大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ピッコロフェスティバルで新作『クララ』を発表!

2011-08-17 18:05:19 | 評論

『クララ ハイジを待ちながら』を天王寺商業高校演劇部が上演しました!

大阪府高等学校演劇連盟加盟校の天王寺商業高校演劇部が、わたしの最新作『クララ ハイジを待ちながら』を8月17日ピッコロフェスティバルに参加して上演してくださいました。

『クララ』は、わたしが常々申しております小規模演劇部の上演に特化して書いた作品群の最新作です。揺れ動く青春の心理を『アルプスの少女ハイジ』のクララに託して、不登校、引きこもりの問題を通し表現してみました。不登校、引きこもりというと、とかく暗いイメージで取り上げられがちですが、現実のそれは、一見平穏、時には明るくさえ見えます。これは私自身の30年に渡った教師生活からも言えることです。人間は長時間に渡って緊張感を保てるようにはできていません。太宰治の作品に、こんな言葉があります「明るさは滅びの徴(しるし)であろうか、人も家も暗いうちは滅びはせぬ」 

そう、明るいがゆえに危機ををはらんでいるのです。ファンタジーな世界にアハハ……と笑っているうちに、人間の孤独さ、青春の脆さ、愛おしさが見えてきます。

天王寺商業高校演劇部は、大阪では珍しく、わたしの作品を取り上げてくださる演劇部です。この夏、天商野球部が、天商最後の野球部として夏の高校野球に臨む姿がテレビなどで報じられましたが、演劇部も、天商として最後の年になりました。部員は兼業部員も含めたった3人の絵に描いたような小規模演劇部です。そんな演劇部でもこれだけのことが出来る! という実践でありました。

大阪府高等学校演劇連盟には、天商のような小規模演劇部が沢山あります。連盟はこれになかなか有効な手だてが打てず苦慮されています。演劇の三要素は(観客、戯曲、役者)の三つです。ここに立ち戻った芝居作りのメソードが必要です。その答えを提示いたしました。

天商演劇部は当初、拙作の一つ『月に吠える』を上演予定でしたが、都合で出演できない生徒が出て、急きょ一ヶ月前に『クララ』への変更を思い立たれました。実質三週間という稽古日数の中で、ほとんどクララの一人芝居といっていいこの作品をよく仕上げられました。

この芝居は、青春の蹉跌といってもいい引きこもりを、クララがチャット相手である「アナタ」と会話することが柱になっています。大人や社会に対する不信感と、それに向かい合う不安が、ブラックユーモアのカタチで明るくコミカルに紡ぎ出されてきます。新入りのメイドのシャルロッテは、そんなクララを偉くて、チョッピリ情緒不安定、でもイタズラや会話はとても面白い姉か、友だちの女ボスを見るように慕っていきます。ロッテンマイヤー女史は、意見ばかりしていますが、これも叱りながらもハイジとの再会にクララの回復を期待します。クララは、ハイジが来ると「服を探さなくっちゃ!」と、部屋中ひっくり返し、最適な服を探します。ハイジが飽きて行ってしまってから、やっと服を決め、交差点までハイジを追いかけ「間に合わなかったわ……」と言って戻ってくることの繰り返し。

そして今回も、シャルロッテに手伝ってもらって、部屋中ひっくり返し「シャルちゃん、それ脱いで……!」と、シャルロッテのメイド服に目を付け「脱げ~!」と迫り馬乗りになります。あわや裸にされかけたとき、シャルロッテが叫びます「お嬢様は、お嬢様なんですから、クララ・ゼーゼマンでいらっしゃるのですから!」

「そう、そうよね……わたしは、わたし……クララ・ゼーゼマン……なのよね!?」と、普段着で部屋を飛び出します。ロッテンマイヤー女史は「いつもこうなんだから……」と、ため息。

わたしは、この話に答えを出していません。クララはやっと引きこもりから抜け出したのか、いつものように「間に合わなかった……」と帰ってくるのか。菊池寛の『父帰る』と同様な終わり方をしていますが、天商演劇部は「今度こそ間に合った」と暗示して幕を下ろしました。

天商野球部が、今年で最後になるとテレビやマスコミで取り上げられましたが、天商演劇部は、来年「新校」になっても(市岡商業高校、東商業高校と合併の演劇部になります。その苦労は察して余りあるものがあります)明るく前を向いてやっていこうというエモーションを籠め、クララに託して舞台化してくれました。その意気に感じてか、ご多忙の中校長先生も来られ、「カンゲキした!」と韻を踏んだのか、おやじギャグか分からない言葉を残していかれました。なかなか言語感覚のいい校長先生でした。普通、コンクールの本選でも校長が来られることは希です。それが塚口まで足を伸ばされました。血の巡りのいい学校であると拝察いたしました。

わたしも、昨年コーチをしておりましたので、たまに顔をだします。正直、一月足らずでこの芝居を演りきることは無茶だと思いました。つい数日前に伺ったときも、主役のクララをやったKさんが、なかなか台詞が入らず苦悩(苦労ではなく、苦悩)していました。幸いシャルロッテをやったYさんとは同級生、励ましあったり罵倒あったり。しかし本番は荒削りではありますが、この「クララ」の初演に相応しく初々しい芝居に仕上げてくれました。ちなみにKさんは陸上部の出身で、演劇は、高校に入って始めてです。Yさんは中学三年間演劇部でしたが、それを鼻にかけることもなく、一緒に仲良く汗を流していました。

ただ、難を言えば、二人の真面目さが役の形象にでてしまい、はじけきれなかったことでしょうか。 そういうと顧問のF先生が上沼恵美子そっくりな顔で、「こんな本書いたん誰やのん!」

おお、ツルカメツルカメ……

 

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ウィキペディアで恥をかく!

2011-08-10 22:32:46 | 自己紹介

      パソコンオンチはこまったものです……

久方ぶりに「大橋むつお」を検索してみると、ウィキペディアに「大橋むつお」という空の項目がありました。そこで略歴を書いたところ「露骨な自己宣伝」と、出てきて、「あ、どないしょ!?」と、オロオロしていると「間もなく削除します」と出てきて、さらによく読むと「自分で自分のことは書いてはいけません」と、書いてありました。今でも検索すると、ウィキペディアの「大橋むつお」の項目には「露骨な自己宣伝により削除」と出ております……

「自分で書いてはいけません」最初から書いておいてほしいと思いました。

ネットオンチというかパソコンオンチは、とんでもないところで恥をかくものですね。

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高校演劇の基礎練習・へたくそなウィンク

2011-08-03 16:22:22 | 高校演劇基礎練習

                       へたくそなウィンク

 あるアイドルユニットの曲で『へたくそなウィンク』という内容の曲があることに気づき、PVを見てみました。ある子がウィンクできずに困っている様子が背景にあり、その間に他のメンバーは次々と出来て、その子一人が取り残され、とうとう撮影はテイク48までいってしまいます。メンバー、スタッフみんながため息ついて「こりゃ、だめだ……」の雰囲気。そこにディレクターらしきオジサンが、「これ可愛くっていいんじゃない……!」ということでOKが出て、メデタシメデタシとなる6分ほどのものでした。

 ここに、高校演劇が抱える問題が二つ隠れていることに気づきました。

 一つは、表情をつくるという演技の問題。日本人は顔の表情筋が弱く、一般的に欧米人よりも表情の変化に乏しく、ウィンクのできない人がかなりいます。以前、大阪府高等学校演劇連盟の演技の講師をやったとき「さあ、みんなでウィンクをしてみよう!」と、ぶちかましました。すぐにウィンクのできた人は一割ほどでした。

 基礎練習で鍛えなくてはならない筋肉がいくつかありますが、わたしは二つに絞り込んでいます。一つは横隔膜。笑ったり、泣いたりするときにこの半随意筋(訓練しだいで意識的に動かせる筋肉)が役にたちます。このことは、わたしの他の基礎練習のブログにあるので見て下さい。 もう一つが表情筋です。豊かな表情が作れなければ役者はつとまりません。まずウィンクしてみましょう。両目をつぶってしまうか、まるで目にゴミがはいったようにギュっと顔半分しかめっ面になってしまいませんか? 鏡を見て一時間も練習すれば、たいていの人はできるようになります。タレントさんやアイドルの子達はみんなできますから、むつかしくはありません。ただ生活習慣にウィンクがないもので笑ってしまったり、とまどってしまう自分を発見するでしょう。そう、いつもの自分とは違う感覚を体験することは大事なことです。

 話が少し横道に入りますが、これを読んでいるあなたが男なら、一度スカートを穿いてみることを勧めます。スカートは内股が直接触れあいます。女性というのは、ささいなことですが、こうやって「自分というものを感じながら生きているんだなあ」ということを実感できます。衣装や道具で、感覚が変わることを実感することは大事なことです。それと同様に、普段やらない表情をすることで自分の感覚が変わることを実感しておくことも大事です。

 ウィンクリレーをやってみましょう。メンバーを半分に分けて向かい合い、最初の人がウィンクして、前の人に伝えます。受け取った人は筋向かいの人に伝え、次々にリレーしていきます。気持ちがのったら「ウッフン」くらいカマシてもかまいません。なにか、今までの自分には無かった感覚やエモーション(感情、情緒)が感じられたら成功です。

【顔のストレッチ】顔のパーツである、眉、目、鼻、口を「ギュッ!」てな感じで、できるだけ顔の真ん中に寄せます。これ以上できないと思った瞬間、「パッ!」てな感じで、これ以上は広げられません! というぐらいに広げます。次に、顔のパーツを出来るだけ下に向けます。物真似のタレントさんがときどきこんな顔をしています。これができたら次に、顔のパーツを上に向けます。次に左へ、右へと寄せていきます。一人でやると、なかなかできません。人についてもらって点検してもらいましょう。みんなで「アハハ」と笑いながらやればいいと思います。

 さあ、次のステップです。顔のパーツを左右逆に上げ下げしてみましょう。たいていのパーツは上下逆にできますが、目だけはできません。目は、両方いっぺんに同じ方向しか向けません。ただ目を真ん中に寄せることはできますので試してください。気を付けてほしいのは、コンタクトをしている人です。目を大きく動かすとズレることがありますので、コンタクトは外してやったほうがいいでしょう。

【顔のネオンサイン】顔の表情で色を表現してみましょう。最初は、赤とか黒とか白とかはっきりした色がいいでしょう。 え、顔で色なんか表現出来ないって? そんなことはありません。「顔を真っ赤にして怒った」とか「青ざめた顔」とかいうじゃないですか。がんばってください。それができたら、点滅するように顔の色を変えてみてください。ネオンサインのようになったら成功です。

【顔で唄ってみよう】好きな曲を流して、それに表情を合わせてみてください。カラオケなんかいくと、みんな普段だったらやらない表情したりしていませんか? もちろん歌は声に出してやってもかまいません。慣れたら、歌詞のついていないクラシックなどに挑戦してみてください。むろんスキャット(意味のない言葉、ラララ~とか)つけてもかまいません。動画サイトでオペラなどの歌手が、唄いながらどれだけ色(表情)をつけているか見れば、良い勉強になります。

【応用、発展編】今までは顔だけでしたが、今度は体全体でやってみます。要領は顔と同じです。

【こ曲の演出への応用】PVでは、その子がテイク48でもできなくて、ディレクターのおじさんが「これもいいんじゃない」でメデタシメデタシになります。これは演出の重要な素養を現しています。 演出は、戯曲が要求している表現と、役者の表現、技量の釣り合いを探す仕事です。役者ができないと思ったら(むろんできるための努力は必要ですが)できる表現に置き換える、柔らかい頭が必要です。その子がウィンクができない。でも、できずに困った顔、表情がいいと、ディレクターは判断します。どうやらマスカラのCMを撮っているという設定のようです。マスカラを使ったカワイラシサが表現できればいいのです。みなさんも演出するときは、この見極めと、置き換えを頭に置いておくといいとおもいます。 わたしが以前「引きこもり」の子の役を演出したとき、友だちがやってきたので、その気配だけでソワソワするというシーンがありました。いくらやってもリアリティーが出ません。役者がヘコミかけました。そこで台本に書かれているソワソワするというト書きを無視し、その場でフリ-ズさせてみました。みごとに、友だちがやってきた緊張感が出てきました。                                    演出は柔らか頭で、稽古場の空気をポジティブにしておかなければならないというお話でした。

   大橋 むつお

『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』          青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説!  お申込は、最寄書店などでお取り寄せいただくか、下記の出版社に直接ご連絡いただくのが、一番早いようです。ネット通販ではアマゾンや楽天があります。青雲に直接ご注文頂ければ下記の定価でお求めいただけます。 青雲書房直接お申し込みは、定価本体1200円+税=1260円。送料無料。 送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。 大橋むつお戯曲集『わたし 今日から魔女!?』  高校演劇に適した少人数戯曲集です。神奈川など関東の高校で人気があります。  60分劇5編入り 定価1365円(本体1300円+税)送料無料。 お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。 青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351 大橋むつお戯曲集『自由の翼』戯曲5本入り 1050円(税込み)  門土社 横浜市南区宮元町3-44 ℡045-714-1471   
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