今年のクリスマスは、イブが土曜日、当日が日曜日となっており、パーティーをするには都合がいい。
新築したての妹宅に集まり、持ち寄りパーティーをすることになった。
ワインは姉と母、ビールは妹、チキンは母、オードブルは私、ピザは妹、ケーキは姉というように分担を決める。
さて、クリスマスのオードブルといえば、まずはスモークサーモンだろう。それから、キッシュも欲しいところだ。チーズにクラッカー、テリーヌ、温野菜も必需品だ。
スーパーで、あれもこれもと買い漁ったが、冷静になって考えると、11人では到底食べきれない量になっている。足りないよりはいいけれど、限度があるので、いくつかは冷蔵庫に戻して家を出た。
「ポテトサラダを作ったんだけど、すごい量になっちゃった」
姉もまた、多めに用意した口らしい。持ち寄りパーティーの長所は、会場となる家庭の準備が楽になることだ。しかし、全体を見渡せる人がいないため、量の調節ができないところが短所といえよう。
「キッシュが欲しいな」と義兄が、ひとりごとのようにつぶやいた。
自家製ではなく、できているものを買ってきたのだが、なかなか好評だった。たまたま、別の用事で立ち歩いていた妹が、ボックスティッシュを持ってきた。
「はい」
義兄は一瞬動きを止め、からかうように言った。
「それはティッシュ、僕が欲しいのはキッシュ」
タイムリーな聞き間違いに、けたたましい笑い声が飛び交った。
やがて、小五の甥が、部屋からおもちゃを持ってきた。
「ねえ、誰か、これできる人いない?」
おおっ、これはこれは、ルービックキューブじゃないか!!
中学生くらいのときだったろうか。大人も子どもも夢中になり、社会現象化した玩具である。
これは、バラバラになった6面の色を、回転させながら元に戻すという立体パズルだ。姉と妹はさほど熱中しなかったが、私は寝食を忘れるほどのめり込み、飽きずにガチャガチャと夢中になって遊んだ。
「砂希はできるでしょ」
母から手渡されたものの、もう30年くらい触れていない。やり方を思い出しながら、キューブを動かしてみた。
「横が合ってないよ」と義兄のチェックが入る。そうだ、側面の色も合わせなくてはいけなかった。こんな初歩的なことまで忘れている。とにかく、四隅の色さえ揃えば、あとは時間の問題なのだ。根気よく、キューブを回していればいつかはできる。
童心に帰った私を見て、姉と妹が好き勝手なことを話している。
「子供とおんなじね」
「静かでいいわ。ワインも減らないし」
「毎回、与えておけばいいんじゃない」
「そうね、文句も言わなくなるわよ」
しっかり聞こえているが、口を挟む手間が惜しい。知らん顔で、手を動かし続けた。
当時、テレビに出てきた名人は、1分以内で6面全部を揃えることができた。ありえない早さだ。どんなに頑張っても、私はせいぜい15分だろう。
「ワイン、ついでおくね」
姉がグラスに白ワインを注ぎ始めた。しかし、種類が違う。キューブで遊んでいるうちに、新しいワインを開けたようで、私のグラスはちゃんぽんになってしまった。
まあよい。
ようやく四隅が合う。あとは時間の問題だ。飲食を再開し、おしゃべりに加わりながら手を動かす。
「できた~!!」
「おお~!」
この喜びは、できた者にしかわからない。時間をかければ誰にでもできるはずだが、「そこまでしなくても」と思ったら最後、決して味わうことができないのだ。
「できたの?」
甥にキューブを渡すと、うれしそうな顔をするどころか、ガッカリしたような顔になった。
なんなんだ!?
食事のあとは、後片付けだ。予想通り、お料理はかなり残ってしまった。次回は、量を減らさなければならない。
「ケーキにしようか」
今年のクリスマスケーキは、池袋のホテルメトロポリタンで調達したという。
スポンジがしっとりしていて、なかなか美味だった。もうちょっと、甘さ控えめでもいいと思う。
ケーキのときにはプレゼントが登場し、子どもたちに手渡される。今年、甥と姪に用意したものは、ゲームソフトだった。
「さっきのルービックキューブは、昨日、子ども会からのプレゼントでもらったのよ」
妹が裏話を披露する。なるほど、それで持っていたわけか。
もし、娘がもらってきたら、私が遊んでしまいそうで怖い。家事や育児を放り出して、朝から晩まで夢中になっているかもしれない。
危険なプレゼントである。
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
新築したての妹宅に集まり、持ち寄りパーティーをすることになった。
ワインは姉と母、ビールは妹、チキンは母、オードブルは私、ピザは妹、ケーキは姉というように分担を決める。
さて、クリスマスのオードブルといえば、まずはスモークサーモンだろう。それから、キッシュも欲しいところだ。チーズにクラッカー、テリーヌ、温野菜も必需品だ。
スーパーで、あれもこれもと買い漁ったが、冷静になって考えると、11人では到底食べきれない量になっている。足りないよりはいいけれど、限度があるので、いくつかは冷蔵庫に戻して家を出た。
「ポテトサラダを作ったんだけど、すごい量になっちゃった」
姉もまた、多めに用意した口らしい。持ち寄りパーティーの長所は、会場となる家庭の準備が楽になることだ。しかし、全体を見渡せる人がいないため、量の調節ができないところが短所といえよう。
「キッシュが欲しいな」と義兄が、ひとりごとのようにつぶやいた。
自家製ではなく、できているものを買ってきたのだが、なかなか好評だった。たまたま、別の用事で立ち歩いていた妹が、ボックスティッシュを持ってきた。
「はい」
義兄は一瞬動きを止め、からかうように言った。
「それはティッシュ、僕が欲しいのはキッシュ」
タイムリーな聞き間違いに、けたたましい笑い声が飛び交った。
やがて、小五の甥が、部屋からおもちゃを持ってきた。
「ねえ、誰か、これできる人いない?」
おおっ、これはこれは、ルービックキューブじゃないか!!
中学生くらいのときだったろうか。大人も子どもも夢中になり、社会現象化した玩具である。
これは、バラバラになった6面の色を、回転させながら元に戻すという立体パズルだ。姉と妹はさほど熱中しなかったが、私は寝食を忘れるほどのめり込み、飽きずにガチャガチャと夢中になって遊んだ。
「砂希はできるでしょ」
母から手渡されたものの、もう30年くらい触れていない。やり方を思い出しながら、キューブを動かしてみた。
「横が合ってないよ」と義兄のチェックが入る。そうだ、側面の色も合わせなくてはいけなかった。こんな初歩的なことまで忘れている。とにかく、四隅の色さえ揃えば、あとは時間の問題なのだ。根気よく、キューブを回していればいつかはできる。
童心に帰った私を見て、姉と妹が好き勝手なことを話している。
「子供とおんなじね」
「静かでいいわ。ワインも減らないし」
「毎回、与えておけばいいんじゃない」
「そうね、文句も言わなくなるわよ」
しっかり聞こえているが、口を挟む手間が惜しい。知らん顔で、手を動かし続けた。
当時、テレビに出てきた名人は、1分以内で6面全部を揃えることができた。ありえない早さだ。どんなに頑張っても、私はせいぜい15分だろう。
「ワイン、ついでおくね」
姉がグラスに白ワインを注ぎ始めた。しかし、種類が違う。キューブで遊んでいるうちに、新しいワインを開けたようで、私のグラスはちゃんぽんになってしまった。
まあよい。
ようやく四隅が合う。あとは時間の問題だ。飲食を再開し、おしゃべりに加わりながら手を動かす。
「できた~!!」
「おお~!」
この喜びは、できた者にしかわからない。時間をかければ誰にでもできるはずだが、「そこまでしなくても」と思ったら最後、決して味わうことができないのだ。
「できたの?」
甥にキューブを渡すと、うれしそうな顔をするどころか、ガッカリしたような顔になった。
なんなんだ!?
食事のあとは、後片付けだ。予想通り、お料理はかなり残ってしまった。次回は、量を減らさなければならない。
「ケーキにしようか」
今年のクリスマスケーキは、池袋のホテルメトロポリタンで調達したという。
スポンジがしっとりしていて、なかなか美味だった。もうちょっと、甘さ控えめでもいいと思う。
ケーキのときにはプレゼントが登場し、子どもたちに手渡される。今年、甥と姪に用意したものは、ゲームソフトだった。
「さっきのルービックキューブは、昨日、子ども会からのプレゼントでもらったのよ」
妹が裏話を披露する。なるほど、それで持っていたわけか。
もし、娘がもらってきたら、私が遊んでしまいそうで怖い。家事や育児を放り出して、朝から晩まで夢中になっているかもしれない。
危険なプレゼントである。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)