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風雲急を告げる尖閣諸島

2020-08-07 10:19:23 | メモ帳

8月6日の産経新聞に掲載された宮家邦彦氏による「ルビコンを渡り始めた米中」という寄稿の中に、興味深い記述があった。それは、7月下旬に米国のシンクタンクが実施したウォーゲームの一部始終である。尖閣諸島が中国に奪取されたという想定で、その後の展開を4千人の参加者がネット上で議論するというものらしい。

爺が興味を持ったのは次の点である。

  • 米国でも尖閣諸島が話題になっていること。
  • 奪取された尖閣の奪還作戦の主役は日本の自衛隊であること。
  • 米軍はその奪還作戦を支援するが、米中とも戦争の大規模化を望まず、戦況は長期化すると予想されたこと。

重要なことは、(3)に示されたように、一度奪取されたら奪回は難しいということである。したがって、奪取されぬよう万全の態勢を整えることが必要ということになる。

さて、産経新聞は8月2日、次のように報道した。(赤字)

中国政府が日本政府に対し、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での多数の漁船による領海侵入を予告するような主張とともに、日本側に航行制止を「要求する資格はない」と伝えてきていたことが2日、分かった。16日に尖閣周辺で中国が設定する休漁期間が終わり、漁船と公船が領海に大挙して侵入する恐れがある。日本の実効支配の切り崩しに向け、挑発をエスカレートさせる可能性もあるとみて日本政府内では危機感が高まっている。

産経は上にあるように、「領海侵入の予告」と認識したが、本気で侵入するなら予告はしないはずで、これは脅しである可能性もあるだろう。

爺が釈然としないのは、メディア各社は産経と同じ情報を入手したはずだが、なぜ産経だけが報じたのか、である。親中派が事態を楽観視していることもあるのではないか。

いずれにせよ、最近中国の公船が100日以上連続して、尖閣の接続海域に現れたとことは事実であるし、浙江省沿岸には数百隻の漁船が待機しているという情報もあるから、尖閣諸島問題は新しい局面に入ったと考えるべきだろう。

ところで、中國政府の「日本政府には要求する資格がない」という強気の発言はどういうことなのか。中国は、尖閣諸島の領有権は中国にあると主張しており、その主張が正しいならば、「日本は資格がない」ことになる。

そこで過去の両国の論争を調べてみると、中国の言い分にもそれなりの理があるものもある。爺の主観的判断では、8対2程度の割合で日本に分があるように思う。

さらに、尖閣問題を発端まで遡ってみると、両者の立場は5分5分という認識も成り立つ。中国は1960年代終わりごろ、尖閣周辺の海底に資源がある可能性に気づき、にわかに領有権を主張し始めた。その論争は、1972年における日中国交正常化の時にも終わらず、両国は「この問題は棚上げして、後世に託す」として、日中正常化を優先させた。「後世に託す」では、両国の立場は互いに5分ということになる。

日本政府はこれまで一貫して、「尖閣諸島の領有問題は存在しない」という立場を取ってきたが、こうして発端まで遡ってみると、日本政府の主張はかならずしも正しくなく、「領有権問題は存在する」ということになる。

ともあれ、両国がこれ以上論争を続けても、互いに譲ることがないことは明らかである。だから、中国は実力行使の意思を固め、そのタイミングを見計らっている状況だと思われる。そういう観点では、日本政府がコロナ対応に忙殺されている今は、中國にとって絶好のチャンスである。

さすがに日本政府内にも危機感が生まれているようで、いくつかの対応策が議論されていると聞く。その一つに「実効支配」を確実にするために、尖閣に人員を常駐させようという案がある。韓国の竹島に軍隊が常駐していることを念頭に置いた案だろう。

しかし、尖閣駐在は生命の危険が伴う任務である上に、娯楽がない牢獄のような空間に長期滞在するのだから、人権問題でもある。誰が適任かの観点では、自衛隊員だろうが、憲法でその存在を認めてないことを考えると、そういう命令を下すこと自体が厚かましいように思える。

いずれにせよ、尖閣諸島問題は風雲急を告げている。日本は正念場を迎えた。

 

 

 



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