韓国における徴用工訴訟問題は、原告が新日鉄住金と三菱重工の韓国内にある資産を差し押さえるという事態になっていることはご承知の通りである。そして、次の段階は日本政府が国際裁判に訴えることになる。ちなみに、この訴訟を主導しているのは民族問題研究所という左翼団体。
一方、それとは別の徴用工訴訟が始まっている。それは、太平洋戦争犠牲者韓国遺族会という民間団体が主導している集団訴訟で、その原告の人数は1,386人だという。
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この集団訴訟は韓国政府を被告とするもので、その主張の根拠は1965年の日韓基本協定を締結した時の交渉記録に存在する。すなわち、交渉の過程において、日本政府が個人補償に応じる意向を示したところ、韓国政府は“個人補償は韓国政府が対応するから、その金額も含めて補償金をすべて韓国政府に支払ってほしい”と要求した、という記録である。
しかし、実際には韓国政府は個人補償を行わず、全額を経済発展に注ぎ込んだ。これは韓国政府の横領であるから、被告は韓国政府になる、という論理である。この論理は明快であり、韓国の裁判所が法理に即して対応するなら、被告の韓国政府は1,386人の原告それぞれに補償金を支払わなくてはならない。これまでの前例に倣うと、一人当たりの補償額は円換算で約1千万円だから、総額で138億6,000万円という巨額になる。
ところが、これまでの日本企業を被告とする訴訟とこの新しい訴訟は、訴因が同じでも被告が異なるという矛盾がある。したがって、裁判所はこの新しい訴訟の補償を求める相手はそれぞれの原告が労働を提供した日本企業である、という判決を下すことにしたいだろう。
裁判所はこの新しい訴訟の判決を引き延ばし、日本が国連に提訴する新日鉄住金や三菱重工を被告とする事案の結果を待つのではないだろうか。
では、日本の提訴に対して、韓国はどう反論するのか。韓国は、“日韓基本協定が無効だったのであり、日本の朝鮮併合そのものが不当だったのだ”と主張するだろう。その結論がどうであれ、その論争において、韓国は国際協定を守らない国だという認識が国際社会に広がることは確実であり、韓国はそういう事態は避けたいはずだ。
自分が蒔いた種とはいえ、文在寅大統領はとんでもない窮地に追い込まれた。
それはともかく、新日鉄住金と三菱重工の裁判で、弁護士は次のことをしっかり主張したのだろうか。
(1)当該戦時労務者は強制されたのではなく、募集に応じたものであること。
(2)そして、彼らは日本人と同じ賃金を受け取っていたこと。
それでも、裁判所は彼らが不当な扱いをされたと判断したのだろうか。不思議な話である。
明解な分析に拍手します。