「奈良って、なーんか地味なんよなあ」
あるとき、あんこう鍋をつつきながら、そんなボヤきを発したのは、友人オウジ君であった。
オウジ君は奈良県の出身なのだが、おたがいの地元トークなどで盛り上がると、ときおりこういう自虐モードにはいることがある。
たしかに、大阪人の私から見ても、奈良は地味である。
一時期、仕事の関係で奈良によく行く機会があり、その際オウジ君のような奈良人に、
「どっか、帰りに寄れる、ええとこない?」
と訊くのだが、これが決まって、
「いやー、別に」
これが京都なら、
「将棋ファンやったら、南禅寺とか行ってみたら?」
「冬なら、雪化粧した金閣寺とかきれいよ」
「京都のパンとスイーツは、ハズレがないから安心して」
「学生の街やから、古本屋めぐりが充実してるねん」
なんて、いくらでも出てくるのだが、これが奈良だと、
「観光地? どこもアクセス悪いで」
「遊ぶ場所? 大阪でええんちゃう?」
「食いもん? 【奈良にうまいもんなし】っていうから」
けんもほろろ。
たしかに、見どころはなくはないが、場所がバラバラで周りにくいし、メシも名物とかピンとこない。
奈良公園の鹿はかわいいけど、スレていて、案外獰猛だったりするし。
人もおだやかで、全体的に大都市感がないというか、住むのには静かで良さそうだけど、他のアピールポイントが少なすぎるのだ。
新幹線も停まらないしなあ。
そんな奈良のさらなる弱点は、遺跡や古墳のショボさ。
いや、もともとは平城京なんだから、豪華絢爛な建物とかバンバンあったんでしょうけど、今ではその面影もない。
実際に行ってみればわかるけど、歴史ロマンに誘われて、奈良の遺跡をめぐると、そのほとんどが
「予算が足りなくて打ち捨てられた工事現場」
みたいなのだ。その哀しさといったらない。
近所の三角公園にある砂場みたいなところに、ロープで囲いがあって、
「○○古墳」
とかあった日には、腰が抜けます。これで、どうせえと。
なんか、ウソでもいいから、もっと復元するとか、なんとかならんもんか。
関西の番組で、笑い飯の哲夫さんが奈良を案内する企画とかやると、たいてい、
「え? これが遺跡?」
「そうですよ。奈良が誇る、偉大な歴史的跡地です」
「ただの石やん!」
みたいな、自虐ノリがかならず出てきたもんです。
本来、そのポテンシャルでは京都に負けていないはずどころか、歴史的には「先輩」「にいさん」のような存在のはず。
それが、この格差では、オウジ君でなくとも、「もっと、がんばれ」と言いたくもなろう。
一応、仕事でお世話になった義理もあるので、奈良には奮起していただきたいところ。
私としては、『ガメラ3』の京都駅みたいに怪獣を誘致して、大仏とか五重塔とか、バンバン壊してくれるのを見たいのだが、どうか。