五曲目。「Bye Bye Buddy」(trash box jamのアルバム Balladに収録)。
僕は、すごい勢いでバイクを飛ばしていた。必死の形相である。バイクはHONDAの250cc、単気筒のクラブマン。ドコドコドコとエンジンを震わせて走っていた。
なぜ必死の形相でバイクを走らせていたのか?
その訳を書く。
まず余談から。
清水薫と出会ったのは二十歳か二十一歳の頃。
清水薫の簡単な経歴を。
清水薫は高校を中退していた。高校を中退して、音楽を目指し小さなメジャーレコード会社と契約をするに至った。至ったのだが、音楽の方向性でレコード会社と揉め、レコード会社と袂を分かってしまった。まだまだヤンチャな十代の頃の話である。
僕は言う。
「なぁ、カオル、おまえは尾崎みたいだな」
尾崎とは、尾崎豊のことである。
僕は尾崎豊が好きだったから、尾崎みたいでかっこいいな、という意味である。
「尾崎みたいって言われるの、好きじゃねーんだよ」
清水薫は少しプンプンしながら答える。
・・・。
だって、尾崎みたいじゃん!中退してるし!中退してレコードと契約してるし!何より、おまえが書く曲の歌詞、尾崎みたいじゃん!
と言いたかったが、そこはぐっと抑えた。
ここまで余談。
4トラックのレコーディングについては前に書いた。
アマチュアってのは、みんな4トラックでレコーディングしていたという話は書いた。
だがそれは、自分で録音をする場合という注意書きが必要となる。
レコーディングスタジオというものがある。
練習スタジオではなく、録音を専門に行うスタジオである。ここに行けば、4トラックに縛られることはない。16トラックの録音が行える。そう、金さえ払えば。一曲10万円くらい払えばね。
憧れのレコーディングスタジオ・・・なのである。
さて、僕らのバンド、ビッグバン。
レコーディングをしようという話になった。格安レコーディングスタジオというのを誰かが見つけて来た。6時間で4万円。
そこそこのレコーディングスタジオの相場は1時間2万円くらい。つまり、6時間で4万円は格安なのである。
6時間あれば一曲録れる。録れる思われる。録れるはずである。
レコーディングをすることが決まり、日付も決まった。
一つ問題がある。曲である。何をレコーディングするかということである。一曲しか録れない。
ビッグバンには二人のソングメーカーアンドボーカルがいる。清水薫と僕である。
さて。
清水薫が言う。
「シング、わりーんだけどよ、今回レコーディングする曲はオレの曲にしたい。いいか?」
僕は僕で、自分の曲にしたいという気持ちがないわけではない。だがしかし、こういう時は、何しろ、我の強い方が勝つと決まっているのである。
うまり、バンドのメンバーの意見とか、民主主義とか、投票しまーすとか、そういうのは・・・ない。とにかく、我が強いやつが勝つ。
そんなわけで、レコーディングをする曲は、清水薫の「Life is true」という曲に決まった。
つづく。
僕は、すごい勢いでバイクを飛ばしていた。必死の形相である。バイクはHONDAの250cc、単気筒のクラブマン。ドコドコドコとエンジンを震わせて走っていた。
なぜ必死の形相でバイクを走らせていたのか?
その訳を書く。
まず余談から。
清水薫と出会ったのは二十歳か二十一歳の頃。
清水薫の簡単な経歴を。
清水薫は高校を中退していた。高校を中退して、音楽を目指し小さなメジャーレコード会社と契約をするに至った。至ったのだが、音楽の方向性でレコード会社と揉め、レコード会社と袂を分かってしまった。まだまだヤンチャな十代の頃の話である。
僕は言う。
「なぁ、カオル、おまえは尾崎みたいだな」
尾崎とは、尾崎豊のことである。
僕は尾崎豊が好きだったから、尾崎みたいでかっこいいな、という意味である。
「尾崎みたいって言われるの、好きじゃねーんだよ」
清水薫は少しプンプンしながら答える。
・・・。
だって、尾崎みたいじゃん!中退してるし!中退してレコードと契約してるし!何より、おまえが書く曲の歌詞、尾崎みたいじゃん!
と言いたかったが、そこはぐっと抑えた。
ここまで余談。
4トラックのレコーディングについては前に書いた。
アマチュアってのは、みんな4トラックでレコーディングしていたという話は書いた。
だがそれは、自分で録音をする場合という注意書きが必要となる。
レコーディングスタジオというものがある。
練習スタジオではなく、録音を専門に行うスタジオである。ここに行けば、4トラックに縛られることはない。16トラックの録音が行える。そう、金さえ払えば。一曲10万円くらい払えばね。
憧れのレコーディングスタジオ・・・なのである。
さて、僕らのバンド、ビッグバン。
レコーディングをしようという話になった。格安レコーディングスタジオというのを誰かが見つけて来た。6時間で4万円。
そこそこのレコーディングスタジオの相場は1時間2万円くらい。つまり、6時間で4万円は格安なのである。
6時間あれば一曲録れる。録れる思われる。録れるはずである。
レコーディングをすることが決まり、日付も決まった。
一つ問題がある。曲である。何をレコーディングするかということである。一曲しか録れない。
ビッグバンには二人のソングメーカーアンドボーカルがいる。清水薫と僕である。
さて。
清水薫が言う。
「シング、わりーんだけどよ、今回レコーディングする曲はオレの曲にしたい。いいか?」
僕は僕で、自分の曲にしたいという気持ちがないわけではない。だがしかし、こういう時は、何しろ、我の強い方が勝つと決まっているのである。
うまり、バンドのメンバーの意見とか、民主主義とか、投票しまーすとか、そういうのは・・・ない。とにかく、我が強いやつが勝つ。
そんなわけで、レコーディングをする曲は、清水薫の「Life is true」という曲に決まった。
つづく。