隔を詰めて笑いになるまでやってください。そして、時間にして30秒は笑えるように、「ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ」全てで笑えるように。 「泣き」も横隔膜のケイレンです、激しい場合、過呼吸から泣きじゃくりになります。 この「笑い」「泣き」も感性の壁があります。人前で泣くことにはブレーキがかかりがちですが、この程度の壁は乗り越えてください。

【発声】よく、「腹から、声を出せ!」と言われますが、精神的にはともかく、実際には意味がありません。お腹は「グー」とか「ゴロゴロ」としか言いません。大阪の大学で、演劇を教えている先輩が、こぼしていました。「高校演劇出の学生は、声を張ることしかしらん」 声は喉にある「声帯」から出てきます。これが硬口蓋にぶち当たり、その上の前頭洞を振動させることで、頭骨が振動(マスク共鳴)することによって、自然な声でもよく響く声になるのです。 では具体的に。舌で上の前歯を触ってください。最初硬いでしょ、そこを「硬口蓋」と言います。さらに奥をなぞっていくとストンと柔らかくなっているところがありますね、それを「軟口蓋」と言います。「声が小さい」「響いてない」と言われる人は、声帯で生まれた声がこの「軟口蓋」に逃げて響かなくなっている人です。これで理屈は分かったと思います。では、メソードを。口を閉じてハミングしてください。そのとき口の中はできるだけ大きく広げていてください。そして「ウ~」と、ハミング! どうですか、顔の前のほうが振動していることが分かりますでしょ。次に、そのまま口を開きます。ただ口から息を出さないでください。まだ、響いていますね。そうしたら次に、鼻と口の両方から息を抜いてください。そして、まだ同じように響いているようなら、今度は口から」だけ息をだして響いているようなら完成です。 しかし実際は、この口から抜く段階が難しく、挫折する人が多いようです。 自転車に乗る感覚に似ています。最初は慣れません。ガチガチです。でも自転車に慣れたころを思い出して根気強くやってください。

【総論】もっともらしく述べてきましたが、高校演劇の基礎練習としては、かなりストイックなもので、なかなか長続きしません。わたしは、思い切って、いままで述べて来たことは、最初レクチャーしただけで、あとは個人に任せています。「誰でも良いから、憧れの女優さんを一人持ちなさい」と、今は言っています。憧れていれば意識してその人の演技を見ます。また真似もします。このほうが効果的かと、今はそうしています。わたしもいろんな人のメソードをやってみましたが、気づくと、憧れの役者さんの真似をしていました。滝沢修、宇野重吉、尾形拳などなど……標準語を覚えたのは、小学生のころNHKのニュースをアナウンサーのあとに続いて声に出すことで覚えました、上手かどうかは分かりませんが、「好きこそ、もののナントカ」であると思っています。

【次回予告】演出論を手短にやってみたいと思います。

   大橋 むつお      

『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』          青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説!  お申込は、最寄書店などでお取り寄せいただくか、下記の出版社に直接ご連絡いただくのが、一番早いようです。ネット通販ではアマゾンや楽天があります。青雲に直接ご注文頂ければ下記の定価でお求めいただけます。 青雲書房直接お申し込みは、定価本体1200円+税=1260円。送料無料。 送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。 大橋むつお戯曲集『わたし 今日から魔女!?』  高校演劇に適した少人数戯曲集です。神奈川など関東の高校で人気があります。  60分劇5編入り 定価1365円(本体1300円+税)送料無料。 お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。 青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351 大橋むつお戯曲集『自由の翼』戯曲5本入り 1050円(税込み)  門土社 横浜市南区宮元町3-44 ℡045-714-1471   
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