自宅介護の81歳女性は、胃瘻による経管栄養を受けていて全介助の状態だった。昨日からタール便(真っ黒ではなくて、うっすらと黒い)が出て、今朝は茶色い胃液を吐いたという。明日が胃瘻交換(器具の入れ替え)の予約日だったが、急遽今日連れてきた。息子たちが交代で介護していて、今日は主に介護をしている長男ではなくて三男が連れてきた。
貧血はなかった。まず胃瘻の器具を交換してしまって、それから内視鏡検査を行なった。誤嚥しにくいように、経鼻内視鏡にした。腰が曲がって食道裂孔ヘルニアになっていた。食道壁は全周性にびらんが形成されていて、出血(oozing)していた。胃十二指腸球部は問題なかった。アルサルミン液を流して終了した。その後座位にして、点滴とすぐに効くようにオメプラールを静注した。外来で経過をみていたが、嘔気・嘔吐もなく、検査で疲れたらしく患者さんは寝ていた。入院で経過をみるのもあると息子さんにお話したが、経済的な問題もあり、外来で経過をみたいという。嘔吐を繰り返すときは再受診して入院治療にすることにして、今日は帰宅とした。処方はネキシウム(カプセルをはずして)とガスモチン(粉砕)にした。
この患者さんの胃瘻は、2年前に退職した胃瘻造設を400例以上行った先生が施行していた。もう5年くらいは経過しているはずだ。当初は誤嚥性肺炎になると思われたが、不思議に肺炎での入院はない。