これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

アイロン作戦

2011年06月02日 20時33分42秒 | エッセイ
 娘の運動会の前夜、しわくちゃになった白のはちまきが、テーブルに放置されていた。
「あれっ、これ、明日使うんじゃないの?」
「うん、そうだよ」
「アイロンかけないと」
「いいよ、別に。しばれば伸びるから」
「そういうわけにいかないでしょ」
 他の子がパリッとしたはちまきを締めているのに、うちの子だけがシワシワはちまきでは格好悪い。
 翌朝、私は早起きをして、はちまきにアイロンをかけて渡した。
「今年は白組なの?」
 しかし、娘の反応は悪い。
「へ? 何言ってんの。これは、はちまきじゃなくて、2人3脚のひもだよ」

 ガーン!!

 足に巻くものだと知っていれば、一生懸命アイロンをかけなかったのに……。私は気分を害した。
「ひどい、聞いてないよ」
「言った」
「聞いてない」
「言った」
 水掛け論である。
 こういう場合、女の子はまず折れないので、方向性を変えてみる。
「しわくちゃじゃ可哀想だと思って、わざわざ早起きしてアイロンかけたのに、はちまきじゃなかったなんて……。あーあ、悲しいなぁ」
 泣きまねをすれば、娘の態度も軟化する。
「わかった、わかった。ありがとうね。今日は頑張るから見てて」
 ようやく、私も納得である。
 娘のミキは、私に似て、運動が得意なほうではない。短距離やリレーで活躍することはあり得ないから、2人3脚に賭けているようだ。

 運動会は、短距離走から始まることが多い。
 80m走のあと、プログラム2番が2人3脚だった。
 白のひもで足首をしばった女の子たちが、肩を組んで走り出す。「いちに、いちに」とかけ声をかけているようだ。明らかに練習不足と思われるペアは転び、相当練習したとおぼしきペアは、一人で走っているような速度である。ハラハラしながら見ていると、娘の番がやってきた。
「速ッ!」
 私も夫も驚くスピードで、娘のペアが走り出す。危なげない足取りだ。2位のペアの追い上げをかわし、あれよあれよという間にゴールした。
「やったね!」
 夫とともに喜んだ。

「ミキたちは、女子の中で一番速かったんだよ」
 39組中1番の記録だったため、娘のペアは賞状をもらって帰ってきた。
「いつもは、ひもが細くて痛かったけど、今日はアイロンで太くなってたから、すごく走りやすかった」
「へー」
 何が幸いするかわからないものだ。
 2人3脚のひもにも、アイロンをかけましょう~☆



クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (18)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする