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最低賃金の引き上げ額は「雀の涙!」

2014-09-20 07:01:40 | 社会・経済

 厚生労働省の中央最低賃金審議会は7月29日、国が定める最低賃金を16円引き上げるべきとの答申をまとめました。現在定めている最低賃金は、全国平均で時給764円です。
(最低賃金とは、雇い主が正社員のみならずアルバイトやパートタイマー、契約社員など非正規労働も含めすべての労働者に支払わなければならない最低限の時給です。)

 生活保護費を下回る「逆転現象」は北海道、宮城、東京、兵庫、広島の5都道県でみられたが、平均16円の最低賃金の引き上げにより、逆転現象は全ての都道県で解消する見込みとのことです。

 都道府県別の上げ幅の目安は経済規模に応じてA~Dの4ランクに分けられ、Aは19円、Bは15円、Cは14円、Dは13円を引き上げの目安としています。この答申を受け、各都道府県の地方審議会がそれぞれ最低賃金を決め、10月ごろから適用されますが、目安と同額か上回るのが一般的です。

 この引き上げペースでいくなら、現在、労働側が目標とする時給1000円以上になるには10年を要することになります。その頃には今の1000円が1500円、2000円になるという“鼬ごっこ”が続くことになりかねません。

 法人税率の引き下げを実施しようとしている安倍政権としては、その額がどうであれ、形ばかりであっても最低賃金を引き上げ、生活保護との逆転現象を解消するという目的達成事実をもって、アベノミクスは『企業に優しく、労働者に厳しい』との批判をかわそうとしているのが見て取れます。

 それでは現時点で、一世帯当たりいくらの所得があれば、憲法に保障された生活水準を維持できるのでしょうか。常識的に考えて、年間360万円は必要ではないでしょうか。
 この360万円を、月25日、1日8時間働くと前提すれば、時給は1500円となります。この計算基準を適用すると、現在労働側が目標としている時給1000円は年間240万円になります。要求が甘いと言わざるをえません。
 企業は社会貢献の一環として、この金額以上の時給を従業員に支払うのだという義務感をもち、政府は選挙のことばかり気にせずに、その早期実現に向けた策をとるべきだと思います。


〔最低賃金審議会とは〕

 厚生労働大臣または都道府県労働局長から意見を求められ、これに応じて最低賃金に関する重要な事柄を調査・審議する組織。
 最低賃金法に基づいて、厚生労働省に中央最低賃金審議会、各都道府県労働局に地方最低賃金審議会が設置されている。
 中央最低賃金審議会が毎年提示する最低賃金改定額の目安を参考に、各地方最低賃金審議会が審議・答申し、都道府県労働局長が最低賃金を決定する。


≪参考・・・最低賃金制度の概要≫

 最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。

 仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。

 したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。


最低賃金法(昭和34年4月15日法律第137号)(抜粋)

第四条 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
2 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。


労働基準法(昭和22年4月7日法律第49号)(抜粋)

第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。


≪都道府県別最低賃金≫

 最低賃金(時給)の都道府県ごとの引き上げ額が8月28日(木)に出揃いました。



 全国平均は今より16円高い780円となったが、最も高い東京と、最低の高知など7県との格差は今の205円から211円に拡大してしまいます。10月から地域ごとに順次適用されます。



 引き上げ後の最高額は東京の888円で、最低額は鳥取、高知、長崎、熊本、大分、宮崎、沖縄の7県の677円。


【関係サイト】

 ○ 厚生労働省最低賃金制度


【関連記事】

 ○ 最低賃金




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