大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

滅鬼の刃・エッセーラノベ 40『我が青春の着ぐるみショー・2』

2025-02-07 15:09:42 | エッセー
 エッセーラノベ    
40『我が青春の着ぐるみショー・2』  




 学生時代、体重は今よりも20キロも軽く、ジーパンのサイズも68センチぐらいのを履いていました。体格も華奢で、チームのボスから「女キャラに穴が空いたら頼むわな」と言われて、時どき女キャラの着ぐるみに入っておりました。 前述したようにキャンディーキャンディーの院長先生はレギュラーでしたし、イライザに入ったこともありました(^_^;)。

 着ぐるみショーではアクション(擬闘)がほとんどありませんので、わたしのような運動神経が鈍い者でも務まったのでしょう。

 そんなある日『キャプテンハーロック』の仕事が入って、女王ラフレシアの役が回ってきました。女王ラフレシアはゲームで言えばラスボスで、植物から進化した宇宙人マゾーンの女王 です。

 肌は緑色なのですが、プロポーションやヘッドは典型的な松本美人。まあ、メーテルを悪役にしたようなミテクレです。

 手下を引き連れ、ハーロックに立ち向かい、最後は手下全員がやっつけられたあと「この次は負けないから」的な捨て台詞を残して去っていきます。

 そのあとは前回で書いたようにフィナーレで盛り上がって、握手会サイン会になります。

 これに並ぶのは、たいてい子どもたちなのですが、一割か二割大人が居ます。大方は、子どもに付き添ってきたお父さんやお母さんなのですが、マレに一人で見に来ているニイチャンやオッサンがいます。

 こういうニイチャンやオッサンは要注意、ヘッドのスリットから、そういうオッサンが見えると女子の中の人は警戒します。

 着ぐるみの中の人は、バイトとは言え子供に夢を与えるのが仕事ですので、楽屋以外でヘッドを取るとか声を出すとかは禁止です。それを良いことに、女キャラに接触、往々にしてボディータッチをカマシてきます。

 握手会ですから握手は大人であっても拒めませんが、それ以外に触れるのはご法度です。
 スタッフが付いていて「握手以外はご遠慮ください」と言ってくれるのですが、混雑すると追いつきません。胸やらお尻にタッチ、中にはムンズと掴んでくる猛者も居ます。

 春の連休シーズン、とある遊園地の野外劇場で『キャプテンハーロック』をやった時のことです。

 ハーロックのところに人が集中するので、他のキャラは少し離れて握手や写真撮影に応じていると、いきなり胸を掴まれました(''◇'')。後ろから覗き込む面は五十前後のオッサンです。

 なにさらしとんじゃ! とは言えません。

 ラフレシアの雰囲気でノンノンと指と首を振って――禁則事項です――と知らせます。 着ぐるみはウレタンの胸が入っているので、つまらないと思ったのか、今度はお尻を揉んできます。

 すぐにスタッフがやんわりと摘まみだしましたが、オッサンはニヤニヤ、してやったという顔をしてやがりました。

 楽屋に戻ると、ボスが「大橋くん、手ぇ見せてみい」と言います。

 易者に見せるように手のひらを見せると、ボスは「……やっぱりなあ」と納得。

「え、なにがやっぱりなんですか?」

「きみ、手ぇ小さいから、あのオッサン、最後まで女やと思てたんやで」

「ええ!?」

「ちょっと〇子」

 MCの〇子さんが呼ばれて「ちょっと手ぇ比べてみぃ」と、ふたりの手の平を合わせます。

 おお…………

 楽屋のみんなが感心します……わたしの手と〇子さんの手は指の先までピタリと重なります。

「そんなに手が大きい方じゃないんだけど……」

 〇子さんは、他の女性スタッフと比べて自分が標準であることをアピールしておりました。


 その後、神戸まつりのパレードで「大橋くん、今日はモモレンジャーな」とモモレンジャーをやらされ、ちょっと危機感を感じました。

 ひょっとしたら、ヒーローショーをやらせられるんじゃ!?

 ヒーローショーと着ぐるみショーは似て非なるものなんですが、それは、いずれ稿を改めて。

 
 

 



 
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銀河太平記・276『筋斗雲は西を目指して』

2025-02-07 10:46:59 | 小説4
・276

『筋斗雲は西を目指して』 東鈴 




 筋斗雲はカンパニーの上をゆっくり旋回してから西を目指した。

 神社の前ではハナがピョンピョン跳ねながら手を振っている。目につくのは紅白の巫女服が目立つからばかりじゃないだろう。

 筋斗雲に翼があったらと思った。ズングリした筋斗雲ではバンクで挨拶しても分かりにくいからね。

「成層圏航路をとろうか、一時間早く着くけど」

「ううん、これでいいのよしゃ。海見てるの楽しいのよしゃ」

「火星には海ってないものね」

 メグさんが合わせると、鼻にしわを寄せて笑うテル博士。

 こういうところは、ひいき目に見ても小学生なんだけど、立派な大人。それも火星で三本の指に入るというサイエンティスト。敬意をもって接しなくちゃいけない。

「イルカ、泳いでる……あそこ」

 マヌエリトが散文的に言う。

 このインディアンの酋長は接し方がよく分からない。まあ、歓迎会で姿を見て、声を聞いたのはついさっきだから、何を言ってんだってことなんだけど、予測としてね。

 いつも悟兵の相手ばかりしてるから、同じ空間に居る人間とは無駄口をたたいていないと、微妙に気づまり。

 グィィィ~ン

 そう思いながらも筋斗雲の高度を下げてイルカ見物のポジションをとる。

「うわあああ(^▽^)」

 もう完全に小学生、いや、幼稚園児。キャノピーに両手とオデコをつけて、ヨダレまで垂らしてるし(^_^;)

「おいしそうなのなのよさ!」

 グフ( ゛艸゛)!

「そ、そういう感覚なんだぁ(^_^;)」

「火星の人口は10億で頭打ちなのよしゃ、主な理由は食料なのよしゃ。海がないしねぇ、しぇめて、地球の1/5でも海があったら、大気循環が活発になるし、養殖でない魚やクジラも獲れるようになるのよしゃ……」

「養殖の魚ねえ……」

 テル博士とメグさんの呟きがシンクロする。

 高度を5メートルにまで下げて、キャノピーを開けるわけにはいかないけど、外の音を流して雰囲気を盛り上げてやる。

 ザッパーーン

 間近でイルカがジャンプして、マヌエリトの瞳がキラリと光った。

「あれ一頭で、100人、1か月のたんぱく質」

 今のはインディアンとして? 孤島の前市会議員として?

「しかし、しょの前に戦争……」

「え、戦争は、もう終わったんでしょ?」

「停まってるだけなのよしゃ、人も資源も足りないかりゃ……力が回復したら、九分九厘、また始まるのよさ……」

「そうなんだ……」

「そのために、抑止力……東鈴、やっぱり成層圏航路とってなのよしゃ!」

「お、おお」

 グィィィ~ン

 筋斗雲は30度の仰角をとって上昇、水平線が見る見る地球の輪郭に変わっていった。

 
☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
 
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千早 零式勧請戦闘姫 2040・08『アラベスクをキメるウズメノミコト』

2025-02-06 11:17:26 | 不思議の国のアリス
千早 零式勧請戦闘姫 2040  
08『アラベスクをキメるウズメノミコト』 




 ズバッ!


 剣を抜くと同時に太陽光パネルを切った。パネルは両断されて農協の車を挟むように飛んでいき反対側の田んぼに突き刺さった。

 再び武人埴輪のように変身した千早だが、今度は頭にティアラのような天冠(てんかん)、背中にはマントが付いて魔法少女のようになっている!

――グレードアップ? また戦えってことぉ!?――

 一瞬、不満に思う千早だが、体が自然に動く。

 まだ解体が進んでいないパネルの間から黒い影たちがむくむくと湧き上がってくる。

――昨日より数が多い!――

 思うと同時に突進して中央の二体の核を切る!

 ズサズサ!

 一体はすぐに霧消したが、一体は核の中心を外してしまって不完全燃焼の煙のように蟠る。

 ゴホゴホ……

――少し吸い込んだ――

 煙を避ける。

 しかし、その数秒の間に四体の影が千早を取り囲み、輪を描き始める。

――囲まれる!――

 シュラララーーン☆ シュラッ☆ シュラッ☆ シュララッ☆ シュラン☆

 単に囲みの外に出ようとしただけなのだが、花火が爆ぜるように跳ねまわり、跳ねるたびに瞬間の決めポーズになってしまう。

――て、敵をやっつけなきゃ!――

 シュラッ☆ シュララッ☆

 数体撃破するが、やっぱり、1/100秒ほどの決めポーズ。

 追ってきた敵を眼下に捉え、そのままぶちのめせばいいのに、白鳥が羽を広げるようにポーズ! 螺旋を描きながら急降下して影の核を四つに切って霧消させる!

 シュラッ☆ シュラッ☆ シュララッ☆ シュラン☆

 それから、連続して残りを切り伏せると、目に見える範囲から敵の姿は消えてしまった。

 シャラン

 剣と盾と勾玉が震えたかと思うと、一つに合体して浦安の舞の剣鈴に変わる。

 シャラン!

 もう一度震えると、剣鈴の柄を握る手が現われ、その先が膨らんだかと思うと派手な巫女服の女神がバレーのアラベスクを決めて出現した。

 え( 〇Д〇)?

『どーもぉ、アメノウズメノミコトでーす(^▽^)』

「アメノウズメ?」

『ノミコト。ま、微妙に長いし、長い付き合いになりそうだし、アメノウズメでもいいわ』

「あの、天岩戸の……」

『そうよぉ、引きこもりのアマテラスを岩戸から引っ張り出した第一の功労者のアメノウズメノミコト、その人よ!』

 千早は思い至った。

「あんなに無駄な決めポーズやらフリを付けて戦ったのは、あなたのせい?」

『そーだけど、こんど無駄って言ったら、こうなるからね』

 シャラン

 ウズメが口をΣにして鈴を鳴らすと、停まっていた時間が動き出し、農協の車はグシャグシャになって、貞治の胴体からは血しぶきを上げながら首が千切れ飛んでしまった。

「ええ!?」

 ウズメが口をωにして、再び鈴を鳴らすと、情景は巻き戻って停止した。

『千早は巫女舞もヘタッピだからね、あたしが付いて踊れるようにしてやるから』

「あ、えと……」

『千早は神を宿す器になったけど、主神は、このウズメノミコトだから』

「主神はカミムスビノカミさんじゃあ……」

『カミムスビは神社の主神だ』

「あ、そか……」

『これからは幾柱も神を宿すことになる、管理するものが居ないと困るだろが』

「ああ、はい……ええとぉ」

『なんだ?』

「アメノウズメでも、ちょっと長いからウズメさんでいい?」

『ミコト省略かあ?』

「あ、さん付けはしてるし」

『……まあ、いいか』

「ありがとうございます!」

『うん、じゃあ。これからも励めよ』

 シャラン

 鈴の音とともにアラベスクを決めたかと思うと星くずになってウズメは消えてしまった。


 風を感じたかと思うと、貞治のホログラムが戻り、農協の車は何事もなく先を進んで、学校のある九尾本町の家並の中に混じっていった。



☆・主な登場人物

八乙女千早           浦安八幡神社の侍女
八乙女挿(かざし)         千早の姉
八乙女介麻呂          千早の祖父
神産巣日神          カミムスビノカミ 
天宇受賣命           ウズメ 千早に宿る神々のまとめ役  
来栖貞治(くるすじょーじ)  千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子
天野明里            日本で最年少の九尾市市長
天野太郎            明里の兄
田中           農協の営業マン
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・178『「Пожалуйста! Помогите!」と叫ぶ声!』

2025-02-05 10:52:00 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
178『「Пожалуйста! Помогите!」と叫ぶ声!』   




 危うく新聞に書かれるのを防いで帰路に着く。

 ジィィィィィィィィ…………

 頭の奥がしびれてるみたいで、電車に乗っても駅を出て戻り橋を目指しても、どこか頼りない……自分と周囲の景色の間に薄皮が張ったような、VRのゴーグルで仮想世界を見ているみたいによそよそしい。

 あれ?

 いつものように護岸のGの標(003『ええ! 1970年!?』)が見えて戻り橋が現れるはずなのにGの標が現れない。

 左岸のM、右岸のGを認識することで、人には見えない戻り橋が現われて、戻り橋を渡ることで令和と昭和を行き来できる。

 もう二年になるので、普通の橋を渡るように当たり前になっていた……標が無くなる、いや、見えなくなるのは初めて。

 ちょっと焦った(;゚Д゚)。

 昭和の宮之森に通っているけど、自分のリアルは令和にある。

 このまま昭和に置いてけぼりになったら帰るところが無くなってしまう。

 キョロキョロして、上流側の寿橋を渡る。寿橋は令和にも昭和にもあるリアルの橋だから、当然渡れる。

 戻り橋の下は時間が流れているんだけど、寿橋の下は普通に水が流れていて、渡った先はとうぜん昭和の町で、自分の家があるはずのところはただの空き地。

 少しだけ踏み込んで川沿いを歩いて見ると……え?

 護岸のコンクリートにMの標。

 混乱した。

 Mの標は令和側にあって、それを認識したら戻り橋が現われて昭和に行ける……で、戻り橋が現れた。

 サラサラサラ サラサラサラ サラサラサラ…………

 ゆったりと時間が流れる音がして、それは紛れもなく異界の戻り橋。

 でも、立っているのは昭和の橋のたもと。不用意に渡ったら昭和よりも古い時代に行ってしまうかもしれない。

 だって、Mの標は時を遡る標だからね。

 令和から昭和に渡って1972年。その差は53年。

 1972年の昭和から53年遡ったら……1919年。

 たぶん昭和の前の大正時代。大正は西暦から11を引くんだから……大正8年?

 ええと、こないだ関東大震災100周年とか言ってたからぁ……だめだ、大正時代の知識なんか全然ないよ。

 さっき、新聞社を周って杉田先生の記事を消しまくった勢いは消え失せて、橋のたもとに立っているのは、元々のわたし。

 とりあえず、寿川の向こう側に戻ろう。

 回れ右して、速足で寿橋に向かう。

 タタタタタタ!

 戻り橋を渡って来る足音! それも走ってるし!

 かかわりになっちゃダメだ! そう思って目を背けようとした時に、足音は橋を渡り切って叫んだ!

「Пожалуйста! Помогите!(パジャァオスタ! ロマギニア!)」

 

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
 
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滅鬼の刃・エッセーラノベ 39『我が青春の着ぐるみショー』

2025-02-04 15:23:07 | エッセー
 エッセーラノベ    
39『我が青春の着ぐるみショー』  





 ヒーローショーをご覧になったことがあるでしょうか?

 着ぐるみショーとも言いますが、その話です。


 大分類では着ぐるみショーでしょうね。


 人が等身大の縫いぐるみの中に入って15分から30分のショーをやります。人が着るので着ぐるみショーなのでしょう。

 たいてい、スーパーの駐車場や屋上、大きな商業施設ですと専用のイベント広場やシアターということもあります。

 大学時代の友人で、すでに着ぐるみやらテレビのエキストラをやっているのが居て、彼の誘いで二回生の秋ぐらいから始めたように記憶しています。

 
 最初にやったのは『一休さん』です。


 アニメの『一休さん』とは違います。アニメと同じなのは一休さんだけで、それ以外の兄弟子や和尚さん、村娘などアニメに似ているのですが名前が違っていました。テレビ通りだと著作権の問題があってロイヤリティーが発生するからでしょうね。

 わたしの持ち役は一休さんの兄弟子の朴念でした。一休さんに意地悪ばかりするのですが最後にはやりこめられる役です。

 肌色の肉襦袢の上から衣装を着てカシラを被ります。

 肉襦袢や衣装はクリーニングが行き届いているのですがカシラは、そのままの使いまわしです。当然、他のチームでも使っているもので、何人分何十人分もの汗が染みついて、状態の悪いものは黒カビが生えていたりしました。
 新品か、それに近いものでなければ臭気がすごく、そのままでは使用に耐えないのでオーデコロンなどが振りかけられていて、これが汗の臭気と混ざるととんでもない臭いになります。

 セリフや効果音などは録音されたテープで流され、役者は、それに合わせて動くだけです。後で触れるヒーローショーと違ってアクション(擬闘)はありません。

 たとえば、一休さんを困らせようと朴念が橋のたもとに『このはしわたるべからず』と立札を立てます。
 ところが、一休さんが来る前に村娘のチヨちゃんがお遣いに行こうと橋のたもとにまでやってきて困ってしまいます。

 そこへ、一休さんが通りかかり「チヨちゃんどうしたんだい?」と訊ねます。チヨちゃんは「見てよ一休さん、橋が渡れなくなっているの」と立札を指さします。

 一休さんは数秒間考えて「なあに、簡単だよ」と言って、スタスタと橋を渡っていきます。

 すると、隠れて見ていた朴念が飛び出して「こらあ、一休、この立札が目に入らないのか!」と怒ります。

 一休はニコニコとして「なにを言ってるんですか朴念先輩、はしを渡るなと書いてあるから、ぼくは真ん中を歩いたんですよ」と答えます。

 一休の説話にのっとっているのですが、ここから少し違います。

「あれえ、おかしいなあ。立札には和尚さまの名前が書いてあるけど、どうして平仮名ばかりなんだろう?」

 そこから、立札のいたずらが、漢字が苦手な朴念の仕業だと分かって、やってきた和尚さんに叱られて、めでたしめでたし。

 そのあと、キャラ全員のダンスがあって、MCのおねえさんが出てきて子どもたちとの交流会(ナゾナゾクイズやアッチ向いてホイなど)、握手会サイン会になっておしまいです。全部入れて30分ぐらいだったと思います。

 
 次にやったのが『キャンディーキャンディー』です。水木杏子原作、いがらしゆみこの作画と漫画で一世風靡した少女マンガアニメの金字塔です。

 これは、きちんとロイヤリティーを支払った版権物で、テーマ曲挿入曲もアニメの通りで、『一休さん』の五割り増しは観客が多かったですね。

 流れは『一休さん』と同様で、15分ほどのドラマの後にテーマ曲が流れてダンスショー。いったん幕を下ろして握手会とサイン会であったように思います。

 わたしは、ポニーの家の院長先生(修道女のおばあさんの姿)をやっていました。朴念にしろ院長先生にしろ、出番はそれほど多くなく、難しい動きもありません。まあ、駆け出しの役と言っていいかもしれません。

 しかし、持ち役の役者が来られない時や、新人が入ってきた時は、そういう駆け出しの役を譲って他のキャラをやることもありました。先輩からは「全部のキャラの登場退場のきっかけを覚えておけ」と言われていました。
 まあ、セリフはテープで流れていますから、五六回やっていれば、まず破綻することなくこなせます。

 さすがにキャンディーやアンソニーはやりませんでしたが敵役のイライザはやったように記憶しています。

 イライザついでにお話しますが、着ぐるみショーは男が男、女が女のキャラをやっているとはかぎりません(^_^;)。

 実は……どうも長くなりそうなので、次回も続きます。

  
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銀河太平記・275『徹夜看病のあとの磯辺にて』

2025-02-04 10:14:52 | 小説4
・275

『徹夜看病のあとの磯辺にて』 東鈴 




 神社に行こうかと思ったけど、顔も洗ってないので磯に下りる。


 悟兵はタンコブができただけで、わたしとメグさんとでチェックしても脳ミソにも頸椎にも異常は無かった。

 だけど、お酒も入っていたし、大事をとって夕べはずっとつきっきりで看病。

 手足にしびれがあるって言うし、頭がボーっとするって言うからね。

 ショックで微妙にタガが外れたんだろうね、時どきうわごと……ほとんど意味不だけど、声の調子が若い。わたしにはむろん老婆婆にも見せない若いころの断片だと思う。

 夜中に手足が冷たくなってきて、ちょっとビビった。

 スキャンしても打撲とタンコブ以外に異常はないし。おそらくは見ている夢のせい。アルコールも残ってるしね。

『さ、寒い……』

 ガタガタ震えるし、手足はますます冷たいし、わたしは思い切った。

「し、仕方ない……(#'∀'#)」

 悟兵の布団に入って朝まで抱きしめてやる。素でやっていると緊張してしまうので、意識の九割を眠らせてね。


 朝には平熱に戻って、服を着たところで連絡所の下士官が見舞いに来たので、すこし外の空気を吸いに出て来たところ。


「おう、なにボーっとしてやがんだ」


 声に振り向くと、ハナが巫女姿で箒を持っている。

「おお、キチンとしてると立派な巫女さんだ」

「あたりめえだ、オンとオフは、キッチリ切り替えてるからな。オッサンはもう大丈夫なのか?」

「うん、頭打ったから熱が出るかと思ったけど、逆に体温下がって来て、少しビビったけど、いまはもう大丈夫」

「そっか、それなら心配しねえでモンゴルに行けるな」

「うん」

「ハナも行きてえけど、こないだ行ったしなあ……」

 ガラッパチに見えて、島のことを思っているんだ。北大街も悪くはないけど、みんな二枚も三枚も皮を被っているようなところがある。ここみたいに、人もロボットも一枚看板、せいぜい並の裏表だけで生きていけるのは、ちょっと羨ましいかもしれない。

『あ、ここに居たんだ』

 声に振り返ると、殿下が笑顔で岩鼻に立っている。軽やかに駆け下りてくると立ち上がろうとしたわたしを制して「お供が見つかりましたよ」と後ろを指さす。

 振り返ると岩鼻にごっついオッサン。

 ヒョイヒョイと二歩で駆け下りてくると、腕組みをして殿下の横に立った。

「こないだまで市会議員をやっていた、ナバホ村村長のマヌエリトです。島一番の戦士なので、モンゴル騎兵の人たちにも押し出しが効くと思います。むろん腕もたちますしね」

「まかせておけ。マヌエリト、一度はモンゴル騎兵と戦ってみたかった」

「あ、いや、戦いに行くわけじゃぁ……(^_^;)」

「冗談、気にするな」

「おもしれえ旅になりそうだな!」

 アハハハハ ニャハハハ ニャーニャー

 
 その場のみんなが笑って、ウミネコも笑って、モンゴル調査旅行のメンバーが確定した。




☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 


 

 

 
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千早 零式勧請戦闘姫 2040・07『通学途中の異変』

2025-02-03 15:00:58 | 不思議の国のアリス
千早 零式勧請戦闘姫 2040  
07『通学途中の異変』 




 未来の自転車は空を飛ぶ。


 保育所の年長さんの時、ぞうさん組の先生が言っていた。

 車の5%は空を飛ぶ時代なのだから自転車だって空を飛ぶだろうと千早は思った。自転車が空を飛ぶようになったら貞治といっしょに飛んでみたいとも思った。

 しかし、十年ちょっと未来の今日(こんにち)、九尾市の空を飛んでいる自転車は無い。

 千早は貞治と前後に連なって通学の途中だ。

「あ、やっと撤去にかかったぁ」

 三本松の角を曲がると右手に三十年ものの太陽光発電プラントがあったのだが、それが、解体撤去が決定して四年、いや五年目にようやく解体にこぎつけた。

『国の補助がやっとついたらしいぞ』

 ハンドルの上に1/4サイズで現れた貞治が――ざまあみろ――という顔で答える。

 空飛ぶ自転車は存在しないが、自転車のハンドルが多機能化し、前後を走っている人間のホログラムを1/4サイズで表示して会話できるようになっている。

 この機能が付いてから横に二列や三列になって走る自転車が劇的に減った。

 横目で相手を見て地声で喋るより、目の前に姿が見えて指向性の強いスピーカーから声が聞こえる方がいいに決まっている。

 最大五人までと話しができるが、道が混んでくると自動でホログラムは消えて音声だけになる。

――昔は、道幅いっぱいに広がって登下校して苦情が殺到したものです――

 こないだの離任式で校長先生が言っていたのを思い出す。

「プラントのあとは、なにができるんだろ?」

『田んぼになるって親父が言ってたぞ』

「おお、そりゃ楽しみだね」

『ああ、九尾丘の風車も撤去されたし、いい感じになるぜ』

 二十一世紀も半ばにさしかかり、太陽光や風力のエコ発電は、ミニ原発と深海からの採掘が商業ベースに乗ってきた化石燃料に置き換わりつつある。核融合炉さえも試験運転の目途が立つ今日、エネルギー事情は濃尾平野でも変わろうとしている。

 やっぱり濃尾平野には田んぼが似合うと思う千早だ。

 撤去工事は三分ほどの進捗状況で、角を曲がって100メートルも行くと相変わらずパネルの海が広がって――むかつくぅ――と思ったら貞治が消えた。後ろから自動車が接近して来たので、安全のため自動でオフになったのだ。

 プップー

 軽くクラクションが鳴ったと思ったら農協の田中さんの車だ。

「昨日はどうも!」

 短いお礼の言葉は聞こえたのかどうかは分からないけど、運転席の田中さんはニッコリ笑って手を振ってくれた。

 ブォォォ

 小さいが小気味いい加速音をさせて、農協のハイブリッドは二人を追い越していく。まだ農協の始業時間には間があるのだろうけど、働き者の田中さんは、お得意様周りの営業に出ているのだ。

「働き者だなあ、田中さん」

 蘇った貞治のホログラムが牧師の父親に似た笑顔で言う。時にはケンカもする幼なじみだが、この笑顔は褒めてやっていいと思う千早だ。

 あ!

 どこから風が吹いたのか、解体中のパネルがフワっと宙に舞い、田中さんの車目がけて飛んでいく!

 危ない!

 ピシ!

 瞬間氷結するような音がして時間が停まってしまった。



 
☆・主な登場人物

八乙女千早           浦安八幡神社の侍女
八乙女挿(かざし)         千早の姉
八乙女介麻呂          千早の祖父
神産巣日神          カミムスビノカミ     
来栖貞治(くるすじょーじ)  千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子
天野明里            日本で最年少の九尾市市長
天野太郎            明里の兄
田中           農協の営業マン
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・177『ひょっとして、なにか覚醒した?』

2025-02-02 11:09:29 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
177『ひょっとして、なにか覚醒した?』   




――くそ、くそ、くそ……妹尾死ね! 妹尾のクソ! 死んじまえ妹尾! おまえに関係ないだろ! 自宅謹慎だぞ! 追って連絡あるまで謹慎! 懲戒! 懲戒処分だぞ! 戒告か? 訓告か? 停職? まさか解雇? くそ! クソクソ!――

 十円男の予測通り、杉野先生の心には妹尾先生への憎しみと懲戒処分が下ることへの恐怖心が渦巻いてる。

 校長先生から、処分内容が決まるまでは自宅謹慎してろと申し渡されたんだ。

――金が要るんだ! 優子は専業主婦になることを条件に結婚したんだからな……お袋も体弱いし……学校の給料だけじゃ足りないんだ! 仕方がないんだ! 給料安いから! 外で働かなきゃしかたないんだ! それを……それなのに……――

 ああぁ、どす黒い憎しみと不満が渦巻いて、近づいたらスターウォーズだったかの暗黒面に取り込まれそうで……でも、蛇に睨まれた蛙みたいで、蛇に睨まれたら身動き取れないんだろうけど。違うんだ、この距離とペースを崩したら、先生が振り返って「覗いたなあ(◣д◢) 」って牙を剥きそうで、ペースを崩せない。

 けっきょく、駅の通路で先生が向かう上りを避けて下りのホームに向かうまで後ろについてしまった。

 ホームに上がると、ちょうど電車が入って来て乗ってしまう。

 家に帰るには、先生と同じ上りに乗らなきゃいけないんだけどね。

 不可抗力で大宮市駅まで来てしまう。


 電車を降りて上りのホームに戻ろうと階段を下りる。


――夕刊は無理だけど、朝刊には十分間に合う――

 先生のではない想念が伝わってきた!

――二回も自殺者を出して、今度は教師の不祥事だぁ、まったく宮之森はクソだ。徹底的に叩いてやらなきゃな……くたばれ、日教組!――

 ゲゲ!

 こいつ毎朝新聞の記者だ!

 学校の周辺で取材して、これから教育委員会でウラを取って三面記事のトップに載せる気なんだ。

 杉野先生は自業自得だ。だけど、学校が新聞に書かれるのはイヤだ!

 これ以上、学校のみんなの心を掻き乱されるのはごめんだ!!

 ピシャーーン!

 なにかが弾けた……わたしの中でなにかが弾けた……クラっときて、思わず階段の手すりを掴む。

 胸がドキドキ、視野の端っこが白く光って……立ち眩み?
 
 いや、立ち眩みでドキドキはしないし、あれは目の前が暗くなる……なんだか、自分の中のエネルギーが鋭く放出されて、その余韻みたい。

 え……記者のオッサンも階段降りたところで立ちすくんでいる。

――え……オレ、なにをしようとしていたんだ?――

 あれ……記者の頭の中から杉野先生に関する情報が消え去っている。とうぜん、新聞社に戻って記事にしようという気持ちも消え去っている……。

 わたしがやった?

 湧き上がった疑問を咀嚼する間もなかった。

 イメージが湧いてきた。

 O新聞とK新聞……それにY新聞……その三社も杉野先生のことを記事にする気でいる。

 Y新聞は駅の近くだ!

 階段を一段飛ばしで降りて、改札もダッシュで抜けてロータリーの向こう側にあるY新聞に向かった。

 社会部の前に立つと、女性記者とデスクの姿が際立った。

 そうか、記事は書き上げられてデスクのところまで回っているんだ。

 ピッシャーーン!

 再び弾けて、二人の頭の中から杉野先生のことが消える。

 よし……エレベーターの前まで行って、まだ記事原稿が残っていることに気づいてイメージが湧く。

 念じると手の中に原稿、少し怒りがこみあげて――消去――と念ずる。

 ボ!

 一瞬の炎になって原稿は灰も残さずに消えてしまう。廊下をこっちに歩いて来ていた女性職員がビックリしている。ニッコリ笑っておくと、女性職員も少しぎこちないけど笑顔を返してくれて、まあ、なにかの錯覚だろうと思い直してくれる。

 次はK新聞! いや、近ければO新聞! 両方とも場所が曖昧。

 駅前に戻って『駅前付近の地図』で確認。

 K新聞が近い。

 ダッシュで二ブロック先のK新聞に向かって、さっきと同じように記者とデスクの記憶を消して記事原稿も……こんどは書かれた字だけ消す。

 さあ、残るはO新聞!

 グ……地方紙のO新聞は駅一つ向こうの谷口(やとぐち)だ。

 間に合わない!

 O新聞の社屋が頭に浮かぶ、続いて、社屋が爆発してボウボウ燃えるイメージ!

 だめだ、念じたらほんとうになってしまう!

 どうしよう……迷っていると、O新聞の正面玄関のイメージ。

 すると、念じたわけでもないのにO新聞の玄関前に移動している。

 テレポテーション?

 考えている暇はない、すぐに社会部に飛んで、それまでと同じように記憶と記事原稿を消去した。

 終わったぁ……(-_-;)

 谷口の駅に向かう、二つ向こうの通りに伊勢半配送センターが見える。

 ほんのひと月前なんだけど、なんか懐かしい。

 首を駅に向け直す……視野の端に人影。

 あ

 どこか見覚えのある外人女性……たぶんソ連人。

 ブル

 いっしゅん怖気を振るって、そいつは消えた。

 蒸発したわけじゃなく、たぶんテレポーテーションだ。


 時司巡    


 ひょっとして、なにか覚醒した?

 

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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銀河太平記・274『朝ごはんを頂きながら』

2025-02-01 10:44:21 | 小説4
・274

『朝ごはんを頂きながら』 東鈴 




「いつもはたくさん作るんだけどね、今朝は、これで勘弁しとくれ」

 和食と洋食の選択式で文句は無いんだけど、お岩さんは申し訳なさそう。

 昨日の宴会は明け方近くまで続いて、大方の島民は河岸を変えたり自分の宿に帰ったらしいけど、何人かは座敷席で飲み続けていたらしい。むろん、我が主の悟兵もその中に入っていて、座敷の方でオイデオイデをしている。

「え、めずらしい、パンで朝ごはん~? さては飲みすぎたなぁ~」

「うるさいアルよ」

 と言いながらも席を詰めてくれる。

 和食のトレーを持って座敷に上がると、殿下は和食、悟兵はモーニングセットみたいなの。対面には仕事できそうなお姐さんが収まって納豆をかき回している。

「あら、五人じゃ狭いわね」

 マイさんが言うと悟兵は横の座卓を引き寄せる。

 実のところ、隣りの席に行きたかったんだけどね、マ、いいや。

「こちら、島の研究所の所長のメグミさんアル。こっち、秘書の東鈴アルね」

「あ、ども、先に頂いてます」

 温泉でハナが言ってたメグさんは、この人なんだ。

「東鈴です、えと、普通に喋っていいっすか?」

「ああ、もちろんよ。不躾だけど、いいボディーね」

「アハハ、再起動して間が無いんですけどね、調子はいいかな」

「ううん……触ってもいい?」

「え、あ、うん」

「東鈴、気を付けないと分解されるアルよ」

「しないわよぉ、本人の了解も無しにぃ~」

 了解したら分解しちゃうんだぁ(^_^;)

 しかし、だれかもそうだったけど、パット見だけでロボットと見抜くのはスゴイ。

「メグさんは、設備だけじゃなくて、島のロボットやら作業機械のメンテの元締めやってくれてるのよ」

 マイさんもお世辞ではない賞賛、大した人なんだろうけど、島の人間はお互いにもよそ者にも距離が近いというか隔たりが無い。

 人にしろロボットにしろ、こういうのはプログラムや規則でできるものじゃないと思う。
 島は落盤事故や日本政府の干渉やら戦争やらを経験して、うまく言えないけど練れてきてるんだ。悟兵がここにやってきたのは劉宏大統領のお使いだけじゃない、悟兵自身この島が好きなんだ。またどこかで冷やかしてやろう(^_^)

「そうそう、東鈴、あなたテルといっしょにモンゴルに行くんだって?」

「え?」

 あ……悟兵のやつ、勝手に決めたなあ!……一瞬むかついたけど、すぐに、それもいいかと思う。あのチビッ子博士は一人にはしておけない。それに、ちょっと面白いとも思う。

「あ、噂をすれば、本人が来ましたよ」

 殿下が首を向けた先、食堂の入り口でキョロキョロしているテル博士が見えた。


「いやあ、ちゃぶ台とはシブイのよさ!」


 和食と洋食のパンをトレーに載せてテル博士は座卓に感激した。

「あ、ちゃぶ台っていうんだ」

「うん、火星でもあんまり見かけないんだけど、友だちの家で見かけたのよさ」

「平賀博士、紹介しておきます。こちら、通称孫大人の孫悟兵」

「孫悟兵アルよ」

「あ、お目にかかれて嬉しいのよさ。昨日は遠目でしか見てなかったけど、なかなかいい感じのおじさんなのよしゃ」

 二人で握手、なんだか爺さんと孫娘。

「こちらが、島の研究所長の加藤恵さん」

「あ、気楽に片仮名のメグとかメグさんでいいから」

「お噂はかねがね、平賀テルなのよしゃ……ん?」

 ほんの一瞬フリーズするテル。でも、ほんのコンマ一秒くらいのことで、すぐに笑顔で握手。メグさんは普通にニコニコしている。

「わたしも興味あるから付いていくわ」

「モンゴルまでは、ワシの筋斗雲つかうヨロシ。東鈴、運転頼むアルよ」

「あ、うん」

「女性三人だと軽く見られることがありますから、ひとり男のお供を付けようと思います」

「あ、すみませんナノよさ、殿下」

 テル博士が恐縮していると、お岩さんがマーマレードのビンを持ってやってきた。

「きのうもらったマーマレード、ためしてみるかい」

「アイヤー、そのために来たんだったアル。試食するアル」

 マーマレードはパンにつけるのかと思ったら、紅茶に入れたり、舐めてから紅茶を飲んだり、濃茶のお茶うけにもいけることを初めて知った。

「あ、この味……」

 テル博士が、なにか思い当たったみたいだけど、すぐに話題は青銅の騎士やモンゴルの話しに戻る。

 なんか、和気あいあいとして、しまいに我が主のアルアル語もひっこんでしまう。

 悟兵が屈託なく過ごしているのは横に居て楽しい。

 みんなで、アハハと笑ったり、そうなんだと感心したり、ちょっと楽しいひと時が過ごせた。

 
 しかし、好事魔多しというか、調子に乗ったというか……。

 
 ドンガラガッシャーン!


 悟兵は食堂の階段を踏み外して頭を打ち、一晩付き添う羽目になってしまう(-_-;)。

 きのうはテル博士、今日は悟兵の看病……ま、いいけど。




☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       輸送船の船長  大統領府参与
朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟

 

 
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