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実態は火の車の中国経済

2021-03-27 16:56:04 | メモ帳
「それでも習近平が中国経済を崩壊させる」(朝霞豊著 WAC出版)には、「えっ、そうだったの、初耳だ」とびっくり仰天する話が満載である。そのいくつかをご紹介する(青字)。

●中国人民大学教授の向松祚氏は2018年12月の講演で「内閣直轄の特別チームが2018年のGDP成長率は1.67%と内部試算した」と述べた。ちなみに、同年の公式発表によるGDP成長率は6.6%だった。

●公式発表の失業率は4%で安定しているが、失業統計の対象となるのは、失業保険の対象となる都市戸籍保有者に限られ、農民戸籍を持ついわゆる農民工は除外である。この農民工を計算に入れると、実際の失業率は20%程度と推定される。労働人口は7億人程度だから、失業率が20%とすれば、実際の失業者は1憶4千万人程度ということになる。言うまでもなく、これは日本の人口より多い。

●地方政府が水道事業とか鉄道事業などのインフラに資金をつぎ込むとき、永久債と称して、元本を返済せず金利だけ支払う。だから、地方政府の負債はどんどん膨らんで、デフォルト(債務不履行)が発生するはずだが、今のところ顕在化していない。しかし、もう限界に達しているはずである。

●高速鉄道網は2020年末の段階で、すでに3万8千キロに達した。これは日本の新幹線網の3千キロの13倍になり、さらに2035年までに7万キロにする計画である。ところが、黒字路線は北京―上海路線と北京―広州路線だけ。高速鉄道網を運営している中国鉄路総公司が抱える債務総額は2018年末で5兆2,800億元(83兆円)と推定されていたが、数字は公表されていない。かりに2035年まで計画通りに拡張された場合、おそらく負債総額は950兆円程度になると思われる。

●信用格付けがAAAなどの優良国営企業が続々とデフォルトに陥っている。例えば、半導体国産化計画を推進していた紫光集団の負債総額は2030億元(3兆2千憶円)。

●上海や杭州などの特別な大都市では、今なお地価は上昇しているが、北京では2017年の最高値から15.8%下落、同様に天津市では21.8%、青島市では22.8%の下落となった。オフィスビルの空室率も急増している。例えば、深圳市の空室率は40%に達し、賃料も2018年から2020年末までに23.5%下落した。ちなみに、東京の空室率は2020年末で4.33%。

●中国では銀行融資の30%が不動産担保であり、不動産の価値が下落すると、担保不足が発生する。銀行は貸付けた企業に担保の積み増しを要求しなくてはならないが、企業は応じられないという深刻な事態になっている。

●1979年から2015年まで一人っ子政策を実施したため。人口構造が歪になった。一方では、高齢化が進行している。その結果、年金財政は破綻寸前である。

中国経済が破綻するという予測はもう10年以上も前から言われてきたことだが、これまではなんとか持ちこたえてきた。だから、自由主義諸国では「中国は専制政治だから、力で抑えつけられるのではないか」という楽観気分になっている。「狼がくるぞ」と言い続けて、結局は来なかったイソップ物語の寓話を想い起させる。

ところが、本書は「狼はすぐそばまで来ているぞ」と警鐘を鳴らしているのだ。タイトルに「それでも」という表現が入っているのは、そういう意味である。

本書を読めば、“中国の富は今や日本を追い越して、世界第二位になった。遠からず米国も追い抜くだろう”という予測は幻想にすぎないことがわかる。中国経済が破綻すれば、世界中が巻き込まれ、空恐ろしい事態になる。嘘に嘘を重ねていると、どうしても矛盾点が出てくる。本書はその矛盾点を暴き出した。

国内経済がこのように火の車だというのに、中國は軍事費を毎年増やし、一帯一路を推し進める。習近平はなにを考えているだろうか。

ところで、著者の朝香氏は一介のブロガーだった人物だが、よくこれだけ調べ上げたものだ。WILL5月号に中國通の第一人者と目される石平氏との対談が掲載されているが、石氏も朝香氏の中国通ぶりに敬服したと見受けた。本書の発刊で、朝香氏は中国問題の論客としての地位を確立した感がある。

次回は習近平国家主席の強権ぶりを考察する。










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