なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

高齢者の肺炎ー息子として

2013年12月21日 | Weblog

 昨日の夕方、病棟も落ち着いていて、これで連休になると思っていたら、施設入所中の高齢者が発熱で内科外来を受診した(午後は休診なので救急扱い)。85歳男性で脳梗塞後遺症で左半身麻痺があった。神経内科と循環器科(慢性心不全)に通院していた。泌尿器科にも通院していて、間欠自己導尿になっている。自尿もあるが、残尿が多くなり、1日1回施設職員(看護師)が導尿するという変則的なものだった。先月の尿培養で緑膿菌が検出されていた(抗緑膿菌用抗菌薬はほとんど感受性あり)。今月初めからシプロキサン内服が2週間処方されていた。単なる常在菌ではなくて、起炎菌と判断されていた。ということは昨日までは内服している状態で熱発したことになる。

 尿検査は意外にというか、シプロキサンの効果というべきか、膿尿というほどではなく、肉眼的にも混濁していなかった。咳・痰の訴えはないが、胸部X線で右下肺に浸潤影があるように見えた。白血球数9000・CRP 8と上昇していた。胸腹部CTで確認すると、右下肺背側に浸潤影が確認された。脳梗塞後遺症だが、食事摂取時に明らかなムセはないそうで、歯がないので全粥刻み食だが朝昼と普通に食べていた。胆嚢内に結石を認めたが、右季肋部に圧痛はなく肝機能も正常域だった。右腎盂~尿管上部が拡張しているが(以前から)、尿管結石はない。腎臓自体は萎縮していて腫大はなく、腎周囲脂肪織に炎症像はなかった。診断は右肺炎(誤嚥性?)となった。酸素飽和度は低下していないが、年齢と状態を考慮して入院となった。シプロキサン内服中の肺炎ということになる。レスピラトリーキノロンではないので、通常の肺炎球菌も当然考えられるし、誤嚥性で嫌気性菌の関与があるのかもしれない。分類上はHNCAPだ。ゾシンもちょっと考えたが、肺炎自体は重症ではないので、まずはユナシン3gを1日3回で治療を開始した。

 入院後に他市に住んでいる息子さんが来た。車で1時間以上はかかるので、病院を受診することになった時点で連絡したらしい。また息子さんの判断として、受診すればそのまま入院になる可能性が高いと思って、すぐに当地に向かったようだ。判断は正しかったことになる。

 患者さんのADLは、全介助で車いす移動だった。セッティングすれはスプーンを使って自力摂取できて、一部食事介助というところだ。言葉は聞き取りにくいが、単語レベルで簡単な会話はできる。何とか治して、年末ぎりぎりで施設に戻したいと伝えた。今後のこともあり、治療の適応についてもお話した。今回は乗り切っても、肺炎や尿路感染症で入退院を繰り返すと思われる。できる範囲では治療するが、人工呼吸器装着や急変時の心肺蘇生は行わない方針で治療させてもらうという内容だった。DNRの前振りという、良い子は真似しないで下さいというものだ。母親が以前当院に入院していて、今は療養型病床のある病院(他市にある)へ転院になったそうだ。寝たきりでCV管理になっていた。時々熱発しては抗菌薬で治療されて(CVカテーテル入れ替えもなされる)、今のところはいったん落ち着いているが、中長期的には予後不良と言われている。母親が急変するたびに言われてきたので、病院で何と言われるか充分わかっていた。

 それにしても、この息子さんは母親の入院費と父親の施設入所費を払い続けていることになる。親の年金がどのくらいあるかにもよるが、かなりの負担だろうと思う。短期間の入院では施設入所は当然継続で、さらに入院費も支払うことになる。1週間で治して施設に早く戻してあげたい。

コメント
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