やくもあやかし物語 2
ヤバイ!
いったん海に落ちたそいつは魚雷みたいに、こっちに進んでくる!
こういう時は御息所とかミチビキ鉛筆とかオモイヤリの出番なんだけど、度重なる戦いでグロッキー、うんともすんとも言わないよ。
仕方がないんで、体育2の腕前で泳いで逃げる!
バチャバチャバチャバチャ! バチャバチャバチャバチャ!!
盛大に水しぶきをあげるけど秒速20センチくらいしか進まない。
溺れる者はわらを掴んで沈んでいく……日本でやっつけた妖の断末魔の声が蘇る(;'∀')!
あの時は、こいつ間違えてやがると思ったけど、まさに、いまのやくもは、そんな感じ。あの言葉の意味と無力感が分かるよ(;゚Д゚)!
分かったってしょうがないんだけどね(-_-;)。
やくもの運命は風前の灯火、シリーズ2まで続いた『やくもあやかし物語』も累計241回で無念の最終回!?
ジャッパーン!
これから覚悟しようと思った時、そいつが水しぶきあげて現れた(>▭<)!
「ごめん、めちゃくちゃ遅くなっちまって!」
「キャ、海猿!?」
「ム、誉め言葉の海猿じゃねえな、まあ、いいけどよ」
それは、ただひとり、まだ救援に来てなかったハイジだったよ。
「だいじょうぶ? お腹、もう治った?」
そう、ハイジは妖怪くわせものにいっぱい食べさせられて寝込んでいたんだ。
「うん、王女さまが見舞いに来てくれて、陀羅尼介くれて、飲んで寝てたら治っちまった(^_^;)」
「そう、それは良かった(^▽^)。でも、なんで海に落ちてきたの? それも、やくもの位置からはズレてるし」
「海に落ちたのは、やくもが海に居るからだ! 位置がズレたのは、少しでも早く行ってやりてえと、勢いが付きすぎたからだ!」
「あ、そうか、ごめん。で、どうもありがとう」
「それで、敵はどこにいやがるんだ!?」
「ああ、それがね……」
トバリとトバルをやっつけて草原を歩いていたら、突然海になって困っていることを説明した。
「ウウ……そうだったのか。この海、やくものバタ足じゃきびしいもんなあ」
「アハハハ……」
「とにかく、ここで水に浸かっててもらちが明かねえ、とりあえず、浜にあがろうぜ」
「う、うん、だよね」
二人で浜に上がって、火を起こして服を乾かした。
二人ともビチャビチャで、キャミとパンツだけになって焚火の前でジッとしている。
なんだか、遭難者みたいで落ち込んできたよ……。
☆彡主な登場人物
- やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
- ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
- ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
- メグ・キャリバーン 教頭先生
- カーナボン卿 校長先生
- 酒井 詩 コトハ 聴講生
- 同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ ヒトビッチ・アルカード ヒューゴ・プライス ベラ・グリフィス アイネ・シュタインベルグ アンナ・ハーマスティン
- 先生たち マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
- あやかしたち デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女 マーフォーク(半魚人) トバル(魔王子) トバリ(魔王女)