先日、さるスーパーマーケットの店舗見学をした。
これは、就職希望者を抱える高校の生徒向けに企画されたもので、企業理念や経営戦略、店舗設計、雇用計画などについて、詳細な説明を受けることができる。当然、いろいろな学校からの参加があり、顔見知りの先生も多い。
ひと通りの説明が終わったあと、実際に店舗まで足を運び、いわゆるバックヤードと呼ばれる、パック詰めなどの加工作業を見学することになった。
入店前に、企業側の担当者から、注意を受ける。
「お手数ですが、衛生のため、帽子の着用をお願いします」
万一、頭髪が商品に紛れ込んだら、大きな問題に発展するからだろう。一人ひとりに紙製の、白い帽子が手渡された。
とたんに、参加者の顔が曇る。
まず、案内をする担当者が、率先して帽子をかぶった。50歳くらいのオジさんなのだが、頭に紙おむつをしているように見えて変だ……。作業着ならともかく、スーツを姿には似合わない。しかし、彼は慣れているのか、ためらうそぶりも見せずに、妙な帽子をかぶって堂々と胸を張っていた。
さて、今度は参加者がかぶる番である。他校の、髪の少ない男性が、無言で頭に載せていた。私は心の中で、「アナタは別に問題ないのでは」とつぶやいた。
以前、同じ学校で働いたことのある男性も、白いカツラをかぶっているような姿に変身していた。厳しい先生だから、生徒からは煙たがられていたけれど、この愛らしい姿を見たら、人気沸騰まちがいなしだ。写メできなかったことが悔やまれてならない。
そして、私も覚悟を決めてかぶった……。いっそのこと、知り合いが誰もいなければ気が楽なのに。
担当者についていくと、まずは鮮魚のバックヤードに案内される。パートの女性たちが、元気よく「こんにちは~!」と声をかけてくるから気持ちいい。きっと、社内教育が徹底しているのだろう。精肉コーナーも同じように感じがよく、仕事をしやすい雰囲気が感じられる。
「じゃあ、次はこちらからです」と、担当者は銀色の扉を開けた。しかし、扉の先は売り場になっており、たくさんのお客さんたちでにぎわっている。どうやら、いったん売り場を通らないと、次の場所に行かれないらしい。
担当者は、自分がヘンテコな帽子を身につけていることを、すっかり忘れているのだろう。笑顔で「いらっしゃいませ」と声をかけながら、どんどん先に進んでいく。仕方がないから、私たちもあとに続いていった。お客さんたちは、服とミスマッチな白い帽子の集団に驚いたようで、おしゃべりをやめてこちらを見ていた。おそらく、夕飯の話題となるに違いない。
「もう、帽子を取っていただいて構いません」と言われたとき、先を争うように、頭からむしり取る人が多かったのもうなずける。
そのまま、見学会は終了となり、バッグの中に帽子をしまった。
明日は夫が飲み会なので、久しぶりに夕食係が回ってくる。
「お母さん、この前、ご飯に髪の毛が入っていたよ。気をつけてね」
娘の言葉が耳に痛い……。
しかし、私には強い味方があるのだ。バッグの中から、かの帽子を取り出してみる。これをかぶって料理をすれば、髪の毛混入の心配はない。
会社に関する情報が、見学会のメインだが、私の場合は帽子だったりして。
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
これは、就職希望者を抱える高校の生徒向けに企画されたもので、企業理念や経営戦略、店舗設計、雇用計画などについて、詳細な説明を受けることができる。当然、いろいろな学校からの参加があり、顔見知りの先生も多い。
ひと通りの説明が終わったあと、実際に店舗まで足を運び、いわゆるバックヤードと呼ばれる、パック詰めなどの加工作業を見学することになった。
入店前に、企業側の担当者から、注意を受ける。
「お手数ですが、衛生のため、帽子の着用をお願いします」
万一、頭髪が商品に紛れ込んだら、大きな問題に発展するからだろう。一人ひとりに紙製の、白い帽子が手渡された。
とたんに、参加者の顔が曇る。
まず、案内をする担当者が、率先して帽子をかぶった。50歳くらいのオジさんなのだが、頭に紙おむつをしているように見えて変だ……。作業着ならともかく、スーツを姿には似合わない。しかし、彼は慣れているのか、ためらうそぶりも見せずに、妙な帽子をかぶって堂々と胸を張っていた。
さて、今度は参加者がかぶる番である。他校の、髪の少ない男性が、無言で頭に載せていた。私は心の中で、「アナタは別に問題ないのでは」とつぶやいた。
以前、同じ学校で働いたことのある男性も、白いカツラをかぶっているような姿に変身していた。厳しい先生だから、生徒からは煙たがられていたけれど、この愛らしい姿を見たら、人気沸騰まちがいなしだ。写メできなかったことが悔やまれてならない。
そして、私も覚悟を決めてかぶった……。いっそのこと、知り合いが誰もいなければ気が楽なのに。
担当者についていくと、まずは鮮魚のバックヤードに案内される。パートの女性たちが、元気よく「こんにちは~!」と声をかけてくるから気持ちいい。きっと、社内教育が徹底しているのだろう。精肉コーナーも同じように感じがよく、仕事をしやすい雰囲気が感じられる。
「じゃあ、次はこちらからです」と、担当者は銀色の扉を開けた。しかし、扉の先は売り場になっており、たくさんのお客さんたちでにぎわっている。どうやら、いったん売り場を通らないと、次の場所に行かれないらしい。
担当者は、自分がヘンテコな帽子を身につけていることを、すっかり忘れているのだろう。笑顔で「いらっしゃいませ」と声をかけながら、どんどん先に進んでいく。仕方がないから、私たちもあとに続いていった。お客さんたちは、服とミスマッチな白い帽子の集団に驚いたようで、おしゃべりをやめてこちらを見ていた。おそらく、夕飯の話題となるに違いない。
「もう、帽子を取っていただいて構いません」と言われたとき、先を争うように、頭からむしり取る人が多かったのもうなずける。
そのまま、見学会は終了となり、バッグの中に帽子をしまった。
明日は夫が飲み会なので、久しぶりに夕食係が回ってくる。
「お母さん、この前、ご飯に髪の毛が入っていたよ。気をつけてね」
娘の言葉が耳に痛い……。
しかし、私には強い味方があるのだ。バッグの中から、かの帽子を取り出してみる。これをかぶって料理をすれば、髪の毛混入の心配はない。
会社に関する情報が、見学会のメインだが、私の場合は帽子だったりして。
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