RE.乃木坂学院高校演劇部物語
この作品は、横浜の出版社の依頼で書いた『はるか ワケあり転校生の7カ月』の姉妹本です。
『はるか』は、高校演劇の基礎練習や部活運営の入門書を書いてほしいという出版社の依頼で書き始めたラノベ形式のハウツー本でした。
部活、特に文化部は技術的なことよりも人間関係で揺れることが多いので、技術面よりも人間関係の機微を軸に書き始め、書き終わってみると、ハウツー本というよりは、ほとんど小説になってしまいました。この変節を暖かく見守ってくださった編集さんには、ただただ感謝です。
親の離婚で東京の南千住から大阪に越してきた坂東はるかは、東京でも演劇部だったこともあり、真田山学院高校に転校して演劇部に入ります。
東西の文化の違い、演劇部の在り様の違いに、戸惑ったり人とぶつかったり、時には演劇部なんて辞めてしまおうと思いつめるはるかですが、7か月後のコンクールで様々な経験をして自分の居場所を見つけます。
その『はるか』の話の中で、はるかが両親の仲を取り戻そうと南千住の家に戻るところがあります。
その実家の二軒隣が幼なじみの仲まどかの家です。
まどかは、一つ年下で、小さいころからはるかは憧れでありライバルでもありました。
粗々のプロットが仕上がって、学校の名前を決めようとネットで東京のあちこちをロケハンして乃木坂にたどり着きました。
乃木坂は、坂の途中に乃木神社があります。神社は乃木大将を祀って乃木邸に隣接して作られています。神社があるから乃木坂ではなく、生前乃木大将が馬に乗って院長を務めていた学習院に通っていたことから付いた名称です。
実際に行ったことはありませんが、司馬遼太郎さんの小説等でお馴染みの場所でした。
東京の中心からは離れたところで、緑の豊かな、ちょっと寂しいぐらいの静かな街というイメージです。乃木大将が亡くなる前までは幽霊坂と呼ばれていたくらいです。
キャラクターの名前や学校名を決める時はネットで調べてみます。同名のものがあれば、なるべく避けます。以前、別の作品で希望が丘高校と付けようとしたら実在するので回避したことがあります。
乃木坂学院高校で検索すると、音乃木坂学院高校が出てきました。調べてみるとアニメに出てくる架空の高校で、地名としての乃木坂を付けるのには問題はないと思いました。あとで、念のために音乃木坂学院のアニメ『ラブライブ』を観てハマってしまいましたが(笑)
書き進めながらも時々は乃木坂を調べます。そのうちに、秋元康氏が、乃木坂を冠したアイドルグループを作るという記事が出るようになりました。
これは、パクリとか便乗とか思われてしまう……むろん私の方がです(^_^;)
でも、もう半ばあたりまで書き進め、乃木坂の佇まいで話が出来あがってしまっています。
で、あえて、そのままに『乃木坂学院高校演劇部物語』を名乗り続けました。
有名な方の乃木坂は、昨年目出度く十周年を迎えられました。
あやかるわけではありませんが、こちらも十周年半を機会に大改訂を行おうと、昨年の秋に決心。
これまでにも細かな書き直しはやってきましたが、今回は、ずっと気にかけていた大きな改稿をいたしました。
主人公はるかのモチベーションの源流になる人物は三人です。
姉妹作の主人公坂東はるか、男友達の大久保忠友、そして顧問の貴崎マリ。
貴崎マリは、才色兼備のカリスマ的演劇部顧問ですが、芹沢絢香に怪我をさせ、倉庫を全焼させてしまった責任をとって教師を辞めることになります。
どこまでも明るく話を進めたかったので、マリ先生は、退職後大学の先輩で新進俳優である高橋誠司の働きで上野百合として役者としてデビューすることにしました。
十一年間、折に付け読み返して、ちょっと彼女の転身はウザイかもしれない(-_-;)と思うようになり、今回は根本的に書き換えました。
大幅な改稿は、もうこれで終わりにしようと、タイトルにはREを冠しました。
エピローグはハルサイの公演で幕が下りて、新しい乃木坂演劇部がスタートする話でしたが、乃木坂さんの昇天で幕を下ろします。作者が大団円を語るよりは、みなさんの思いの中で想像していただければと思いました。
最後まで読んでいただいて、本当にありがとうございました。
令和5年2月5日 武者走走九郎 or 大橋むつお