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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『ストロベリーナイト/つやのよる』

2013-01-27 08:22:40 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『ストロベリーナイト/つやのよる』


これは、悪友の映画評論家 滝川浩一が個人的に仲間内に流している映画評ですが、もったいないので本人の了解を得て転載したものです。


☆ストロベリーナイト
 テレビシリーズの映画化は、前作を見とかんとツライでっせと……まぁ、言わずもがなな事をいつも書く訳ですが。本作は大丈夫だっせ。
 いやいや、細かい設定や人間関係の機微はテレビシリーズか原作シリーズを知らないと判らんのですが。一番重要な「姫川玲子」の心の闇は 全シリーズを見ていても解らないんで、結局一緒なんです。
 誉田哲也の原作シリーズは今の所 6冊…まだ 続いて行くみたいです。原作には書かれているのかもしれませんが、“姫川玲子”は高校生の時にレイプされてそれがトラウマになっている捜査一課の敏腕刑事という設定。しかし、彼女の抱えている心の闇は本当にそれだけなのか?ってのがテレビシリーズからずっと続いている疑問で、本作にも解答はありません。
 映画の構造は、これまでのシリーズに必要以上に寄りかからず、一本の独立したストーリーに成っていて、これは原作の優れた所なのか 監督(「キサラギ」の佐藤祐市ですけぇ)の手柄なのかは判りませんが、わかりやすい構造になっています。まぁ、結子ちゃんが巧いから……ダハハハハ、西島君他姫川班のチームワークも良いし、他の皆さんもキャラがたっとります。
 今作では大沢たかおが儲け役、可哀想なのは菊田君(西島)、 シリーズ最終回で玲子ちゃんとええ雰囲気やったのに 大沢たかおに引導渡されちまいました。なんぼなんでも涙無くして(特に男は…)見られないシーンがございます。 まぁ、大見得切った大沢君でもあかんのは見えとりますがね、玲子の抱えている“闇”の全貌がみえないと 近づく男はみんな抹殺です。いますよねぇ こんな女性 コエェヨ~。
 ストーリーは細部に渡って穴のないように組み上がっています。そういう意味でも あまりストレスはありません。オススメであると申し上げます。ただ、全編 雨が降りっぱなし“インビジブル・レイン”が原作タイトルなので その“インビジブル”をどう解釈するかで雨の意味が変わるんですが……ですがぁ……何ちいますか~ ただ、淡々と降ってるだけなんだよなぁ。
 アタシャ勝手に D・フィンチャーの“7”の雨を意識してるんだと決め込んでたんどすが…う~ん、違うんかなぁ。“7”の雨は「悪意」「毒」「隠れ蓑」……ってな意味合い、本作の雨からは何も感じない。さて、誰の責任? 竹内結子の責任でない事だけは確かですが…テレビで「アフター・インウ゛ィジブルレイン」ってのをやっとりましたが、原作はどない続いていくんでしょうねぇ。読んでいる人の感想によると 姫川玲子は全く竹内結子のイメージじゃないそうで…それじゃ意味ねぇじゃんってんで 今んとこ読む気無しであります。アハハ……。

☆つやのよる
 なんか、日本の映画のストーリーじゃねぇなぁって感じです。しかし、邦画でしか有り得ない雰囲気でもある。設定はフランス映画なんかによくある形なんですが、ひとつひとつのエピソードが どうしょうもなく日本的なんです。
 伊豆大島に病気で死にかけている「艶」という女がいる。なかなか女の顔が出て来ないのだが、性的に奔放な女であったらしく、死の直前まで男を追いかけまわしていたらしい……さて、彼女には夫(阿部寛)がいる。彼は この女に散々振り回され 人生をグチャグチャにされた筈なのに 何故か献身的に看護している(相当歪んではおりますが)、彼は これまでに妻が関係した男達に「艶はもうすぐ死ぬ」と連絡する。さて、連絡を受けた男達はどうするのか、そして 現在 その男共の横にいる女達にも余波が及んでいく……ってなお話。
 ザックリ 切り捨てるなら、出来の悪い短編私小説を一人の女を中心に据えて振り回した物語。なんで私小説大嫌いオヤジの私がこんな映画を見んといかんかったのか……編集部Y美! ええ加減にせえ!
 まぁ、J・ロバーツの「飲んで食って恋して」??覚えてない、あの中年女の ええ年しての自分探し物語ほどには頭には来んかったですけどね。阿部寛の劇的に痩せてやつれた姿と、とうとう妻が死んで その通夜……棺桶の妻に向かって「ざまぁみろ!○×△□◇#&@☆!!」と叫ぶ姿に感銘受けちまいました。  登場人物達が それぞれ状況に差はあるものの基本的に泥まみれに成っている中、この夫だけが なんだか小さな幸せを掴めそうな結末には笑っちまいました。 まぁ、一番の失敗は私に無理やりこの映画を見させた編集部方針にある…とだけは申しておきます。こんなん好きな方もおらしゃりますでっしゃろから 全否定はいたしませんが…アタシャもうお断りでありま。聞いとるか? Y美ちゃん


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『ライフオブパイ』

2013-01-25 19:08:42 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『ライフオブパイ』


 これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので、本人の了解を得て転載したものです。



 なんと表現すればよいのか……。

 究極に美しい画面に映し出されるのは、う~むむぅ ファンタジーであり、人が生きるための哲学であり、人と神(と書くより、まさに“GOD”)との純粋な出会いの物語である。
  私の拙い文章で この映画を語る事に逡巡を覚えるが……とにかく、読んでいただきたい。
 
 原題、そのまま“LIFE OF PI” すっかり大人になったパイも登場するが、少年パイがインドで成長して 一家がカナダに移住決意するまでと、船が沈没して救命艇で227日漂流、メキシコに漂着するまでがメインのお話。パイは10代の後半という所、半生にもならない時間だが、まさしく“LIFE”なのである。
「虎と少年が 一艘のボートで漂流する」物語なのだが、そこに至るまでの幼年期から青年前期を丁寧に描いてある。少年パイの聡明さ 好奇心の形、父親の薫陶、母の優しさ……これらが後に続く漂流譚に決定的な意味を持つ。
 少々脇道にそれるが、“聖書”が日本に入ってきた時、“GOD”に「神」と訳したのがそもそもの間違い。日本人にとって「神」とは あくまでも「神々」であって“絶対者”“創造主”を意味しない。逆に言えば、だからこそ 全くの異教であるキリスト教も「神々の一」として受け入れられたとも言える。
 パイも 宗教観のベースはヒンドゥー教であり三千数百の神々がおわす。少年パイは宗教に対してニュートラルであり、キリスト教にもイスラムにも素直に興味を持ち、吸収する。
 船が沈んで漂流するうち、再度 嵐に出会う。その嵐の中にパイは“GOD”を見る。ヴィシュヌでもヤハウェでもアラーでもない、ただ“GOD”としか表現できぬ存在を感じる。
 いやいや、けっして宗教映画ではないが、へたに説教臭い映画よりも よっぽど信仰へと至る道が示されている。原作は2冊あり、上巻まる一冊、少年パイの生活が描かれているらしい(購入したけど未読)、監督アン・リー(ブロークバック・マウンテン)は この部分の映像化の方にこそ、後半の漂流譚以上の神経を使っている。監督候補の中にナイト・シャマランがあがった事もあったようで、これこそ天の配剤 シャマランなんかに撮らせたら駄作にすらならなかっただろう。
 アン監督は 「今作のためにこそ3Dがあった」的な事を語っているが、これは業界発言。2Dを見た(3Dは吹き替えのみだったしね)が、充分に美しく 深度のある画面……殊に水(海)の表現が素晴らしい、パイの目の前で沈みゆく船の残酷な美しさ、パイが“GOD”を感じる海は真逆な砂漠を思わせる。母なる海でありながら圧倒的な荒涼を見せる、それは絶対的な不毛であり、死の荒野である。 “唯一神”のイメージは砂漠にしか生まれない、原作者ヤン・マーテルにはこの確信があり 監督はそれを映像化する事に腐心している。
 後半の映像の肝は3Dなんかではなく“CG合成”の信じがたいまでの進化である。パイと共に漂流するベンガル虎(なんと“リチャード・パーカー”という名前、この名前には物語で語られる以外に意味があるのだが……それはパンフレットで読んで下さい)はまことに生きていて 救命艇の中にリアルに存在している、ここまでくると 映像マジックと言うより“奇跡”である。監督の手腕と共にCG技術者に万雷の拍手を贈りたい。
 台湾に有る、おそらく世界最大の撮影用プールと、ブルーバック合成があれば作られる映像ではあるが、天才的センスとこだわり無くして創造しうる画面ではない。断るまでもないが、頭ではカラクリが解ってはいても、スクリーンに現れた海は本物としか思えない、圧倒的存在感である。
 物語終了間近、パイの口から全く違うもう一つの物語が語られる。まるでミステリーだが、ここでどちらが真実なのかなどと考える必要はない。このもう一つのストーリーは、あくまでも パイと虎との絆を補強するものと捉えたい。
 元より、本作をご覧になった方の感性の問題である。感性の在りようによって 総てのシーンは様々にそ
の意味を変化させるだろう。優れた映像は、優れた本と同じく 触れた人々に その人にしか見えない世界を開いて見せる。どうか 存分に奇跡の映像をお楽しみ下さい。そして本作があなたの中に何を刻むか……それは あなただけの宝物になるのです。


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『東京家族』

2013-01-20 08:35:26 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『東京家族』


 これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している映画評ですが、もったいないので、本人の了解を得て転載したものです。


 今年は小津安二郎生誕110周年、「東京物語」が60周年(私と同い年…どうでもよろし)
 
 山田洋次がこれをリメイクすると発表したのは2009年か10年だったと思う。11年4月クランクインを目指していたが、3月11日東日本大震災で製作が延期、台本も書き直された。奇しくも12年8月、英国映画協会が10年ごとに“世界映画50選”を発表する中で、 「東京物語」が1位を獲得した。
 小津安二郎、東京物語、現代の巨匠・山田洋次と揃えば こりゃあ誰も抗えない。パンフレットも立派なら、その内容は讃辞に満ちている。映画関係者で意義を唱える人は皆無だろう。
 映画館は60~70代の観客で7割の入り、一番大きな部屋で八尾の小屋という条件からすれば上々のスタートだろう。
 今後の口コミ次第だが、若年層に訴求する所までは行かないだろう。 映画は「東京物語」のリメイクというよりも、その骨格をトレースしながら、戦後の日本の家族を描いた小津作品に対して、3・11以後の日本の家族を描こうとしている。山田洋次らしい秀作と言えるが、万雷の拍手……と言えるのか?
 まず、ハッキリと断言するが台本が不出来だ、意あって届かず……空回りしている。
 妻夫木と蒼井以外(正蔵は埒外)の役者はほぼ全員「東京物語」を意識しすぎて極めて退屈な演技、特に中嶋朋子は考え過ぎて迷路にはまったんじゃないかとさえ思える。
 妻夫木、蒼井は その点捕らわれる事なく自然な演技で好感できる。この二人と早くから接点のある 母役・吉行和子がまず目覚め、次いで橋爪功が浮上してくる。空回りで退屈な前半と打って変わって、後半は人物に血が通い始める。
 台本からすれば「世紀の大凡作」で終わるはずの作品が 一番若い二人によって救われたと言える。  小津の「東京物語」においても、父・笠智衆と 戦死した次男の妻・原節子のエピソードが最重要ポイントであり、ここを生かすための前半であるともいえる。そう! あまりにも皆が絶賛するので誰も口に出来ないが「東京物語」だって前半は退屈なのだ。東京での生活に汲々としている長男、長女に自らを見いだしながらも 彼らには共感したくないという心理が働くのかもしれない。
 私見を言わせて貰うならば、「東京物語」は戦後の日本だからこそ意味を持った、「東京家族」はそれを3・11以後の日本に重ねたが そこに錯覚があった。恐らく山田洋次は東北を丹念に見て回った事であろう、直に接する悲惨は彼の中に大きな傷をつけたであろう事は間違いない。
 あえて こんな言い方をすれば「お前は日本人じゃない」としかられそうだが……第二次大戦は日本人全てに拭えぬ傷を負わせた。それからすれば、あの超規模の大震災であろうとも一地方の災害に過ぎない。そんな感覚であってはいけないのは明白……なら、それを喚起するための作品はもっと別な姿を取るだろう。少なくとも本作にその力は無い。監督の想いは空回りしているとしか言えない。
 実は、もっと非道い感想を持っているが、これは書かんときます、自分でもそこまでの悪意は口にしたくありません。
 あえて、ここまで3・11に踏み込まなければ、もっと評価できたかもしれないが、それにしても小津安二郎に対するリスペクトと同量以上の山田洋次オリジナルが提示されなければ、今度は「単なるコピー」と評価しただろう。
 もう一つ、私見を言うならば……小津安二郎はヨーロッパでまず認められ、日本人の彼に対する評価はそれに引きずられている。 小津タッチといわれる独特の技法・語り口は見事ではあるが、映画のエンタメ性を否定した所に立脚している。趣味の問題もあるのだが、そうまでして求められる「リアル」を積極的に認める気にはならない。
 何度も書いているが、私は「私小説」なるものが あまり好きではない。人生のすれ違い、残酷、悲惨、愚かしさ…全部 自前か周囲にあるものでたりている、読みたければドキュメンタリーを読む。映画についても同じように言える。元々こういった作品に興味が無いとだけはおことわりしておきます。


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『TED』

2013-01-18 13:48:11 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『TED』
    

 これは悪友の映画評論家、滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので、本人の了解を得て転載したものです。


 この映画が R-15指定 (15歳以下入場禁止)なのに、去年6月 全米公開となるや7週間にわたってボックスオフィス10位以内、興行収入2億$超(年間でも7位……R-15作品としては空前絶後)のメガヒットになった訳は…そらもう、嫌っちゅうほど判らして貰いました。これはアメリカなら当たらんのがおかしい!アメリカ人のど真ん中 ドッキュ~ンです。
 ただし、日本人には ジョークがキツすぎる(ドラッグ/下ネタ/スカトロ)のと、役者の使い方(本人が本人役で出ているが、粗方(あらかた)の日本人にはノラ・ジョーンズ位しか判らない)やネタの中身がコア過ぎてついて行けないでしょうねぇ。これが 面白くって 笑い転げていられる人はむちゃくちゃアメリカ映画とテレビ好きに限られる。
 そんな人は おらんとは思うが……テディベアと人間のCG合成ファンタジーではありません。あくまで、大人が自ら許せるジョークの範囲内で楽しむ作品です(アメリカじゃ 相当ガキ共が見に行ったらしい)くれぐれも あなたの天使のようなガ……お子さんの無垢な魂に傷を付けないように ご用心下さいませ。
 現在のアメリカお馬鹿映画の典型ですが、「最終絶叫計画」だとか、安易なゾンビ/ホラーとは一線を画しています。それだけは本作の名誉の為に申し添えておきます。

 多少 下品な大人の童話だと、笑ってスルーしていただければ幸いでありまする。〓


※TED=テディーベア
 1902年、S・ルーズベルト大統領は趣味である熊狩りに出掛けたが、なかなか獲物の熊が見つからない。そこで同行していたハンターが年老いた雌熊(一説には傷を負った子熊)の熊を追いつめて最後の一発を大統領に頼んだが、S・ルーズベルト大統領は「瀕死の熊を撃つのはスポーツマン精神にもとる」として撃たなかった。このことが同行していた新聞記者によって新聞に掲載され、このエピソードにちなんで翌年バーモント州のおもちゃメーカーが熊のぬいぐるみにルーズベルト大統領の通称である「テディ」と名付けて発売した。

※R-15指定
 アメリカの、映画視聴制限。15歳以下の子どもは観てはいけないという指定。


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ読書感想『ライアンの代価』

2013-01-18 11:11:14 | 読書感想
タキさんの押しつけ読書感想
『ライアンの代価』
    

 これは、悪友の映画評論家、滝川浩一が個人的に流している読書感想ですが、もったいないので本人の了解を得て転載したものです。


 年末から読み出して、漸く文庫四冊読了、本を読む時間が殆どなかったので、えらく時間を食っちまいました。
 
 トム・クランシー(マーク・グリーニー共著)の“ジャック・ライアン 新シリーズ 第二弾”…ハリソン・フォードの「パトリオットゲーム」「今、そこにある危機」の原作シリーズです。
 原作は映画(「レッド・オクトーバーを追え」 アレックス・ボールドウィン主演 も含む)三本の後も続いており、「今、そこにある危機」でCIA副長官になったジャックは大統領にまで上り詰める。新シリーズ 一作目「デッド オア アライブ」では、引退して回顧録の執筆を始めているが、自分の後の現大統領・キールティ(おそらく民主党、白人だがオバマを思わせる)の政策が全く気にくわない…で、とうとう再選に打って出る。その間、クラーク、ディンゴ、ジャックjr達 ザ・キャンパスはテロリスト(ヴィン・ラディンを思わせる)を追う。

 前作では、少々 もたついた雰囲気があったが(キャラクターがそれぞれ歳を食い、その分jrが成長しているので、どうしても説明調子になる) それも払拭されて、クランシー本来の語り口調が戻った。
 大統領選もたけなわ、ジャック優勢で推移しているが、キールティのパトロンである富豪が、ジャックとクラークの過去のいきさつに気づき、クラークを陥れて それにジャックを絡めて追い落とそうと画策する。クラークは絶体絶命の窮地に……同時進行でクーデターを目論むパキスタンの将軍とタジキスタンの原理主義者がとんでもないテロを画策、クラークのいないザ・キャンパスはこの陰謀を食い止める事ができるのか……と言うお話。
 正直 ラストにとんでもない御都合主義が飛び出すが、往年のストーリーテリングと構成の巧みさでグイグイ引っ張って行く。本作の続編、アメリカでは昨年末既に発売されており“THREAT VECTOR”直訳したら「脅迫のベクトル」とでもなるんですかね。今度の相手は中国! いや、人事(ひとごと)ではありませぬゾ!御同輩。
 しかし、日本語タイトルの陳腐はどないかならんのかい! 本作の原題は“LOCKED ON”……こっちの方がよっぽど内容にマッチしている。いやはや、映画の宣伝部といい、出版社の企画室といい、何でこんなにセンスが無いんでしょうね~。次回作のタイトル…何とつけるやら、想像するに「ライアンのウンタラ」になるんですかねぇ、やめてほしいなぁ。
 クランシーは執筆にあたり、まず現世界情勢のデータを並べ(殆どは新聞、雑誌から得られるデータだが、彼の元には情報機関からの生データも集まると言われる) それらが有機的に繋がった時に執筆を始める。「今、そこにある~」の時、意図的にCIAが情報を提示したが、見事にその裏を読み解かれたという事もあった。この当時の政権が民主党(カーターだったと思う)だったってのが笑わせる。 日本人はケネディの幻に騙されている人が多いので、民主党=リベラル=正義なんぞと素朴に信じている阿呆が大半なのだが……そういう人はアメリカ史を読み返してみると良い。アメリカが戦争を始める時の政権は殆どが民主党であり、共和党はその尻拭いをさせられている図式がクッキリ浮かぶはずだ。アメリカン・リベラルの主張は絶対鵜呑みにしては成らない。
 
 日本人の大多数が未だに信じている「地球温暖化」の大嘘も 元をたどればゴアが「不都合な真実」なんてな本とフィルムで作り上げた大嘘なんだって事、今や常識でっせ! いつまでも寝とったらアカンよ~!!  何も「クランシー絶対」「クランシーは神の視線だぁ」なんぞと言うつもりはないし、民主党より共和党の方が正しいと言う気も無い。(日本人にとっては共和党政権の方がやりやすいのは確かだけどネ) ただ、民主党の一部には「お前、コンミイか?」ってな奴らが多いのも確か……日本のアメリカ占領時代をみても、GHQの中でも「民政局」なんてなアメリカ本国にいられなくなった左翼のたまり場だったのは今や自明、そいつらが日本で何をしたか……まぁ 色々な本を読んで下さい。
 国際政治の現場は国益がぶつかり合う所、何が正しいのか一概には断定出来ない。立場が異なる人々の思惑の絡まりが読み解ければ理解はできる。クランシーの小説は“国際政治の読み解きツール”として使える。この点に関して、あまりアメリカの価値観に偏った見方をしていると警戒する必要は無い。勿論、読み方にもよるが、まぁ そこは常識ってやつです。
 本作で言えば、パキスタンと言う国が「テロ支援国家」呼ばわりされながらも、片足は西側民主主義に置いていて、日本の新聞だけから情報を取っていると訳が解らなくなるのだが、その辺りの事情が良く解る。 とことんアメリカ大嫌いな向きには「何 言ってやがる」ってなもんでしょうが、そういう偏見の無い人には池上彰張りに分かりやすく、しかも最高のエンタメ作品です。一読オススメ〓


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高校ライトノベル・『式年遷宮』って知ってますか……?

2013-01-17 16:53:21 | エッセー
『式年遷宮』って知ってますか……?   


 今年は、伊勢神宮の式年遷宮の年です。

 ……これで分かる人は、かなりのご年配か、相当な歴女か、近鉄電車の車内ですることがなく、吊り広告を見ている人か。

 伊勢神宮は20年に一度内宮・外宮共にお社(やしろ)を建て替えます。
 日本の神道には教義がありません。清浄で清々しくあれば、そこに神ががいまします。だから、伊勢神宮は、日本でもっとも古い神社でありながら、建物は一番新しいのです。
 
 20年には意味があります。

 一人の若い職人が一人前になるのに、それぐらいかかります。
 最初は、親方の下っ端として働き、次の遷宮では、一人前の職人として働き、その次ぎ、運が良ければ親方として遷宮の差配ができます。
 つまり技術の伝承がうまく繋げるスパンが20年なのです。わたしは、三回前の遷宮の年に生まれました。二回前の遷宮は、NHKの『新日本紀行』で知り、なるほどと思うと同時に、自分の人生の節目が遷宮の年にあたる奇すしさを感じました。
 前回の遷宮は、仕事に追いまくられ、嗚呼もう不惑の年(古いなあ)、オッサンになったもんだと思いました。そして今回還暦の年に遷宮を迎えます。
 あいかわらずオッサンであることに安堵と無念さの両方があります。
 わたしは浄土真宗仏光寺派の門徒であります。親鸞さんの言葉を借りれば「善人なをもて往生す、いわんやオッサンにおいてをや」と諦観しております。さて、次の遷宮は……間に合いますでしょうか。


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『ゲキ×シネ髑髏城の七人/ルーパー』

2013-01-13 08:35:52 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『ゲキ×シネ髑髏城の七人/ルーパー』


 この映画評は、我が悪友の映画評論家、滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので。本人の了解を得て転載したものです


☆髑髏城の七人 

 ゲキ×シネ、訂正!
 学生・身障者のみ1000円、一般2200円(それでも300円安くなりました)でした。その他の割引は無しです。ごめんなさい。

 今回のドクロは“ワカドクロ”を名乗って、その名の通り ドド~ンと若返りました。初演から97年版の『得体の知れない熱気』が戻って来ました。
 メインキャラの捨之介/天魔王は従来一人二役(古田新太が出とちりしたため、懲罰的配役で始まったが、これが見所になってました)が、今回 小栗旬・捨之介/森山未來・天魔王に別れた。この線に沿って、メインストーリーは残しつつ脚本を大幅に書き直した。作者・中島/演出・いのうえ 共に大興奮しているのが伝わって来る。
 役者達は終始 苦しみ悩んで演じたようだが、その試行錯誤は大正解だった。
 まず、早乙女太一が相変わらず汗一つかかず高速殺陣を見せると共に凄みを見せつける。何なんだ この貫禄は…恐れ入りました。
 勝地涼も橋本淳の嵌り役“抜かずの兵庫”を大熱演公演中もムードメーカーだったようで、そんな所まで橋じゅんの役割を担ったらしい。
 小池栄子の“極楽太夫”にも新設定…これが泣かせる、この設定 面白いんだけど 今までには入り込む隙間が無かった。
 仲里依紗はもっとあばれるかと思ったが、それほどでも無かった。あまり乗っていなかったように見受けられる。
 全体のイメージとして、髑髏城の持つ熱気が戻っており、古田新太/橋本淳の大御所がいない分、ギャグの量が減って、その分 感動作になっている。特に後半、劇場中がグスグスいっている。泣かせる演出がことさらにある訳ではないが、勢いで感動に飲み込んで行く。生え抜きの劇団員の肩の力の抜けたサポートが抜群で、若い客演陣の熱演を支えている。
 劇団員の中では高田聖子が アッと驚く役どころ……するってぇとクライマックスの百人斬りで……と思っていたら、そこはサラッと身をかわしてましたけどね。
久し振りにリピートしたい舞台です(今更〓) 絶対毎日どこかしら大きく変化が有った筈で、リピーターの楽しみ満載間違い無しです。実は、古田新太/橋本淳のいない髑髏城ってどないよってんで 舞台は見てないんですよね…いやぁ、惜しい事しました。

☆ROOPER
 
 なぁ~~んも 考えんと見る分には、役者は揃っている(E・ブラント最高!)し、雰囲気もあって面白い映画ではあります。……しっかぁ~~し、アカン!こんな設定認められまへん。
 ご存知でしょうが「時間テーマSF」です。基本的にターミネーターと同じなんですが……時間旅行が可能な未来、一般には禁じられており 犯罪組織のみが ある目的の為に時間旅行を利用している。まず、その利用目的が?????…何をいうとるやら、説得力無し。
 30年過去に殺し屋が待ち構えており、送られてきた人間を即座に殺して処分する。この殺し屋、30年後には自らも過去に送られ処刑される決まりになっており…つまり、過去の自分が未来の自分を処刑しなければならない。B・ウイルスはこの決まりを作ったボスを殺す為に確信犯として過去に戻る……ここまで書いただけで、SFファンなら「そらぁ アカンがね」とお気づきの筈、タイムパラドックスの法則から そんな事は絶対出来ない。
 ターミネーターは同じ設定ながらシリーズ5作を持ってしても結論を出さない事によってギリギリリアルを保っているが、本作には ハッキリした結末が付けてある……この結末も有り得ない。 リアルを保つ為、アクシデントがあると ブルースの記憶が曖昧になる(バック・トゥ・ザ・フューチャーで写真の人物が薄くなって行くのと同じと思えば良い)なんてな仕掛けが有ったりするが、彼は あるものを見る事によって克服する(あり得ない)。 まぁ、役者が巧いのと ストーリーテリングがテンポ良く運ぶので見続けさせられる。
 私も あり得る設定をあれこれ考えながら見続けていましたが…あっきまへん、J・G・レヴィッツ(30年前のブルース)のラストの選択で総てがオシャカ! これが通るのは“ディアボリス”(キアヌとパチーノの「悪魔物語」)みたいな作品で、しかも この選択が有効なのは未来においてに限られる。
 SFファン以外にはチンプンカンプンかも……ですが もう少しお付き合いを、過去の改変で 同一時間軸上の未来を変える事は出来ません(これを言っちゃうとお仕舞いですけどね)。
 それは事象が変化したのではなく、 無数に有る「在りうる別な時間軸上の未来」に移るだけなので なんの解決にも成らない。結局 「なぁんでぇ」っちゅうのが結論です。この映画を楽しみたければ 一切の理屈に蓋をして、映っているママを受け入れる以外無し。 SFファンとしては辛い選択になってしまいます。

 怒り狂うか ニッコリほくそ笑むかは、見る方にお任せいたします。私は…?


『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』        

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青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351
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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『96時間/リベンジ』

2013-01-11 16:29:39 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『96時間/リベンジ』


 この映画評は、悪友の映画評論家、滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので、本人の了解を得て転載したものです。


 本年一発目は3本です。大事を取って2日に分けました。

 まずは、リーアム・ニーソンの最強(凶)おとんがイスタンブールで暴れまわる“96時間~リベンジ”前回、誘拐されて泣いているしかなかった娘のキムが大活躍! 面白かったし、今作だけでも楽しめるけど…やっぱり事前に前作チェックは必須です。
 邦題の付け方の弱点がモロに出ておりまして、原題“taken”誘拐ってぇ意味ですが、前作ではパリで娘が誘拐され、身の代金目当てでなければ(人身売買)96時間以内に見つけないとトレース不能になるってところで邦題にも意味があったが、今回はタイムリミットにあまり意味無し。さりとて今更「taken2」には戻せない。まぁどうでもよろしいけどね。
 オヤジのアクションが、前作では最上級応用編だったのが、今回は娘共々の戦いとあって全くの基本編。しかし、情報工作現場で実際に使われるテクニックとあって、興味のある向きにはぞくぞくのお楽しみ。前作ご覧の方々には100%オススメの一本です……って事で、以下 妄想的ウダウダです。
 リーマンショックでガタガタに成ったアメリカ……公開される映画が大作である程、資金ショートして中途半端な作品に堕していった。以降作られた作品も「アメリカは悪魔に取り付かれた」だの「何をどうしても無駄だぁ」っつう映画が多数。ゾンビやヴァンパイヤの大流行はその証拠だと言われたりします。  70年代のように「なんとなく左寄り社会」でもないので、ニューシネマ的な物は出て来ない。一部にラディカル左翼が語り口を甘装った映画を作るが、大衆からは相手にされない。 「ノーカントリー」では、アメリカは生活不適応な国として描かれ、バットマンですら闇に消えた。ハビエル・バルデムの“牛の器具を使う殺し屋”やヒース・レッジャーの“ジョーカー”はアメリカを襲う悪魔~アメリカに向けられる悪意(端的にはイスラム原理主義)の仮託であり、それに対してアメリカは無力なんだ…といった気分が横溢していた。

 しかぁし!

 こんな気分のまま いつまでもいられないのがアメリカ人気質、誰もが この閉塞感の破れる日を待ちわびていた。にも関わらず、誰一人そんなものを作れる者は居なかった。007が50周年目指して再起動し始めてはいたがアメリカの復活が「いつ、如何にして、どの程度…」に対する答えが無かったので“カジノ・ロワイヤル”一作をもってリブートとは成らなかった。 続く“慰めの報酬”でリブート終了かと思いきや、結局リブートは今回の“スカイフォール”を持って3部作となったのはご存知の通り。いずれにせよ007はイギリスの話であり、直接アメリカの映画都合には入らない。
 そんな時、いち早く「強いアメリカ、不屈のアメリカ人……しかも、オ・ヤ・ジ!!」を余す所なく描いて見せたのが、誰あろうフランス人のリュック・ベッソンだったってのが、皮肉であります。何の事ぁない、アメリカだって外圧が無ければ身動き取れなかったってのが 痛快なような情けないような……。  前作“96時間”は、そんなエポックメーキング…というよりは、もっと大きな意味を持ってスクリーンに登場したのであり、この規模の作品としては 有り得ないメガヒットとなった。どれだけアメリカ人がこのような映画を待ちわびていたかの証拠であった。
 以降、アメリカは威信を取り戻したとばかりに大作企画が次々に復活した。……とは言え、まだまだ気分的な範囲に止まっているのが現実(こういうタイミングでは共和党政権である事が必須) だから ついでに左翼までが勢いづいてしまっている。アメリカのリベラルなんてな“羊の皮を被った狼”……今回の選挙で共和党が勝っていれば(日本にとっては共和党の方がやりやすいってのもあって)と、今更ながらに残念に思うが あれだけ失政続きのオバマすら倒せないんじゃどうしようもない。
 映画世界でも、殊にドキュメンタリーや短編に左翼の台頭が激しく、未だに「地球温暖化」だの「犯罪者の権利」だのと言っている。始末の悪い事に、まだまだ騙されたままの人々が世界中に多数いて、これらの作品はミスリードを続けている。
 そこで、今回の第二作にこの状況を打ち破る起爆剤になって…なんぞと思っている訳ではない。前作はたまたま前述のようなポジションにはまってしまっただけであって、R・ベッソンにしてもそこまでの覚悟があった訳ではあるまい。
 ただ、彼がどう考えようとも前作にはそれだけの突破力と影響力があった訳で、それからすると本第二作は単なるアクション続編に成ってしまっていると言わざる得ない。もとより脚本・企画(ベッソン)の責任でも、作品の責任でもない。アクション作品としては一級品であり、アメリカでも既にメガヒットをもって受け入れられている。しかも本作は大人が見に来る作品である所から、後日 全く違った意味でのエポックになるのかもしれない。

 以上、多分に舌ったらずのウダウダでした。今年はこの観点から、まず アカデミー賞を再確認してみます。今年は“ユダヤ寄り”復活の予定の年であり、それが果たせないとなると、アカデミー協会への左翼浸透の傾向もあって、そのせめぎ合いが表面化するかもしれません。ノミネートが噂される作品名からも混乱が予想されるので…さて、如何 相成り増すやら。
 しからば、明日『ゲキ×シネ 髑髏城の七人』『ルーパー』にて、ご機嫌お伺い申し上げます。

 情報: ゲキ×シネが一般映画と同じ価格になってました。各種割引も適用されています。但し、劇団・新感線作品に限ってだと思います。


『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』        

 青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説! 

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青雲書房直接お申し込みは、定価本体1200円+税=1260円。送料無料。
送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。

大橋むつお戯曲集『わたし 今日から魔女!?』
 高校演劇に適した少人数戯曲集です。神奈川など関東の高校で人気があります。
 60分劇5編入り 定価1365円(本体1300円+税)送料無料。

お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。

青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351
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高校ライトノベル・セレクトエッセー・1『四つ葉のクローバー』

2013-01-05 23:03:11 | エッセー
セレクトエッセー・1
『四つ葉のクローバー』
    



 四つ葉のクローバーを摘んだことありますか……?


 ものごころがついたころ、社宅のとなりにKちゃんという可愛い子がいました。
 苗字は、昨年までAKB48のセンターをやっていた子と同じです。

 よく、ママゴトのつきあいをさせられました。犬の散歩のつきあいもさせられました。
 ぼくよりも一個としうえということもありましたが、とにかくKちゃんにはかないません。

 笑顔がとびきりいいのです。ちょっと不二家のペコちゃんに似ていました。
 ちょっぴり右のくちびるが上がってえくぼの笑顔になります。とてもチャーミングでした。

 ときどき、空き地や公園でお花摘みなんかもやらされました。

「四つ葉のクローバー探そ」
「うん」
 頼まれる……というか、笑顔で命じられるとことわれませんでした。

 Kちゃんは、すぐに四つ葉のクローバーを見つけます。
 ぼくは、一つも見つけられませんでした。

 Kちゃんは、中学に入ったころに引っ越ししました。
 中学では、学年もちがい、あまり会うこともありませんでした。
 ただ、うわさでは、勉強もよくできて、可愛さにみがきがかかり、男の子にも評判でした。
 
 そんなKちゃんが、まぶしくて口もきけませんでした。
 ぼくには、Kちゃんは四つ葉のクローバーでした。

 高校に入って、教室で友だちとしゃべっていると、視線を感じました。
「むっちゃん、ちゃうのん……?」
 教室の入り口で、目を細めてKちゃんがいました。

 まさか、同じ高校だとは思わなかったので、ひさびさに話しました。
「なんで、そんな目ぇ細めんのん?」
「うん、ちょっと目ぇわるなって、メガネ替えてるとこ」

 話題は、いつのまにか四つ葉のクローバーの話になりました。
 
 四つ葉のクローバーというのは、偶然にはできないそうです。
 葉っぱの出る成長点というところを、適度に踏みつけられてできるそうです。
 中には、せっかく四つ葉になったところを、踏みしだかれるものもあるそうです。

 だから、人が適度に歩いて踏みつけていそうなところがポイント。
 Kちゃんは、十何年かぶりで、右のホッペにえくぼをつくって、教えてくれました。

 ぼくは、Kちゃんの卒業式で、送辞を読みました。
 送辞を読んで、席にもどる途中、ほんのちょっとKちゃんと目が合いました。
 あいかわらずの、細目。でも、緊張して笑顔ではありませんでした。

 それが、Kちゃんを見た最後になりました……。

「Kちゃん、亡くなったんやて」
 母がひっそりと言いました。

 脳腫瘍だったようです。

 視力の低下が止まらないので、専門の先生に診てもらいました。
 もう、手遅れだった……お通夜から帰ってきた母が、そう言いました。

 四つ葉のクローバーは、適度に踏みつけられることでできます。
 
 Kちゃんは、とても大事なことを教えてくれました。

 生きていたら、この三月で還暦。
 四つ葉のクローバーの還暦になるんやなあ……。

 そんなことを思い出した……お正月のしめくくりでした。

 

 
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