魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!
93『乃木坂学院高校』
「ねえ、ちょっと日向ぼっこしていかない」
相談室の鍵をかけながら柚木先生が言った。
「え、あ、はい」
仁科香奈の姿をしたマユが応える。もう手続きも終わったんで、ちょっと気持ちがつんのめるぜ。
退学の手続きにきたら、担任に設定してあった柚木先生に最後の説得をされちまった。
ちょっと意外だったぜ。
この仁科香奈の姿は、不可抗力で、目の前にいた大石クララと拓美に貸したマユ自身のアバターを足して二で割った姿だ。
ちょっと意外だったぜ。
この仁科香奈の姿は、不可抗力で、目の前にいた大石クララと拓美に貸したマユ自身のアバターを足して二で割った姿だ。
正式に地獄の小悪魔補習規定にのっとて作られた公式アバターじゃねえ。
だからよ、経歴も関係者の記憶もかなりいい加減な設定にしかできてねえ。
乃木坂学院の生徒になったのも、それまで入り込んでいた美優が乃木坂の出身で、美優の記憶がそのまま使えるからという便宜上の理由だけだ。
乃木坂学院の生徒になったのも、それまで入り込んでいた美優が乃木坂の出身で、美優の記憶がそのまま使えるからという便宜上の理由だけだ。
だから友だちも居ねえし、部活もやってねえし、担任に埋め込んだ記憶もそうとう粗っぽくて、平均的で目立たない生徒という認識でしかねえ。
だからよ、退学については、ごく簡単な事務処理で済むと香奈の姿をしたマユは思っていたんだ。
それがよぉ、退学届けを持ってくると、その柚木先生に相談室に呼ばれ、一時間ちょっと説得されちまった。
意外にも、柚木先生は自分自身を責めていやがった。
――わたしは、この仁科香奈のことについて何も知らない。面談や懇談をやった記憶はある。でも、可もなく不可もない子だったので、ほとんど意識に留めることもなかった。その仁科香奈が、密かにこの乃木坂学院に見切りをつけ、こともあろうに……と、言っちゃいけないんだろうけど、アイドルグル-プのオモクロのオーディションをうけるという。そんなに乃木坂学院は、いや、この柚木学級、柚木という教師には力も魅力もないのだろうか……――
マユは香奈の心で申し訳なかったぜ。柚木先生は、いわばエキストラっちゅうか、村人1とかのNPCみてえななもんでよ、仁科香奈について細かい記憶なんかはインストールしてなかっんだ。柚木先生は、それが担任としての落ち度のように感じていやがる。
意外にも、柚木先生は自分自身を責めていやがった。
――わたしは、この仁科香奈のことについて何も知らない。面談や懇談をやった記憶はある。でも、可もなく不可もない子だったので、ほとんど意識に留めることもなかった。その仁科香奈が、密かにこの乃木坂学院に見切りをつけ、こともあろうに……と、言っちゃいけないんだろうけど、アイドルグル-プのオモクロのオーディションをうけるという。そんなに乃木坂学院は、いや、この柚木学級、柚木という教師には力も魅力もないのだろうか……――
マユは香奈の心で申し訳なかったぜ。柚木先生は、いわばエキストラっちゅうか、村人1とかのNPCみてえななもんでよ、仁科香奈について細かい記憶なんかはインストールしてなかっんだ。柚木先生は、それが担任としての落ち度のように感じていやがる。
魔法というものは、白魔法にせよ黒魔法にせよ怖いものだと感じたぜ。
「わたしね、演劇部の顧問やってるの。仁科さんに、そんな気持ちがあるんだったら、入学したときに勧誘しとくんだったなあ……」
「わたしね、演劇部の顧問やってるの。仁科さんに、そんな気持ちがあるんだったら、入学したときに勧誘しとくんだったなあ……」
「あ、わたしがやりたいのは、演劇じゃなくて、オモクロやAKRみたいなエンタメですから」
「そうなのよね……今の高校演劇は、あなた達みたいな子を引きつける力がないのよね」
「そんなことないです。ただ、わたしがやりたいことが違うだけで……」
「うちの演劇部は、もともと、そういうエンタメ的な力ももっていたわ。もうお辞めになったけど、貴崎マリって先生が、グイグイ引っ張ってらっしゃって、部員も三十人ほどもいてね、歌って踊ってお芝居もできるって、東京でもトップクラスの演劇部だったのよ。それが、ちょっと事故が重なって、貴崎先生はお辞めになるわ、部員は三人にまで減ってしまうわで、一時は廃部寸前までいったの。でも、生徒の力ってすごいのよ。そんな演劇部を復活させて、秋の予選じゃ最優秀。二年生の仲まどかって子が中心にがんばって、その奮闘ぶりが凄くって、本にまでなったのよ」
柚木先生は、一冊の本を取り出した。
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』
一見ラノベの形式だけど、半年にわたる仲まどかたち、演劇部の子たちの奮闘ぶりが書かれていやがる。
柚木先生は、一冊の本を取り出した。
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』
一見ラノベの形式だけど、半年にわたる仲まどかたち、演劇部の子たちの奮闘ぶりが書かれていやがる。
「あげるわ。なんかの参考になったら嬉しい」
「あ、ありがとうございます(^_^;)」
「それから、仁科さんと同じように中退した子だけど、坂東はるかって子も、女優になってがんばっているわ」
「え、坂東はるかって、乃木坂の中退だったんですか!?」
マユも人間界に来て半年あまり。並の女子高生としての知識はある。坂東はるかは、いま売り出し中の若手女優だ。たしか、大阪で現役高校生のまま新幹線で通って女優の仕事をこなしているはず。ネットで自伝的なノンフィクションを書いていやがった。
『はるか 真田山学院高校演劇部物語』
そんなタイトルだ。
『はるか 真田山学院高校演劇部物語』
そんなタイトルだ。
「坂東はるかって子のことだったら、その『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』にも出てくるわ。仲まどかとは幼なじみだから」
柚木先生は、マユの心を読んだように答えやがる。人間は、時に悪魔か天使のように心を読んだり、勘を働かせたりすることがある。それは、葬儀を済ませたばかりの美優も同じだったぜ。
マユは、人間界に補習に出された意味が分かってきたような気がしたぞ。
あ……
いつの間にか、理事長先生が後ろに立っていやがる。もう九十を超えているってのに、髪の毛以外はカクシャクとしていやがる。
いつの間にか、理事長先生が後ろに立っていやがる。もう九十を超えているってのに、髪の毛以外はカクシャクとしていやがる。
「仁科さん、わたしの目を見てくれんかね」
「あ、はい……」
優しいが深みのある目をした先生だ。仁科香奈の心で、マユは、そう感じたぞ。
「いい目をしている。できたら、うちの学校でまっとうして欲しかったが、きちんと決心したんだね?」
「……はい」
理事長先生は、自分の目を見ろと言って、マユの目を観察していやがったんだ。
「もう、今さら、わたしから言うことはない。柚木先生といっしょに見送らせてくれんかね」
プラタナスの枯れ葉を踏みしめ、仁科香奈の姿のマユは乃木坂を下る、背中に二人の先生の視線を感じながら。
たまらずに振り返ると、先生は二人で小さく手を振っていやがったぜ……。
プラタナスの枯れ葉を踏みしめ、仁科香奈の姿のマユは乃木坂を下る、背中に二人の先生の視線を感じながら。
たまらずに振り返ると、先生は二人で小さく手を振っていやがったぜ……。
☆彡 主な登場人物
- マユ 人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
- 里依紗 マユの同級生
- 沙耶 マユの同級生
- 知井子 マユの同級生
- 指原 るり子 マユの同級生 意地悪なタカビー
- 雅部 利恵 落ちこぼれ天使
- デーモン マユの先生
- ルシファー 魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
- レミ エルフの王女
- ミファ レミの次の依頼人 他に、ジョルジュ(友だち) ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
- アニマ 異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
- 白雪姫
- 赤ずきん
- ドロシー
- 西の魔女 ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)
- その他のファンタジーキャラ 狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
- 黒羽 英二 HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
- 由美子 英二の妹
- 真田 由美子の元カレ
- 美優 ローザンヌの娘 英二の妻
- 光 ミツル ヒカリプロのフィクサー
- 浅野 拓美 オーディションの受験生
- 大石 クララ オーディションの受験生
- 服部 八重 オーディションの受験生
- 矢藤 絵萌 オーディションの受験生
- 上杉 オモクロのプロディューサー
- 片岡先生 マユたちの英語の先生