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この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

純愛と暴力の果て、映画『ドライヴ』。

2012-04-10 22:45:21 | 新作映画
 ライアン・ゴズリング主演、ニコラス・ウィンディング・レフン監督、『ドライヴ』、4/8、Tジョイ博多にて鑑賞。2012年13本目。


 男は「ドライヴァー(運転手)」と呼ばれていた。
 無論それは本名ではない。けれど誰も彼の本名を知らない。
 もしかしたら、彼自身、忘れてしまったのかもしれない。

 車の運転、修理、整備、スタント、ともかく車に触れているときだけ、彼は“生”の実感を得ることが出来た。
 それは彼の人生において、唯一車だけが彼を見捨てず、彼を裏切らなかったからだ。
 だから彼は逃がし屋稼業にも手を染めている。
 稼ぎが目的なんじゃない。警察から逃げ切った時のエクスタシーは何物にも代えがたいのだ。

 そんな彼の前に一人の女性が現れる
 彼女の名前はアイリーン。
 彼女の夫スタンダードは十七歳の彼女を手折り、妊娠させたごく潰し。
 だが彼女は、子どもの父親であるという理由でスタンダードを愛そうと努める。

 ムショ帰りのスタンダードは刑務所からトラブルも持ち帰っていた。
 ドライヴァーは愛するアイリーンのために危険な悪事の片棒を担ぐことにする…。


 賛否両論の映画だ。
 否定派の意見はだいたいこんな感じ。
 ドライヴァーがどんな人物なのか、また何を考えているか、なぜ命を掛けてまでアイリーンのことを守ろうとするのかが、わからないetc。
 言わせてもらっていい?
 
 アンタらクソのつく大馬鹿野郎だよ。

 確かに作中、ドライヴァーの過去は語られない。それどころか、名前すら明かされない。
 それが何を意味するか、本当にわからない?
 ドライヴァーの過去が語られないのは、彼が過去を捨てた人間だからだよ。名前が明かされないのは、彼が周囲の人間に一定の距離を置いている、ってことなんだよ。
 彼の過去の具体的なエピソードがわからない?それぐらいは想像力で補えよ!!!

 ドライヴァーが何を考えているか、自分には痛いほどわかる。
 彼がアイリーンをエレベーターホールに呼び出し、何を言おうとしたのか?
 単に自分が事件にどのようにかかわっているのかを説明しようとしただけなのか?
 違うよ!!
 手元にはたんまりと大金がある。愛する女の旦那は死んだ。
 であれば男はどうするか。
 女に言う台詞は決まっている。
 どこか見知らぬ土地へ行って、三人で暮らそう、だよ。わかりきってる。

 じゃあ、なぜドライヴァーはそれを最後まで言えなかったのか。
 それは、自らの内に潜む凶暴な獣を、アイリーンに見られてしまったから。アイリーンのおびえた目を見たから。自分がアイリーンを幸せにすることは生涯出来ないと悟ってしまったから。
 だから、彼はアイリーンの前から姿を消した。そして彼女に危険を齎す者たちを文字通り命懸けで排除した。
 泣けるよ。これが純愛ってもんだろう。
 もし自分に愛する人がいたら、彼のように命懸けで愛したい。


 お気に入り度は★★★★★、お薦め度は★★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
コメント (10)
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