六曲目。「薔薇色の憂鬱」(アルバム未収録)。
声がガラガラしてますが、YouTubeの薔薇色の憂鬱、ビデオ班カミーがアップしてくれました。
youtube 薔薇色の憂鬱 at 下北沢lown
「薔薇色の憂鬱」の解説については、先日のブログを参照してください。
しんぐくんは、霞を食べて生きているの?そうだよ、霞とナスを食べて生きているんだよ。
ビッグバンのファーストレコーディング、曲は清水薫のLife is true。
自分の曲ではないから、プレッシャーも緊張もない。僕の仕事はコーラスを入れるくらいなものだ。つまり、ワクワクしかない。本格的なレコーディングにワクワクだけで臨めるなんて、最高の気分だ。
そして、僕は脂汗をかきながらバイクを飛ばしている。
電話の音で目が覚めた。電話に出ると、ロントモの声がする。声というよりも、怒声だ。
「シング!何やってんだ!」
時計を見る。衝撃が走る。
「嘘だろ?」とつぶやく。
レコーディング開始の時間から3時間が過ぎていた。残り時間は3時間しかない。
「嘘だろ?」と再びつぶやく。
なんてこった。なんてこった。なんてこった。
ワクワクすると眠れなくなる。そして眠ったら永遠に起きない。
僕の人生は、この繰り返しだ。昔から、ずっと、この繰り返しだ。
trash box jamの元メンのしゅうは言った。
「シングは、寝坊で人生をダメにする」
僕がレコーディングスタジオの扉を開けたのは、レコーディング終了まで残り一2時間となった時だった。4時間の遅刻である。信じられるかい?4時間の遅刻だ。
僕が着いた時、ブースのの中でリョウがエレキギターを弾いていた。
レコーディングは押していた。
ドラムとベースで手こずって、だいぶ時間を使ってしまったらしい。
4時間の遅刻はもう本当に言い訳無用のどうしようもない事態なのだが、自分の出番はまだ来ていないという事実に、僕はホッとするのである。
リョウのギターが終わり、清水薫のアコースティックギターが終わり、清水薫がボーカルを吹き込む。
残り時間が1時間を切ったあたりで、ロントモがブースに入った。ロントモがサックスを吹く。
ロントモ、初のレコーディングである。他のメンバーは、レコーディングスタジオが初めてだったとしても、レコーディングは初めてではない。ロントモはレコーディング自体が初めてなのである。めちゃくちゃ緊張しているのである。全然終わらないのである。時間だけが刻々と過ぎていくのである。
スタジオのエンジニアがちらりと時計に目を走らせる。・・・。ここまでかな・・・という顔をする。タイムオーバー間近なのである。僕はまだブースに入っていない。
残り15分。ロントモが「すまん」という顔をしてブースから出て来た。軽くハイタッチをして、交代で僕がブースに入る。ヘッドホンをはめて靴を脱ぐ。靴を脱ぐのは靴音をマイクが拾ってしまうからだ。80万円のマイク・・・。いいねぇ。
レコーディングを終えたメンバーの姿が、ブースのガラス越しに見える。いいねぇ。
ヘッドホンからは、ここまでレコーディングをしたメンバーの音が聴こえる。いいねぇ。
僕の声がラストピースである。僕の声でこの曲が完成する。・・・すごくいいねぇ。
僕は、歌う。時間はなくとも、歌う。遅刻をしたけど、歌う。
部屋で歌うのとは違う。ライブハウスで歌うのとも違う。ここは、レコーディングスタジオだ。独特の雰囲気。独特の空気。独特の温度。独特の音。独特の響き。独特の景色。初めて知る世界だ。知らなかった世界だ。
僕の歌が上手かったかどうかはわからないが、ロントモは言った。
「シングが歌い始めた時、全身に鳥肌が立ったんだよ・・・すげぇな・・・なんか、すげぇ感動した」
実は、その時、僕の全身にも鳥肌が立っていた。自分に聴こえる自分の声に、鳥肌が立っていた。ロントモの顔が見えた。その瞬間、ロントモが飛び上がりそうに嬉しそうな顔をしたのを覚えている。
僕のレコーディングはあっという間に終わった。なぜならば、時間がなくなったからである。
コーラスの後半のパートは、ブースから出て、ミックスをする小さな部屋でハンドマイクで歌った。
僕は遅刻をしたわけで、まったく文句を言える立場ではないのだが、こればかりは、遅刻をしていなくてもこうなったわけで・・・と、少し笑えた。
こうして、僕らのバンドのファースト作品「Life is true」が完成したのである。
つづく。
声がガラガラしてますが、YouTubeの薔薇色の憂鬱、ビデオ班カミーがアップしてくれました。
youtube 薔薇色の憂鬱 at 下北沢lown
「薔薇色の憂鬱」の解説については、先日のブログを参照してください。
しんぐくんは、霞を食べて生きているの?そうだよ、霞とナスを食べて生きているんだよ。
ビッグバンのファーストレコーディング、曲は清水薫のLife is true。
自分の曲ではないから、プレッシャーも緊張もない。僕の仕事はコーラスを入れるくらいなものだ。つまり、ワクワクしかない。本格的なレコーディングにワクワクだけで臨めるなんて、最高の気分だ。
そして、僕は脂汗をかきながらバイクを飛ばしている。
電話の音で目が覚めた。電話に出ると、ロントモの声がする。声というよりも、怒声だ。
「シング!何やってんだ!」
時計を見る。衝撃が走る。
「嘘だろ?」とつぶやく。
レコーディング開始の時間から3時間が過ぎていた。残り時間は3時間しかない。
「嘘だろ?」と再びつぶやく。
なんてこった。なんてこった。なんてこった。
ワクワクすると眠れなくなる。そして眠ったら永遠に起きない。
僕の人生は、この繰り返しだ。昔から、ずっと、この繰り返しだ。
trash box jamの元メンのしゅうは言った。
「シングは、寝坊で人生をダメにする」
僕がレコーディングスタジオの扉を開けたのは、レコーディング終了まで残り一2時間となった時だった。4時間の遅刻である。信じられるかい?4時間の遅刻だ。
僕が着いた時、ブースのの中でリョウがエレキギターを弾いていた。
レコーディングは押していた。
ドラムとベースで手こずって、だいぶ時間を使ってしまったらしい。
4時間の遅刻はもう本当に言い訳無用のどうしようもない事態なのだが、自分の出番はまだ来ていないという事実に、僕はホッとするのである。
リョウのギターが終わり、清水薫のアコースティックギターが終わり、清水薫がボーカルを吹き込む。
残り時間が1時間を切ったあたりで、ロントモがブースに入った。ロントモがサックスを吹く。
ロントモ、初のレコーディングである。他のメンバーは、レコーディングスタジオが初めてだったとしても、レコーディングは初めてではない。ロントモはレコーディング自体が初めてなのである。めちゃくちゃ緊張しているのである。全然終わらないのである。時間だけが刻々と過ぎていくのである。
スタジオのエンジニアがちらりと時計に目を走らせる。・・・。ここまでかな・・・という顔をする。タイムオーバー間近なのである。僕はまだブースに入っていない。
残り15分。ロントモが「すまん」という顔をしてブースから出て来た。軽くハイタッチをして、交代で僕がブースに入る。ヘッドホンをはめて靴を脱ぐ。靴を脱ぐのは靴音をマイクが拾ってしまうからだ。80万円のマイク・・・。いいねぇ。
レコーディングを終えたメンバーの姿が、ブースのガラス越しに見える。いいねぇ。
ヘッドホンからは、ここまでレコーディングをしたメンバーの音が聴こえる。いいねぇ。
僕の声がラストピースである。僕の声でこの曲が完成する。・・・すごくいいねぇ。
僕は、歌う。時間はなくとも、歌う。遅刻をしたけど、歌う。
部屋で歌うのとは違う。ライブハウスで歌うのとも違う。ここは、レコーディングスタジオだ。独特の雰囲気。独特の空気。独特の温度。独特の音。独特の響き。独特の景色。初めて知る世界だ。知らなかった世界だ。
僕の歌が上手かったかどうかはわからないが、ロントモは言った。
「シングが歌い始めた時、全身に鳥肌が立ったんだよ・・・すげぇな・・・なんか、すげぇ感動した」
実は、その時、僕の全身にも鳥肌が立っていた。自分に聴こえる自分の声に、鳥肌が立っていた。ロントモの顔が見えた。その瞬間、ロントモが飛び上がりそうに嬉しそうな顔をしたのを覚えている。
僕のレコーディングはあっという間に終わった。なぜならば、時間がなくなったからである。
コーラスの後半のパートは、ブースから出て、ミックスをする小さな部屋でハンドマイクで歌った。
僕は遅刻をしたわけで、まったく文句を言える立場ではないのだが、こればかりは、遅刻をしていなくてもこうなったわけで・・・と、少し笑えた。
こうして、僕らのバンドのファースト作品「Life is true」が完成したのである。
つづく。