「初恋の人」というのがある。
60の爺が戯けて言うことだから笑って聞いてほしい。
これなりに恋もした。
言うも恥ずかしい事であるが。
どれも片思いであった。
所詮叶う恋ではなかった。
最後にかーたんに恋をした。
そんな熱烈な恋でもなかった。
しかし恋は叶ったし、なによりも最も相応しい恋であった。
かーたんとはその後、家庭を持ち、子をもうけ、大いなる幸を得た。
世の配剤は分からぬものである。
しかし神のみ心は常に最善をなしてくださる。
初鰤に難波の夢もしらじらと 素閑
初鰤を道に水まき迎えるや 素閑
初鰤の目にも麗し下町や 素閑
初鰤や遠き北国磯の岸 素閑
初鰤や人波凄し上野の市 素閑
初鰤や宝光とせむ朝の日や 素閑
ひもすがら初鰤の荷を家に持ち 素閑
丘も越え山越え日影の初鰤や 素閑
頭をも猫に取られし初鰤や 素閑
初鰤やあしたの日影あらたなり 素閑