宮本輝「泥の河」を読了。短編なのですぐに読めたのだけれど自分のなかで整理をつけていた。結論から言うなら映画で感動した人は敢えて原作を読まなくてもいい。これは原作者への冒涜となってしまうのだが、小説が原石ならばそれをキリキリに研ぎ澄まし磨いた結晶が映画として結実した。これはひとえに脚本を担当された重森孝子さんの感性なくして語れない。小説では田村高廣(晋平)の舞鶴での過去への葛藤は一切書かれていない。残念ながら期待した“きんつば”を焼き続けることへの解を得ることはできなかった。映画脚本では小説に書かれたエピソードを取捨選択し、時にクローズアップし肉付けして膨らませ、無駄のない洗練された短い台詞を重ねることで深みのある人間描写が織り成されている。そして小説で何よりも残念なのは、田村高廣は「なには食堂」を畳んで新潟へ移住してしまうのだ。次なる商売は車の板金屋らしい。地に建つ家を持たず、河に揺られ流される廓舟での浮き草生活。橋のたもとにしがみ付きバラック食堂で“きんつば”を焼きながら暮らす生活。人の営みに絶対確実な安定などというものはない。それを知っているからこそ田村高廣(晋平)の台詞は生きてくるのだ。「ひとつことずーっとやってきたあの(馬車屋の)オッサン、あら立派やで」
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