これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

恵比寿の治一郎

2015年01月29日 05時49分34秒 | エッセイ
 前にブロ友さんから、治一郎のバウムクーヘンが美味しいという情報をゲットした。
 しかし、都内には恵比寿のアトレにしか店舗がないらしい。ネットで買うのもどうかな、と躊躇していたら、タイムリーツーベースが炸裂した。
「お母さん、今日は友達と恵比寿に行ってくる」
「へ、恵比寿? 何で」
「パンケーキのお店に行くんだよ」
「ふふふ、帰りにアトレで買い物してきてよ」
「またかよ」
 文句を言いつつも、彼女は治一郎のバウムクーヘンを買ってきてくれた。



 ここのバウムは、薄い24層もの年輪を重ねる職人芸が売りである。日々のありふれた幸せが、積み重なって大きなものになるイメージで、「幸せを重ねる」お菓子をつくっているという。
「つながる円と縁 ふくらむ輪と和」
 このフレーズには、心が動かされた。
 箱を開けると、評判のバウムクーヘンが見えてきた。



 飲み物がいらないしっとり感
 ケーキのようなふんわり感
 おいしさ分け合うボリューム感

 商品案内に書かれた文字を見るだけで、期待が高鳴ってくる。
「ミキはちょっとでいい。パンケーキが大きすぎて、お腹が空いてないから」
「あらそう。じゃあ、こんなもんでいい?」
 輪を小さくカットすると、少々不満げな返事が聞こえた。
「……いいよ」
「お母さんはお腹が空いているから、いっぱい食べちゃお♡」
 ザクリ。



 そんなこんなで、バウムクーヘンは実に不公平な切り方をされた。
 たしかに、しっとり感がハンパない。焼き菓子なのにジューシーで、指で触れるとめり込むほどの軟らかさ。外周の砂糖は物足りなかったが、いくらでも食べられそうな軽さだ。ボリュームはさほど感じなかった。
「パパ、美味しいバウムだよ。食べる?」
「いらない」
「あそ」
 半分以上残ったので、続きは翌日のお楽しみにした。
 ところが、次の日、箱を開けてビックリ。バウムは半分以下に減っていた。犯人は、あの男しかいない。
「ひどい、お父さんはいらないって言ったくせに。こんなに食べて」
 夫は正しい日本語が使えない。「いらない」ではなく、「今はいらないから、明日食べる」と言うべきだったのだ。4分の1ほどの大きさを2人で分けたら、食べた気がしなかった。
「ミキが買ってきたのに、一番食べられなかったよ。納得いかない」
 食べ物の恨みで、娘がブウブウ言っている。
「また買えばいいじゃない」
「そうだね。ついでに、パンケーキももう一回」
 次もお腹いっぱいになって、ちょっとしか食べられなかったりして……。
 5年前に、別ブログで「バームクーヘン食べ比べ」という記事を書いた。
 私には、評判のバウムクーヘンを全制覇するという、しょうもない夢があるのだ。
 美味しいバウム情報があれば、ぜひ教えてください。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (12)
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