内科医院から肺炎の93歳女性の救急搬入依頼がきた。救急隊が到着して、患者さんを見たら、いわゆつ虫の息だった。呼吸は浅く微弱で、血圧は測定できなかった。酸素は何とか保たれていたが、pH6.886と著しいアシドーシスだった。心電図は多少の虚血性変化だけだった。やせて腰曲がりがひどく、単純X線では評価できないので、単純CTを撮った。左肺炎を認めた。
心肺蘇生には耐えられないだろう。家族に時間の問題、それも分の単位でとお話しした。血圧は昨晩から測定できなかったそうだ。蘇生術をしないことに同意された。入院の手続きをしている余裕もないと判断され、救急室でそのまま1時間経過をみることにした。救急室を個室化して、病院にきた家族に付き添ってもらった。点滴と抗菌薬を投与していたが、約50分後に心肺停止となり、死亡を確認した。遠くから孫が病院に向かっているというので、処置を済ませて、病院の霊安室で会ってもらうことにした。
ところでご契約の葬儀社はどちらでと、医者がこっそり聞いたりするのは良くないのかもしれないが、病院から帰る時の段取りを決めてもらうのは看護師さんには好評のようだ。救急室の看護師さんが今日二人目ですという。この患者さんの前に進行胃癌・癌性腹膜炎で自宅静養していた73歳女性が心肺停止で救急搬入されていた。急変時DNRの方針となっていたため、救急室で死亡が確認された。本来ならば、往診で死亡確認が好ましいのだろうが、当院は訪問診療・往診はしてないので、自宅で急変時(予想された出来事だが)はこのような形になってしまう。開業医の先生方も高齢の方が多く、いつ呼ばれるかわからない患者さんの往診を頼みにくい。いいタイミングで最期に入院としたいのだが、できるだけ自宅でという希望があると、入院が間に合わないことがある。