1991年2月のバブル崩壊後、わが国経済はデフレから脱却できずに今日を迎えています。
この間、若者の就業機会はドンドン減少し、そればかりか既に正社員であった中堅社員までもが『希望退職』という美名の下に職場を失う事態にまで至っています。
この状態を生み出したのは、企業の生き残り策としての労働を単なるコストとしてしか見ない、言い換えれば「会社の行動が“社会的不利益”を齎さないか」という考え方を置き去りにした、偏った考え方の結果としか言いようがありません。
このことは、わが国の経済団体の方々に熟考と緊急的改善への指針提示を促したいところです。
長引く不況下、就職活動も「買い手市場」が長期化しています。『失われた10年』と表現された時期に就業期を迎え、いまだ非就業或いはパートタイマー、契約社員、登録派遣社員といった非正規雇用の人たちは既に30代半ばの年齢を迎え、正社員としての就業機会はますます細る一方となっています。
このような中、新卒就職者や学生の間で「ブラック企業」が取り沙汰されるようになっています。
私たちの年代でブラック企業といえば暴力団が経営する会社又は暴力団が関係する会社を指していましたが、2007年頃から「従業員を使い捨てにする企業」という意味で使われるようになっています。
書 名:ブラック企業
日本を食いつぶす妖怪
著 者:今野晴貴
発 行 所:株式会社 文藝春秋
初版発行:2012年11月20日
区 分:文春新書
本書はこのブラック企業について、事例、告発の他、従業員に対する理不尽な行いが広がっている要因、社会的影響などに言及しています。
ブラック企業化は中小零細のみの問題ではなく、大企業、一流企業にも内在しています。
就職した会社が運悪くこのようなブラック企業であることが分かった場合、法的手続きで訴えることが正攻法ですが、時間が掛かりすぎ、結果として得るものは何もありません。就職難の世の中ですが、自身の精神的、肉体的健康を守るためには『逃げるが勝ち』が原則だと思います。