75歳女性が3日前に高齢の男性と一緒に外来を受診した。時々発熱があって体が震えるという訴えだった。てっきり感染症と思ったが、肺炎も尿路感染も胆道感染もなかった。炎症反応は白血球数もCRPも血沈もまったくの正常域だった。関節痛も筋肉痛もなかった。膠原病らしい症状もない。CEAとCA19-9が軽度に上昇していた。胸部X線と腹部エコーは異常なし。消化管の内視鏡検査を上部(胃)から始めることにした。
ご本人はニコニコしていて、特に困っているようには見えない。どうも物忘れがかなりあって、見えないものが見えたり、いない人がいるように見えたりするらしい。認知症の検査として、長谷川式をすると17点(30点中)だった、頭部MRIでは前頭葉の委縮、海馬に委縮があった。パーキンソン症状はない。認知症には違いないが、さてどうしようかと思っていると、ふだん飲んでいる薬を見せられた。初診時にはそんな話はなかったが、息子から朝の分の薬を検査が終わったら飲むようにいわれていたという。アリセプト5mgだった。精神科クリニックから処方されていた。息子夫婦と孫といっしょに住んでいるが、以前から息子夫婦は認知症と判断してちゃんと治療を受けさせていたのだった。
夫はかなり若いころに亡くなっていて、病院に連れてきた男性は夫ではなく、いとこだという。日中自宅にひとりになるので、その男性の家で過ごしているそうだ。いろいろなことが前後してしまったが、内科としては胃腸の悪性疾患がないかどうか検査を勧めることにした。