安曇野で一泊したら、翌朝は立山黒部アルペンルートを目指す。
バスの車窓から、雪の残る山が近づいて見えるので、どんどん気分が高揚してくる。
「ぐう」
……盛り上がっているのは私だけ。隣の娘は口を開けて寝ていた。
立山黒部アルペンルートとは、苦しくツラい登山をせずとも、交通機関を乗り継いで標高2450mの室堂まで行くことのできる画期的な道である。
お金を払う反面、楽してズルして、高い場所の別世界までひとっ飛び、というコンセプトに魅力を感じた。
私たちは、長野側の扇沢からトロリーバス、ケーブルカー、ロープウェイ、もう一度トロリーバスで室堂に到着し、60分散策したら来た道を引き返して、扇沢に戻るというコースとなる。
まずは扇沢。ここでは、トロリーバスの運転士になった気分で記念撮影ができた。
ついでに、黒部ダムカードをいただく。
ダムマニアと呼ばれる人たちは、全国のダムを訪れてはカードを集めているのだとか。クレジットカード並みのサイズだから、かさばらなくてよさそうだ。私はたぶん、この1枚で終わるだろう。
トロリーバスの車内では、黒部ダムが完成するまでの困難が映像で紹介されていた。ダムの建築中、破砕帯と呼ばれる地下水を大量に含んだ軟弱な地層に当たり、工期が大幅に延びたという。掘っても掘っても天井から崩れ、冷たい地下水が大量にあふれて前へ進めない状態が続いた。建設に携わった人もたくさん亡くなった。だが、水を抜いたり地盤を固めたりして、7か月後には突破したのだからお見事というしかない。
そんな苦労談が信じられないくらい、陽を浴びた黒部ダムは美しかった。
まさか、水面がエメラルドグリーンに輝いているなんて。
青い空や新緑の山との相性もバッチリ。これはいい。
ケーブルカーでは運転席の後ろに乗れたので、前が見えて楽しい。
お次はロープウェイ。すし詰め状態だったが、大観峰駅に着くと、素晴らしい景色が待っている。
「すご~い、キレイ!」
展望台まで階段を上り、夢中でカシャカシャとシャッターを切った。
この景色は、やはりパノラマでしょう!
後日談だが、前日にレンズを交換した際、水滴がついてしまったようで、絶景を収めたはずの多くの写真に黒い点が入っていた。バカなことをしたものだ。
悔しいから、また行かなくちゃ!
正直いって、ここの写真が一番気に入った。時期が悪かったのか、肝心の室堂はイマイチだったからだ。
一応、雪の大谷ウォークにも足を運んだ。
しかし、何だか雪が黒ずんでいる。
排気ガスなどで色がついてしまうのだろうか。
4月の開通当初、雪の壁は19mあったそうだ。しかし、強い日差しで溶けてしまい、私が行ったときは12mしかなかった。これがお目当てならば、4月に行くことをおススメする。
「せめて、ミクリガ池さえ見られれば……」
室堂の気温は、晴れていても10度未満である。足元の雪が、中途半端に溶けたまま積もっているから、ツルツル滑って危なっかしい。ミクリガ池まで500mとあるが、こんなペースでは時間内に戻ってこれないだろう。
「ちぇ~。もういいや。休憩しようっと」
レジ袋からビールと
おこわを取り出した。
イスに座って飲み食いし、のんびりくつろぐ。室堂のハイキングを楽しむなら、雪のない7~9月がよさそうだ。ライチョウにも会えるかもしれない。こればかりは、行ってみないとわからないことだから勉強になった。
「さて、時間だ。行くか」
集合場所に戻り、扇沢まで戻るルートをとる。行きにも感じたことだが、このルートには階段が多い。乗り場まで下るとか、乗り場から上るとか、展望台まで上るとか……。キレイな景色に惹かれ、室堂までは元気に昇降できたのに、帰りはやたらと足が重くなってきた。
「ふうふう、また上るのか……」
黒部湖から黒部ダムに戻るときに、疲れが最高潮に達したようだ。
「階段は、ゆっくり上るとかえって疲れるよね。一気に上がったほうがいいんじゃない?」
などとほざく、20代前半の娘について歩いたのが間違いだった。ハイペースで階段を上り切ったら、息は絶え絶え、目の前には星が飛び、とても立っていられない。酸欠か? ついでに話もできない。心臓は大きくなったり、小さくなったりを繰り返すかのように、皮膚の下でドッキンドッキンと音を立てている。
「……お母さん、大丈夫?」
グッタリしている私を見て、娘の方が驚いていた。年寄りに無理をさせると、こうなるのだと初めてわかったらしい。標高の高い場所だし、山登りと同じく小股でゆっくり上ればよかった。次回は気をつけよう。
立山黒部アルペンルートに行かれる皆さん、階段は落とし穴ですよ~!
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
バスの車窓から、雪の残る山が近づいて見えるので、どんどん気分が高揚してくる。
「ぐう」
……盛り上がっているのは私だけ。隣の娘は口を開けて寝ていた。
立山黒部アルペンルートとは、苦しくツラい登山をせずとも、交通機関を乗り継いで標高2450mの室堂まで行くことのできる画期的な道である。
お金を払う反面、楽してズルして、高い場所の別世界までひとっ飛び、というコンセプトに魅力を感じた。
私たちは、長野側の扇沢からトロリーバス、ケーブルカー、ロープウェイ、もう一度トロリーバスで室堂に到着し、60分散策したら来た道を引き返して、扇沢に戻るというコースとなる。
まずは扇沢。ここでは、トロリーバスの運転士になった気分で記念撮影ができた。
ついでに、黒部ダムカードをいただく。
ダムマニアと呼ばれる人たちは、全国のダムを訪れてはカードを集めているのだとか。クレジットカード並みのサイズだから、かさばらなくてよさそうだ。私はたぶん、この1枚で終わるだろう。
トロリーバスの車内では、黒部ダムが完成するまでの困難が映像で紹介されていた。ダムの建築中、破砕帯と呼ばれる地下水を大量に含んだ軟弱な地層に当たり、工期が大幅に延びたという。掘っても掘っても天井から崩れ、冷たい地下水が大量にあふれて前へ進めない状態が続いた。建設に携わった人もたくさん亡くなった。だが、水を抜いたり地盤を固めたりして、7か月後には突破したのだからお見事というしかない。
そんな苦労談が信じられないくらい、陽を浴びた黒部ダムは美しかった。
まさか、水面がエメラルドグリーンに輝いているなんて。
青い空や新緑の山との相性もバッチリ。これはいい。
ケーブルカーでは運転席の後ろに乗れたので、前が見えて楽しい。
お次はロープウェイ。すし詰め状態だったが、大観峰駅に着くと、素晴らしい景色が待っている。
「すご~い、キレイ!」
展望台まで階段を上り、夢中でカシャカシャとシャッターを切った。
この景色は、やはりパノラマでしょう!
後日談だが、前日にレンズを交換した際、水滴がついてしまったようで、絶景を収めたはずの多くの写真に黒い点が入っていた。バカなことをしたものだ。
悔しいから、また行かなくちゃ!
正直いって、ここの写真が一番気に入った。時期が悪かったのか、肝心の室堂はイマイチだったからだ。
一応、雪の大谷ウォークにも足を運んだ。
しかし、何だか雪が黒ずんでいる。
排気ガスなどで色がついてしまうのだろうか。
4月の開通当初、雪の壁は19mあったそうだ。しかし、強い日差しで溶けてしまい、私が行ったときは12mしかなかった。これがお目当てならば、4月に行くことをおススメする。
「せめて、ミクリガ池さえ見られれば……」
室堂の気温は、晴れていても10度未満である。足元の雪が、中途半端に溶けたまま積もっているから、ツルツル滑って危なっかしい。ミクリガ池まで500mとあるが、こんなペースでは時間内に戻ってこれないだろう。
「ちぇ~。もういいや。休憩しようっと」
レジ袋からビールと
おこわを取り出した。
イスに座って飲み食いし、のんびりくつろぐ。室堂のハイキングを楽しむなら、雪のない7~9月がよさそうだ。ライチョウにも会えるかもしれない。こればかりは、行ってみないとわからないことだから勉強になった。
「さて、時間だ。行くか」
集合場所に戻り、扇沢まで戻るルートをとる。行きにも感じたことだが、このルートには階段が多い。乗り場まで下るとか、乗り場から上るとか、展望台まで上るとか……。キレイな景色に惹かれ、室堂までは元気に昇降できたのに、帰りはやたらと足が重くなってきた。
「ふうふう、また上るのか……」
黒部湖から黒部ダムに戻るときに、疲れが最高潮に達したようだ。
「階段は、ゆっくり上るとかえって疲れるよね。一気に上がったほうがいいんじゃない?」
などとほざく、20代前半の娘について歩いたのが間違いだった。ハイペースで階段を上り切ったら、息は絶え絶え、目の前には星が飛び、とても立っていられない。酸欠か? ついでに話もできない。心臓は大きくなったり、小さくなったりを繰り返すかのように、皮膚の下でドッキンドッキンと音を立てている。
「……お母さん、大丈夫?」
グッタリしている私を見て、娘の方が驚いていた。年寄りに無理をさせると、こうなるのだと初めてわかったらしい。標高の高い場所だし、山登りと同じく小股でゆっくり上ればよかった。次回は気をつけよう。
立山黒部アルペンルートに行かれる皆さん、階段は落とし穴ですよ~!
↑
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
ダムの一番高いところへ階段で姪っ子や父母がさっさと上ってく。姪っ子はともかく、当時、父母はもう70台。吾輩は50歳になったかどうかなのに、ずっと後から、えっちらおっちらと上ったものでした。
当時は、父母共に足腰がしっかりしていたんですね。
あの階段は上る時間がなくてホッとしました。
しかし、やいっちさんのご両親は70代でもさっさと行かれたんですね。
いやあ、脱帽。
素晴らしい脚力です。
昨日、あわてて書いた記事なので、苦しかったところを修正しました。
こんな簡単な状態じゃなかったです。
エスカレーターに頼り過ぎの毎日を反省しました。
階段くらい屁のカッパでしょ!都会の人は足腰が強いと聞きましたよ🎵
通勤で鍛えられて!
夏の立山も良いよ!下界と約14度くらい違うそうですからね。帰りたくなくなるかも(笑)あっ、そうそう!ビールのあてにバイ飯とはびっくらこいた!感想がなかったとこを見ると。。。。(笑)俺が作ったバイ飯ならコメントあったかもな(笑)
今度は新幹線で富山で降りて夏の立山へ来られ!山頂の景色も素晴らしくて晴れたら富士山も見えますよ!
待っとるちゃ(笑)
わーい、コメントありがと~!
バイ飯はとても美味しかったよ。
しかし、字数が多かったから感想はスルー。
ビールに合うとは言えないけど、具だくさんで贅沢な食べ物だね。
立山は夏がベストという気がしたわ~。
晴れの日に新幹線で日帰りコースにしたほうがいいみたい。
松本城も見たいから、富山側から入って長野側に出ると楽しいかも。
富士山は山梨や静岡から見た方が大きいから、わざわざ立山から見なくてもいいと思う(笑)
時間と体力に余裕があれば、じっくり登ったら新たな感動をもらえそうですね。
どちらもない私は、迷わず楽してコースを選びますが。
でも階段と言う落とし穴! 楽あれば苦ありですね。
ダムマニアのブロ友さんは、全国各地を飛び回り、見学し収集されているようです。
その体力と気力に感服!
本当に美しい景色でした。
お天気だったのでなおさらですね。
雨女にしては幸運でした。
きっと、ツアー内に晴れ女、晴れ男がいらしたのでしょう。
ダムマニアの方を1人知っています。
白玉さんのご友人にもいらっしゃるんですね。
全国でどのくらいの人数になるのかしら。
ダムの魅力を語ってほしいと思います。
私もダム関連の仕事をしていた時期があるので一度は行ってみたい場所です。羨ましいま~
何処へ行かれても腹ごしらえは万全ですね。
この次は富山側から行かれると良いかな、食い物が好いようだから(*^^*)ポッ
まあ、ダム関連のお仕事を?
黒部以外のダムはよく知りませんが、ここはかなり大きいですよね。
他のダムを見たら「ちっちゃ~」となってしまうかも。
腹ごしらえは不満でした(笑)
食事時間をとらないコースなので、交通機関の乗り継ぎ時に各自で飲食するとなっています。
しかし、売店で売られているものは、餅だのまんじゅうだのと、炭水化物ばかり。
肉を食わせろ~と思いましたよ(笑)
富山側からだったら、新幹線がいいでしょうね。
景色がまた違うでしょうから楽しみです。
我が家も立山に行くときは砂希さんがいらっしゃったルートです。
帰りは、私は来た道を戻りますが、夫はスキーだの足だので駆け下ってきます。
大観望で待ち合わせ!とか。
数年前、夫がスキーで滑り降りてくるのを見ていたら、直前に雪崩が起き、雪崩の上を夫が!ということがありました。
恐ろしいことです。
私は高山植物やライチョウを愛でていればシアワセです。
なんと、雪崩ですか!?
淡々と書かれていますが、命がけではありませんか。
くれぐれもお気をつけて。
3000メートル級の山々に乗り物で行かれる場所は、そう多くないそうですね。
何でこんなに外国人が多いのかと思ったら、楽して登りたい人たちが集まってくるからだとわかりました。
7~9月はまさにハイシーズンで、混雑情報まで流れていると聞きました。
考えていることは皆同じ。
とても気に入ったので、また行こうと思います。