大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・259『殿下の到着』

2024-11-30 14:24:22 | 小説4
・259

『殿下の到着』 胡盛媛中尉 




 歴代の大統領で劉宏大統領はピカイチだと思う。

 漢明人として日本語のスラングである『ピカイチ』を使うのは憚られるんだけど、西之島で憶えた『ピカイチ』は親しみと尊敬の心が籠っていて好き。

 それに、これは漢明軍の胡盛媛中尉としてではなく、フーちゃんの感想だからね。

 フーちゃんというのはお岩食堂のお岩さんとハナちゃんが付けてくれた愛称。苗字が『胡』だから漢明の発音で『フー』、それに『ちゃん』を付けただけなんだけど、とても馴染んでる。下の名前だと『シェンエン』でしょ、これに『ちゃん』を付けたら『シェンエンちゃん』。ちょっと舌噛みそう。

 
 そのピカイチ大統領に付き添って、大統領府にいくつかある客室の一つに向かっている。


 廊下の窓から見える庭には出入りの造園業者のバンが停まっていて、それをチラッと見て、大統領は脚を緩めて一番端の客室に入る。もう覚悟を決めているので、わたしもそれに続く。

「ご苦労でした船長」

 まずは、造園業者のお仕着せを着た船長を労って、ベッドのそばに寄る。

「……お眠りになっているのね」

「はい、混乱されるといけませんので、ご本人の了解を得て眠って頂いております」

「ありがとう。行き届いた配慮に感謝します。林船長」

「それでは、これで失礼します」

 ビシッと敬礼する船長、それに何かを感じて大統領は振り返った。

「あ、ちょっと」

「ハ」

「……あ、やっぱり尊宅か、栗尊宅(りつそんたく)!」

「あ……分かってしまいましたか」

「いや、苗字が林に変わって……分からなかったぞ、昔はそんなに恰幅も良くなかったしな」

「ハ、宙軍に入った翌年に養子に出されましたので……輸送船に乗るようになってからは、体重も五割り増しになりましたし」

「あ、紹介しておこう。むかし、うちの運転手をやっていた栗尊宅だ、こちらは殿下の世話をしてくれる胡盛媛中尉だ」

「あ、胡盛徳大佐の……」

「はい、広報部の胡盛媛中尉です」

 造園業者のお仕着せを着ているとはいえ、輸送船の船長、中佐か大佐、あるいは除隊したのかもだけど、それでも中佐か大佐待遇。礼は欠かせない……けども、わたしは、いつ森之宮殿下のお世話係に……まあ、情報を知らされた時点で覚悟はしてたけど(^_^;)。

「しかし、閣下も……承知してはおりましたが、見事にお変わりになられましたなあ」

「え、あ、そうだ、つい昔の喋り方になってしまった(''◇'')」

「自分には、その方が懐かしいであります」

「そうはいかないわ、PIしてからは人格変えたんですからね」

「は、はあ、いずれにしろ大統領に変わりはありません」

 軽く背筋を伸ばす船長。

「たしか、船長は今度の航海で引退だったわね……」

 ハンベで確認する大統領、左手の内側に付けているから、とても女性的な仕草になる。

「はい、ですが、この事故で船はドック入りですし、このまま本社の本部付になって定年になるかと思います」

「そうなのね……じゃ、いっそ今日にでも辞めて、大統領参与にならない?」

「え、大統領参与ですか?」

「うん、このフーちゃんと一緒に殿下のお世話係りやってもらえると嬉しいんだけど」

「……殿下のことでしたら、この尊宅、誓って口外することはありません」

「ごめん、そういう意味じゃないの。殿下のことは遅かれ早かれ漏れてしまう。問題は、殿下に早く穏やかに回復していただくこと。そして、その後、どのように処遇させていただいたらいいのか。殿下と共に考えなければならないわ……将軍や高官たちの中には、殿下を利用しようという者も現れるだろうし。そういう者を寄せ付けないためにもあなたたちのような存在が要ると思うの」

「ハ、そういうことでしたら」

「まずは、フーちゃん。殿下がお目覚めになった時は、あなたがお側に居るようにしてもらえるかしら」

「はい、承知しました」

「尊宅さんは……」

「取りあえずは、庭番の詰所にでも居ります。このなりですから」

「そうね、身分の方はわたしが処理しておきます。夕方にはまた顔を出します。では……」

 大統領は足早に執務室の方角に歩いて行き、数分後には大統領専用のオイドがヘリポートから飛び立っていくのが見えた。


☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 栗 尊宅(りつそんたく)        輸送船の船長  大統領府参与
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!77『モニターに釘付けだったぞ』

2024-11-30 08:29:52 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
77『モニターに釘付けだったぞ』 




 店にもどると、マダムがなにか聞きたげだったけど「楽しかった(^▽^)」とだけ言って、事務所に戻る黒羽Dを追いかけてエレベーター。黒羽Dは稽古場のある4Fで降りやがるけど、美優はそのまま最上階の会長室だぞ。

「失礼しま~す……」

 会長室に人の気配はなかったけど、モニターが降りていたんで、美優はコントローラーを手にとって起動ボタンを押す。

 メニュー画面が出てくると、ユーザー名の下に「MITSURU」と「MIYU」が出てくるんで、迷わず「MIYU」選ぶ。設定・フォト・ミュ-ジック・ビデオとメニューが並び、ビデオの下に「スタジオカメラ」が出てきたぜ。

 〇ボタンを押すと、ブースから見たスタジオの全景が見える。右のスティックでカメラが上下左右に、左スティックでカメラが移動する。不用意に動かすとダンスレッスン中のメンバーの子のお尻にピントが合っちまった(^へ^;)。慌てて右スティックを押し込むとオートフォローになって、カメラの方向を変えてもカメラはその子のお尻を追いかけたままになりやがる(^_^;)。

 Xボタンを押すと、メンバーは替わるけど同じお尻だぜ。

「もう、こんなのじゃなくって……」

「R1ボタン」

「R1……」

 声に従ってR1ボタンを押すと胸のアップ……!?

「それ、服部八重。イイカタチしてんだろう」

 そこで気づいた。いつの間にか、会長が後ろに立っていやがる。

「もう、会長さん、こんなことして喜んでるんですか!?」

「そりゃ、美優ちゃんが勝手に操作した結果だよ。まあ、そんな顔しないで、△ボタンで、メニューを呼んで……そう。で、操作クラシック……ね、それでカメラがアナログで動かせるだろう」

 しばらくカメラを動かしていると慣れてきた。

 改めて全景にすると、メンバーやスタッフの熱が伝わってくる。


―― 特急電車、準急停車と勘違いして、ボクはホームで吹き飛ばされた♫ 二回転ショック!ショック! 手にした花束、コスモストルネード! ――


 歌詞に沿って、旋回二回転……したところで、振り付けの春まゆみの声が飛びやがる。

「堀部やえ、あんた切れはいいんだけど力みすぎ。敵討ちじゃないんだからね。小野寺あんたドヤ顔しない。みんな全体にカタイよ。急に強い風に吹かれて、ビックリ、そして、ちょい困り顔のモエ~って一瞬だよ。あとは、パンチと切れ。萌だけじゃ、オモクロには勝てないからね。はい、もう一度サビの前から!」

「「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」」

 と、みんなで返事をしやがって、また延々とレッスンは続く。そしていつしかカメラは、後ろでヘッドセット付けた黒羽に固定されたぜ。

 軽くリズムに乗りながら、黒羽は前面の鏡に映るメンバーのカメラ写りをチェック。時々立ち位置を変えて観客のあらゆる視点を試していく。そしてモニターに映るメンバーのカメラ写りもチェック。そして常に黒羽の横に付いている専属ADに指示を与えていきやがる。

 美優は、もっと真剣な顔をした黒羽を想像してやがったけど、なんだか文化祭の前日に出し物の準備をしているヤリタガリの男子みてえに無邪気だ。

「意外かい?」

 それを見透かしたみてえに、会長はエビせんべいを差し出した。一枚もらうと意外においしかったぞ。

「もっと真剣な顔してやってるかと思いました……」

「真剣だよ。真剣に遊んでんの。そりゃ、歌や振りを最初に覚えるときは真剣一本だけどね。覚えちゃったら遊ぶ。オレたちエンタメは観てる人に楽しんでもらってナンボだからね。いかにステキに遊べるか、それを黒羽は探ってんだ」

 そういう会長も嬉しそうにエビせんべいをかじってやがる。その姿はガキ大将そのものだぜ。

 そのガキ大将と並んで、美優は日が傾くまでモニターに釘付けだったぞ。


 マユは、美優の中で腕組みして、美優の心が少しずつ変化していっているように感じたぞ。


 美優の命は、あと6日と4時間になっていやがった……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・154『お守りの落とし物と大映解散』

2024-11-29 11:29:39 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
154『お守りの落とし物と大映解散』   




 おや?


 学食目指して校舎を出ると、学食横の総合掲示板に新聞部の壁新聞。模造紙三枚のトップの見出しは『実り豊かな修学旅行!』。

 あんまりあか抜けないタイトルで、もう一週間たってしまっては微妙に周回遅れ。でも、新聞部の壁新聞なんて始めて見るし、修学旅行の記事だし、写真とかもけっこう使ってるし『食べたら、もう一度見ましょう!』というロコの意見で、とりあえずは学食。

 ほんの数秒掲示板で立ち止まったために、Aランチが品切れで玉子ドンブリ、ロコはお握りと天ぷらうどん。

 たみ子と真知子は代議会に出るために、今日はお弁当。どうやら、例のタイムカプセルのことを正式に提案するらしい。佳奈子もお弁当持って部室、後輩たちと来年の女バレの話をするらしい。

 MITAKAレギュラーの我々は仲がいいけど、いつでも一緒というわけじゃない。学校のスローガンを踏襲してるわけじゃないけど、自主自立なんだよ。

 あれ?

 食後、掲示板に戻ると、足もとに真新しいお守りが落ちている。まだ授与袋に入ったままで、1/3ほどが袋から出ている。

「八坂神社のだねえ……」「合格祈願ですねえ……」

 瞬間でストーリーが出来あがる。このお守りが、ここに落ちているかのストーリー。

「八坂神社とあるから、修学旅行で買ったものですねえ」

「買った本人が落としたか……」

「誰かにあげて、もらった本人が落っことしたか……」

 合格祈願だ、二年生の女子が三年生の男子に……お守りをあげるような仲だから……ちょっと羨ましい関係に違いない(#*´▢`*#)!

「ちょ、どこいくの!?」

 お守りを手に学食に戻ろうとするロコを呼び止める。

「落とし主は学食に居ます! 呼んで、返してあげなきゃです!」

「ダメよ!」

 ピークの学食で「お守り落した人いませんかあ!」「八坂神社の合格祈願のお守りい!」なんて叫ばれたらぜったい恥ずかしい。わたしらが一瞬で思いついた想像ぐらいは、みんなも思いつく!

「しかたない、生活指導に持って行こう」

 本館一階の生活指導室に向かう。

 生活指導室は無人のことが多い。

 生活指導というのは英語では表現できないらしいけど、意訳すればスクールポリス。学校のもめ事や厄介ごとが持ち込まれる。令和の高校だと、たいてい当番や常駐の先生が居て無人になることはめったにないんだけど、昭和の高校は、そういう面倒なところに先生たちは行きたがらない。

 でもね、二年の二学期ともなると知ってるんだよ。

 若杉先生とかは、お昼ご飯を生活指導の部屋で食べている。生指の部屋は本館の端っこで学食が近い。まあ、二分も有れば、トレーに載せて持って来れるからね。この時間ならきっといる。

「「失礼しまーす」」

「おお」

 予想通り、若杉先生の返事がして、中に入ると若杉先生と現国の杉野がAランチを食っていらっしゃる。わたしたちが食べ損ねたAランチ。

「二年三組の時司です」「同じく宮田です」

「「…………」」

 二人とも、テレビに気を取られて返事もしない。

「あの、学食横の総合掲示板のとこでお守りを拾ったんです」

「新品の八坂神社のです」

「え、ああ、そこに置いとけ……」

 こっちを見もしないで、お箸でテーブルを指す若杉先生。杉野はテレビの画面観てカンムシだし。

「よろしくお願いしまーす」「八坂神社のお守りですからあ」

 いちおう、ささやかに念を押してドアを閉める。

「なんか失礼しちゃうね」

「アハハ……でも、テレビのニュースも、ちょっとビックリでした」

「え?」

 わたしはワイドショー的なのをやってたことしか記憶にない。

「え、なにかやってた?」

「はい、大映が解散したってニュースです」

「え、ダイエー?」

 ダイエーと言われて頭に浮かんだのは、スーパーダイエーのことだった。


☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!76『ランチデート』

2024-11-29 07:05:17 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
76『ランチデート』 




 美優は一週間後に死が迫っている黒羽の親父のために黒羽の恋人役を買って出やがった……いや……ええとぉ、親父の願いを重荷に感じて、仕事に手が着かなくなった黒羽のため?……それとも、美優自身一週間と限られた時間の中で、精一杯恋の真似事をしてみたかったから?

 マダムも店にもどってから同じことを聞きやがった。母親としては当然だよな。

「わたしは、一週間後には死んでしまう。だから、好きなことをやる。それだけ……なぜとか、どうしてか、なんて理由を考えている時間はわたしには無いの」

 美優は店の開店準備をしながら、それだけを答えやがった。


 昼をちょっと過ぎて、黒羽が美優を食事に誘いに来やがった。


 タクシーで10分ばかり行った、こぢんまりした品の良いフランス料理の店に二人で出かけやがる。

「ほんとはディナーに連れてきたいところなんだけどね。親父や新曲のことで時間がないから、ランチでごめん」

「いいのよ、その代わり、帰りはタクシーじゃなくて……」

「うん……?」

「事務所まで歩いて帰らない?」

「いいよぉ……」

「あら、どこにメール?」

「クララに『30分自主練』」

「ごめんなさい、レッスンに響いちゃった?」

「いやいや、メンバーたちで考える時間をつくらなきゃと思ってたとこだから『黒羽の悪い癖は、なんでも自分でやっちまうところだ』って会長にも言われてたしね。美優ちゃんは、それを知らしめるために神さまが遣わした天使かもしれない」

「ま、お、臆面もなく(''◇'')ゞ」

「可笑しい?」

「知りません!」

 フフフ、憑いてるのは天使じゃなくて悪魔なんだぞぉ、小悪魔だけどな(≖͈́ㅂ≖͈̀ ) 。

 ランチとは言え、なかなかのもんだ。A-5ランク特選牛フィレ肉のグリル トリュフの香るソースをメインに、スープとスパーリングワイン。パンはできたてのものからチョイス。バターとオリ-ブオイルが付いていて、しっとりと食える。ゆったりと風を感じるので首を向けると、テラス越しにお堀が見えた。

 急いでというわりには、黒羽は40分以上かけやがった。美優は、もう食後のコーヒーに手を伸ばしてやがる。

「もっと、ゆっくりすればいいのに」

「アハハ、バイトの子が休んだときなんて、お母さんと交代で、お昼なんか5分ですましちゃう。やっぱり癖がでちゃうかな(^_^;)」

「店も、なかなか大変なんだな」

 出かける前、母が以前バイトをやってくれていたサキちゃんてのに電話してるのに気づいてやがる。美優の一週間を自由にしてやろうという心遣い……気がつかないふりをしてやがるけど、出ちまうんだよなぁ、サキちゃんが間に合うのは明日からだしな。


 帰り道は少し遠回りをしてお堀端を歩きやがる。
 
 美優は喋りっぱなしだったぜ(^〇^)。


 最初は身上調査みてえだ。ヒカリプロに入るまではどうしていたか? 学校じゃどんな子だった? 小さいころは左利きだった? いつまでおねしょしてた? いままでで一番手のかかったタレントは? テレビ局のお弁当って? 上着を着る時は右左どっちから手を通す? 新聞は読んでます? お父さんと妹さんの思い出は? 通販はアマゾン派?楽天派? 神田祭好きですか? 幽霊って信じます? 手を組んだら左右の親指どっちが上に来ます? 自分の鼻は大きい方だと思います? 22世紀まで生きたいと思います?

 なんだか手当たり次第で、会話が途切れたらどうしようと緊張していやがる。

 黒羽Dは、おかしくなってきやがった。小学校の時の靴のサイズを左右別々に聞いてきたときには思わず笑ってやがる。

「ハハハ、なんだか、質問ばかりだな」

「だって、デートなんてしたことないもの。それに……」

「それに?」

「婚約者としては、いろんなこと知っとかなきゃ、黒羽さんのこと」

「婚約者に黒羽さんはないだろう」

「そ、そうね……え、英二さん(*ノωノ)」

「さん抜きで言ってみ」

「そ、そんな……じゃ、わたしのことも美優って呼んでください」

「言えないことはないけど、お互い不自然だな……ま、しばらくは、さん・ちゃん付けでいいんじゃない」

 昼下がりの街は、昼の休憩時間が終わったのだろう、人影がまばらになってきた。

「英二さん」

 下りの階段になったところで美優が声をかけた。

「うん?」

 黒羽が振り返ると、そこに美優の顔があった。ほんの数センチの隔たりで、目をつぶった美優の顔がせまってきてやがる。

「オット……」

 そう言いかけて、二人のクチビルが重なってしまった。

 階段の段差を利用して、美優が体を預けにきやがったんだ。そうしなければ、二人の身長差ではクチビルは重ならねえ。

「美優ちゃん……」

「恋人同士、お互いのクチビルぐらいは知っておかなきゃ」

「大胆だね……」

 黒羽は美優の大胆さへの驚きに愛おしさが付いてきたのに、自身驚いてやがる。

「……この先は進入禁止」

 黒羽のつぶやきに、美優の心は、トキメキとガッカリが一度に来た。

「道に迷ったな、この先進入禁止。大通りに出て、やっぱりタクシーにしよう」
 
 黒羽はディレクターの顔になって、道を戻り始めやがった……。




☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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やくもあやかし物語2・080『こっちに進んでくる!』

2024-11-28 12:32:25 | カントリーロード
くもやかし物語 2
080『こっちに進んでくる!』 




 ヤバイ!

 
 いったん海に落ちたそいつは魚雷みたいに、こっちに進んでくる!

 こういう時は御息所とかミチビキ鉛筆とかオモイヤリの出番なんだけど、度重なる戦いでグロッキー、うんともすんとも言わないよ。

 仕方がないんで、体育2の腕前で泳いで逃げる!

 バチャバチャバチャバチャ! バチャバチャバチャバチャ!!

 盛大に水しぶきをあげるけど秒速20センチくらいしか進まない。

 溺れる者はわらを掴んで沈んでいく……日本でやっつけた妖の断末魔の声が蘇る(;'∀')!

 あの時は、こいつ間違えてやがると思ったけど、まさに、いまのやくもは、そんな感じ。あの言葉の意味と無力感が分かるよ(;゚Д゚)!

 分かったってしょうがないんだけどね(-_-;)。

 やくもの運命は風前の灯火、シリーズ2まで続いた『やくもあやかし物語』も累計241回で無念の最終回!?

 ジャッパーン!

 これから覚悟しようと思った時、そいつが水しぶきあげて現れた(>▭<)!

「ごめん、めちゃくちゃ遅くなっちまって!」

「キャ、海猿!?」

「ム、誉め言葉の海猿じゃねえな、まあ、いいけどよ」

 それは、ただひとり、まだ救援に来てなかったハイジだったよ。

「だいじょうぶ? お腹、もう治った?」 

 そう、ハイジは妖怪くわせものにいっぱい食べさせられて寝込んでいたんだ。

「うん、王女さまが見舞いに来てくれて、陀羅尼介くれて、飲んで寝てたら治っちまった(^_^;)」

「そう、それは良かった(^▽^)。でも、なんで海に落ちてきたの? それも、やくもの位置からはズレてるし」

「海に落ちたのは、やくもが海に居るからだ! 位置がズレたのは、少しでも早く行ってやりてえと、勢いが付きすぎたからだ!」

「あ、そうか、ごめん。で、どうもありがとう」

「それで、敵はどこにいやがるんだ!?」

「ああ、それがね……」

 トバリとトバルをやっつけて草原を歩いていたら、突然海になって困っていることを説明した。

「ウウ……そうだったのか。この海、やくものバタ足じゃきびしいもんなあ」

「アハハハ……」

「とにかく、ここで水に浸かっててもらちが明かねえ、とりあえず、浜にあがろうぜ」

「う、うん、だよね」

 二人で浜に上がって、火を起こして服を乾かした。

 二人ともビチャビチャで、キャミとパンツだけになって焚火の前でジッとしている。

 なんだか、遭難者みたいで落ち込んできたよ……。



 
☆彡主な登場人物 
  • やくも        ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド  メイソン・ヒル  オリビア・トンプソン  ロージー・エドワーズ  ヒトビッチ・アルカード  ヒューゴ・プライス  ベラ・グリフィス  アイネ・シュタインベルグ  アンナ・ハーマスティン
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女 マーフォーク(半魚人) トバル(魔王子)  トバリ(魔王女)
  
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!75『突然の婚約発表』

2024-11-28 08:36:51 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
75『突然の婚約発表』 





「だからあ、もう、みんな黒羽さんに手を出してはいけません!」

「ちょっと、美優(ᗩꙍᗩ)!!」

 と、マダム。

「ちょっと美優ちゃん……」
 
 黒羽は、一度美優を廊下に出しやがる。

「これは、あくまでオヤジを納得させるための……バーチャルなんだから」

「たとえそうでも、その気になっておかなきゃお父さんは気づいてしまうわ。病人は、そのへんの勘は鋭いのよ。わたしも、ついさっき、こないだまでは、そうだったから、よく分かるの。決めたからには覚悟して」

「美優、どうすんのよ!? 大っぴらにしてしたりして!」

 マダムは、娘の爆弾発言を問いただそうと、廊下に出てきた。メンバーの矢頭萌とかもくっついてきやがる。ビル中に騒ぎが広がりそうなんで、黒羽Dは、慌ててみんなをスタジオにもどそうとしやがったけど、美優はその上をいきやがる。

「AKRは、恋愛禁止になってますけどぉ!。密かに黒羽さんに心寄せてる人がいちゃいけないので、宣言しときます! この英二さんは……」

――売約済み――

 いつのまに用意したのか、ロ-ザンヌの(売約済み)のシールを、黒羽の胸や背中、おでこにも貼り付けやがった(^_^;)。

「「「「「「「「「「キャー、ウワー!」」」」」」」」」」

 歓声があがったぜい。

「結婚式はいつ!?」

「告白は、やっぱ黒羽さんから!?」

「シッ、シッ、これからは、黒羽さんの半径50センチ以上寄っちゃいけないからね。50センチ以内は婚約者のエリアだからね!」

 クララが、通せんぼをしやがる。

「って、いうか、クララさん、その距離超えてるしい」

 萌が、くちびるを尖らせる。

「わたしは、親衛隊長だからいいの!」

「「「「「ずるい~~~~!」」」」」

 アハハハ、ひとしきり騒ぎは収まらねえ。

「……婚約指輪は、まだなんですかぁ(꒪▿꒪)*?」

 知井子が静かに聞きやがる。

「婚約指輪」という言葉は刺激的だぜぃ。


 ジー…………(⚭-⚭(⚭-⚭(⚭-⚭(⚭-⚭( ⚭-⚭ )⚭-⚭)⚭-⚭)⚭-⚭)⚭-⚭)


 47人のメンバーとスタッフ、そんで母親であるマダムの視線が、美優の左手に集中しやがった。

「あ、あの、その……ついさっき婚約したばっかで、そういうのまだなんです……アハハ(#^_^#)」

 美優は、顔を赤らめ、眉を八の字にして頭を掻きやがる。

「ワー!」「そんなの!」「信じらんない!」「大の男があ!」「なにしてんの!」

 と、またもかしましい。

「いや、だから、それはね……」

 と、黒羽が言い訳しようとすると、黒羽のスマホが鳴ったぞ。

「はい、黒羽……あ、会長……はい、今すぐ行きます。オレ会長室行ってくるから、みんなはレッスン。よろしく、まゆみ(振付師)さん」

 パンパン!

「はい。さあ、あんたたちがんばるのよ!」

 春まゆみが手を叩いて、やっとみんなを集中させる。なんか、落ち着きのねえ小学一年生みてえだ。

「マダム、美優ちゃん、いっしょに来て」

「え?」

「会長が、二人にもいっしょにってことなんで」

「「え?」」


「黒羽、おまえは、こと自分に関してはカラッキシなんだからなぁ。ホレ」


 会長は、小さな小箱を投げてよこしやがった。


「……これは?」

「グリコのオマケじゃねえぞ。正真正銘の婚約指輪」

「会長……」

「会長さん……」

「急場のことなんで、筋向かいの宝飾堂のありあわせ。でも、モノホンだから……美優ちゃん、マダム、こんな朴念仁だけどよろしく。こいつのお父さんのために……」

「会長……!?」

「夕べは、ずいぶん酔っぱらって……見かねた美優ちゃんが面倒みてくれた……この界隈のことは、業界のことと同じくらいの地獄耳。それに妹さんから電話もあったしな」

「由美子のやつが……!」

「怒ってやるなって……親孝行したいころには親は無しってな。それに『コスモストルネード』発表までは、この朴念仁にもしっかりしてもらわなっくちゃ困るしな」

「ありがとうございます。会長!」

「お礼言うならなら、美優ちゃんだ。かりそめにも10歳以上も年上の婚約者引き受けてくれたんだからな」

「会長さん」

「なんだい?」

「あの……レッスン見てちゃいけませんか。婚約者として英二さんの仕事ぶり見ておきたいんです」

「それは断る。発表までは非公開だ」

「あの、ブースからでもかまわないんです。お父さんにちゃんと婚約者と思ってもらうためには、英二さんの仕事見といたほうがいいと思うんです」

「だめだ、スタジオからブースは丸見えだ……まあ……でも、この部屋のモニターならいいよ」
 
 会長が、机のボタンを押すと、天井から大きなモニターが降りてきた。

「ほら、このゲ-ム機のコントローラーで操作できる」

 モニターにスタジオの全景が映し出された。

「あとは、触っているうちに分かる。じゃ、美優ちゃん、よろしく」

 会長は、ホウキとちり取りを持ってドアに向かった。日課の掃除にいきやがった。さっきやったばかりなのにな(^_^;)。

「あ、それと、適当に時間作ってデートしとけ、リアリティーが出るようにな」

 そう言い残し、ホウキを振って出て行きやがった。

「じゃ、オレも仕事にかかる。あ……昼飯いっしょに食べよう。昼に店に迎えにいくよ」

「は、はい(;'∀')」

 マユは、美優のトキメキを、どう受け止めていいのか分からなくなってきたぜ……。




☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!74『期間限定の恋人・2』

2024-11-27 10:33:23 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
74『期間限定の恋人・2』 






「一週間の期間限定……それでよければ」


「美優ちゃん……(⊙⊙) 」

「聞いて」

 黒羽の言葉をさえぎって続けやがる。心臓はバックンバックンなのに、メチャクチャ落ち着いて見えるぜ。大した奴だぜ美優ってよ。

「芸能プロって夢を売るお仕事でしょ。うちもそう、ブティックは女の子に夢を売るの。ガーリーファッションとかゴスロリとか……うちは、あんまり大仰なロリータファッションにならないように気をつけてる。そのまんまご近所歩いても違和感ない程度に。田舎のおばあちゃんとかが来ても目を回すようなオーバーロリータにならないようにね」

「ああ、そうだね。そのセンスの良さと、お母さんの商売の確かさで、うちも注文のほとんど、このロ-ザンヌだもんな」

「でしょ。商売の駆け引きではお母さんにかなわないけど、わたしだって……!」

 ガチャン!

 美優は、平静に言えたつもりだったが、振り向きざま、シンクに食器を投げ入れるように放り込んじまってカップを割ってしまいやがった。

「アッ……!」

 指を切っちまいやがった。

 心臓がバックンバックンだったんで、ケガの割には血が流れっちまう。

「だめだ、手を心臓よりも高く上げて。救急箱は、どこ!?」

 黒羽は十代のころADになって、下積みからHIKARIプロのチーフディレクターになった男だ。ちょっとしたケガの手当などはお手の物でやがるぜ。

「ありがとう……こんなオッチョコチョイじゃダメかな(-_-;)」

「気持ちは、嬉しいけどね」

「……黒羽さんじゃなく、お父さんに」

「あ……そうだね(^_^;)」

「わたしも、ひところは命が危ないって言われてた(本当は、見かけは元気だけど、一週間の命)でも、元気になって分かるの。お母さんや、友だちが気遣ってくれたことが。そのときは気づかなかったけど、わたしが元気になれたのは、そういうみんなの気持ち。お父さんにも必要よ、あとわずかなお命なら、なおさらのこと……それとも、わたしなんかじゃ黒羽さんには釣り合わない?」
 
 黒羽は、包帯を巻くのと同じ確かさで返事を返しやがる。

「そんなことは無いよ。高校時代はミス乃木坂学院にだって選ばれたじゃないか」

「え、そんなこと覚えていてくれてたんですか?」

「ああ、一時は、うちの事務所からスカウトしようかって、話が出たぐらいなんだから」

「ほんと!?」

「ああ、お母さんにキッパリ断られたけどね」


「そうだね、美優はオンチだし、運動神経も亀さんといい勝負だもんね」


「お母さん!?」「マダム!」

 母が、車のキーをチャラチャラいわせながら、リビングのドアのところに立っていやがる……。

「マダム……」

「黒羽さんが居て助かったわ。47着の衣装、わたし一人じゃ運べない」

「わたしが居るじゃない」

「美優に手伝ってもらったら、倍時間がかかる!」

「もう、そういうこと言う?」

 段ボール箱を三人で運びながらの会話。母の真意は分かっていた。残りの一週間、美優を気ままに過ごさせてやりてえんだ。

「黒羽さん、わたし、こう見えて、あちこちガタがきててね。一週間ほど店休もうかと思って」

「それは、すみません。無理な仕事させてしまって」

「で、この仕事がキリだから、徹夜したのよ。あ~眠い」

「だめよ、お母さん。いつも通りにしてなくっちゃ!」

「だって、美優……!」

 段ボール箱を運びながら親子が睨み合う。その両方の目が潤んでやがる。

「……どうかしました?」

 黒羽が脳天気に聞きやがる。

「バカな親を持つと……」
「バカな娘を持つと……」

 同じグチが、親子の口から同時に出やがった。


「みんな、新しいコスができたから、自分の名前を見て試着して」


 黒羽がそう言うと、メンバーのみんなが集まって、キャーキャー騒ぎ出しやがる。

「わたしと八重さんで配るから、順番に並んで!」

 クララが仕切りやがる。そんで新曲『コスモストルネード』への意気込みはすごいもんで、衣装をもらってマックスになりやがる。

「ちょっとお! みんな聞いてくださーい(>◇<)!」

 美優が叫んで、やっと静かになった。

 美優は宣言したぜ……!

「……わたしと黒羽さん、婚約しましたから!」

 え……えええ(*゚ロ゚)(*゚ロ゚)(*゚ロ゚) ( ゚Д゚)(゚ロ゚*)(゚ロ゚*) (*゚ロ゚)(*゚ロ゚)(*゚ロ゚) !?

 47人の驚愕に、アキバじゃ震度3の局所的地震が観測されちまったぜぃ(^_^;)

 
☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・153『魔法少女のわがままランチ』

2024-11-27 08:39:07 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
153『魔法少女のわがままランチ』   





 平日の昼間から志忠屋に来ている、今日は修学旅行の回復休日だ。


 志忠屋は令和の宮之森にあるんだけど、妖や魔法使いたちのお店。

 パスタとシチューのお店で、注文すればたいていのものは作って出してくれる。


「はい、魔法少女のわがままランチ」


 ペコさんが、特製ランチのプレートを置いてくれる。

 ランチは、その昔、お祖母ちゃんの無茶な注文を受けて発案した特製ランチ。

 今まで、何度かオーダーしたんだけど「あれは、やめとき」とか「大人になってからにせい」とかもったいを付けて出してくれなかったメニュー。

 トンカツにイモサラダ、キャベツの千切りの横にはパスタのナポリタンとレモンが添えてあって、お椀のお味噌汁。トンカツのサイズが違うけど、学食のA定食と変わりがない。

 カウンターのソースをかけて、お箸でトンカツの一切れを口に運ぶ。

「うう~ん、肉厚で美味しいトンカツだ!」

「そうかぁ、ほんなら、最後までそう思て食え」

 タキさんが憎たらしいことを言う。

 まあ、この愛想の無さも志忠屋の値打ちで、それをペコさんが、こんな(^○^;)顔してフォローしてくれるのも、この店の味わいなんだ。
 ペコさんは、こないだ来た時よりもスレンダーで、いっそう可愛く美しくなっている。この不愛想で口ぎたないタキさんと働いていて美貌に磨きをかけているのは大したもんだ! とにかくトンカツが美味しい!

「ううん、やっぱりトンカツは脂身が入ってないと美味しくないですねえ」

 正直に誉め言葉が出る。

「その脂身はな、ペコがダイエットして減らしよった肉や」

「え、嘘ですよ(>_<。) 」

 一番テーブルにランチを届けてるペコさんが顔を赤くして否定する。

「それは、マスターの腹の肉だわよ」

 ランチを受け取ったつくも屋のマイさんが、混ぜっ返してMS銀行のアイさん、寿書房のミーさんが耳をヒクヒクさせる。

 三人のランチはエビフライ定食だ。マイさんがフォークを入れると、香ばしい海老とタルタルソースの匂いがする。

「ハ~ム……!?」

 二切れ目のトンカツを口に運ぶとエビフライになっている。

 あれ、ミックスフライ定食だったっけ?

 そう思って三口目に箸を付けるとアイさんのカキフライ定食が目に入って、三口目のそれはプリプリのカキフライになっている。

 ええ!?

 次にお味噌汁をすすると、ビーフシチュウ( ゚Д゚)。アイさんはビーフシチュウだったし!

 その後も、他のお客さんの料理が運ばれたり、その料理から、他のメニューを連想すると、自分のプレートの料理がコロコロと変わっていく!

「あ、面白くてお得感がハンパないです!」

 喜んで箸をつけるたびにコロコロ変わるランチを楽しむ。

「え、う、フググ!」

 ついに、口の中でメニューが入れ替わるようになってビックリ( ゚Д゚)。

 フライを食べたつもりがサビ抜きの中トロに変わり、もう一度咀嚼するとカラシを思い切り効かせたオデンになって、お水をすすると強炭酸のコーラ!

 ウ! 

 堪えたら、思い切り鼻からコーラが噴き出て死ぬような目に遭った。

「なあ、せやから言うたやろがぁ(๑ ิټ ิ) 」

「い、いや、コーラじゃ不覚をとったけど、分かってたし。な、なかなかなメニューだと思うしぃ(''◇'')」

「意地張ってんと、これにしとき」

 魔法少女のわがままランチが、いつものパスタセット大盛りに変わった。

「まあ、慣れたら、最初の直感で安定して変わらなくなるからね(^_^;)」

 暖かい笑顔を向けると、別の『魔法少女のわがままランチ』を岡持ち(出前箱)に入れるペコさん。

「じゃ、出前行ってきます」

 カランコロンとドアベルを響かせて出前に行った。

「出前始めたんですか?」

「ああ、年に何回かだけやけどな。それよりも、メグリ、修学旅行に行ってきたんやてなあ」

「あ、うん。いろいろ面白かった!」

「万博のタイムカプセル見に行ったんやろ?」

「うん、地上に出てるモニュメントだけだけどね」

「2000年に一個掘り出して、点検したんやてなあ」

「うん、5000年も待てないからね。あ、その時、赤松の種を植えて、ちゃんと芽を出すか実験したらしいです」

「ああ、これやなあ」

 タキさんが菜箸を振ると、カウンターの上に3D映像が映った。

 天守閣を背景に、半分だけ見えてるモニュメントの横に、わたしの背丈よりも大きく、でも、まだ幼木の雰囲気のアカマツがスックと立っていた。


 家に帰って調べると、例のアカマツは万博記念公園のほか三か所に植えられて、大阪城には無かった。根付かなかったのか、最初から植えられていないのか。

 調べてみようと思ったけど、歴史には微妙な分岐がある。

 未熟な能力で調べると、今日の『魔法少女のわがままランチ』みたいなことになる。

 そっ閉じにして、学校でやってみるタイムカプセルのことを考えてるうちに寝てしまった(^_^;)。

 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!73『期間限定の恋人・1』

2024-11-26 08:16:32 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
73『期間限定の恋人・1』 





 スズメの鳴き声で、半ば意識がもどってきた。

 ……いつもの朝だ。このスズメの泣き方で、おおよその時間がわかる。いつもなら、もう一群れのスズメたちがやってきて、ちょうど起きる時間になる……ちょっと変だ。

 黒羽は、音楽事務所のプロディユーサーをやってやがるんで、音感は並の人間よりも鋭い。スズメの鳴き声が微妙に違う……と感じやがった。


――そうか、友だち……いや、恋人でも連れてきたかな……スズメも、なかなかやる――


 おめでたい誤解は、コーヒーの香りで打ち消されやがったぜ(^▢^)/。

「え、このベッド……この部屋……?」

『黒羽さーん。もう起きて、朝ご飯できたから』

――この声は……?――

「おはよう!」

「ゲ(# ゚Д゚#)」

 明るい笑顔が視界に入って、慌てまくる黒羽D。マユが企んだわけじゃねえけど、めっちゃ面白れえ(^▭^)

「み、美優ちゃん……!」

「ハイ、おはようございます(^〇^)!」


「すまん、この通りだ!」


 朝食を前にして、黒羽は深々と頭を下げやがった。

「そんなのいいから、冷めないうちに。話は食べながらでいいわ」

「お母さんは……この状況……?」

「まだ帰ってない。黒羽さんのせいよ」

「ボクの?」

「正確には、HIKARIプロのね……五日で四十七人分の衣装。うちだから引き受けられたのよ」

「ああ、新曲の発表に間に合わせなきゃならないから……無理言った。ごめん」

「縫製にクレームついて、お母さん、とうとう泊まり込み……トーストお代わりする?」

「うん……ああ、すまない」

「そんな忙しいときに、チーフプロディユーサーが酔いつぶれていていいのかなあ……」

 オーブントースターに食パンを入れながら意地悪を言ってみやがった。たいした意地悪じゃねえけど、ツボを心得てやがる。可愛い顔して、こいつ小悪魔の才能があるぜ。

「いや、面目ない。ちょっと事情が……」

「黒羽さん。ほんとは恋人のとこに行けばよかったのに……」

 ム、なんちゅう切り返し!

「ゲホ、ゲホ、ゲホ……」

 黒羽は、派手にむせかりやがる。

「あ、ごめん。ひょっとして、まだナイショのことだった(;'∀')?」

「ナイショもなにも、恋人なんていないよ。このクソ忙しいHIKARIプロのプロディユーサーに、そんなヒマはないよ」

「でも、夕べは、さんざん言ってたわよ。わたしのこと妹さんと間違えて」

「え、あ、それは……」

「どーなのよ……」

 黒羽は観念して病院でのこと話しやがる。例の『恋人なら、もういる』なんてその場しのぎのウソの話をな。

「じゃ、お父さんは婚約者がいるって信じてるんだ……」

「ハッタリだってわかってるよ」

「だったら、なんで、あんなにヘベレケになっちゃうのよ」

「……だよな。でも無いものはしょうがない、今夜にでも正直に話すよ」

「でも、お父さんガッカリ……その……長くないんでしょ、お父さん?」

「そんなことまで、しゃべったのかオレ?」

「わたしも病人……だったから」

「そうだ、たしか、美優ちゃん入院してるんだよな」

「『だった』って言ったのよ。昨日退院しちゃった」

「そうか……それはおめでとう。元気になってなによりだ……オヤジは、あと一週間……なんか、他の方法で親孝行考えるよ……じゃ、オレそろそろ行くわ」

「やだぁ、黒羽さん、自分の家の感覚になってるでしょ。HIKARIプロはすぐそこだよ。まだ八時まわったばかりだし」

「いや、夕べはレッスン見てないからね。早く行ってスタジオの空気吸っとかなきゃ。クララなんか九時には、スタジオにやってくるからね」

 そう言うと、仕事の虫はコーヒーを一気のみして、上着を掴んだ。美優は、ときめく心を無意識に押さえ込みやがった。

「そうよね、うちのお母さん徹夜させるぐらい熱が入ってるんだもんね」

「ごめん、迷惑かけたね。落ち着いたら、お礼させてもらうよ」

 黒羽は、右袖に腕を入れながら、ドアに向かった。

 マユは、小指の先だけ美優の心臓を刺激したぞ。ラノベでいう「胸キュン」てやつだ。

 するとよ、美優の心は瞬間で沸騰しちまって、とんでもねえあぶくが浮かんできやがった!

「わたしが恋人になってあげようか」

「え……」

 左袖をぶら下げたまま、黒羽が振り返りやがる。


「一週間、期間限定の恋人……だけどね(*´꒳`*) 」




☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!72『黒羽Dを介抱する』

2024-11-25 08:06:17 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
72『黒羽Dを介抱する』 





 HIKARIプロの黒羽Dじゃねえか( ゚Д゚)!?

 あ、マユさん(;'∀')。

 ああ……ごめん美優。時どきマユの意識が表面に出てきちまう。今のは、酔っ払いが黒羽Dだって分かっちまったショックだ……まあ、適当にやっから(^▭^;)。

 は、はい。

 地下鉄に乗って帰らなかったら、美優は、こんなことはしなかったかもしれねえ。

「よっこいしょ!」

 おお!

 酔っぱらった黒羽ディレクターを、自分の家まで肩をかして連れてきちまいやがった。

 だいじょうぶかぁ?

 大人としての判断なら、たとえ知り合いでも、AKRの事務所は、すぐそこ。とても自分の足では歩けそうにない黒羽さんに一言二言声をかけて、事務所の人に来てもらっただろう。

「事務所の人に来てもらいましょうか、黒羽さん」

 実際、一度は、そうたずねたよ。

「いや、事務所には言わないでくれ……いや、大丈夫。しばらく休んだら……大丈夫……あ、美優ちゃんかぁ‎꜀( ꜆-ࡇ-)꜆ 」

 ああ……とても大丈夫そうじゃねえ。そんで、美優を見る目は、まるで高校時代の美優を見る目だぜ。美優も地下鉄の中で感覚が高校生に戻っていやがったしな、その相乗効果ってやつだ。

――知らねえぞぉ、面白ぇけどよ――

 美優の中でつぶやいたけど、今は美優の心には届かねえ。持ち前の親切心と、ちょっとした冒険心で飛躍してやがる。


 なんとか家に連れて行くと、母親の美智子が電話をしてきやがった。


 美優のあとを追いかけて帰宅するつもりでいやがったけど、AKRから請けた衣装の縫製でトラブルがあって、今夜は帰ってこられねえという内容だ。

「うん、わたしなら大丈夫。お母さんは明日の開店に間に合えばいいから」

『そう、じゃ、なるべく早く帰るから』

「うん、じゃ、バイビー……」

『ハハハ』

「なにがおかしいのよ?」

『バイビーなんて、何年ぶり……高校生にもどったみたいよ!』

「そんなことないよ、たまたまだよ、たまたま!」

 少しムキになって言やがる。電話の向こうの母は泣き笑いしてやがる。

 なんか微笑ましいぜ。

「じゃ、切るよ」
 
 美優は、携帯を切ると黒羽のために水を持っていきやがる。

「あ……」

 ソファーに寝かせていた黒羽の姿がなかったぜ。

「黒羽さーん……」

 声をひそめて呼ばわると、自分の部屋から気配がした。

「もう、黒羽さん。どこで寝てんですかぁ!」

 ふとんをめくると、黒羽はパンツ一丁になって『く』の字になっていやがる。美優のベッドの中でよぉ(''◇'')。

「きゃ」

 美優は、小さな悲鳴をあげて、そっとふとんをかけ直す。また黒羽は、ふとんをはね飛ばしやがる(^_^;)。

 そんなことを三回繰り返して、美優は、エアコンの暖房を切って、窓を少し開けた。冷気がサワっと入り込んで、黒羽は自分でふとんを胸までたぐりよせやがったぜ。

「黒羽さん……お水」

「す、すまん」

 まるで素面のように、黒羽さんは半身を起こし、おいしそうに水を飲み干した。ちょっとホッとして……なんでもないわ。

「あ、あの……」

「うん~?」

 黒羽さんは、うるさそうに返事をかえした。

「いいえ、なんでも……」

「言いたいことは、分かってる……ちゃんと彼女はいるんだ。ちゃんと婚約までしてんだからな……」

「え……( ゚Д゚)!?」

 面白ぇ、美優の頭にショックと混乱が一度にやってきやがったぜ(^△^;)

「だから、オヤジには頼むよ……週末までには『コスモストルネード』仕上げなきゃならないんだ。だから頼むよぉ、兄妹なんだからさ、な、由美子。いい子だからさ……」

「え、あ、ちょ、黒羽さん(><)」

 そう言って、美優の頭を乱暴に撫でると、スイッチが切れたように寝ちまいやがった。

「妹さんと間違えてんだ……酔っぱらい」

 ホッとして、ベッドの脇を見ると、服を脱ぎ散らかしてやがる。美優は複雑な気持ちで、たたんでやったぜ。

「黒羽さんの奥さんになる人って苦労……すりゃあ、いいのよ!」
 
 美優は、乱暴にドアを閉めやがった。

 おもしれえ展開になってきやがったぜ。
  


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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銀河太平記・258『大統領のサンルーム』

2024-11-24 12:06:16 | 小説4
・258

『大統領のサンルーム』 胡盛媛中尉 




 モンゴルでの戦闘は無かったことに……なってしまった。

 でも、現実にはロシアとモンゴル双方に千を超える犠牲者、我が漢明軍にも40名の負傷者が出ているので、前哨戦の地名をとってノモンハン事変という呼称になった。

「つまり、あの馬乳酒の乾杯で、本当にチャラになったというわけですか?」

 お茶碗に手をかける前でよかった。お茶碗を手にしていたらひっくりかえしていた。もし、少しでもお茶を口に含んでいたら噴き出すか、盛大にむせかえっている。

「うん、ロシアもモンゴルもメンツが掛かってるし、うちも怪我人出しただけで済んでるしね。じっさい、ノモンハンでもロシアとモンゴルは戦ってるしね」

「はぁ」

「それに、あれを公的に戦闘にしてしまうと、准将は抜け駆けで処罰しなくちゃならない」

「あ……」

「朱元尚准将は、あくまでも、軍広報部長として取材中の事故で頭を打った。それで入院」

「はぁ」

「補任にあたっては、この大統領官邸に呼び出して、昔で言えば勅任官待遇で記念写真まで撮ったから、無下には扱えない」

「そうなんですか」

 実は、あの補任式も釈然としない。軍の中枢からは外したとはいえ、准将に昇格させて特別待遇の大統領とのツーショット。撮ったのはわたしだし。

「准将の一族はね、グノーシス戦争の英雄なのよ」

「ええ!?」

 グノーシス侵略。

 百年前、火星がようやく独立国家群として発展しようかという時に、突如襲った正体不明の侵略。マス漢、扶桑、連合国が中心になって乗り切ったぐらいしか知識は無いけど、マス漢の宗主国である漢明も、いろいろカンでいるんだ。

「マッパ病(マースパルスウィルス感染病、略してマッパウィルス病、もっと略してマッパ病)も収束の兆しを見せ始め、おそらくは、もう数週間で終息宣言が出されるわ」

「あ、それは良かったです(^▽^)」

 戦争も疫病も無いにこしたことは無い。起きてしまったのなら、最大の努力でさっさと終わらせるべきなんだ。

「終結したら、今のフーちゃんみたいに、火星の人たちは喜ぶでしょ」

「はい、いいことですよね!」

「そう、マス漢も官民こぞって喜んで、連日お祝いするでしょうね。でも、終わったばかりの災厄や戦争は総括に時間がかかる。でも、国家や民族でお祝いしたい気持ちは捨てがたい。そこで……フーちゃんが、マス漢の文化大臣とかだったらどうする?」

「あ……それ以前のマース戦争やグノーシス戦争の英雄を、マース戦争は扶桑や連合国に差しさわりがありますから、グノーシス侵略……あ、そうか!」

「マス漢でブームになったら、遅れて、漢明でも注目される」

 そうか、それでグノーシス戦争の英雄の子孫……朱元尚准将を粗略には扱えない。

「まだまだ、この劉宏の体制は盤石とは言えないからねぇ」

「どうされるんですか?」

「履歴に傷が付かないようにして退役させる。退役させれば、取りあえず軍部への影響力は抑えられるでしょう。そして、開発公司からもね……」

 ピピピ ピピピ ピピピ

 大統領のハンベが子どもの防犯ベルのようなアラーム音をさせる。

「はい、わたしだけど……」

「あ、外します」

 腰を浮かせると、大統領は右手で――そのままいてちょうだい――とサイン。

「あ、うん、分かったわ。牽牛が戻り次第連絡をちょうだい。うん、それまでは……うん、このサンルームでお茶してるから。現時点での情報だけ送ってちょうだい。はい、ご苦労さま」

 ハンベを切ると、鼻の付け根を指で挟んで揉んだ……PI以後ほとんどやらなくなっていた大統領の癖だ。

「火星連絡船の牽牛が遭難船とぶつかってねぇ、その遭難船の乗員を保護して戻って来るの」

「衝突ですか?」

「そう、いまどき珍しいんだけど、いきなりワープアライブしてきて制動が間に合わなかったらしいの」

「ワープアライブですか!?」

 実験的には可能だけども(パルスギとかを使えば)船体や人体に影響が出るので、まだ実用化はされていないはずだ。

「旧型の内火艇だし、オートの牽引ビームが効いて大惨事にはならなかったんだけどね……」

 そこまで言うと、大統領はズイっと身を乗り出してきた。

 なんだか、女子高の先輩が後輩に秘密の話をするみたいで、ドキドキする。

「それが、乗っていたのは……日本の皇族なのよ」

「日本の皇族!?」

 そう言われて思い浮かぶのは、わたしが来る前に島を出られた心子内親王殿下。

「森之宮茂仁殿下……まだ、わたしと牽牛の船長しか知らないんだけどね……」

 大統領は期末テストで欠点を三つ取った女子高生のような顔になった。

 

 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!71『スパークと酔っ払い』

2024-11-24 07:30:53 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
71『スパークと酔っ払い』 





――人生のやり残しをやっつけるて、楽しいことばっかじゃねえんだぞ――

 マユは、美優の体の中で呟いた……。

 むろん、マユの呟きが美優に届くわけもねえ。マユの意識はほとんど美優に入れ替わっちまって、見ていることしかできなくなっちまうからな。

 
 美優は、一つ手前の地下鉄の駅でタクシーを降りやがった。
 

 急な思いつきだ。タクシーの窓から見える懐かしい街並み。その中にAKRの看板がチラホラ見えてきた。AKRはそのシアターまで、街の要所要所に看板やポスターを貼っていやがる。

 その一枚は『最初の制服』という新曲のコスを着た選抜メンバーが、女子高の新入生みたいに写っていて。数年前の高校生のころの自分と重なった。いろんなことに憧れていたあのころの美優にな……。

――そうだ、高校生のときの気分で家に帰ろう――

 そう思い立ってタクシーを止めた。

 そして、たった一駅だけど、高校生のころ通学に使っていた地下鉄に乗ることにしやがった。

 美優は、その一駅の間に時間を巻き戻しやがる。

 ほう、このあたりじゃセレブな乃木坂学院高校に通ってやがったんだ。ダンス部に所属して、コンクールの前は遅くまで練習……なかなかのやつだったんだな。

 あのころは部員も10人そこそこで泣かず飛ばずだったけど、今じゃ文化部の花形だった演劇部を追い越し、都の大会でも三位につける好成績ぶりみてえだ。

 あのころは学校自慢のリハーサル室なんか使えなくて、練習場所の確保に四苦八苦してやがった……でも、持ち前のマネジメント能力の高さで、美優は、いつも十分じゃねえけど、必要なだけの練習場所は確保してきやがった。

――充実してたなあ、あのころ――

 地下鉄の揺れが、懐かしく思い出を呼び覚ましてくれやがる。なんだか、マユまで時めいてきちまうぜ。

 キシ キシキシ キシィ

 カーブに差しかかると、独特の軋み音とともに、パンタグラフと架線がスパークして、瞬間ストロボみてえ。

 美優は、そのストロボが好きで、このカーブに差しかかると、持っていた携帯や文庫から目を離し、窓の外のストロボに目をやったもんだ。

 たまに、このストロボは、思わぬアイデアや思い出を閃かせてくれやがった。ダンスの振りが今ひとつ決まらないときも、このストロボでアイデアが浮かんだこともあったんだ。

 キシ キシキシ キシィ
 
――そうだ、あの振り付けは、自分のアイデアじゃなかった……そのころ、近所のビルにHIKARIプロが引っ越してきた。引っ越し挨拶に、近所の店にシアターの招待券が配られたんだ――

 公開レッスンを見に行った。

 春まゆみという振り付けの先生が厳しく教えていた。メンバーの一人が、なかなか振りを覚えられずに、袖に駆け込んで泣き出した。レッスンは、そんなことで中断されることもなく続けられたけど、わたしは泣き出した子に興味があった。こんな局面は、自分のクラブでもよくある。スタッフが、どう対応しているかが気になった。

 ディレクターが相手をしていた。若いみたいだけど、どこかオジサン。

「さあ、ゆっくり深呼吸して……」

 過呼吸になったその子を優しくハグし、クシャクシャになった髪を撫でながら、あまやかすでもなく、叱るでもなく、落ち着かせていた。

 後で黒羽というディレクターだということが分かった。ローザンヌは、小売りだけではなく、プロダクションなどの卸の仲介もやっていて、そういう仕事で、ときどき黒羽が店に来ることもあったし、母のアシスタントで大量の見本を運ぶこともあって、黒羽とは、いつか挨拶するぐらいの仲にはなっていた。

――いい人だなあ――

 その程度の気持ちは持っていたけど、淡い憧れ。ご近所の知り合いの域を超えるようなことはなかった。

 HIKARIプロについては、そんな思い出だけだったんだけど、その時思いついた振りは、無意識に見ていた春まゆみの振り付けを真似していたことに気づいた。落ち込んだ後輩を慰めたり元気づけたりするときは黒羽さんの口調になっていた。

 ストロボの余韻に浸っているうちに駅についてしまった。

 わたしは、あのころのように軽々と階段を駆け上がって出口に出た。

 目の端に出口のところで座り込んでいる酔っぱらいが見えた。よく見かける光景なので、少し速足になってシカトする。


 え、まさか!?


 酔っぱらいは……たった今思い出していた黒羽ディレクターだった……。
 



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・152『修学旅行・四日目・3(大阪城)』

2024-11-23 17:37:16 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
152『修学旅行・四日目・3(大阪城)』   




 お城と言えば地元の宮之森城しか知らないわたしらに大阪城は巨大に映る。

 
「すごい堀ですねえ……」

 大手門から入る時にロコが呟く。

 確かに、渡っている外堀はグランドキャニオンかっちゅうくらいに深くて幅が広い。

「信長も、ここを攻めるのは苦労したみたいです。ほら、大手門の脇にあるのが千貫櫓なんですけどね、攻めあぐねた信長は『あれを落した奴には千貫文の銭をやるぞ!』ってはっぱをかけたって言います」

「え、信長が大阪城攻めたの?」

 小学6年で歴史知識の停まったわたしが質問。

「元々は、石山本願寺ってお城みたいなお寺があって、信長に楯突いてたんです。そのころからの櫓なんです。けっきょくは交渉で立ちのかせるんですけど、本能寺の変になって。その後秀吉が大坂城を作って、江戸幕府に受け継がれるんですけど、有名な櫓だったんで、同じ場所に建てた櫓には同じ『千貫櫓』と名付けたんです」

 最終日に来て、ロコの頭はますます冴えてきてるようだ。

 蛸石とか振袖石とかの巨石に目を丸くして大手門を潜ると「バレーコートが四面はとれる!」と佳奈子が驚くぐらいに石垣やら多門櫓とかで囲まれた空間。

「この空間を枡形って言うんですけど、日本一なんですよ」

 ほうほう……多門櫓門を潜ると、うちの高校を敷地ぐるみ入れてもお釣りが出そうな、もうここだけで十分お城ができそうなくらいのところに出る。

「秀吉の頃は……と言っても秀吉の死後なんですけど、五大老の一人だった家康は、この西の丸に天守閣を築いたんです」

「ええ、一つの城に二つの天守閣? ちょっと反則っぽい」

「佳奈ちゃんの言う通りです。諸大名たちは、本丸の秀頼に挨拶する前に、こっちに足が向いてしまうんですよね」

「なるほどぉ、それで、ちょっとずつ『儂こそが天下人』って印象付けていくのねえ」

「さすが家康」

 感心する真知子とたみ子。

 しかし、これだけの情報を持ってるロコは、えらい奴だ!

 西の丸を横目に進むと、またもグランドキャニオンかっちゅうくらいの内堀が見えて、桜門を潜って、いよいよ本丸。

 ここでも、桜門を潜るや否やロコのバスガイドさん顔負けの解説。

 ロコには悪いんだけど、我々は本丸広場の真ん中に向かった。

「ああ、これこれ、次に案内しようと思っていたタイムカプセルですよ!」

 ああ、予定に入っていたんだ(^_^;)

 まだ設置されたばかりのタイムカプセル……と言っても、実物は地中深くに埋められて、地上に出てるのはステンレス製の丸ボタンというか、大きな中華ねべをひっくり返して底が見えてるって感じのモニュメント。

「5000年後に開けるんだねぇ」

 たみ子が跪いて、スリスリ撫でる。わたしたちも倣って、スリスリペチャペチャ。

「懐かしいですね、去年の万博」

「そうねぇ、万博そのものも面白かったけど、船場の古いお店で泊めてもらったこととか」

「みんなで炊事したり」

「銭湯にも行ったよね」

「なんか、シンミリしちゃうねえ」

「あ、知ってます? カプセルは二個あって、一個は2000年に開封して点検するんですよ!」

「2000年かぁ……」

「あと、29年かあ……」

 たみ子が呟いて、みんな遠い目になる。

「46歳になってるんですねえ……」

「立派なオバハンだねえ……」

 2000年かぁ……わたしが生まれるのは、さらにその7年後なんだけどね(^_^;)。

「中にアカマツの種が入れられてましてね、2000年にはその種を、この横に植えて発芽するかどうか実験するんだそうですよ」

「ああ、それ、楽しみだなあ!」

「ねえ、あたしたちも卒業の時にタイムカプセル作って埋めてみない!?」

 え?

 佳奈子の突然の提案、数秒遅れて、みんなの心に灯が点いた!

「やっぱり、開封は5000年後ですかねえ(^_^;)」

 ロコのツッコミに、みんな大笑いして、学校に帰ったらMITAKAや生徒会で相談してみようということになった。


 その後、天守閣の前でクラス写真。そして直美さんの提案で学年全部の自由な集合写真。

「さすがに収まらないなあ(^_^;)」

 そう言うと、直美さんは天守台の階段っを上って、石垣の上からカメラを構えた。

「手伝いましょうかぁ!?」

 手をメガホンにして聞いて見たら「今日はバイトじゃないでしょ!」と返事、みんなにも笑われる。

 天守台は校舎の四階ぐらいの高さがあって、余裕で全員が収まったみたい。

 ハイ、チーズ!!

 カシャ!



 わたしたちの修学旅行はめでたくお開きになった。



 こぼれ話を一つ



 集合写真のあと、午前の宝塚と同様に各自で自由行動にした。

 わたしは天守閣に上って、最上階の展望階に行ってみた。

 ロコの姿も見えたので声をかけようかと思ったら、外回廊の手すりに腕を置いて景色を見ている牧内さんが目に留まった。

「なんか、シミジミしてるね」

「ああ、グッチ」

 時司ではなくてグッチと呼んでくれるのが嬉しい。

「あそこ、なんだか分かる?」

「ええとぉ……」

 六階建てのビルで、屋上に塔があって、いくつもアンテナが立っている。

 ちょっと佇まいが警視庁に似ている。

「あ、大阪府警!?」

「ううん、NHK」

「あ、ああ」

「コールサインはJOBK。なんでか分かる?」

「ええと……」

「ジャパン、オオサカ、バンバチョウ、の、カド」

「え、ああ……」

「いやだ、冗談よ(^_^;)、NHKはJOで始まって設立の順番にABCなの。東京はJOAK」

「ああ、そうなんだ!」

「来年ね、あそこの放送劇団受けようかと思ってるの」

「え、そうなの!?」

「地理的には東京の方が近いんだけど、大阪に親類がいるし……」

「え、そうだったんだ」

「東京は劇団も多いし、放送劇団も規模が大きいんだけどね」

「あ、うん、そうでしょうねえ……」

「東京じゃ埋もれてしまう……というか、自信がね……なんか、ちょっと弱気かなあ」

「え、あ……どうだろ」

 牧内さんは同い年とは思えないくらいしっかりしている。去年からフォークの集いやら文化祭やらで世話になってるし、学校とも交渉して、シブチンの学校から階段下とは言え、部室も作らせたし。

「県の演劇研究会もね、なんとか連盟にできそうだし……」

 そうだ、この人は、演劇部の組織を教師中心の高校演劇連盟にするのにも尽力してたんだ。

「…………………」

 決めたように言ってるけど、やっぱり悩んでいるんだ。

 たった一回の青春だもんね。

「演劇のことはよく分からないけど、牧内さんは……突破力のある人だと思う」

「うん……そうだよね、うん、ありがとう、やっぱり受けてみる!」

 明るく笑ってリュックから取り出して見せてくれた。

 放送劇団研究生募集要項

「え、いつの間に?」

「自由時間にね、ちょっとひとっ走り(^_^;)」

「ひとっ走り」

「そう、ひとっ走り」

 そう言うと、牧内さんは何かにアッパーカットを食らわせるように握りこぶしを突き出した。

 天守の屋根に停まっていたハトたちがビックリして飛んで行った。



 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!70『秘密の注射』

2024-11-23 08:07:52 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
70『秘密の注射』 





 渡瀬ナースのマユは、当直のドクターを連れてきたぞ。

 ドクターは太っちょの若禿でチョビヒゲなんか生やして、見かけは立派なドクターだ。実は、近所の開業医のどら息子で、ハクを付けるためにだけ、この病院に勤めている食わせ物なんだけどよ、こういう人間の方が操りやすい。

――先生は日本一の名医ですのよ。この注射をしてあげれば、ノーベル賞だって夢じゃありませんことよ!――

 なんだか利恵の口調になっちまったけど、そう暗示をかけてやると、マユの差し出した注射器を持って病室まで付いてきやがった。

「オホン、この薬を注射すれば、死が訪れるまで、まったく健常者と同じように動くことができます……ええ、長年わたしが研究してきた成果です。末期ガンの患者さんの残された時間を、患者さんの意思で思う存分自由に生きてもらうための薬です……効き目の期間ですか……美優さんの命がつきるまで」

「どのくらいなんでしょうか?」

「……言ってもかまいませんか?」

「はい、精いっぱい生きたいですから!」

「……美優さんの命は、あと一週間です。きっちり168時間」

「ぜひ、お願いします……こんな寝たきりで……じわじわ死ぬのはいや」

 美優の言葉に、母の美智子も涙ぐんでうなづきやがった。

「では……きみ、クランケの腕を……」

 ドクターは、威厳を持ってナース渡瀬の姿をしたマユに命じやがる。マユは、おごそかに美優の袖をまくり、上腕に静脈注射用のゴムバンドをしたぞ。

「う……」

 美優は小さな声をあげた。

 このドクターは見かけ倒しなんで、注射はめちゃくちゃヘタクソで、かなり痛かった。元気だったら、美優は大きな悲鳴をあげていたところだったぜ。

「オホン、効き目が現れるのに二十分ほどかかります。起きあがれるようになったら、もう自由になさってけっこうです。では、残った一週間。思い残すことなく使ってください (。・ω´・。) 」

 もったいぶって言うと、名医らしく美優の手を握り、母の美智子に目礼をしやがった。

「ありがとうございました!」

 美智子のお礼を背中で聞いて、ドクターは渡瀬ナースの姿をしたマユを従えて、病室をあとにしやがった。
  

 マユは、いそいで更衣室にいき、ナースのユニホームを脱いだ。渡瀬ナースの姿は、消えかかっていたからな。


 あの注射は、ただのビタミン注射。本当は、マユ自身が美優の体の中に入り込んで、美優を死の間際までサポートするんだぞ。

 マユ本来のアバターは幽霊の拓美に貸してある。マユとクララを足して二で割ったアバターは、オモクロのオーディションまでは用がねえ。

 そこで、マユは魂というかエネルギーだけの存在になって、美優の体に入り込む。美優の体は衰弱が激しいんで、二十分ゆっくりかけて美優の体に入っていくってわけだ。

 十九分たったころ、吉田の同僚のナースが、遅れた日勤を終えて更衣室に入ってきやがった。

「……渡瀬さん!?」

 同僚は裸の吉田が消えていく瞬間を見ちまいやがった!

 胸騒ぎした同僚は、携帯で渡瀬に電話をしやがる。

 電話の向こうで、元気な吉田の声がしたので、安心して携帯を切ったけどな。


「お母さん、わたし元気になった!」


 美優は、嬉しい叫び声をあげて起きあがったぞ。

「よかったね、美優!」

「うん、一週間だけど、わたし一生分生きてやる!」

「これ、使いな。一週間自由に生きるのに十分な残高がある」

 美智子は、自分のゴールドカードを渡してやった。

「ありがとう、お母さん」

 美優は、もう二度と着ることがないと思っていたお気に入りのポロワンピースに着替えると、さっさと病院を出て行きやがった(^_^;)。

「とりあえず、自分の家に戻ろう(^▽^)/」

 そう独り言を言ってタクシーを拾った。

 タクシーは美優の心が乗り移ったみてえにウキウキとケツを振りながら走っていきやがる。

――言っとくけどよ、人生でやり残したことをやるのは、けして楽しいことばかりじゃねえんだぜ――


 小悪魔のマユは、美優の中で念を押したぞ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・151『修学旅行・四日目・2(宝塚ファミリーランド)』

2024-11-22 13:32:33 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
151『修学旅行・四日目・2(宝塚ファミリーランド)』   





「宝塚歌劇団の公演が観られたらよかったんですけどねえ……」

 ゲートを入って間もなく大劇場の屋根を見つけたロコが不満を言う。

 天下に名の轟いた宝塚歌劇団は遊園地に入らないとたどり着けない構造になっている。令和の時代は、遊園地が廃業になっていて遊園地があったことすら忘れられているんだけどね。

 歌劇団も遊園地も阪急電鉄を作った小林一三さんが、宝塚温泉のお客さんを増やそうと総合開発したもの。それも本業の阪急電車のためで、沿線の総合開発コミコミで事業を立ち上げるという先見の明。

 そう思うと意義深いんだけど、大阪のテーマパークはUSJとインプットされてる二十一世紀少女には、ちょっとショボい。

「まあ、童心に帰って遊ぶとするかぁ」

 佳奈子がバスの中でもらったチケットをヒラヒラさせる。

 このチケットでジェットコースターをはじめ五個のアトラクションに乗れる。

「ジェットコースターと観覧車は外せないねえ」

 女バレで元気の余っている佳奈子はアグレッシブだ。

「じゃあ、スカイウェイってのに乗って全体を見るところからにしようか」

 たみ子の意見で遊園地を斜めに通ってるロープウエーに乗る。

「ああ、どれもちょっと楽しむにはいいスケールですねえ」

「個人的には、ほら、あっちのヘルスセンターとか展望台で、ボーっとしていたいわねえ」

「ちょっと、なんか食べたいかなあ」

 修学旅行も最終日、いつも一緒の五人も、微妙に意見が合わなくなる。

「じゃあ、時間決めて、観覧車の前で待ち合せない?」

 わたしが提案して、みんなで眼下のアトラクションを見定める。

 遊園地の真ん中を本物の阪急電車が走って、その横を遊園地を周回する豆電車。対比が面白い。

 敷地はディズニーリゾートには及ばないけど、大正時代に作られて今に至っている思うとなかなかのもんだ。料金も普通に入って800円だとか、普通に一万円を超えようかという令和のディズニーを思うと、これでいいんだとも思ってしまう。

「ジェットコースターは……」

「あ、あそこだ」

「観覧車は……」

「え、あれ!?」

「ええ、変わってる!」

「二重反転観覧車ですよ!」

「スカイワープっていうらしい!」

 観覧車と言えば自転車の車輪みたいなのを思っていたんだけど、ここのは、十字のアーム、十字の先には八つのゴンドラリングについていて、それもグルグル回って、本体の十字もグルグル回ってる。それほど大きなものじゃないけど、動きが面白い。いやいや、昭和の遊園地も侮りがたし!

「あ、国産初の旅客機、YS11が保存されてますぅ!」

「ロコはオタクだなあ」

「え?」

「あ、マ、マニア!」

 ヤバイ、この時代にオタクは通じない(^_^;)。

「ね、あそこ歩いてるのタカラジェンヌじゃない!?」

 たみ子が嬉々として指さした先には、グレーの制服制帽の、正しく言えば宝塚音楽学校の生徒さんたちが歩いている。

「姿勢いいわねえ!」

 なんだか、背中に定規でも入ってるんじゃないかと思うくらいにシャキッとしてキビキビしてる。

「宝塚は別名宝塚士官学校っていうくらい、厳しいんですよ。学年の初めには自衛隊から教官が来て、行進の練習とかやるらしいですよ!」

「うう、憧れるわねえ(^▽^)」

 たみ子は意外にヅカファンなんだ。

 タカラジェンヌに見惚れてるうちに、ロープウェーはあっという間に終点。

 
 たみ子は「せめて外観を!」と⇒大劇場、真知子は⇒人形館、ロコは⇒YS11、佳奈子は⇒冒険パノラマレールウェイ。と、バラバラに散っていった。

 
 わたしは、昆虫館の横で変な虫みたくジッとしているあいつを見つけてオチョクリに行く。


「ねえ、なにタソガレてんのよ」

「え、あ、メグリか」

「あ、分かった。バスガイドさんも言ってたけど、万博観れなく残念なんでしょ。留年さえしてなかったらって」

 ちょっとえぐるような言い方になったのは、修学旅行の持ってる異次元性なのかもしれない。でも、まあ、こいつは将来は徒(いたる)大叔母のダンナになってもらわなくちゃならないからね。

「あんなものに興味はない。ハンパクには行ったしな」

「ハンパク?」

「反戦のための万国博。万博と同じ時期に大阪城公園でやったんだ」

「あ、ああ……」

 そう言えば、去年万博を見に行った時に、そんな話題が出たっけ。

「それより……」

「なに?」

「……なんでもない」

「そ……じゃ、わたしから聞いていい?」

「ああ、いいぞ」

「前から聞こうと思ってたんだけどぉ……」

「ん?」

「去年のぉ、合格者説明会の前後、よく宮之森の駅でいっしょになったじゃない」

「そ、そうか、よく覚えてねえけど」

「あの時、毎回改札の駅員に呼び止められて10円払ってたけど」

 こいつには10円男という二つ名を進呈してる。付けた本人が言うのもなんだけど、その理由を聞いたことがない。

「ああ、あれはな……笑うなよ」

「あ、うん」

「夢にローザ・ルクセンブルグが現われてな『初志貫徹しなさい!』って言ったんだ」

「ロ、ローザ・ルクセンブルグがぁ?」

 言いながらローザ・ルクセンブルグ分かってない。

「運賃値上げには反対だったからな」

「それで?」

「ああ、ローザは、銃のケツで殴り殺され川に放り込まれて半年も放置された、革命の殉教者なんだ」

「そ、そうなんだ」

「つまらん話だろ」

「ハハ、ちょっとむつかしいかなぁ。あ、でも、ありがとう、入学以来の謎が解けたよ」

「そ、そうか」

「…………」

「あ、さっきの『タソガレてる』は、いい表現だと思うぞ、言い得て妙だと思った!」

 なんだか、思いきるようにして立ち上がる。

「あ、なんか乗りに行くの?」

「ああ、ジェットコースターでも……いっしょに行くか?」

「え、ああ……あとで真知子たちと乗る約束してるから」

「そ、そうか、じゃあな」

「う、うん、またね」

 ……メリーゴーランドぐらいなら付き合ったんだけどね。


 それから、約束通りお仲間とジェットコースターと独特の観覧車に乗った。


 それから、園内のヘルスセンターで8クラスそろって昼食をとって、修学旅行最後の目的地、大阪城に向かった。



☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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