旅の後半は南の島でのんびり・・・これは譲れない。何はともあれ南の島の海で、波の音だけ聞きながら過ごすのだ。タイのリゾートといえばプーケットが有名ですが、プーケットに行くには季節がよろしくない・・・ということで僕はサムイ島へ。
サムイで一番人気なのはチャウエンビーチ。サムイに来る観光客の半数以上がチャウエンに宿をとり、チャウエンのビーチで泳ぎ、チャウエンのナイトライフを楽しむ。ホテルもお土産屋も食べ物屋もディスコもバーも、数においては他のビーチの比ではない。がしかし、少し賑やか過ぎる。
旅の終わりの静けさを求める僕は、サムイで二番人気のラマイビーチに腰を落ち着けることにした。数キロに渡るビーチに隙間無くホテルやコテージが建っている割に人は少なく、夜には屋台やレストランやバーがそこそこの活気をみせる。楽園と呼ぶに相応しい場所だ。
僕が泊まったゲストハウスはラマイの中心から少し離れたところ。一軒の小さなコテージ。目の前は海。ドアを開けなくても波の音が聞こえる。小さなテラスも付いてる。テラスの椅子に腰をかけて、砂浜と椰子の木と海を眺めながら煙草を吹かす。これが楽園じゃなければ、どこが楽園なんだ?などとつぶやきながら冷水のシャワーを浴びる。南国と言っても朝晩はそこそこ冷える。冷水のシャワーはちょっと凍える。
例によってバイクをレンタルし、ラマイの中心のビーチに向かう。波の無い遠浅のビーチでチャプチャプと揺れる。眠る。焼ける。食べる。飲む。揺れる。いやぁ癒されますなぁ。人生っていいですなぁ。ずっとここにいたいなぁ。なんて想いながら、夕暮れ近くまで楽園を満喫。バイクに乗ってコテージに戻る。
と、その途中。ポリス出現。ピーピピピと笛を鳴らし僕を誘導。カタコトの英語を話すおっさんが歩いて来て僕に言う。
「ライセンスを見せなさい」
「うぐ・・・持ってません」
「罰金です」
「えっ、でもライセンスなんているの?」
「あなたはチャウエンの警察署で罰金を払わなければならない」
「えっ?なんでチャウエン?」
「罰金を払うまでバイクは没収です」
「えっ、じゃぁチャウエンまでどうやって払いに行くの?」
「そんなことわたしには関係あーりません」
「えっ、でもこのバイク、レンタルなんすけど・・・」
「そんなのわたしには関係あーりません。あなたが罰金を払うまで預かります」
「えっ、じゃぁ何?罰金払ったら、またバイクに乗っていいの?」
「いいよん」
「えっ、これって無免許の取り締まりじゃないの?」
「違うよん」
「はぁぁ?じゃぁ何よ?」
「一方通行逆走」
「えっ?ここ一方通行なの?」
「そうだよん」
「どこに書いてあんの?」
「すげー向こうの方の出口」
「オレさ、途中のビーチに行って戻って来ただけだから、標識見てないんだけど・・・ひどくない?」
「ハッハッハッハ、引っかかったな」
周りには、何も知らず罠にかかった、レンタルバイクを借りてる外国人があふれてましたとさ。いやぁ、何処の国も、警察のやることって似たり寄ったりだな。一応タイの法律ではヘルメット着用義務違反は200バーツの罰金(免許制度は未だ不明・・・たまに子供がバイクに乗ってる)。でもねぇ、お巡りさんノーヘルも無免もスルーですから。管轄外ってやつですね。
ラマイから20キロほど離れたチャウエン警察までモーターサイ(バイクのタクシー)、罰金を払って証明書をもらい、チャウエンからラマイ警察までソンテオ(乗り合いタクシー)。バイクを取り戻した時にはすっかり夜でした。
ちょっと面倒ではあったけど、それはそれで良い経験だったりして。楽園が楽園であることには変わりない。戻って来たバイクに乗って、再び20キロ先のチャウエンの夜の街へ、遊びに繰り出す僕なのであった。懲りない懲りない。それが旅なのである。