なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

風邪の本を読む

2013年12月15日 | Weblog

 週末は山本舜悟先生の「かぜ診療マニュアル」を読んでいる。岸田先生の本も良かったが、こちらの方が治療にも言及していて、風邪の臨床に限れば、ほぼ全部といっていい。岩田先生のブログにあるように、「誠実に」書かれている。上気道炎症状を有する患者さんへの抗菌薬処方が内科専門医レベルでは5~7%で、トレーニングを受けていない医師(外科内科で開業している先生?)は10~20%を目標にする、かぜには抗菌薬を全例投与している医師(?)は半分にしてみるという提案は、なんて実践的なんだろう思う。感染症の教育を受ける機会もあまりなく、風邪臨床に役立つ本に出会うこともなく、数十年間内科臨床をしてきた(無駄に抗菌薬を処方した)世代に属するものとしては、とても優しい提案だ。

 無駄に処方した抗菌薬の副作用として、サワシリンで2例出血性大腸炎を起こしたことがある。いずれも1週間の入院を要した。フロモックスでアナフィラキシーショックを起こしたのが、一番ひどかった。午前中に処方した患者さんが血圧低下と喘鳴で昼過ぎに戻ってきてくれた。そのまま入院治療となって、幸いに3~4日で治った。入院費用は病院持ちにしてもらった。ただその時の治療は点滴とステロイドで、エピネフリンは使用していない。20年以上前にアナフィラキシーにエピネフリンというのは、それほど提唱されていなかったのか、自分が知らなかっただけなのかもわからない。患者さんにこの薬は絶対飲まないようにとカードを渡したが、交叉耐性のことまでは考えていなかった。

 風邪についての本も少なかった。たいていはインフルエンザの始まる時期に、かぜとインフルエンザというような題名で特集されていた。加地先生がかぜ博士として有名だったが、主にはインフルエンザの話だった。田坂先生の風邪の分類は「今日の治療」と雑誌「治療」のかぜ特集号で知った。田坂先生のメーリングリストを知った時には、田坂先生が亡くなられた後だった。研修医がいたころには、田坂の分類をもとにして風邪の話をしていた。

 風邪の本を集めるのが趣味だったが、岸田先生と山本先生の本でやっと満足できた。両者とも田坂の分類に基づいているのは感慨深い。内科外来に通院している患者さんが、風邪をひいたので近くの医院で風邪薬をもらいましたとお薬手帳を見せてくれて、PL顆粒とアベロックスが処方されていたりする。こういう状況はまだしばらく続くと思うが。

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