3日前に、施設に入所している72歳女性が前日からの発熱で受診した。精神遅滞の方で、寝たきりで胃瘻による経管栄養を受けていた。胸部X線でわかりにくなったので、胸部CTで確認すると左下肺野(心陰影の背側)に浸潤影を認めた。室内気で酸素飽和度は97%でバイタルサインも異常なかった。外来治療にするか入院治療にするかの選択だった。
その日は内科新患外来を診ていたが、忙しかった。できるだけ外来治療でいきたいという、こちらの事情もあった。化学療法学会の誤嚥性肺炎のランチョンセミナー(化学療法学会では教育セミナーという)で、アベロックスによる外来治療というのがあった。販売しているバイエルの提供なので、アベロックスを使ってくださいというお約束ではある。誤嚥性肺炎を全部入院治療にするというのは大変なので、症例を選んで外来治療を試みるというものだった。
実はそれ以前から当院では、軽度の誤嚥性肺炎には嫌気性菌をカバーするアベロックス内服がいいのではないかと考えて、数例実際にそれで治療していた。幸い全例うまく軽快治癒できている。入院しても不穏がひどく点滴静注が困難なため、やむを得ずにアベロックス内服というのもあった。
今回もアベロックスを処方して(粉砕して胃瘻から注入)外来治療としてみた。翌日まで発熱があったが、翌々日から解熱していた。3日後の今日検査してみると胸部X線で陰影の悪化はなく、炎症反応も改善していた。外来治療継続でいけると判断して、アベロックスを追加処方して、また来週受診とした。