中国が「一つの中国」を核心的利益と主張するのは、台湾も中国の一部だという意味だから、トランプ大統領が「一つの中国」に疑問を投げかけた時、私は「なかなか根性あるじゃないか」と評価した。トランプは“台湾と中国は別の国だ”という見解を表明したと理解したからである。
第二次大戦後、チャイナでは蒋介石が率いる国民党軍(中華民国)が、毛沢東が率いる共産党軍に敗れ台湾に逃げ込んだ。つまり、中華民国は台湾に移ったのであり、現在もそのままの状況が続いている。その後、武力と経済力で勝る中国を正統チャイナと認める国が多くなったために(日本もその一つ)、やむをえず中華民国はTaiwanとかChinese Taipeiと称するようになった。したがって、中国と台湾は別の国であると考える方が理屈に合っている。
話が横道にそれるが、第二次大戦の戦勝国である中華民国が国連の常任理事国になったのはやむをえないとしても、中華人民共和国(中共)が中華民国の地位をそのまま継承して、常任理事国になったのはおかしな話だ。中共は日本と戦っておらず、したがって戦勝国ではないのである。
さて、トランプは最近になって「一つの中国」を認めた。つまり、「台湾も中国の一部だ」という中国の主張を受け入れたと解釈できる。中国との融和を優先したわけだが、米国の大統領ともあろう人が、そう簡単に自分の主張を変えていいのか。トランプはもっと根性がある男だと思っていたが…。 それとも、これもトランプ流交渉術なのか。
いずれにせよ、台湾はコケにされた。蔡英文総統はさぞ残念なことだろう。