これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

柿右衛門と松濤ケーキ

2015年11月26日 22時14分12秒 | エッセイ
 松濤美術館のあとは、松濤カフェでランチを楽しむ。Bunkamuraの一角にあるこのカフェは、「松濤ケーキ」でブレイクしたようだ。
「ケーキの前にローストビーフサンドを食べようよ。Sサイズをシェアすれば、ちょうどいいでしょ」
「なになに、シェアは200円増しで、スープとビーフが倍量になるって書いてある」
 簡単に考えていたのだが、思ったよりも量があった。



「美味しい! でも、結構お腹いっぱいになるね」
「このあと、松濤ケーキだよ。こっちが本命なんだから」
 松濤ケーキは、トッピングが種類豊富なことで知られている。私が選んだのは、もりもり生クリームと大納言あずきである。ケーキはプレーンにした。



 娘は生クリームが苦手なので、バニラアイスとバナナ、チョコレートソースを注文した。



 ケーキは信じられないくらいふわふわで、しっとり感があり甘すぎず、口の中でとろけるような舌触りである。
「うま~」
「これはヤバい」
 本当に美味しかったのだが、こちらも量が多い。ローストビーフサンドと同様に、シェアするのがちょうどいいとわかった。次回は欲張らないようにしよう。
「ゲーップ。もう食べられないよ」
「そう? お母さんはまだまだいけるけど」
「この人、お腹がおかしい」
 実は、このあと、戸栗美術館に行きたいと思っていた。ここは、古陶磁専門美術館であり、松濤カフェから歩いてすぐの場所にある。ちょうど、私の好きな柿右衛門が展示されているのだ。
「カキエモンって何?」
「佐賀県の陶芸家一族だよ。今、15代目なんじゃないかなぁ」
「右って漢字が余計じゃね? 興味ないから帰ろうよ」
 娘は腹が重くて歩きたがらない。グズグズ文句を垂れていたが、見る気満々の私には何を言っても無駄と悟り、黙ってついてきた。
 初めて柿右衛門を見たのは、上野で開催された「大英博物館展」である。色鮮やかな象にすっかり魅了され、17世紀にイギリスに渡っていたことを誇らしく思った。



 松濤らしい高級住宅街の中に、美術館は溶け込んでいた。



 開催中の展示は、「柿右衛門・古伊万里金襴手展」である。



「一般1枚と大学生1枚です」
「学生の方にはポストカードをプレゼントしておりますので、お好きなものを1枚選んでこちらにお持ちください」
 おっ、ポストカードがもらえる! ラッキー!
 にやけている私を見て、娘が気を利かせた。
「どれがいい? お母さんの欲しいやつでいいよ」
「じゃあこれ」



 私は「柿右衛門様式」と書かれた瓶を選び、娘に手渡した。
「ふーん。こんな感じなんだ」
 館内は撮影禁止だが、パンフレットやリーフレットから、柿右衛門の素晴らしさが伝わるのではないだろうか。







 本物を目にした娘には、欧州に受け入れられたこの美が理解できたようだ。
「へー。悪くないじゃない。赤が印象的だけど、真っ赤じゃないんだよね。品のある朱色ってところかな。繊細ですごく丁寧に描いてあるし、クオリティが高いよこれは」
 よしよし。
 柿右衛門は、動物や植物、人物が生き生きと描かれており、たしかな画力を感じる。加えて、色づかいが素晴らしい。決して派手ではないけれど、印象に残る色の配置をしているのだ。これはセンスの問題であろう。
 作品の批評をしながら、1時間ほど館内を見て回り、1階のラウンジでコーヒーを飲む。まるで、ホテルにいるような、くつろぎ感のある美術館だ。
「今日は、すごく楽しかったなぁ」
 娘も満足してくれたようだ。もちろん、私だってそう思っている。
 ネットで検索したら、柿右衛門のお皿が販売されているらしい。
 松濤ケーキを載せて食べたら、格別な味がするかもしれない。


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コメント (8)
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