昨日食べられなくなって入院した85歳女性の内視鏡検査を行った。中部から下部食道にごはん粒とひじきが固まってへばりついていた。消化器科医が勢いよく水を注入して洗うと、食道癌はなかった。食道粘膜は全周性に白濁してびらんが散在していて、もともと逆流性食道炎はあるのだろうが、食物が停滞したために二次的に悪化したもののようだ。胃から十二指腸球部にも異常はなく、食残もなかった。
食道の動きが悪いのだろうが、歯がないのに食事を丸飲みしていると思われる。食道自体の蠕動運動が悪いのかもしれない。消化器科医から強皮症はありませんかと聞かれたが、少なくとも臨床的な症状はない。抗核抗体など調べるべきなのか。
とりあえず、今日は水分のみにして、明日からはソフト食(ほとんどムースのようなもの)を試してみることにする。処方はネキシウム20mg分1とガスモチン3錠分3にした。食事を工夫して、水分を多く取らせる、食後すぐには横臥させないなどで改善する見込みがある。
救急外来当番の外科医か連絡が来た。内科外来に高血圧症で通院している79歳男性が、1週間下痢が続いて食事もとれず救急搬入されたという。血清Kが3.1と低カリウム血症になっていた。妻が長年多発性骨髄腫で入退院を繰り返していたが、結局亡くなってしまった。その後、うつ状態になって食欲低下・倦怠感があり、外来で抗うつ剤を投与していたのだった。
血液検査でCRPが8と上昇していて、肺炎など他に炎症反応が上がる疾患はないことから、感染性腸炎によるものと思われた。血便ではないが、何だろう。ウイルス性腸炎はまだ流行していない。何らかの細菌性腸炎だろうか。便培養をし提出した。入院して点滴を継続することにした。