人間国宝展のチケットをもらった。
2枚あったので、同じ職場の素子さんを誘う。あれこれ忙しくて、終了間際になってしまったが、先日ようやく見ることができた。
平日だったけれども、予想以上の人出である。
「人気なのねぇ」
「ですね」
素子さんは同い年だが、タイプが全然違う。私は読書を好む文化系、素子さんはバドミントンをきわめた体育系だ。おそらく、異性の好みもかぶらないと思われる。
「壺に花器ですって」
「すてきね」
しかし、芸術品へのあこがれは共通していた。銅鑼や印箱などを見ては、それぞれのコメントを口にする。彼女の感想は、的を射ているものばかりだった。
すぐに、日本刀が並んでいる一角にたどり着く。
「わあ、かっこいい!」
素子さんが、目を大きく見開いて、ガラスケースに突進した。
「日本刀って、魅力的ですよね」
「そうですね」
刃にライトが当たり、人工的な輝きを放っている刀たち。殺気なのか、妖気なのかわからないけれど、人を惹きつける何かがあることは間違いない。彼女ほど熱心ではないが、私も細身の刀身から、目が離せなかった。
刀の次は、あでやかな振袖が待っていた。
「あっ、キレイ!」
今度は私が突進する番だ。
特に気に入ったのが、「一越縮緬地鳳凰桐文振袖」と書いてある、この衣装である。大胆な図柄とまばゆい色彩に魅かれて、ポストカードも購入した。
形から、アジの開きを連想したとあっては、作者に失礼だろうか……。
「こっちもいいです。白縮緬地衝立鷹模様ですって」
こちらもポストカードをゲット。白と赤を背景に、鷹がいきいきと描かれている。
「……」
素子さんは、やたらと口数が少なくなっていた。私のはしゃぎように、少々引いていたようだ。
好みが違うのだから仕方ない。
「私はもっと素朴な柄の方がいいかな……」
そうでしたか。
陶芸や染織などが続いたが、どれも魂が入っているかのような仕上がりである。渾身の作とは、このようなものを差すのだろうか。
リーフレットの写真からは伝えきれない、作者の熱い想いを受け止めた気がした。
「何だ、お前、どけ!」
いきなり、年配男性のものと思われる、下品な大声が聞こえてきた。
すぐさま、これまた高齢らしき女性の声が応戦する。
「どけとは何です。私が先にいたんです。どきませんよ!」
「俺が先だ」
「いーえ、私が先です!」
どうやら、小さな展示品をめぐって、場所の取り合いをしているようだ。一刻を争うものでもないのに、いい年こいて、一体何をしているのかと呆れた。
「みっともない」
「やめてほしいですね」
私も素子さんも、警備員に止められる二人に、冷たい視線を浴びせかけた。
作品の中には、「80歳のときの作品」などと書かれたものもあった。好きなことをしていると、いつまでも若々しくいられるのかもしれない。「生涯現役」は、私の目標のひとつである。見習いたいものだ。
「いい展示でしたね」
「ホント、満足満足」
上野動物園わきの店に入り、ピザとビールで乾杯した。とろけたチーズがやけに美味しい。
人間国宝にはなれないけれど、文化財くらいにはなりたいな……。
この先の人生は、目標を高く持って生きたい。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
2枚あったので、同じ職場の素子さんを誘う。あれこれ忙しくて、終了間際になってしまったが、先日ようやく見ることができた。
平日だったけれども、予想以上の人出である。
「人気なのねぇ」
「ですね」
素子さんは同い年だが、タイプが全然違う。私は読書を好む文化系、素子さんはバドミントンをきわめた体育系だ。おそらく、異性の好みもかぶらないと思われる。
「壺に花器ですって」
「すてきね」
しかし、芸術品へのあこがれは共通していた。銅鑼や印箱などを見ては、それぞれのコメントを口にする。彼女の感想は、的を射ているものばかりだった。
すぐに、日本刀が並んでいる一角にたどり着く。
「わあ、かっこいい!」
素子さんが、目を大きく見開いて、ガラスケースに突進した。
「日本刀って、魅力的ですよね」
「そうですね」
刃にライトが当たり、人工的な輝きを放っている刀たち。殺気なのか、妖気なのかわからないけれど、人を惹きつける何かがあることは間違いない。彼女ほど熱心ではないが、私も細身の刀身から、目が離せなかった。
刀の次は、あでやかな振袖が待っていた。
「あっ、キレイ!」
今度は私が突進する番だ。
特に気に入ったのが、「一越縮緬地鳳凰桐文振袖」と書いてある、この衣装である。大胆な図柄とまばゆい色彩に魅かれて、ポストカードも購入した。
形から、アジの開きを連想したとあっては、作者に失礼だろうか……。
「こっちもいいです。白縮緬地衝立鷹模様ですって」
こちらもポストカードをゲット。白と赤を背景に、鷹がいきいきと描かれている。
「……」
素子さんは、やたらと口数が少なくなっていた。私のはしゃぎように、少々引いていたようだ。
好みが違うのだから仕方ない。
「私はもっと素朴な柄の方がいいかな……」
そうでしたか。
陶芸や染織などが続いたが、どれも魂が入っているかのような仕上がりである。渾身の作とは、このようなものを差すのだろうか。
リーフレットの写真からは伝えきれない、作者の熱い想いを受け止めた気がした。
「何だ、お前、どけ!」
いきなり、年配男性のものと思われる、下品な大声が聞こえてきた。
すぐさま、これまた高齢らしき女性の声が応戦する。
「どけとは何です。私が先にいたんです。どきませんよ!」
「俺が先だ」
「いーえ、私が先です!」
どうやら、小さな展示品をめぐって、場所の取り合いをしているようだ。一刻を争うものでもないのに、いい年こいて、一体何をしているのかと呆れた。
「みっともない」
「やめてほしいですね」
私も素子さんも、警備員に止められる二人に、冷たい視線を浴びせかけた。
作品の中には、「80歳のときの作品」などと書かれたものもあった。好きなことをしていると、いつまでも若々しくいられるのかもしれない。「生涯現役」は、私の目標のひとつである。見習いたいものだ。
「いい展示でしたね」
「ホント、満足満足」
上野動物園わきの店に入り、ピザとビールで乾杯した。とろけたチーズがやけに美味しい。
人間国宝にはなれないけれど、文化財くらいにはなりたいな……。
この先の人生は、目標を高く持って生きたい。
↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
TBありがとうございました♪
お得にチケットを入手されていますね。
こちらはクジ運が悪いのですが、応募して当たることもあるのかな…?
黒い振袖にはえもいわれぬ色香が漂っていました。
引き寄せられてしまいますよ。
同じような女性が多かったのでしょうか。
男性目線だと「?」かもしれませんね。
雷神図屏風はリーフレットでも迫力でした。
本物はもっと素晴らしかったのですね。
当方は、たいていが応募して当選したチケットか、今回のように間際になって行けない方からいただいたものです。
女性は、着物の前でため息をついている方が多い気がします。柄を染め込んだものや後から刺繍したものの経緯
には興味ありますが、着物にはそんなに執着心を抱けません。
クリーブランド美術館展には、俵屋宗達筆が有名で、琳派の絵師をはじめとして描くのに好まれる 雷神図屏風が
すばらしかったですよ。
http://blog.goo.ne.jp/iinna/e/70ddf58cfce05b6e2fa4f6a90b23936d
ふむふむ、これもシンクロでしょうか。
言葉を入れ替えるだけで、ニュアンスも変わってくるのは面白いです。
目標は馬の鼻先に吊るされた人参のようなもの。
すぐ実現できそうだとテンション上がらないし、遠すぎてもやる気が出ません。
ほどほどのところに設定しないと~。
私がもらったチケットは、人間国宝展プラスクリーブランド美術館展の2展共通券でした。
人間国宝展のほうがよかったです。
また見たいな~。
「高い目標に向かって努力していました。」
この一文からは、目標が高すぎて、努力したけど「届かなかった」というところに力点がある様子が伺えます。
事実を確認すると、まさにそういうことらしい。
でも、文章として、どこか品がない。
「目標を高く持って努力しました。」
私がちょっと手を入れると、書き手は言います。
「あれ?そうやると、なんだか『理想が高くて努力家』ってところに力点を感じますね」
そのほうが、いいよね。事実と多少違っても。
人間国宝展、とうとう行けずじまいでした。
そういえば、この展示には和服姿の女性が何人もいました。
若い人も結構見ましたよ。
やはり、伝統文化を愛する人が多いんですね。
カッコよかった。
私も見習いたいです。
平成8年、平成10年に作られた日本刀もありました。
「今でも製造しているの?」と彼女と顔を見合わせましたよ。
昔のものばかりじゃないんですね。
いつもオペラグラスを忘れてしまいます。
小競り合いは勘弁してほしいです。
小競り合いが始まる前に、ゴトッという大きな音がしました。
展示品は無事だったのかしら。
それにしても、大人なんですから、順番に譲り合ってみるべきですよね。
子どものお手本にならないじゃないですか。
模範大人にならなくちゃ。
でも、私日本刀も好きですよ。
人間国宝なんていうと、つい焼き物を想像してしまいますが。
しかしこの小競り合い、みっともない…
でも、小さいものとか絵巻物とか、見えにくいのですよね。
振袖がとても素敵ですね。
展示会とかいくと凄く混んでて小競り合いになることありますよね。お互いに譲り合う心を持ちたいものです。